【更新停止】紅次元ゲイムネプテューヌ 深紅の呪血   作:APOCRYPHA

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第七十八話

 犯罪神の復活と共に力を吸い上げられて崩壊しつつあるギョウカイ墓場で、復活を果たした犯罪神から最も遠い地点

 

「…………」

 

 ラステイションの空間をゲハバーンの欠片で斬り裂いてそこへ突入したアナザーは、周囲に敵が居ないのを確認した後に死んだ魚のような眼をしながら手に持ったゲハバーンの欠片を視ていた。

 

「…………っ』」

 

 そして、徐にゲハバーンの欠片を持つ腕を頭上へ掲げ、手首から先を腐らせて苦悶の表情を浮かべながらゲハバーンの欠片に黒い力を纏わせ始めたのだった。

 

 黒い力を纏ったゲハバーンの欠片は、送られてくる力を吸収してその紫の刃を黒く染め上げる。

 力を失っていても視たものに禍々しさを感じさせていた魔剣ゲハバーンは、破壊され欠片となり果てても尚、禍々しさを完全に損なう事はなかった。

 

 そして、黒く染められたゲハバーンの欠片であった刃は、魔剣ゲハバーンがその力を完全に取り戻した――それこそ、全ての女神を斬り捨てた果てに開放される力を凌駕し、禍々しさに至っては単なる人間が視ればそれだけで悪意を刺激され、心が弱ければモラルを失い犯罪行為に走らされるだろう。

 

「………………」

 

 それから暫く、元紫の禍々しい魔剣にして現黒く禍々しい邪剣が完成したのを確信したアナザーは、何時の間にか治っている腐っていた筈の手を嫌そうな顔で見つめながら、何故か柄まで再生していた邪剣を持ってギョウカイ墓場の奥へと向かうのだった。

 

 

 ―――これは女神達が邪剣と対を成すような白く輝く剣を持ち、ギョウカイ墓場へと突入する二日前の話であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【…………Code:Darknessの部分解放を確認……Code:Lightの部分覚醒を完了した後にCode:Bloodの討滅を開始します】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜遅くのプラネタワーでの事だった。

 

「………………」

 

「……Zzz」

 

 夢の世界に旅立った(眠りに就いた)姉のネプテューヌを目の前に、ネプギアは先程の話し合いの結果を振り返りながらカーン、カーン、カーン、と、リズム良く鎚を振るい、シェアの炎で融かした各国より譲り受けたシェアクリスタルを同じく融かした魔剣の欠片と混ぜ合わせて剣の容に形成していた。

 

「…………」

 

 そうするように提案したグロウ曰く、アナザーがあれほど固執していた魔剣ならば犯罪神を確実に倒せないまでも有効打を与える程度の力はあるのではないのか? との事で、実際に効果があるのかは分からなかったが……まあ、ネプギア自身も含めてあの場に居た全員がこのまま何の対策も見出だせないよりは良いだろうと言う結論に至った結果、こうしてネプギアが鎚を振るっているのだ。

 

 それに―――

 

(お姉ちゃん……お姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃん)

 

 ―――ネプギア自身の精神もまた、かなり限界が近付いていた。

 度重なる精神的ダメージ(大体アナザーの所為)に加え、本来ならば精神が成長する為の糧となる出来事もその大半が消え失せた。

 代替となる出来事は幾つかあったが、消えた出来事の質量に比べれば微々たるものであり、本来の数値には一切届いていなかった。

 

 他の皆を生かす為の手段は感情論で全否定を受け、理論でさえも冷静になったラステイションの姉妹に否定された。

 本来ならばそれさえ耐えきる程に精神が成長した証であったプロセッサユニットの変化は、単なる外的……否、女神と言う存在の内に巣食っている外的要因に依るものでしかない。

 それでもなお、女神として生まれる際に刻まれた善の性質は歪む事なく機能していたのだが、今となってはそれすら歪みかねない程の傷を負っている事に変わりはない。

 平穏な時を過ごせば自然と修復されるのだが、犯罪神が復活した現状ではそんなものなど望める筈もなく

 どうにか表面だけは繕えているものの、もしも後一押しを誰かが、或いはなにかが押してしまえば、それを切っ掛けに闇に堕ちてゲイムギョウ界を滅ぼす機械に成り果てた事だろう。

 

(お姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃんお姉ちゃん…………)

 

 ……そして、そんな堕ちる数歩手前でギリギリ踏み留まっている状態で純粋なシェアを剣に加工している現状は、最大の失敗でありながらも最善の失敗として機能したのだった。

 

「『……………………』」

 

 半ば狂気を漂っているネプギアの身体から、ほんの僅かな量ではあるが黒い靄が漏れ出ていたのだ。

 何時の間にか起き上がり、普段の印象からは考えられない程に姿勢を正してそれを無言で見詰めるネプテューヌ。その瞳には女神としての力を解放した時と同じく、ゲーム機の電源ボタンと同じマークが浮かび上がっていたのだった。

 また、漏れ出ている黒い靄は少しずつではあるものの、製作途中の剣に吸い込まれていき、先程まではこの世の全てを浄化せんとばかりに輝いていた光は、徐々にその輝きをくすませていた。

 

「「『『……………………』』」」

 

 そんな中、一方は無表情で妹を視て、もう一方は憂鬱そうな顔と虚ろな眼差しで坦々と鎚を振るう。

 カーン、カーン、カーン、と、幾度かの金属音が響いた時

 

「……?」

 

「………Zzz」

 

 黒い靄が全て製作途中の剣に吸い込まれた時点で、ネプギアから憂鬱そうな表情が消え、暗い雰囲気が収まった。

 また、ネプテューヌは先程までの無表情で無機質な眼差しなどなかったと言わんばかりに眠りこけ、ネプギアを視ていた証拠は机に突っ伏していたのが仰向けに引っくり返っている事だけである。

 

「…………あ、出来た」

 

 そして、魔剣の残骸とシェアクリスタルは白く輝くシェアの剣としての再誕を果たしたのだった。

 

 

 

 

 ――――その本来の輝きを失ったまま

 

【…………ニィ】




……今回は、もしもサブタイトルを付けるとするなら『光と闇の対剣』……って感じでしょうか?
まあ、サブタイトルを付ける気が無いから無意味ですけど

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