【更新停止】紅次元ゲイムネプテューヌ 深紅の呪血   作:APOCRYPHA

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若干燃え尽き気味ですが、少し時間を空けたら復活してると思われます。


第七十四話

 ラステイションで女神と女神候補生が争っている最中の事

 

「「……」」

 

 ネプテューヌの弱さに落胆した俺は、元居た場所から離れたネプテューヌの近くからネプギアとユニが争っている地点に向かっていた。

 ……だが、途中からは本来の目的も忘れ、只々ハクを振り切ろうとする為だけに、ラステイションの大通りも外れ、たまに襲ってくるチンピラを惨殺……はせずに半殺しにしながら全力であちらこちらへと動き回った。

 

 だが、それでもハクを振り切れず、無駄に時間と体力を浪費しただけであった。

 

「………………(何故だ)」

 

「…………?」

 

 隣で小首を傾げながら、にこやかに微笑んでいるこの女が煩わしい。

 疎ましくて煩わしくて、どうにかなってしまいそうだ。

 

 と言うか、そもそも何故、この女は自分の国に帰らない?

 なにか理由があるのか?それとも――――

 

「そこまでだ!」

 

「……あ"?」

 

 ――――しかし、そこまで考えている時間は俺には無いらしい。

 目の前に立ち塞がった珍しく真剣な顔をしているラステイションの英雄(グロウ)を見た俺は、この国のシェアを奪い尽くしてから、ハクがこれ程までにしつこく俺に付き纏う理由を考えると決めたのだった。

 

 

 …………そんな時間など、存在しないとも知らずに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでだ!」

 

「……あ"?」

 

 アナザーの眼前に立ったその時、私は確信した。

 『この男(アナザー)は危険だ』と

 別段、姿形が変わった訳ではない。不機嫌そうな顔さえにこやかならば腰まで伸びた紅い髪も相俟って、女と見間違う程の端麗な容姿も含め、普段通りと言っても良いだろう。

 

 だが、私の本能は、今この場でこの男を討たねば近い未来に災厄を巻き起こすと、そう警鐘を鳴らしているのだ。

 何故、今まで気が付けなかったのか、私には不思議でならないが……いずれにせよ、()この男を見逃しては私がノワール様より承った最終命令(ラストオーダー)さえも果たせなくなるのだと、私はそう()()()()()()

 

「ったく、何なんですかっての……邪魔をするなら、お前から「ダメですよ?」………………チッ」

 

 私の制止を受けたアナザーは、私を睨みながら、退かないなら死ねと言わんばかりに武骨な四角い両手剣の切っ先を向ける。

 しかし、アナザーの隣に立つハク殿がアナザーの左肩を掴み、制止を掛けた事によって、その両手剣の切っ先は降ろされた。

 

「それで、私達に何か御用でしょうか?」

 

 そのままアナザーを押し退けて前に出たハク殿は、こんな情勢であるにも拘らず何時もと変わらない、ノワール様が居なければ私でさえ屈服しかねない程の強烈な神性と、誰からも好かれるだろう柔らかな微笑みを湛えながら、用件を訪ねてくる。

 

「……なに、大した事ではないとも」

 

 そのままでは自分の姉の国が無くなり、一歩間違えばゲイムギョウ界さえも滅ぼされかねない現状にも拘わらず、その不変っぷりには流石の私も恐怖を禁じ得ないが、その気持ちの一切を奥底に押し込めた上で、何時もの癖で挿していた刀を鞘から抜き、アナザーに対して向けた。

 

「ただ、貴様(アナザー)には今日この時を以て、このゲイムギョウ界から退場願いたいだけだ」

 

「えっ」

 

「……ハア?」

 

 余程、私の宣言が予想外だったのか、心底訳が分からないとでも言いたげなきょとんとした表情を浮かべたハク殿を改めて押し退けて、アナザーは瘴気や邪気の域にまで堕ち果てた(昇華された)、僅かに紅を残した闇のような漆黒の闘気を撒き散らす。

 

「……くくっ……おいおい、何を寝言を言っている?」

 

 そうして、小馬鹿にするような目で私を見ながら、アナザーは隣に立つハク殿に声をかけた。

 

「おい! これは俺とアレの争いだ! 手を出すんじゃねえぞ!!」

 

「まだ話し合えば「知らん」なんとか……って、ちょっと!?」

 

 引き留めるハク殿の手を掻い潜り、目では追えない速さ――ともすれば、少し離れた場所で今もなお戦っておられるノワール様に匹敵ないし凌駕する程の速さで私の懐にまで潜り込み、振るわれた拳を刀で防げたのは偶然以外の何物でもなかったのだろう。

 

「言うだけあって、流石にこの程度じゃ死なないか……」

 

「……なん…だと…………」

 

 しかし、その拳を防いだ刀は黒いナニかに蝕まれるかのように飲み込まれ、危険を感じて咄嗟に手放した際にぶつかった壁や道の一部を巻き込みながら、砂のように崩れ去る。

 

(ノワール様やユニ様の持つ武具ほどの業物ではなくとも、相当な名刀だぞ……?!)

