一日目の修行終了。
「うおおおお! 美味ぇぇぇ! マジで美味い!」
うるっさいな、黙って食え。
一日の修行を終え、俺達は夕食を食っている。
レンやリアスが食材を取って来て、朱乃と黒歌とアーシアがそれらを調理したそうだ。
レンはもちろん、リアスも料理はできるらしい。
というより、ウチの食卓はレンの料理が主だ。 もちろんかなりの腕前である。
俺は調理場にすら立たせてもらえない。
「朱乃さん、最高っス! 嫁に欲しいぐらいです!」
「うふふ、ありがとうございます。 ……トキ君はどうですか?」
そこで俺に振りますか、朱乃。
「ああ、美味いよ? さすが朱乃だ」
本心からそう言ってやる。
するとニッコリ微笑まれたので微笑み返す。
やっぱり家庭的な女性というのは魅力的だと思う。
「ねぇ、トキ? コレ私が作ったんだけど?」
今度は黒歌か。
ここは朱乃と同じく、褒めておけばいいだろう。
黒歌も家では料理を振舞ってくれることもあり、その腕前は十分知っている。
とりあえず俺は差し出された料理を食べて、黒歌を褒めてやる。
「うん、これも美味い。 イイ子だ黒歌」
頭を撫でてやると、嬉しそうな顔をする。
なので猫耳の根元を優しく掻いて、喉を撫でてやる。ドンドンと顔が蕩けていくのが可愛らしい。
黒歌の
イッセーもアーシアとイチャイチャしている。
爆発しろこの野郎。(←お前もな)
「さて、イッセー。今日一日修行してみてどうだったかしら?」
「…俺が弱い事が良く分かりました」
「そうね。それは確実ね」
「…それとレンちゃんマジ怖い………」
カタカタと体を震わせて何かに怯えるイッセー。
顔も青白くなっている。
どんな内容だったのだろうか?
イッセーに関しては全てレンに一任しているから俺もどんな修行だったかは知らない。
「……レン、一体どんな修行をしたのかしら?」
「『赤龍帝の籠手』を駆使しての鬼ごっこです」
「鬼ごっこ?」
ああ、アレか。 確かにあれなら効率がイイわな。
闘いの『た』の字も知らないイッセーには荒療治が一番だし。
「鬼は私と式神50体で、もちろんお互い攻撃有り。
『赤龍帝の籠手』の使い過ぎで倒れたら、十分休憩した後に再開。
私に一撃入れるまで終わらない形式です」
「だからあんな地響きと轟音が凄かったのね…」
その光景がフラッシュバックしたようで、さらに震えが加速するイッセー。
「レンちゃんえげつないよ! ガチだもんよ! 俺悪魔なのに光で攻撃してくるんだよ!?
俺消滅しちゃうよ! ほんのちょっと掠っただけで凄まじい痛みが来たよ!?」
「アホか、レンがガチだったらここから見える景色が全部更地になってるぞ」
「うぇッ!?」
「まぁ、そういうこった」
イッセーは驚いてレンを見る。すると…、
「ダメ……でした?」
涙目&上目遣い、震える声でイッセーを見る。 死ぬ程可愛い喰べちゃいたい。
「全然大丈夫だよレンちゃん!!!」
そうイッセーが答えると、途端にレンはニッコリして、
「じゃあ明日はもっとビシバシいきますね!」
「ハメられたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
大絶叫するイッセーと大笑いするその他。
自業自得だろう。
まぁ、レンに任せとけば少しはまともな戦闘が出来るようになるはずだ。
「そういえば、部長たちはどんな修行をしてたんですか?」
イッセーはレンとマンツーマンでやってたから、他人のが気になるのだろうか?
だがイッセー、お前に他人を気にする余裕なんざないんですけど。
隠すことでも無いので教えることに。
「リアスと朱乃は魔力の扱い方を一から学び直してもらった。
この二人の魔力攻撃は威力は高いが、それだけだ。
だから、魔力のコントロール、形状変化といった応用性を高めさせた。
木場は俺とルール無用何でも有りの模擬戦をして、
実戦経験及び圧倒的な格上との戦闘経験を積ませた。
アーシアは回復力と回復速度の向上と逃げ足を鍛えた」
あれらの修行をこなせば、俺がいなくとも焼き鳥眷属とイイ勝負にはなるだろう。
しかし驚いたのは木場だ。
経験を活かして直ぐに新しい技術を吸収し、攻め方を変えながら闘う。
自分の今出来ることを思考し、戦闘中に進化していくタイプだ。
剣の才能もなかなかだし、俺と闘り合う前から結構鍛えてある。
でも、誰かに似てんだよなぁ……、コイツの闘い方。
コイツの師匠か? 誰だろう?
