【更新停止】紅次元ゲイムネプテューヌ 深紅の呪血 作:APOCRYPHA
昼間は……暑過ぎて動けません。蒸し焼きにされてる気分
8/27(月)
メッシュがどういうものか勘違いしていた為、ハクの毛髪の文面を修正しました。
出来上がった邪剣を引き摺りながらギョウカイ墓場の奥へ向かう最中、俺は急に戻った記憶の中でも特に大事な事を思い出していた。
今の女神よりも強大な力を誇った女神である真面目な
そして当時の女神の中で最も弱かったが、国民から慕われ、中でも特に
一柱を除き今代女神よりも強かった当時の女神達は、当時の犯罪神の手駒であり、贄でもあった四天王を守護女神戦争の休戦期だった事もあってシェアが削られる前に討ち倒し、ゲイムギョウ界にマジェコンが溢れ返る前に犯罪組織としてのマジェコンヌを一切国同士で協力する事なく壊滅させていた。
…………そう、一切協力する事なく壊滅させたのだ。それこそが、決定的な敗北の要因とも知らずに
ウラヌス以外の各国の女神がそれぞれ一対一で滅ぼし、ウラヌスも半吸血鬼や冒険者と共に討った四天王は、犯罪神を構成する肉体となる生け贄だった。
そして、復活した犯罪神は当時の女神さえ凌ぐ力で四柱居た女神の半数を滅し、犯罪神との戦いでは力の差から足手纏いだった俺を含めた人間や半吸血鬼を置いて残った女神であったウラヌスとズナニエは協力して戦ったのだが、これまで敵対していた者が組んだ所で即興の同盟が力を発揮できる筈もなく
連携が脆かった部分を突かれてズナニエが滅び去り、最も人望があったが女神の中で一番弱かったウラヌスだけが勝機無しとの判断で命からがら逃げ延びて運良く生き残ったのだった。
最早どうしようも無いと思ったが、それでも希望は残されていた。
知識を蓄え続けたズナニエは、犯罪神を打倒する二通りの選択肢を己が教祖へと遺していた。
1つ目は犯罪神を滅する呪われた剣である魔剣ゲハバーン
2つ目はゲイムギョウ界の人々の想いを1つに束ねてぶつけると言う攻撃方法
ウラヌス達は2つ目を選び、俺は――否、俺だけが1つ目を選んだ。
ウラヌスだけは最終的に受け入れてくれたが、当時の共に犯罪組織を討伐した仲間とも言える半吸血鬼や冒険者の面々からは女神が信じられないのかと最後まで反対された。
勿論、そんな事はない。俺が信じられなかったのは想いを束ねるウラヌスではない。
寧ろ、ウラヌスの人望ならば人々の想いだって束ねられると確信さえしていた。
……だが、俺にはどうしても、想いを束ねられる側である人間達が信じられなかったのだ。
人間は不安定だ。
我慢できず、裏切り、嘘を吐く。
やると言ってやらず、決める事が出来ない。
楽な方へ流され、手を取り合おうと言った口で騙し、自分の為に誰かを陥れる。
当時儲かるから、楽だから、好き放題欲望のままに振る舞えるからと犯罪組織に流れ、犯罪組織が潰れたら『ああ、女神様、仕方がなかったのです。どうか御慈悲を下さい』と言って薄っぺらな懺悔を吐き教会に戻ってきた人間、特に酷い者は、薄っぺらな懺悔さえ無く何食わぬ顔で犯罪組織が現れる前の生活を再開した人間を間近で見る事となった俺は、当時の犯罪組織討伐メンバーの中で唯一、人間でなければ吸血鬼でもなく、半吸血鬼でなければモンスターでもない俺は種族が誰とも違う事もあって、人間への強い不信感を覚える事になった。
