ハイスクールD×D ―史上最強の存在―   作:黒鬼

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トキの視点です。
そして妄想が爆発。


『女として』

 

 

 

 

 

 

 

 

「いい加減出てきたらどうだ? リアス」

 

 

俺とイッセーがリビングに入った時から、ずっと隠れていたリアス。

まぁ、気配で丸分かりだが、そこはご愛嬌という奴だ。

 

 

俺はイッセーがリビングを出て、自室に帰っていった事を確認してから言葉を発した。

 

 

「フフッ、やっぱり気付いてたの」

 

「俺を誰だと思ってやがる。俺だぞ?」

 

 

少しドヤ顔で言ってやると、微笑みながら「それもそうね」とリアスは言葉を紡ぐ。

ボケのつもりが軽く流されて若干ショック。

 

 

「トキ、ありがとう。 カウンセリングまでさせちゃって」

 

「別に構わねぇよ、メンタルケアもコーチの仕事だ」

 

 

サラッと即答してやると、リアスは嬉しそうに口角を上げる。

 

 

イッセーの座っていた椅子に腰を下ろし、かけていたメガネを外しながら、

手に持っていた本を机に置くリアス。

 

 

「ソレは?」

 

「レーティングゲームのマニュアル本みたいなものよ。

  ……正直、こんな物を読んでいても気休めにしかならないのよね」

 

「フェニックスね…、不死か?」

 

「ええ」

 

 

確かに不死は厄介だ。

その上リアス達はゲーム未経験者、勝つことはハッキリ言って不可能だろう。

聞くところによると、あのアホウ鳥は公式戦では実質全勝らしい。

なんでも、すでに公式タイトルを奪取する候補にもなっているそうだ。

 

 

「ライザーが婚約相手に選ばれた時、嫌な予感がしたの。

 そうね、今思えばこうなることを見越して、お父様達は最初から仕組んでたんだわ。

 私が否応無しに結婚するように、ライザーを当てた。

 こうして身内同士のゲームになってもライザーが相手なら、フェニックスが相手なら、

 勝てるはずがないと踏んでたんだわ。チェスで言うところのハメ手。スフィンドルね」

 

 

気に食わない。

まったくもって気に食わない。

 

 

本人の意思を完全に無視して、ソイツの将来を勝手に決める。

馬鹿げている。俺からすれば正気の沙汰とは思えない。

 

 

純血を守らなくてはならない、伝統を受け継がなくてはならない。

確かにそれらも大切だ。

だが、望んでもいない事を娘に強制させるなど……。

ましてや恋愛事、結婚を女に無理矢理押し付けるなど愚の骨頂。

ふざけるなと言ってやりたい。

まぁ、だからこそ俺が参加するのだが……。

 

 

「……トキ?」

 

「………リアス、そっち寄ってもいいか?」

 

「?、ええ、いいわよ」

 

 

俺はリアスの隣の席へと移動する。

 

 

今のリアスは、何処か諦めている節がある。

気持ちは分からんでもない。

俺が出なければ、ほぼ負けが確定しているゲームで自身の将来が決まるのだから。

不安で不安で仕方ないんだろう。

 

 

女のこういう顔を見るのは好きじゃない。

今にも泣きそうだが、必死にそれを隠して誤魔化している表情。

正直、見れたものではない。

 

 

どうにかしてやりたい。

 

 

俺にはそれが出来る力があるのだ。

何かを失わない為に、後悔しない為に、己の信念を貫き通す為に、俺は力を欲し、手に入れた。

迷う事は無い。

己が魂に付き従えばいいだけだ。

 

 

『このゲームで勝つ』

 

 

コレが今の最優先事項。

油断せずに行けば余裕の筈だ。 

俺が出しゃばり過ぎずに、グレモリー眷属の力を見せられれば、婚約は破棄出来るだろう。

 

 

「なぁ、リアス。やっぱ好きでもねぇ野郎と結婚ってのは嫌だよな」

 

「フフッ、当たり前よ」

 

 

少しだけ、笑う。

無理やり作った笑顔。 

 

 

俺が怪訝そうな顔で見た事で、リアスの表情が曇る。

そして、その重そうに口を開く。

 

 

「……私は『グレモリー』なの」

 

 

その一言で、全てを理解した。

リアスの抱えている何とも言えない感情を。

 

 

「……リアス個人ではなく、グレモリーの者としてしか見られないってことか?」

 

「ええ、誇りには思うけどね……」

 

 

自分自身を見てもらえない。 だが、名門グレモリー家の看板を背負えるという大役。

どうしようもないジレンマ。 気持ちの矛盾。 

どう表していいのか分からないだろう。

 

 

それをこの娘は耐えてきた。 誰にも相談できずに、たった一人で。

この娘は強い。

力とか、王『キング』としての素質などはまだまだである。

だが、強い。 一人のヒトとして。

 

 

それと同時に、脆くもある。

一人で抱え込んで、溜め込んで、もう破裂寸前。

それでも強がって弱みを見せようとはしない。

 

 

それがどうしようもなく、可愛らしく思えた。

護ってやりたいと思えた。

何とかしてやりたいと思ってしまった。

 

 

「おいで、リアス……」

 

「…トキ?」

 

 

俺は優しく抱きしめる。

リアスも最初は驚いていたが、安心したのか、俺に身を任せる。

 

 

「辛かったろう? 苦しかったろう ?悲しかったろう?

 よく頑張った、よく耐えた。女の子が一人で…、さぞ、苦労しただろう?」

 

 

リアスは黙って聞いている。

まだ、まだ我慢しているのだ。

色んな感情を溜め込みすぎて、今にも壊れてしまいそうなその心で、耐えているのだろう……。

 

 

「今だけでいい、その溜まってるモノ…、全部吐き出せ。

 今この時だけは、ただの女の子に戻ってもいいぞ……?」

 

 

優しく言い聞かせる様に。

少しでも、負担が減らせる様に。

 

 

だが、リアス自身はそれを良しとしない。

 

 

「……ダメ。 今ここで吐き出したら…、もう耐えられない…。

 …もう、一人で立てなくなりそうなの…。

 …皆、私の為に頑張ってくれてるのに…、私が、ぐすっ…私がしっかりしなくちゃ……」

 

「一人で無理しなくていい。 そういう時に支えてやる為の仲間だろ?

 俺が支えてやる、受け止めてやる。

 だから此処でスッキリさせとけ、 明日からまた頑張ればいい。

 泣いていい、側にいてやるから……。 

 『泣きたい時に泣ける強さ』ってのも、あるんだ」

 

「……うん…ありがとう」

 

 

リアスは泣いた。

俺の腕の中で。

俺の胸に顔をうずめて。

 

 

俺は何も言わずに、優しく抱きしめたまま、頭を撫でる。

時間が過ぎるのが遅く感じる。

まるで俺達二人だけしかいない様な錯覚に見舞われる。

それほど、今はこの娘が愛おしい。

 

 

そう、感じた。

 

 

 

 






次回もリアスとの話。
お楽しみに。

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