引き続きイッセーくん視点。
「あらあら、来るのが遅かったかしら?」
背後に向くと、ニコニコしながら頬に手を添えている朱乃さんがいた。
どうやらコチラの援護に来てくれたらしい。
朱乃さんにも、これといった怪我は見当たらない。 着ている制服も汚れ一つ無い。
疲労している様子もないし、敵『女王』に完勝したようだ。
本来ならもっと早くに決着がついていただろうが、朱乃さんはドSだ。
敵を痛ぶって楽しんでいたのだろう。
……お気の毒に。
「さっきぶりですね朱乃さん。 どうでした?」
「修行のおかげで難なく勝てましたわ」
「あぁ、朱乃さんもトキに修行つけてもらったんですよね? やっぱり凄かったですか?」
木場なんて精神がイカレる程シバかれたんだ、女性には厳しいモノだったろう。
などという心配を抱いたので、朱乃さんに直球で聞く。
すると、予想外の反応を見せ始める朱乃さん。
思い出すような仕草をした後、急に顔が赤く染まり、
「………トキ君ったら、修行中なのに大胆なんですもの……」
……。
……………。
……………………。
「トキィィィィィィィィッッ!!! テメェいい加減にしやがれぇぇぇぇッッ!!!!!」
俺の真の敵はライザー・フェニックスなんかじゃない!
空中で小猫ちゃんにセクハラしてる、そこの銀髪のバカだぁぁぁぁぁッ!
だからコッチが真面目に戦ってる最中に何やってんだよ!?
小猫ちゃん!
いつも俺がエロい事しようとした時のように、そのバカにもキツ~いお灸を据えてやってッ!
……小猫ちゃん? 何で君はそこのバカに甘えてるの?
超可愛いんだけど、俺の時と反応に差が有り過ぎない?
トキの頬っぺにチューして、お顔が真っ赤に、あら可愛い……、じゃなくてっ!
そして木場!
この十日間でお前の精神に何があった!?
何か死んだ魚の様に虚ろな目でブツブツ呟いてて怖いんだよッ!
――ドォォォォォォォォォォォォォォォォンッッ!――
校舎の屋上にそびえ立つ火柱とそれに伴う爆音。
部長の魔法は消滅系統だ。 あんな爆発音はしないし、火柱も立たない。
ということは、今の爆発音は必然的にライザーの野郎が起こした事になる。
コレはヤバイんじゃないか!?
「おい、トキッ!」
「ああ、ちょっとヤベェか。 俺は一足先に行っとくから、お前らも後から来い」
そう言って俺らに背を向け、手をヒラヒラと振るトキ。
それを見て、ライザーの妹が叫ぶ!
「ちょ、ちょっと! あなたは人間でしてよ!? 死んでしまいますわ!
それにお兄様は不死、あなた達が束になっても勝てるはずありません!
どうせ負けるのですから、ここで私とおしゃべりしていた方が健全で安全ですわよ!?」
そりゃそうだ。 確かに安全だ。
ただし、ライザーがだ。 魔王様をパシリにする奴がフェニックス如きに負ける訳ねぇだろ。
と内心で悪態をつくが、向こうはトキの実力を知らない。
お気の毒様としか言い様がない。
ていうかさっきの俺と木場とのコンビネーションアタックでリタイアしなかったのか…。
そういえばアナウンスでも『僧侶』一名って言ってたっけ?
どうやらトキ達と同じく空へ逃げてたらしいな。
トキはライザー妹も言葉を聞いて立ち止まり、意地悪げににやりと微笑む。
「そんなに心配してくれるなら、見に来るといい。 事の顛末がどうなるか」
そう言い終えた瞬間、トキの姿が消える。
何の音もなく、まるで最初から居なかったかの様に。
もう部長の所へ行ったのだろう。
それにしても、どうやって消えてるんだろう? 移動か転移か……。
魔力は封印によって使えないはずだし、筋力も抑えられてるはず………?
てか、このフィールド内では転移魔法は使えないはずだし。
まぁ、トキだから何をしても不思議ではないか。
そう自己完結した俺は、地面に突っ伏している木場を立たせて肩を貸してやり、
朱乃さんと小猫ちゃんと共に屋上へと歩を進めていった。
短いね、ゴメンなさい。
次回はライザーと戦います?
お楽しみに。