ハイスクールD×D ―史上最強の存在―   作:黒鬼

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前回に引き続き、イッセーくん視点です。


『強さの定義』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

部屋を出た俺達はリビングでテーブルを挟み、向かい合って座る。

 

 

「んで? どんなお悩みをお持ちで?」

 

 

トキは優しく微笑みながら質問してくる。

 

 

だが、俺のような弱者の悩みをトキの様な強者が理解できるのだろうか?

そんな考えを頭で巡らせていると、俺に気を利かせてくれたんだろう、

自身の過去の話をしてくれた。

あれだけ話すのを嫌がっていた過去の話を。

トキの過去話、いくら本人に聞いても言おうとしなかった。

それを今、少しだけ話してくれたのだ。

 

 

だが、俺の予想から遥かに外れた衝撃の事実が語られた。

 

 

「……俺も昔は弱かったなぁ。ただのガキだったんだよ俺も。

 まぁ、とある事情でな? 強くならんと生きていけなかった。

 生きるためには殺す、殺すためには強くなる、そういう所だったよアソコは……。

 力だけが、強さだけが己の存在を肯定する。

 そんな所で育ってきたからこそ、生き抜いてきたからこそ、俺やレンは強いんだ」

 

「トキ…?」

 

 

その蒼い瞳には何処か、寂しさが、虚しさが宿っている様に見えた。

どうやら、俺たちの想像を絶する過去を抱えているようだ。

 

 

『トキも昔は弱かった』

 

 

信じられなかった。

あのトキが弱い? 想像もつかない。

しかし、嘘を言っているようには見えない。

何より、コイツがこのような場面で嘘をつく様な奴ではない事を知っている。

 

 

どうするか迷った結果、俺は思い悩んでいた事を全て話した。

トキはあれだけ自分の過去を語るのを渋っていたのに、少しとは言え俺に話してくれた。

信用か、哀れみか……、俺には判断できないが、それでも少し嬉しかったのだ。

だからこそ、全て話した。

 

 

トキは黙って聞いてくれた、真剣に。

こんなに強い奴が、俺のような雑魚を気にかけてくれている。

それが嬉しかったのか、無意識の内に俺はダラダラと情けない、

半分愚痴の様な悩みをブチまける。

 

 

「俺は弱くて役立たずだ。ゲームに出ても足でまといにしかならないと思う」

 

 

自分の言葉が辛かった。

認めたく無かった。

 

 

だが、トキはカラカラ笑いながら俺の自虐を否定する。

 

 

「レンから聞いたが、お前の成長速度は尋常じゃねぇそうだ。

 確かに木場や小猫のみたいな才はないが、お前には順応力がある。

 いきなりこんな環境になっても適応できる奴はそう居ないぞ?

 お前は良い意味でも悪い意味でも純粋だからな、ドラゴン系の神器とは相性抜群なんだぞ?」

 

「でも、所詮一週間やそこらの修行じゃ、付け焼刃が限界だろ」

 

「そうだな、地力上げは持続的にやらなけりゃあ意味はない。

 でもな、今回はその付け焼刃でも勝てるように修行つけてんだぞ?」

 

 

ホントかよ!? と聞き返すとニッコリとして深く頷くトキ。

でもレンちゃんの足元にも及んでないと話すと、

 

 

「アホか。

 地力も才能も高くて努力を怠らない奴に一週間修行しただけの奴が勝てる訳ぁねぇだろ。

 それにレンは魔王より強い。 お前が一週間でそれを超えたら怖ぇよ」

 

 

……ごもっともだと思います。

レンちゃんが可愛過ぎて、彼女の強さの程を忘れてました。

 

 

「レンとじゃ流石に話にならんが、明日試しに木場とでも模擬戦やってみな?

 お互いビックリする程強くなってる筈だから。

 それに、レンのスパルタ調きょ……、特訓に耐えているお前が一番伸びてるだろうさ」

 

 

今、調教って言いかけたよね? 躾なの、アレ? 躾で広域殲滅級の弱点属性攻撃するか普通?

………刑罰としか思えないんだけど。

 

 

だが、自然とトキの言葉を疑う気にはならなかった。

地獄の鬼ごっこも最初ほどキツいとは思わなくなったし、

トキが仙術で疲労を取り除いてくれた後に、

今まででは感じたことのない程の力が漲っている気がしていた。

 

 

「明日を楽しみにしとけ、イッセー。 自信が付くさ。

 自分が如何に強くなったかを思い知るだろうからな」

 

 

そう言ってトキは笑顔になる。

今までで見せたことの無い種類の笑顔。 なんていうか、幼くて人懐っこい、そんな感じ。

 

 

どんなに強くともコイツはコイツ、トキは自分を見失っていないみたいだ。

 

 

それと同時に俺は何処か安心した。

 

 

大人っぽいというか、妙に達観してるというか……。

普通の人間じゃ見られないような雰囲気だったが、年相応のトキの表情は初めて見た。

 

 

この時、俺は初めて天月 刻という人間の本質の欠片が見えた気がした。

 

 

常識外れに強く、掴み所のない性格。 だが、見た目以上にお節介で世話焼き。 仲間想い。

普段は大人びていて、何処か他人を安心させる雰囲気を纏いながらも、

時折見せる子供っぽさとのギャップ。

 

 

道理でモテる筈だ。 こういう男、女の子からすると堪んないんだろうな。

俺も女だったら惚れてたかもしれない。

同性からも友達や仲間としての人気は高いだろうな。

まぁ、俺みたいなモテない男からすれば、殺意を覚える程のイケメンだが……。

 

 

よし、決めた。

俺はコイツを目標にする。 強さも男としての魅力も。

一種の憧れでもある。 こんな男に、漢になりたい、そういう心境だ。

 

 

「今日はもう寝ろ、明日もビシバシ鍛えてやっからよ(主にレンが)」

 

「おう!」

 

 

待ってろよトキ! すぐに追いついてやるからな!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………やっぱり、すぐは無理…。

 

 

 

 

 

 

 

「おい、イッセー! 雑巾には雑巾の役割があるだろう? そのこと忘れんなよー!」

 

「もっとマシなモンに例えてくれませんかねぇ!?」

 

 

 

前言撤回。

絶対にすぐ追い越してやる……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






次回はリアス?
お楽しみに。

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