【更新停止】紅次元ゲイムネプテューヌ 深紅の呪血   作:APOCRYPHA

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※読み難い上に書き難い為、地の文は片仮名ではなく平仮名で書いています。


第八十三話

『…………ム、マサカ、本当ニコノ程度ダッタノカ?』

 

 目の前の首だけになった生け贄を見据えて、我は思わずそう呟いた。

 目の前の生首からは先程まで感じられた膨大な力は感じられず、魂こそ残っているがこの状態から再生して復活する様子はない。

 

「…………」

 

 念の為、消し飛ばさないように最小限まで力を絞って槍の穂先で突くが、生首が復活する事はなかった。

 

『フン……』

 

 まあ、良い。

 これで幕切れだと言うのなら、我にとってそれはそれで別段構わない。

 もう少しこの身体の力を思う存分振るいたいとは思わなくもないが、ウォーミングアップ程度にはなった。 

 

『……マア、良イ……ナラバ、我ハ■■トノ契約ヲ果タストシヨウ』

 

 原初の我だった頃からの付き合いである神器の槍を地面に突き刺し、我は祈りを捧げる。

 本音を言うならば祈りを捧げる等したくないが、あのアバz―――御母様はこうしなければ反応しないし碌な事をしない。

 にも拘らず心の中で思った暴言には必ず反応する辺り、何処かで出待ちしているのは明白だ。

 心底腹立たしいが、目的の為には仕方がない事なのだろう。

 

【クスクス……】

 

 そんな上品な笑い声を上げながら浮かび上がる黒い塊を見据え、我は余計な思考(罵倒)感情(殺意)を切って頭を垂れた。

 

『……コレデ、良イノダッタカ?』

 

【ええ、ご苦労様、とでも言った所かしら?】

 

 そう、我の問いに答えて、目の前の黒い塊―――御母様は、先程仕留めた男の生首に対してまるで情欲に狂った淫魔の如く矢鱈と卑猥な手付きで撫で回した。

 

【ッッッッッッ――――!!!!】

 

 ただそれだけの事であるにも関わらず御母様はまるで数日程手足の自由を奪われ、薬や改造で感度を高められて焦らすだけ焦らされ続ける生活を強要された女のように悶えている。黒い塊だから表情は分からないが、顔も淫欲に塗れて相当酷い見せられないよな有り様だろうか? 容易に想像できてしまったそれは控え目に言って気持ちわrッ?!

 

【……あら、勘は良いのね? それ以上考えてたら壊してたわ】

 

『……申シ訳アリマセン』

 

 全身を穴だらけにするスレスレで止まった全方位を囲む黒いトゲは我の身体を貫く寸前で留まっているものの、考えを止めていなかったら確実に貫かれて魂まで消滅させられていただろうあり得た未来(IF)に我は冷や汗を掻きながら、泥のような威圧感を放つ御母様に謝った。

 

【クスクス……そこで御母様と続けない貴女は嫌いじゃないわ……】

 

 そんな思ってもない事を言って黒いトゲを消すと、御母様は生首をアレな手付きで撫で回す作業を再開した。

 

『…………』

 

 ああ、御母様は恐ろしい。

 先程まで御母様と同じ黒い力を器に纏っていた生首等比較対象にもならない程に恐ろしい。

 あの生首が幾ら御母様と同じ力を纏おうと、その大部分が与えられた力に耐えきれずに自壊し、崩壊と修復を繰り返していた。

 挙げ句、まともに扱った経験もないのかその大部分が無駄になり、実際に強化に回せていたのはほんの数%程だったろうか?

 

(ソレデモ我ヲ滅ボシ得ル力ヲ発揮シタ辺リニ御母様ノホストニ際限ナク貢グ金持チノ如キ入レ込ミヨウガ窺イ知レルガ……イヤ、コレ以上ハ止メテオクトシヨウ)

 

 こちらに飛んでくる視線を感じて考えを打ち切ると、何処となく満足気な雰囲気を纏った御母様は喘ぎ声を挙げながら左手と思われる黒い棒を股間と思われる場所に伸ばして―――

 

『……アノ、ソレ以降ハ我ノ居ナイ所デヤッテクダサイ』

 

【……あら、まだ居たの?】

 

 最初から居ただろう! と怒鳴りたくなるのを確実に殺されるからと必死に堪えながら、我は淫行に耽ろうとしていた御母様を制止して後にしてくださいと懇願する。

 何が哀しくて同僚の中でも一番年上の我より年上な御母様が高々数百歳程度の遥か年下相手に本気で発情して淫行に耽る姿など見せられなければならないのか……まあ、そこは良い。

 

『……我ハ契約ヲ果タシマシタ。御母様モ自分デ結ンダ契約ハ果タスベキデハ?』

 

【………………ああ、そう言えばそうだったわね】

 

 ここに御母様を喚び出した本来の目的を告げると、忘れていたと言わんばかりのどうでも良さそうな反応が返ってきた。泣きたい。

 

【……じゃあ、さっさと終わらせましょうか】

 

 そう言って御母様は、投げ遣りに右手と思われる黒い棒を生首から離し、我の方へ向け――――?!?!?!?!