リアスと朱乃は、
「あんなに魔力が奥深いモノだとは思わなかったわ」「ええ、本当に」とか言っている。
木場は遠い目をしながら深く溜息をつきながら、
「僕、少しは自分の力に自信持ってたんだけどな……。
それをことごとく砕かれて、今日だけで何度死ぬかと思った事か……。
だってトキ君、余裕で僕の師匠より強いんだもん…」
いやぁ、俺も流石にやりすぎた感が否めない。
木場の神器は『魔剣創造』だ。
その上、木場の神器の使い方は作り出した魔剣一本一本に力を入れるわけでは無く、
同時に剣ををいくつも作り出し、どんな状況にも対応できる柔軟性を重視したモノだ。
なので作り出した魔剣にはそこまでの硬度も切れ味の無い。
だからこそ、木場の強みはどんな戦況にあっても冷静に対応し、
突破口を着実に見つけ出していく闘い方にある。
色々鍛えていったら面白そうだったんで、ちょいとスパルタになってしまった。
「お前はなかなかのバトルセンスが有るみたいだし。
『死の恐怖』を何度か経験してもらう事によって、
戦闘的な『勘』を身につけてもらおうと思ってな」
「勘?」
「俺らのようにソイツを極めりゃあ、例え寝てても攻撃を避けれるし、
死角からの攻撃にも対応できる。
その上敵が次に何を仕掛けてくるかすら、何となく分かる」
それを聞いたイッセーは「スゲェ…」と驚く。
お前もレンが光とかで攻撃してんだから、
悪魔の本能的に『死の恐怖』を味わいまくってると思うんだが…。
「じゃあ、小猫ちゃんと黒歌さんは?」
皆が猫又姉妹に視線を向ける。
「……姉さまに仙術の使い方を徹底的に教えてもらいました」
「どの段階ぐらいまで進んだ?」
俺は黒歌に修行の進み具合を尋ねる。
「そうね、もう瞬時に相手の氣と魔力を乱して、自分の氣を打ち込めるわ。さすが私の妹にゃん!」
黒歌は言い終わると同時に白音に抱きつく。
白音も褒められて嬉しそうだ。猫耳と尻尾が思わず出てしまっている。
イッセーは美女&美少女猫又姉妹の抱擁を、何か「ハァ、ハァ…」と血走った眼でガン見している。
かなり気色悪い。
それに嫉妬したアーシアがイッセーの頬をつねる。
う~ん、愛だねぇ、青春だねぇ。 爆発しろ。
「さて、食事を終えたらお風呂に入りましょうか。ここは温泉だから、素敵なのよ」
「――ッ!」
何故か温泉に反応を示す馬鹿一人。今日修行で疲れてたんじゃねぇのかよ!
どんだけ性欲強いんだよ。いつか逮捕されるか、チキンレース開始の予感。
「僕は覗かないよ、イッセー君」
「バッカ! お、お前な!」
「お前、分かりやす過ぎ。 超挙動不審じゃねぇか」
みんなの視線がイッセーに集中する。
レンなんかはかなり呆れた目で見ているではないか。
そしてリアスがクスッと小さく笑い、
「なら、一緒に入る? あ、そうだ。 トキもどう? 私は構わないわ」
「何故そこで俺に飛び火する…」
「朱乃はどう?」
「私も構いませんわ。 うふふ。 殿方のお背中を流してみたいかもしれません」
そう言って朱乃は満面の笑みで俺を見つめる。
対象は俺ですか、そうですか。
「アーシアは? 愛しのイッセーや優しいトキとなら大丈夫よね?」
アーシアはイッセーをみて顔を真っ赤にしてうつむいた。
だが小さくコクリと頷いた。
イッセーLOVEなんですか、そうですか。
イッセーなんて爆発すればいいのに…。
「黒歌は?」
「私も大丈夫よ。 トキの背中流してあげるにゃん?」
イッセー、そんなに睨んでくれるな。
思わず殴りたくなっちゃうじゃないか、顔が陥没するほど情熱的に。
「小猫とレンは?」
「「嫌です」」
その言葉、まさに一刀両断。
清々しいまでに切り捨てられた。
「……でも、トキさんだけなら…」
あの、白音? 俺だけならイイの?
「私も兄さん『だけ』なら大歓迎です。 イッセーさんはいりません」
…うん、この娘は予想できた。相変わらずのお兄ちゃんっ娘です。
だが、そこがイイ!!!
イッセーは持ち上げられてからの突き落とされるという.
多大な精神的ダメージにより床に突っ伏す。
「残念ね、イッセー。 ほら、行くわよ? トキ」
ん?
「行くって、何処に?」
「決まってるじゃない、お風呂よ」
「さっきの冗談じゃねぇのかよ!?」
「あら、少なくとも私は本気だったわ」
クスクスとまるで悪戯が成功したかのようにリアスが笑う。
コノヤロウ……。
――ずーるずーる――
そして風呂場に引こずられていく俺。
イッセーは血の涙を流して俺を睨む。
それを見かねてか、イッセーに何かを言う木場。それに激昂して叫ぶイッセー。
はい、カオス。
文章の稚拙さに涙。
次回は温泉の話?
お楽しみに。