流石に殺人や人体実験等の洒落にならない犯罪を犯していた者は処分されたが、少なからず流れてはいたマジェコンの販売員や製造工場で働いていた者、証拠不十分な者は見逃され、市井に流された。
恐らく、当時の裏切り者達の子孫達はそんな事も知らずに今でも能天気に生きているのだろうとは思う。ひょっとしたらまた犯罪組織に加担していたかもしれないが、だとしたらどうしようもなく救いがない。
…………まあ、そう言った理由から、ウラヌス以外からの反対を予備の策を求めての事と押し切って、少なくとも人間の想いを束ねる必要がない犯罪神を滅ぼす剣を求め、ズナニエの遺した資料を頼りにギャザリング城へと独りで向かった。
――――最期にウラヌスと、生き残った方がゲイムギョウ界の平和を維持しようと言う約束を交わして
ウラヌス達と別れた俺は、ギャザリング城を探索し続けた。
ギャザリング城の敵は、当時の弱かった俺には手強かった。
入り口付近でさえヒーリングスライヌのようなモンスターが強大な攻撃魔法を行使し、当然のようにドラゴン系のモンスターが跋扈していたような城だ。今の女神でも、恐らく単独で走破できるのはハクとネプテューヌ位のものだろう。
何度も死にかけたが、死にかける度に何故か生き残り――今になって思えば、喰われたり焼かれたりして喪失した手足や捌かれた腹とその中身まで再生して邪剣にも使った黒い力が俺を無理矢理生かしていたのだろう。
脚を喰った筈のドラゴン系モンスターは何故か腐っていて、腹を穿ち臓腑を焼いた火球を放ったスライヌは魔力が無くなり青い皮だけを残して蒸発していた。手足を全て千切って苗床にしようとした人面樹は枯れ果て、全身を取り込み溶かしてきた巨大なスライヌは中の液体が濁って腐っていた。
このように、そうでなければ死んでいない方がおかしい状況が多々あるのだ。何故そんな事になっているのかは分からないが……まあ、それは良い。
肝心なのは、魔剣ゲハバーンが見付かった事と、魔剣ゲハバーンを見付ける前に犯罪神とウラヌス達が相討ちになった事なのだから
俺が何度も死に掛けて時間の感覚を失いながら魔剣ゲハバーンを見付け出すまでに、時間が掛かり過ぎていた。
数日の休養と修練を終えたウラヌス達は、当時のイストワールを使ってギョウカイ墓場へと向かい、犯罪神へと最後の戦いを挑んでいた。
詳しい事は分からないが、結果が犯罪神の封印とウラヌス達の死であった以上、相討ちと評するのが適切なのだろう。
女神を全て失った人間はその後100年程、新たな女神が生まれるまで国を失い、新たな女神が生まれるまでの国を維持できただろう前のイストワールはどうやらシェアエナジーが燃料だったらしく、女神を失った事で機能停止に陥っていた。
その仮定で様々な記述や知識を喪失したようだが、詳しい事は知らん。
何せ、その100年の半分近くをギャザリング城で鍛えた力でモンスターを滅ぼし続け、残りの半分を無気力に過ごしていたのだから――――ああ、時間か
「……やっと、着いたのか」
槍を持った兎頭の女の姿をした犯罪神を視界に収めた俺は、今まで無理に抑え込んできた邪剣の力を解放し、この身を喰らわんとばかりに侵蝕する黒い力を全身に纏った。
全身を喰われようが腐らせようが知った事か!
