木場くんが嫌いなわけではないです、どちらかといえば好きなキャラです。
ただギャグの犠牲になってしまっただけです。
あれだけ動いた上に『赤龍帝の籠手』も使いまくったのに、息一つ切らしていない俺。
どうやら自分の思っていた以上に、あの地獄のシゴキは効果があったようだ。
一番弱かった俺ですらこの強さなんだから、このゲーム…、案外楽に勝てるかも…ッ!?
「ここね」
「あれ? イザベラ姉さんは?」
「まさか、やられちゃったの?」
突如、聞こえてくる少女たちの声。
気配のする方へ顔を向けると、残りのライザー眷属が集まっていた。
『僧侶』、『兵士』、『騎士』が一人ずつか…。
何とか俺一人で戦えるとは思うんだけど、念には念を入れておくか。
だからトキさん、そんな所で一人カバディしてないで手伝ってください。
木場と小猫ちゃんも敵を倒したようで、こちらに加勢してくれるみたいだ。
「フフフ、当ててみろって言うから頑張って当てたのに、
魔剣の方が砕け散るって何でなのさ…?
ていうか当ててみろって言ってもトキ君動いてなかったし…。
その上、氣や魔力を纏って強化でもしてるのかと思ったら素であの硬さらしいし…。
なんか途中寝ながら僕の事ボコボコにしてたよね?
何で寝てるのに死角からの攻撃に的確なカウンターを瞬時に10発位放てるの…?
其処ら辺で拾った木の棒に氣を纏わせたモノで僕の最高硬度の魔剣を、
まるでバターの様に切り刻むし…。
しかも普通じゃ封殺されるくらい強力な封印を何重にも掛けまくって、
手加減も可能な限りしてアレって……。
彼、絶対人間じゃないよ。彼こそ魔王だよ。
トキ君に勝てるヒトなんて絶対居ないよ…、アハハハハハハハハハハハハ!」
「……祐斗先輩が壊れました」
「……みたいだね」
帰ってこい、木場。
お前をズタボロにした
「ねー、そこの『兵士』くんと人間さん」
敵の『兵士』が俺に話しかけてくる。
一体何だろうか?
「ライザー様がね、あなた達のところのお姫様と一騎打ちするんですって。 ほら」
敵の女の子が指差す新校舎の屋上。
炎の翼を持つ人影と黒い翼を持つ人影。
紅色の髪、うん、部長だ。
『イッセーさん! 聞こえますか、イッセーさん!』
アーシアからの通信が入る。
「どうした? 部長のことか?」
『はい。今、私と部長さんは学校の屋上にいるんです。
相手のライザーさんに一騎打ちの申し出をいただきまして、部長さんが応じたんです!
おかげで何事もなく校舎まで入って来れたんですけど……』
う~ん、どうなんだろう? この状況は。
一騎打ちか。 多分だけど、いくら部長とはいえ、ライザーには勝てないだろう。
だが、心配はしていない。 自分達のやれる所はやる。
どうしても無理なら、トキに力を借りる。
部員全員でそう決めた。
『トキ、状況は分かってるわね? 私はやれるところまでやってみるわ。
だから、今はイッセー達を助けてあげて』
「ん、精一杯戦え。 でも、どうしようも無くなったら嫌でも助けに行くからな、お姫様?」
『もう……、馬鹿…』
部長からの通信。
トキはニヤニヤしながら答えると、かなり照れたような部長の返事が帰ってきた。
トキィ……、節操無さ過ぎじゃないのアンタ……。
ていうかお前既にハーレム囲ってるよね? 殺していいですか?
