【更新停止】紅次元ゲイムネプテューヌ 深紅の呪血 作:APOCRYPHA
太陽を分厚い雲に覆い隠された日の昼間、ネプギアと一緒にこれからおやつのプリンを食べようとした所だった。
『ネプテューヌ!! そちらにハクは来ていないかしら!?』
突然のベールからの通信は、そんな言葉から始まった。
「……ハクちゃんが行方不明?」
『そうですわ!』
どうにか興奮するベールを宥めて詳しく話を聞くと、どうやら昨日の早朝からモンスター退治に出掛けたハクちゃんが帰って来ないらしい。
それだけなら、偶々泊まり掛けでモンスター退治に出てるだけなんじゃって思うんだけど……
『いいえ! ハクはわたくしに黙ってお外でお泊まりしちゃうような娘じゃありません!!』
「お、おおう……」
……とまあ、こんな感じでベールがすごい怒るから、とりあえず行方不明って事にしてみた訳なのでした。
『とりあえず、あなたも仕事か遊びで外を回るようならハクを探してくださいまし!』
あー……本題はそっちか~…………
「えー……わたし今日、書類関係の仕事をする日なんだけど……」
けど残念、ネプ子さんは今日は書類仕事の日なのでした。
『えっ』
「えっ」
……と思っていたんだけど、映像越しのベールからあり得ない事を聞いたような顔をされた件(泣きそうです)
『えっと……ネプテューヌ? あなた、本当に大丈夫なのかしら?』
「むー、心外だな~……わたしだってあれから結構がんばってるんだよー!」
「お姉ちゃーん! プリン持ってきたよー!」
あ、ネプギアがプリンを持って来た!
「やっほーい! プリンだ~!!」
『ちょ、ネプテューヌ!? まだ話は終わって――――!!』
ベールがまだなにか言ってるみたいだけど、わたしは目の前に差し出されたプリンに釘付けなのでした(はーと)
犯罪神が倒れてから、3年の月日が過ぎました。
お姉ちゃんに頼まれたおやつのプリンを取って来た私は、自分の分を食べながらプリンに夢中のお姉ちゃんの代わりにベールさんのお話を聞くのでした。
『―――と、言う訳ですの』
「そう、なんですか……」
なんでも、ハクさんが昨日から帰って来ないから探すのを手伝って欲しいって話で、他の国も仕事のついでとして探して貰えるよう話が付いているみたいです。
(ハクさんが行方不明?)
ハクさん、同じ女神候補生なのに私とユニちゃん、ロムちゃんラムちゃんが協力して戦っても勝てないあの人――アナザーさんをたった一人で何度も叩き潰した、恐らく女神候補生としての枠内なら最強の女神候補生
あの人が行方不明になる状況は想像が付かないけど、きっとそれが出来るとしたら…………
『お願いできるかしら?』
「…………あ、はい! 外回りの仕事のついでとしてなら、大丈夫だと思います」
何時の間にか血が出るぐらい握り込んでいた右の拳を開いて、ベールさんの質問に答えました。
(ううん、そんな筈はないよ……だってアナザーさんは、犯罪神との戦いで命を落としたんだから――)
ハクさんを行方不明――最低でも殺せるだけの力を持っている人は、私の知る限りではもう
ええ、きっと何処かで迷子になってしまっているか、でなければ困っている誰かの為に奔走してるのでしょう。多分
(……だって、アナザーさんはもう死んだのですから)
……でないと、私……
『……ネプギアちゃん?』
「え?」
『どうしましたの?』
あれ…? 私、何を……?
『疲れているのでしたら、無理にハクを探さなくても良いですからゆっくり身体を休ませてくださいまし』
「いえ、大丈夫です……とりあえずいーすんさんには話を通しておくので、私とお姉ちゃんの二人でモンスター退治をしながら探す事になると思いますがそれで大丈夫ですか?」
『え、ええ……お願いしてもよろしいかしら?』
何故か不安そうなベールさんに『大丈夫、問題ありません』と返して、通信を切ります。
そのまま残っていたプリンを食べきると、余韻に浸ってるお姉ちゃんに声を掛けて一緒にいーすんさんの所にまで足を運ぶのでした。
(……ハクさん、あんまり心配は要らないと思うけど、何処に行ったんだろう?)
どうして、こんな事になったんだろう……
『起きなさい……もう必要な力はあるでしょう?』
プラネテューヌの市街地で大小問わず何人ものアイドルのマネージャーを勤めている大物マネージャー……の、身の回りの世話やアイドルへの伝令、その他諸々の雑用のアルバイトをしていた私は、気が付いたら何処かの森の奥で目の前のアイドルでもやっていけそうな紫掛かった銀髪の女の子に拘束され、良く分からないけどすごく嫌な感じのする黒い……それも、品がある感じの黒じゃなくって泥とか汚物とかがぐちゃぐちゃになった感じの黒い光を浴びせられていました。
「ァあ、アアあ――!!」
何故、私はこんな目に遭っているのでしょう?
分かりません……銀髪の女の子はまるでゴミを見るような目を向けてくるだけで質問には何も答えてくれませんでしたし、雇い主のマネージャーやその事務所とアイドルはともかくとして、私自身はこんな事をされなきゃいけないような怨みは買ってない……と思います。
お金だって忙しいのに連絡ミスや買い物の間違いとか、色々な失敗も多くて最低賃金よりも少ない金額しか貰えてないから余裕がないですし…………?!?!
「アぁァあアァァあアアぁぁぁ――!?!?」
痛い痛い痛い痛い、恐い恐い恐い恐い、痛い恐い痛い恐い痛い恐い痛い恐い―――!!??
『全く、どうして私がこんな事までしなければならないのか……』
【アハハハハハ!!】
女の子の言葉が全く耳に入らなくなるほどの激痛と恐怖が際限なく湧き上がり、周囲が暗くなると同時に内側から私のものと思われる、なのに私と違って慢心とも思える程の絶対の自信に満ちた笑い声が響き始めました。
【これがアタシぃ? まァた随分とくっだらない、ゴミみたいな人生送ってんのねェ!】
内側から響く声はそう言って私の人生を全否定して嘲笑いました。
どうしてか、私の意識を苛み続けていた痛みと恐怖は治まりましたが、これまでのダメージからか一言も喋れそうにありません。
「…………」
【けェどぉ! これからはこのアタシがアンタみたいな何の価値もない屑を価値のあるモノにしてあげるから、泣いて喜んで従いなさい?】
図らずとも黙りを決め込んだ私に対して一方的に酷い事を言うその声は、こう言いました。
【あんたの身体は私のもの、さあ、全てを明け渡して、さっさと眠ってろッてーのォ!!】
そんな言葉と同時に、後頭部をゴン! と殴られたような衝撃が走って、私の意識はそのまま泥のような場所に沈んでいったのでした。
【アハハ、あははははは……アーッハハハハハハハハハハ!!!!】
そんな私が最後に見て聞いたのは、そんな悪意と傲慢さに塗れた醜い笑い声と、そんな笑い声を上げて醜く顔を歪めた……私と良く似た顔の露出が激しい女の人なのでした。
……なお、次はアトリエものを書く予定です。(多分)