とにかく―――
「『死ねえええええええ!!』」
呪詛に染まったギョウカイ墓場の黒い大地
普段は死せるモノ達の安寧の場として静寂に包まれているそこは今、怪獣大決戦も真っ青な決戦が始まっていた。
「『死ねえええええええ!!』」
『温イ! コノ程度ノ力デ我ヲ倒セルト思ッタカ!?』
犯罪神へと突撃し、黒く禍々しいオーラを纏って邪剣を振るうアナザーと、全身を完全に顕現させて赤黒いオーラを纏った神器である槍を振るうマジェコンヌ
両者のぶつかり合いは地を割り空を裂きながら徐々に激しさを増していき、静寂に包まれていたギョウカイ墓場を激しく揺るがしていた。
「『コプッ!?』」
『ハハハハハハハハハッ!!!!』
しかし、本来のアナザー自身の力を大きく越えた黒い力は、アナザー自身に由来しない事もあってその肉体を徐々に蝕んでいき、口から腐り果てて黒く染まった血と溶けた臓器を吐き、邪剣を持っている左腕を中心に、左半身が黒く溶け出していた。
本来なら死んでいなければ可笑しい程の重傷だが――
「『殺スコロすころスKOロス――!!』」
『ホウ……ソレホドマデニ汚染サレテイナガラ、マダ呑マレヌカ』
――そんな状態でもアナザーが生きているのは――否、アナザーを生かしているのは、皮肉な事にアナザーに力を与え、その身を蝕んでいる黒い力そのものだった。
腐った皮膚が剥がれるとその下からは真新しい白い肌が見え、内臓が液状化した結果、臓器が減ってへこんだ腹部は再生した内臓でまた膨らんでいる。
しかし、再生と同じ速度で元に戻った白い肌は黒く腐り、復活した内臓は再度液状化して溶け落ちているのだ。
今のアナザーは自身を蝕む黒い力によって強制的に生かされているような状態であり、力の行使を止めた瞬間、崩壊する肉体を抑える事は叶わずに死を迎える事となるだろう。
「『俺の為にお前を殺す! だから滅べ!! マジェコンヌウウゥゥ!!!』」
『クハ、クハハハハハハハハ!!!』
だが、アナザーは止まらない。
自身の肉体が崩れようと、腐り果てようと、黒い靄そのものに成り果てんばかりに纏う黒の濃度を更に深め、更に力を引き出している。
今のアナザーは、犯罪神を完全に滅ぼすと言う一念だけで動いており、犯罪神を完全に滅ぼすまで止まる事はない。
「『アアアアアアァァァァァァ!!』」
『無駄ナノダ。貴様ニ我ハ倒セナイ』
……例え、どんな悪手を打とうとも
【………………】
邪剣に負けず劣らずの禍々しさを放つ程に黒を深く纏うアナザーと、空間さえ歪ませる程の赤紫のオーラを纏った犯罪神がぶつかり合う瞬間
【…………aーa…、aaaaaaaa!!】
輝く金眼と反比例するかの如き灰色の鈍い光を放ちながら、女神達が捜索をしていた行方不明のハクがアナザーと犯罪神の衝突に乱入してきたのだった。
【………………】
ハクは、何時の間にかギョウカイ墓場の上空3000メートルを飛んでいた。
銀色だった髪は女神化で金髪と、何故か毛先から3分の1程が黒く変わり、元より白かった肌は病的な――それこそ、死人の如き白さと成り果てていた。
しかし、飛んでいる事から間違いなく女神化している筈なのに身に纏っている
見開かれた金眼は物理的に光を放ち、下方で――それも遥かな大地で行われている戦闘を見ているのだ。
【…………aーa…、aaaaaaaa!!】
そして輝く金眼を見開いて雄叫びを挙げながら、ハクは地上で行われている決戦の場に乱入していったのだった。
「『邪魔を、するなあああああ!!!!』」
『ハハハハハハハハハッ!!!!』
――――その結末が、どんな事になるかも知らず
……因みに、どうでもいいもしもですが
仮に先代の女神の中で生き残った二柱の女神の片割れがパープルハートのウラヌスではなければ、どんなに悪い方に転がっても力尽くで相討ちに持ち込めていました。運が良ければ二柱共に生き残ってましたし
ある理由から女神の中で一番弱いのに加え、他の女神と一番連携が取れないのがウラヌスだったって言う……そもそも、アナザーが挙げた『人望』にしたって、別段ウラヌス自身の行いからきたものではありませんし(その手の行いや努力をしていない訳ではありませんけど)