ハイスクールD×D ―史上最強の存在―   作:黒鬼

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『弱者の気持ち』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――修行二日目――

 

 

 

 

 

 

午前中は悪魔の事をあまり知らないイッセーやアーシアの為の勉強会だ。

 

 

「僕らの仇敵。 神が率いる天使。 その天使の最高位の名は? さらにそのメンバーは?」

 

「えっと、『熾天使』だろ。 メンバーは……ミカエル、ラファエル、ガブリエル……、

 うーん、ウリエルか」

 

「正解」

 

 

木場が問題を出し、イッセーが答える。

イッセーはこの前まで完全に一般人だったから、一から覚えなくてはならない。

そう思えば新人悪魔は結構大変なんだなぁと再認識してみたり。

まぁ、完全に他人事である。

 

 

そういえばガブリエルは綺麗な女天使だった。

スタイルも良く、おっとり系とでもいうのか、天界一の美女と言われている。

見とれてたら、レンや黒歌に頬つねられたのは記憶に新しい。

 

 

「次に僕らの王、『魔王(サタン)』様。 四大魔王様を答えてもらおうかな」

 

「おう! 任せておけ! いずれ、出世してお会いする予定だ! バッチリ覚えてるぜ!

 ルシファー様、ベルゼブブ様、アスモデウス様! 

 そして憧れの女性魔王様であらせられるレヴィアタン様!」

 

「正解」

 

「絶対にレヴィアタン様に会ってみせるぜ!」

 

 

イッセーくん、レヴィアタンを綺麗なお姉様系だと思ってんだろうね。

でも、残念。

セラフォルー・レヴィアタンは美少女系だ。

しかも妹のソーナの事が大好き過ぎるシスコンでもある。

その上な~んか変な特撮映画とか撮ってたなぁ。

『なんとかかんとかレヴィアたん』とかいう魔法少女ならぬ魔王少女みたいなの。

……俺も前に出演させられそうになったなぁ………。

即刻逃げたけど。

 

 

そんなこと考えている内に、アーシアの悪魔祓いについての講義が始まっていた。

悪魔祓いといやぁ、あの二人は元気にしてんのかね?

聖剣使いのあの二人。 信仰心が半端じゃなかった。

もうあそこまで行くと病的だ。何かの悪い宗教みたいだった。

………あ、宗教か。

イギリスに遊びに行ってたらいきなり吸血鬼に襲われて、

ソイツを追ってた聖剣使いの二人と知り合ったんだった気がする。

少し力添えしてやり、何とか事件解決した後、ちょいと色々あって……。

片方は俺に「子作りしよう!」とかワケの分からん事を叫びやがるわ、

もう片方はやたら抱きついて来るしで大変だった。

 

 

しかし、今日はよく昔の事を思い出す日である。

何かのフラグに思えてならない。

 

 

 

 

 

 

 

講義が終わった後は、午後の修行へと移った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一誠SIDE

 

 

 

 

 

 

 

修行開始から一週間が過ぎた夜。

 

 

俺は寝付けないでいた。

この一週間、朝から晩まで修行修行の毎日。

それで俺はいかに自分が矮小な存在かを突きつけられた。

 

 

『俺は、弱い』

 

 

その事実が俺の胸を締め付ける。

 

 

隣のベッドで寝ている木場へと視線を移す。

……コイツは強い。

一緒に修行すればするだけ差を大きく感じてしまった。

 

 

木場と違い、俺には才能も積み重ねて来た努力も無い。

 

 

木場の様な剣の才も無ければ、小猫ちゃんの様な徒手空拳の才も無い。

朱乃さんやアーシアの様に魔力の才も、部長の消滅魔法みたいな強力な自分だけのモノも無い。

『赤龍帝の籠手』は凄い代物だが、ライザーの野郎にも言われた通り、正直宝の持ち腐れだ。

 

 

地力の弱い俺が扱っても、たかが知れてる。

 

 

トキやレンちゃんなんて、人間なのにあれ程強い。

『赤龍帝の籠手』で限界まで倍化したとしても、足元どころか話にすらならない。

俺は――――。

 

 

俺は自己嫌悪に耐えられなくなり、ベッドから飛び起きる。

すると、

 

 

「…イッセー、眠れないのか?」

 

 

俺のもう片方の隣のベッドから、トキの声。

悪魔は灯りがなくとも夜目が利く。

だから、トキの顔もハッキリ見える。

 

 

全てを見透かしているとも思える、その二つの澄んだ蒼い瞳が俺を捉えている。

 

 

コイツのような強い奴からすれば、俺みたいな奴の事をどう思えるんだろう?

才能もないのに頑張っちゃってる馬鹿?

自分の弱さを諦めれない餓鬼?

それとも、見る価値も無い雑魚?

 

 

……俺の考えなど筒抜けだと言わんばかりに苦笑を浮かべるトキ。

でも、俺は…、いや、俺達は知っている。

なんだかんだ言っても、コイツは優しいという事を。

 

 

毎日修行から部屋に戻った俺と木場の疲労を仙術で癒してくれた。

修行中についた怪我なども、アーシアと共に治してくれたりもした。

自分も俺たちの修行に付き合ってくれてるのに。

 

 

よくよく観察してみると、トキはかなり皆の事を気にかけている。

 

 

俺達は、トキやレンちゃんの事は何も知らないに等しい。

あれだけ強いんだ、何かしらの問題や事情を抱えているのは確実だろう。

 

 

でも、悪い奴では無い。 それだけは分かる。

じゃなきゃ、このゲームに出ないし、俺らを鍛えてくれたりしないはずだ。

レンちゃんも俺がついていけるギリギリの限界を見極めながら修行をつけてくれていると思う。

……その分スパルタだが…。

 

 

……あれ? 

トキがゲームに出る理由ってレンちゃんに焼き鳥が色目使ったから?

 

 

……………何故か感謝の念が薄れてきたな。

 

 

俺は一人で百面相をしていたらしく、トキが何か可哀想なモノを見る様な眼で見てくる。

……そんなに俺の頭部を見て何考えてんの?

別に頭おかしくないからね!? 

 

 

今シリアスな場面だからさ、そんな風に茶化すのはあんまり……、何で泣いてんのさ!?

手遅れとかじゃないから! そんな痛い奴じゃないから!

正常だから! 俺は!

 

 

「グスッ……、イッセー、…ズズッ…外でちょいと話でもしないか?」

 

「……オウ」

 

 

何故か俺はさっきとは別の理由で落ち込みながら、トキと共に音を立てずに部屋を出た。

 

 

 

 

 

 





次回はイッセーくんの心情を吐露します。
お楽しみに。

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