 

 極一部の例外を除いた女神様が生まれながらに保有する、神体に最も適した武装である神器

 科学者の中には、原初の女神なる存在が生まれた女神()に対して贈る唯一の護身武具と言う説もあるが、実際にどうかは解らない。

 だが、実際にそんな説が出るだけの性能ではあるのだ。

 

 この世界のありとあらゆる物質よりも頑強で、例え杖でも伝説に名を列ねた名工が生み出した鉄槌でさえ破壊出来ず

 この世界のありとあらゆる物質とも違う……強いて言うならば、シェアクリスタルに類似した物質で形成されており

 当代一と謡われた人間の鍛冶屋が心血を注ぎ誂え捧げた、神器と寸分違わぬ形状の武具でさえ、神器には至れない

 

 そんな神器や神器に限りなく近付けた神器擬きには及ばすとも、先程アナザーに破壊された名刀は店売りで8万はする代物なのだ。刀の耐久値が高くないとは言え、易々と破壊できるような代物では断じてない。

 

 だが、異常な壊れかたとはいえ、手元の一番良い武器が破壊された事に代わりはない。

 

「アッハハハハ!! 随分と脆いナマクラだよなァオい!!」

 

「くっ…の、ばけもの、、、がァ!!」

 

 右、左、上、下、下

 わざと私が反応出来るギリギリ速さで振るわれた拳や脚をギリギリで回避し続け、私は思案する。

 何故、奴の攻撃は名刀を一撃で破壊――それも、分子崩壊を起こすような異常な破壊が出来たのか

 そもそも、何の意味があって奴は私に手加減を加えるのか

 

 そんな事を考えながら、私は全力を出してアナザーの攻撃を回避し続ける。

 

「そらそら、ゴミ箱はアッチだぞっと!!」

 

「ぐ、…!?」

 

 叩き込まれた蹴りを紙一重で避わしたにも拘わらず、飛び散ってきた極少量の黒い障気が当たった箇所に激痛が走り、徐々に腐食していく。かすっただけでこの威力ならば、直に触れれば即死だろう。

 

 全ての攻撃を完璧に回避せざるを得ない状況に体力は大きく削り取られ、呼吸して得られる以上の酸素の消費によって意識がボヤける。

 

「アナザーさん! ダメですって急に早い?!」

 

「テメエは邪魔だ!!」

 

「ガ、あアっ?!?!」

 

 ハク殿のものと思われる声がしたが、何故か一瞬だけ障気を纏わなかったアナザーの蹴りによって一気に大通りの方面にまで飛ばされた私には判別が付けられなかった。

 

「ハ、ハ、ハ、ハ……」

 

 意識は酸欠で朦朧とし、腹部には先程の蹴りによって刻まれた致命傷(ダメージ)

 そして、直ぐそこではユニ様とプラネテューヌの女神候補生が戦っている気配

 

 状況は最悪であり、増援の宛もなし

 間違ってもユニ様を巻き込む訳にはいかない以上、なんとしてもここで奴を食い止めねばならないと言う無理ゲーっぷりである。

 

「ハ、ハ、だ…が」

 

 だが、諦める訳にはいかない。

 全ては、ノワール様がプラネテューヌの女神を討ち取る時間を稼ぐ為に

 

「あーあー、随分とまあ、ズタボロになったものだな……」

 

「お、オオオオオオオォォォォ!!!!」

 

 この一手に、私の全てを―――

 

 それだけを胸に、この命を捧げる覚悟で手持ちの刀の最後の一本を構えて突撃した私だが、そんな私を見たアナザーは、ニタニタとした嫌な表情から一転、一瞬だけ無表情になり、次の瞬間には狂喜に満ちた表情のまま、口角を吊り上げて攻撃的にも程がある笑みを浮かべたのだ。

 

【「……ニィ……この時を、待っていた」】

 

 そして、少女とも、老婆とも、女性とも、青年とも取れる不可思議な声を発したかと思うと―――

 

「ガッ…アアアアアアアアアアアアアアアアアアア?!?!?!?!」

 

「「!?!?」」

 

 ―――ただただ、強い力で私を蹴り飛ばし、背中になにか金属らしきものが叩き付けられたような感触を感じさせると共に、私のナカへと強烈な悪意(狂気)が入り込んできたのだった。


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