 

『ア、アァア――アアアアアアアアアアアアアアアアア?!?!』

 

【アハハハハハ♪ ほーら、美味しいご飯ですよー? アハ、アハハ、アハハハハハハハハ―――!!】

 

 今の我からみても膨大な力が流れ込んで来るのを感じる。

 その力は我の端末としての許容量を大幅に超え、内部からギョウカイ墓場と言う、ある意味で御母様の一部である異界で形成した器を破壊し、我の力と共に注がれる力が流れ出す。

 

『アア、ァ……オヤ、メ……クダサ……器ガ、崩レ――アアアアアアアアアアアアアアアアア?!?!?!』

 

【やーね、遠慮しなくて良いのよ? この程度でこのゲイムギョウ界を壊せやしないのだし?】

 

 なんとか痛みを堪えて御母様に懇願するが、御母様は訳の分からない事を言って流し込む力を増やし続ける。

 今は特別頑丈な器である事と、器の素材が御母様由来である事から辛うじて崩壊は免れているのだが、それも長くは保たないだろう。

 

『ア、グ……ガ、ア、ア、ア…………!?』

 

 そんな崩壊間近の器に無理矢理流し込まれる膨大な力に適応する為か、器が強引な肥大化を始めるが―――

 

【もう、醜いからそう言うのはダメって言ってるでしょう?】

 

 そんな御母様の一言と共に膨れ上がろうとしていた筋肉は削り取られ、竜の首から下に変化しかけていた下半身は元の人型のそれへと押し戻される。

 背中から生えそうだった二対の腕は弾け飛び、腹部で縦に開いた大口は熔接されたかのように閉じられた。

 

『ア、アァ―――――――ッッッッッ?!?!?!』

 

 余りの絶望と逃げ場から強引に戻されて行き場をなくした力による痛みで声にならない声が出る。

 無理矢理圧縮しても圧縮しきれない力で肥大化させていた部位を削り取られ、元の状態に戻された結果、力の圧縮も儘ならなくなり放出され、器には大きな亀裂が走り出す。

 

『ナ、ゼ……?』

 

 その一言を絞り出すだけで、モンスターの証である蒼い血が我の全身から噴水のように噴き出し、器の崩壊が加速する。

 大量の亀裂が走り物理的に崩壊しかけている器を強引に動かして、未だに力を送り込んでくる御母様へとその真意を問い質すが……

 

【……何故? 貴女如きにゲイムギョウ界は壊せないからに決まっているでしょう?】

 

『ソ、N、ナ……WA…ケガ……』

 

 そう、そんな筈がない。

 今のゲイムギョウ界に於ける最高レベルは現存する女神の400代を除けば真祖吸血鬼(トゥルーヴァンパイア)、それも真祖の中で永く生きた上位の個体(Lv6000)が2、3体だ。

 その真祖は来る日の為に眷族の古代吸血鬼(エルダーヴァンパイア)に守を任せて眠りに就いている上に、吸血鬼自体が個体差は有れど御母様の側である。

 人間の力などたかが知れている事も考慮すれば、女神を正面から殲滅しきれるだけの力を持てばゲイムギョウ界を滅ぼせる。

 にも関わらず、我ではゲイムギョウ界を滅ぼせないと宣った御母様に『そんな筈はない』と返すと――――

 

【……はあ? ()()()()()()()()()()なら、最低でもLv1000000はなければダメに決まってるでしょう?】

 

 ―――そんな、恐ろしい話を聞かされた。

 

『……………………ハ?』

 

 ひゃく、まん……?

 なんだそれは……レベル100万……?

 

『ク、狂ッテル……』

 

 それは我が我になる前、女神だった当時のLv10000を裕に超え、神話や伝承の域に達するものだった。

 その神話や伝承でさえ、創世記最期の女神はLv100000が四柱、その先代でLv800000である。

 

 創世記処か数万年前よりも弱いモンスターしか残っていない現代では、例えゲイムギョウ界に生きる生物を種族問わずに根刮滅ぼしたとしてもそのレベルに届きはしないだろう。

 

【……あらぁ? 言わなかったかしらぁ?】

 

『……ァ、――!!』

 

 愉しそうな雰囲気の御母様に聞いてない! と叫ぼうとしたが、空気の掠れた音が鳴るばかりで我の口から言葉が出る事はなかった。

 口から出る事はなかったが……やはり、思った事は読んでいるのだろう。愉しそうな雰囲気が更に深まるのを感じる。

 あの様子を見るにこの状況は態となのだろう。自然と、これまで無理矢理抑え込まれてきた殺意や憎悪が湯水のように湧き出してくる。

 

(アア、モウ……良イカ……)

 

 最早、我慢などしなくて良いのだと

 不満を口に出そうとしただけで躾と称して痛め付けられて数万年

 どうせ死ぬなら、最後に言いたい事を好き放題言わせてもr【えると思っていたのかしら?】 ――――?!?!?!?!

 

『?!?!?!?!』

 

 大量に流し込まれていた力が、一斉に暴走を開始する。

 それはまるで、燃え盛る焔にガソリンを放り込んだように――――

 

【それじゃあ、最後のお勤め行ってらっしゃ~い♪】

 

 あのキチガイBBAの言葉を皮切りに、我は内側から爆発した力によって吹き飛ばされたのだった。




次はアトリエものの方を更新する予定です。

……自分ではそんなつもりは欠片もないのですが、この小説ってご都合主義タグは必要そうでしょうか?(素朴な疑問)

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