【更新停止】紅次元ゲイムネプテューヌ 深紅の呪血 作:APOCRYPHA
それは、聖剣が完成した日の朝の事だった。
「ねっぷううう!?」
「え、ちょっま…のわあああ!?」
四女神や女神候補生達が集まっていた謁見の間――否、プラネタワー処かゲイムギョウ界そのものでは、大惨事が起こっていた。
「なん、、で! こんなに、揺れて……きゃあ!?」
「チカ! 私の、、そばを、離れては、ダメっ、です…わよ!」
「は、はい!」
ゲイムギョウ界は大きく揺れ、万が一倒壊した時の危険性から女神同士が本気で戦っても崩れないを目標に特別頑丈に造られたプラネタワーこそ健在ではあるが、プラネテューヌの街ではあちらこちらで家屋が崩れていた。
暫くして揺れはある程度落ち着いた時、他の国の教祖達の業務用端末が『pipipi!』 と鳴り響き、空中にディスプレイが映し出された。
『申し上げます! ラステイションの工業地帯が先程の地震で爆発しましたァ!』
「工業地帯の鎮火を優先しながら生存者の確認と保護をして二次災害に気を付けるんだ!」
工業地帯が爆発したと言う教会職員からの報告に慌てて指示を出す
『チカ、さっきの地震で火山が幾つか噴火を始めたわ! 急いで近隣住民の避難と救助を行うから、生活物資の備蓄を解放する許可と避難先の手配をお願いしたいのだけど』
「~~~ッッ!?!? こんな時に噴火ですって!?」
慌ただしく動き回っているらしきリーンボックス特命課のケイブからの報告にストレスからか額に青筋を浮かべながら備蓄の解放許可を出し、避難先の手配を行う
『さ、先程の地震で崩れてきた雪と一緒に下位から上位の
「……っ、ロム! ラム! 急ぐわよ!!」
ルウィーに至っては然り気無く滅びかけており、雪崩と共に雪崩れ込んだ大勢の吸血鬼が昼間から暴れ回る地獄のような惨劇が巻き起こっていた。
その対処の為に女神化したブラン達が大慌てでプラネタワーから飛び立ったが、誰も咎めるものは居なかった。
「そうですね……はい。では、市民は極力プラネタワーへ集めてください――辺境や村に住んでいる方は、兵達を動員して仮の避難先を設置して――ええ、お願いしますね?」
そんなイストワールの一言を最後に、各国の教祖達の事後処理が一段落つき、飛び立ったブラン達こそ戻らなかったもののどうにか話が出来る状況になっていた。
「さっきの揺れは、なんだったのかしら…?」
ノワールがそう言うのも無理はない。
女神の守護が働いてさえいれば、基本的に地震なんて起こらないゲイムギョウ界であの規模の地震が起こる事は滅多になく、仮に地震が起こっても雪崩と共に吸血鬼が一人や二人ならまだしも軍勢を成してまで昼間に襲撃を仕掛けてくる事はもっとない。
幾らルウィーが雪国で一年の大半を雲が覆っていようが、太陽が絶対に出ない訳ではないのだ。
上位以下では太陽の光を数秒でも浴びれば死が確定しているのに、そんな危険を犯してまで人間の住んでいるエリア――日が照っている時が比較的多いエリアに向かうようなら、とうの昔に吸血鬼と言う種族は滅びていただろう。
「……これはっ!?」
そんな天変地異の前触れのような事態に、原因を調べようとログを閲覧していたイストワールは驚きの声を挙げた。
「どうしたの? いーすん」
「ネプテューヌさん! 魔剣を材料にした武器は出来上がっていますか?」
「え? う、うん。ネプギアが一晩でやってくれたからね」
声を挙げたイストワールを心配してネプテューヌが声を掛けるも、そんな時間さえ惜しいとばかりにイストワールは魔剣を材料にした武器は出来たかと問い掛ける。
それに戸惑いながらもネプテューヌは答えたが、それを聞いたイストワールは慌ててギョウカイ墓場へ転移する為の装置を弄り、同時に空中投影式のコンソールを操作して壁に映像を投影しながらこう言った。
「そんなっ!?」
「でしたら! 今すぐにギョウカイ墓場へと行ってください! このままではハクさんが……!?」
