【更新停止】紅次元ゲイムネプテューヌ 深紅の呪血   作:APOCRYPHA

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Re;Birth3編 第一章~呪怨のオーベルテューレ~
第一話


 これは、早朝の事です。

 

「たああああああ!!」

 

『Gyuaaaaaaaaa!!』

 

 目の前の翼が生えている私の倍以上の大きさをした茶色い二足歩行のトカゲ……エンシェントドラゴンを以前、犯罪組織との戦いで熔けてしまった大剣よりも更に耐熱性を上げた大剣で一刀両断して、その骸に光を浴びせて浄化します。

 

「はあ、はあ―――っ』」

 

 犯罪神マジェコンヌが滅びて早3年、一時期は噴火で酷い事になった大地は最近やっと自然を取り戻しました。

 火山灰で覆われていた空は晴れ渡り、(教祖のチカさんに聞いた限りだと)リーンボックスは失った自然の4割を取り戻しました。

 

 私はと言えば、相変わらず民を脅かすモンスターを討伐する日々を送っています。

 ……ええ、送ってはいるんですが―――

 

「はあ、はあ……足りない……もっと、もっと闘いを―――」

 

 ―――犯罪組織マジェコンヌとの戦い以来、私はどうにも壊れてしまったようです。

 少し戦うだけで、それも危険種とはいえ、下位の半ば程度のエンシェントドラゴンを一匹倒すだけで身体は火照り、息は切れ、心臓は激しく脈打っています。

 なのに目は周囲にモンスター(獲物)は居ないかと忙しなく動き、スライヌにすら反応してしまいますし、身悶えが止まりません。

 なら戦わなければ良いのでは? とチカさんや姉さんには言われましたが、戦わないでいると今度は姉さんにその矛先が向きそうです。

 

 ……いいえ、姉さん(女神)ならまだいいです。

 最悪姉さんに矛先が向いても、姉さんなら私と戦っても軽くあしらってくれる筈ですし

 問題は、無力な民(英雄以下)にそれが向いた時です。

 

「…はあ、はあ…っ、いけない……」

 

 思わず股間に伸びた大剣を持った左手の手首を右手で掴みます。

 ああ、早く、早く強いモンスターと闘わないと……っ、治まりが、効かなく……

 

「あ、ああ……」

 

 ……また、やってしまいました

 あまりの昂りで尿道が弛んだのか、チョロチョロと尿を漏らして下着とスカートを濡らしてしまいました。

 浄化の光で直ぐに蒸発して乾くのですが、なんと言うか……この年にもなってお漏らしと言うのは、色々と恥ずかしい限りです。

 

 まあ不幸中の幸いと言うか、それで多少は落ち着いたのですが、所詮は多少

 多少の快感と共に、それ以上の欲求不満が蓄積されているのを感じています。

 危険種さえ一撃で滅してしまう私とまともに殺り合える相手は中々居ません。

 姉さん達女神か、ネプギアさん達女神候補生か、でなければ―――

 

「っ、彼は救済の対象です。彼は教育の対象です。彼は守護すべき対象です。彼は―――」

 

 ダメです、アナザーさんはそもそもそう言う対象ではありません。

 例えどれだけ強くても、彼は救済の対象であり、教育の対象であり、守護すべき対象です。

 …ああ、でも―――

 

「――ああ、でも……今思えばあの日々は、とても素晴らしい日々でしたね……」

 

 頬が吊り上がり、凶悪な笑みを浮かべているのを感じます。

 本当に、本当なら人間であるアナザーさんはどれだけ強くても対等の存在ではありません。

 人間(彼等)女神(私達)が守護すべき対象で、何処までいっても慈愛以上の感情は向かない……ええ、向いていません。向いていませんとも

 

「……ええ、本当に……私は心底自重すべきです」

 

 デモ、ドウシテモアナザーサントタタカイタイトカンガエテイルワタシガソンザイシテイルノモ、タシカナノデシタ

 

『……随分とまあ、壊れているようですね』

 

「っ!? 誰ですか!!」

 

 咄嗟に何処かで聞いたような声がした方へ顔を向けると、そこには紫銀色の髪をした女の子の姿がありました。

 

『私が誰か、なんてどうでも良いですよね?』

 

「……いいえ、どうでも良くなんてありません」

 

 女の子は、若いのにまるで生きるのが嫌になったお爺さんみたいな顔で私に話し掛けてきます。

 自殺志願者か、でなければ引退して隠居した高位な魔法使いの方かと辺りを付け、私は女の子に声を掛けます。

 

「どうされましたか? ここは最寄りの村から3Kmは離れた危険地帯ですよ?」

 

『ええ、あなたに用があります。グリーンシスター』

 

 どうやら女の子は私に用があったらしいのですが、ものすごく嫌そうな顔をされているのはどうしてなのでしょう?

 どうにも、本当なら顔も見たくないのに業務上仕方がないからと嫌々声を掛けたように見えるのですが……私、初対面の方にそんな顔をされるような事はしていないと思うのですが……

 

「どのようなご用でしょう? 相談ですか? 懺悔ですか? 依頼ですか?」

 

 ……まあ、嫌々だろうとなんだろうと、用があると言うのならば私はそれを聞き、最善の答えと結果を出せるよう尽くすのみです。

 ……ええ、例えここが懺悔室でなくとも、依頼されたら後ろ暗い内容だと喧伝するようでも、誰にも聞かれたくない悩み位ならば聞き届け、その上でどうするかを決めれば良いのです。

 

『ああ、単純な話です』

 

 そう言った女の子が唐突に指を『パチン』と鳴らすと、私の視界はぐにゃり、と歪み始めるのでした。

 

「あう……な、なにが――」

 

『……今から少し、この次元から退去していて欲しいだけです』

 

 ……そんな女の子の言葉を最後に、私は意識を失うのでした。




……尚、仮にハクの闘争欲の矛先がベールに向いたら冗談抜きにベールが蒸発するもよう

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