――ドォォォォォォンッッ!――
屋上からここまで響き渡る轟音。
どうやら部長とライザーが戦い始めた様だ。
攻撃自体は拮抗している、いや、僅かながら部長の方が上だろう。
だが、奴の持つ不死の特性上、ライザーの方は無傷だ。
ズルズル持久戦に引っ張られたら部長は圧倒的に不利になってしまう。
だからこそ、初めから出し惜しみ無しの全力全開で短期戦に持ち込もうとする部長。
ライザーの精神を一気に削る作戦みたいだ。
だが、敵もそこまで甘くない。
やはり、踏んできた場数が違う。 流石ゲーム経験者というだけあって、かなり落ち着いている。
不死の前では小細工など意味をなさない。
その事を理解し、ジワジワと相手を消耗させていく汚いやり口。
だが、非常に有効な良い手でもある。
厄介な事この上ない。
こりゃあ、ちゃっちゃと目の前の敵を倒して、加勢しに行ったほうがいいな。
……修行で覚醒した新しい『赤龍帝の籠手』の能力、使ってもいいかな?
トキに目配せすると、コチラの意図が分かったらしく、ニヤリとしてから頷いた。
「木場、時間がねぇからアレで行くぞ!」
「そういえばレンちゃんも強いんだよね?
兄妹っていうくらいなんだから相当なモノなんだろうね。
あんなに可愛い女の子にすら負ける僕って一体…。アレ? なんでだろう? 視界が霞んで…。
ああ…、涙か。最近流してなかったなぁ。そういえば今気が付いたんだけど、
トキ君とレンちゃんは神器を持っているのかな?
種族は人間だって言ってたし、可能性としては有り得るよね。
もし持っているんだとしたら、使わずにあの強さ?
それに彼等ほどの人たちなら、とっくに禁手に至ってるだろうしね。
ははは、とんだ化物じゃないか。
彼等からしたら僕なんて其処ら辺に生えている雑草と何ら遜色無いんだろうね…、
アハハハハハハッ!」
「木場ァァァァァァァァァァァァァァァァッッ!!!」
……泣けるッ!
どんな辛い修行をされたんだお前は!?
魂の髄までトラウマが染み込んじまってるじゃねぇか!
イケメンだけど、こればかりは同情せざるを得ない…。(←実はコイツの修行の方がハード)
ポタポタと涙を流しながらコンビネーションアタックの準備に取り掛かる俺と木場。
小猫ちゃんは俺らが邪魔されないように、敵の足止め。
トキの野郎は俺らの(心が)ズタボロな姿を見て、キャッキャと喜んでいる。
あのバカ絶対殺す。
木場が魔剣に力を込め、地面に突き刺して高らかと吠える。
否、涙ながらに叫ぶ。
「グスッ…、
グラウンドが光り輝き、いくつもの魔剣が地面から出現。
今だ!
「『
『Transfer!!』
――ギィィィンッッ!!――
金属の激しく擦れる音が鳴り響く。
そして、この運動場全域が刃の海と化した。
様々な所から色んな形状の魔剣が天に刃を向けている。
それら全てが木場の神器で創り出した魔剣だ。
――『赤龍帝からの贈り物』――
コレは神器で溜めた倍化の力を他者、もしくは物に譲渡し、
力を爆発的に向上させられるというモノだ。
さっきのは木場の魔剣を創り出す能力を飛躍的に高め、周囲全域刃だらけとなった。
「……バカな」
「これもドラゴンの力だというのか……?」
敵眷属の苦悶の声。
それはそうだろう、体中が幾重もの魔剣に貫かれているのだから。
そして彼女達は光に包まれ、フィールドから消えていく。
『ライザー・フェニックス様の『兵士』一名、『騎士』二名、『僧侶』一名、リタイア』
「よっしゃあ!」
トキと子猫ちゃんは俺達が何をするのかを前もって知っていたので、
タイミング良く空へ飛んでいて無傷だ。
てか、トキって俺たち悪魔の様に翼が無いのにどうやって空を飛んでるんだろう?
……何て言うか、立ってるよね? 空中に。
最近、『トキだから仕方ない』って事有るごとに思うようになってきたな。
俺もそろそろ末期だと思う。
えー、誤解を解いておきます。
レイヴェルちゃんはまだ墜ちていません、気になる男の子が出来たってだけです。
これから関係性は発展していくと思われます。
次回はクライマックスに向けてのお話。
お楽しみに。