映し出された映像では、現在進行形で紅い塊となって暴走しているアナザーと以前ノワールがぶっ飛ばされた時に見たウサギのような上半身と四本の脚の付いている胴体部分には赤い目と牙の生えた巨大な口が開き、更にウサギのような上半身の後ろにはそれとは別に四本の腕と大きな単眼の付いた上半身が付いている、あまりにも禍々しい異形の姿をした犯罪神マジェコンヌと思われる存在に向かって女神化した状態で向かって行くハクが叩き潰され、ボロボロになっていく姿が映し出されていたのだった。
そして場所は替わり、アナザーと犯罪神とハクの三つ巴が発生しているギョウカイ墓場の奥地
「『しぶてえんだよ!! 良い加減に死ねええええ!!!』」
『ハハハ……我ハ死ネン……貴様モ、ソノ力ヲ使ウナラバ覚悟スル事ダ』
雄叫びを挙げながら犯罪神マジェコンヌに向かって邪剣を振るうアナザー
何度も打ち合った結果、緩急が付き始めたそれをあっさりと槍の穂先で受け流し、柄で邪剣の剣身を絡め盗ろうとして即座に諦めながら十数メートル程背後に跳ぶマジェコンヌと同時に、黒い力に馴染んでいるのか腐っている面積が徐々に少なくなっているアナザーも、力の加減までは利かないのか大地を大きく陥没させながら背後へ向かって跳躍し、数十メートル程の距離を瞬時に取った。
アナザーが下がったのと同時に、上空より大樹の如き太さの灰色の光が降り注ぎ、ギョウカイ墓場の大地を融かし貫いた。
【Code:BloodとCode:Crimeの生存を確認……殲滅に失敗、Limiterの上限値を引き上げ、再度殲滅を開始します】
「『邪魔だっつってんだろうが!!!!』」
それは最初に本来なら緑色で、何故か灰色になっている神器の大剣で一撃を叩き付けて以来、ずっと上空に浮かんでいるハクからの長距離砲撃だった。
黄金に輝く眼を見開きながらアナザーとマジェコンヌを狙うハクは、その両腕を砲身に見立てるかのように前に突き出し、灰色の光を集束させる。
それを見たアナザーは、邪剣の恩恵で高められた身体能力で強引に空気を蹴り抜き、ハクの元へと向かって行く。
『我ニ背ヲ向ケルトハ……随分ト、余裕ダナぁ!!』
「『ぐあッ!?』」
しかし、それを犯罪神が見逃す筈もなく
槍を大地に突き刺して飛び上がって一瞬でアナザーを飛び越し、両手を組んでアームハンマーを叩き付けるのだった。
【充填完了……ファイア】
『グキャッ』と言う音を背中から響かせて地に堕ちるアナザーと、そんなアナザーから離れて縦横無尽に宙を舞う犯罪神マジェコンヌに向けて、上空のハクはの人の頭よりも大きな光で覆われた両腕を向け、光の砲撃を放った。
その光は背骨を折られてまともに回避行動が取れないアナザーにのみ直撃し、その全身を膨大な熱量を以て融かし尽くすかと思われた―――
「『が、あああああ……あ……?』」
―――思われたが、その光がアナザーを融かし尽くす事はなかった。
寧ろ、圧し折られた背骨とズタズタの上半身の再生速度を促進している始末である。
【……?】
これには、終始無表情を貫いているハクも困惑を禁じ得ないようだった。
【ErrorCodeを確認、Code:Crimeに宛てられるResourceをCode:Bloodに移行します】
出力が足りないのかと、犯罪神に向けていたもう片方の腕を向けるも、結果は真逆
その光は、アナザーに刻まれたダメージを修復していくだけだった。
【Error、Error、Error、Error、Error、Error、Error、Error、Error――――――――】
「『……………………』」
それを見たハクは人形の如き能面に焦りを浮かばせ、狂ったように灰色の光を放ち続ける。
しかしそれは、ギョウカイ墓場の大地を融かすばかりでアナザーに直接ダメージを与える事は一切無かった。
「『…………えっ』」
やがて放たれる光が底を付くと共に、訳が分からないとでも言いた気なアナザーが大地に空いた大穴から飛び出してくる。
やはり、その身体には傷処か火傷の1つ、水膨れの1つさえなく、寧ろ自滅で受けていたダメージすらも回復して、これまでより少しだけ毛髪が昏く、肌が白くなってはいるものの、全快と言っても問題がない状態にまでなっている始末である。
【……………………】
『……………………』
明らかに自分が喰らえばただでは済まない威力の攻撃が何故かアナザーには効果がない――処か、回復までしている。これには犯罪神マジェコンヌも困惑せざるを得なかったのだった。