【更新停止】紅次元ゲイムネプテューヌ 深紅の呪血   作:APOCRYPHA

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第四章~女神救出のワルツ~
第五十二話


「む……なにやら重要な場面を逃した気がする」

 

「なにを言っているのですか?傷に響くので、ちゃんと寝てください」

 

ルウィーの街にある宿屋の一部屋

そこでは今、この宿の主人に了承を取り付けたハクによって運び込まれ布団に寝かされた俺と、その隣でネプテューヌ(駄女神)なら『おとっつあん、大丈夫かい?』とか言った後、無視した俺に『ちょっとー!ノリが悪いよー!?』とかなんとか言いそうな場所をハクが陣取っていた。

 

「却下だ……って、止めろ触れるな縛ろうとするな!?」

 

「えー……ですが、寝てくれないと傷が治りませんし……」

 

「貴様に触れられている方が悪化するだろうが!良いから!頼むから俺の事は放っておけ!!」

 

今一動きが悪い身体を鎖で縛ろうとするハクを見て思わず全力で叫んだが、相変わらず無邪気を装って(きょとんとした表情で)首を傾げるこのアマは、それを無視して俺の身体の動きが悪いのを良いことに、鎖を手足に巻き付けて縛ってから額に触れる。

 

「ん~、熱はありませんし……傷口はもう少し時間が経たないと膿んでるのか無事なのか……まあ、今は寝てください」

 

「ッッッッッッッッッッッ?!?!(アガガガガッガガガッガガッガガッガガッガッガガッガガッガガガ!?!?!?!?!?!?)」

 

何かを言っているが、触れられている額が熱く、バーナーで燃やされたような痛みが俺の正気を削り、意識を磨り潰していく。

最後の意地(身に覚えの無い慣れ)で声だけは全力で抑えているが、この激痛は正直大ダメージだ。

 

「……?」

 

「…………もう、本当に看病とかいいから……放っといてくれ……(ぐったり)」

 

(…………俺が、一体何をした……いや、結構色々していたか)

 

急な身体の痙攣に違和感でも感じたのか、額から手を離して俺の顔をマジマジと視てくるこの女は……危うく意識が吸血鬼(ヴァンパイア)連中に伝わる楽園に持って行かれるかと……いや、どちらかと言うと地獄(楽園)じゃなくて楽園(地獄)に引き摺り込まれそうな感じだったが

 

(……しかし、俺もここまでハクに弱かったか?)

 

記憶が確かなら、触れられただけで大ダメージを受ける事はなかった筈だが……

 

まあ、そんな事はどうでもいい。いずれにしても、既に全てのゲイムキャラの力は手に入れた。女神候補生は一国分欠けているが、見た目はガキでも生存年数はそれなりに長いブラン(まな板)と違い、生存年数の短い正真正銘のガキだ。生存年数が誤差でも肉体に引き摺られてマシになってはいるネプギアやユニと違い、居ても居なくてもどうせ大して影響はないだろう。

 

各国の英雄級の実力者はラステイションからしか力を借りられなかったが、元々人間の強者は絶対数が少なく、最低限必要な戦闘力の持ち主(英雄級)にもなると国に1人居るかどうかだ。

 

確か、何時か血でも啜ってやろうと考えて嘗て覚えた限りだと、『プラネテューヌ』は俺を除けば古代吸血鬼(エルダーヴァンパイア)との半吸血鬼(ダンピール)が1体に上位吸血鬼(グレーターヴァンパイア)との半吸血鬼(ダンピール)が数体―――しかし、こいつらはネプテューヌ(駄女神)の言う事……厳密には、パープルハート(崇拝者)の命令にしか従わず、他の誰の命令も受け付けないが為に説得するのは、例え俺やハクが力尽くで叩きのめしても不可能だ。奴等はパープルハート以外に従えられる位なら、己の手で命を絶つだろう。

 

因みに、パープルシスター(ネプギア)の言う事は歴代パープルハートの首都防衛令に反しない程度までは聞くが、ネプギアがパープルハートを継承しなければ主力をギョウカイ墓場に着いて来させるような命令には従わないだろう。

 

第一、連中にそこまで言うことを聞かせられるならイストワールが疾うに駆り出している。なお、非常に残念だが『人間』の英雄級は居ない。

 

 

『ラステイション』は言うまでもなく、あの変態(グロウ)だ。こいつは割愛しても良いだろう。

 

 

『ルウィー』は確か……『蒼魔』とか言う二つ名を得ていた魔法使いの冒険者だったか?まあ、詳しくは知らんが、確かそいつの身内にルウィー教会の現教祖(西沢ミナ)が居たとだけ記憶している。しかし、こいつはそもそもかなり早い段階で犯罪組織に寝返っている裏切り者だ。言うまでもなく敵だから論外

 

 

『リーンボックス』にはそもそも英雄級の実力者は居ない。それに関しては大体ハクが悪い。

ハクが強いモンスターを片っ端から駆り出した影響で、リーンボックスの冒険者は非常に質が悪い。詳細は割愛するが、居ない方が楽だ。

 

 

総合的に考えるなら、最高とは言い難くてもそこそこの戦力にはなる筈だが……ダメだな。

犯罪組織にあの正義風ロボット(俺を叩き斬った敵)がいる限り、最低でも四天王の半分は各個撃破で削らなければ勝機はないに等しい。もしくは取っ捕まってるネプテューヌ(駄女神)達を全員取り返してそのまま数の暴力に持ち込んでも可

 

だがしかし、ネプテューヌ(駄女神)達は居ない。都合良く四天王が単騎で襲い掛かる事も無かった。

この状況で、四天王と正義風ロボットが全員で襲い掛かってきたら……全滅は免れない……か

 

(……まあ、無いものは仕方がない。本当はやりたくなかったが…………)

 

「?どうかしましたか?」

 

口元に右手を当てて、頭が足りない癖に如何にも考えてますとでも言いたげなポーズを決めているハクの喉を見ながら、俺は本当にこんな事はしたくなかったが、死なない為に仕方なく、ハクに『ある要求』を突き付ける事にした。

 

「端的に言う。吸わせろ」

 

「ッッッッッッッ?!?!?!?!」

 

ドゴン!!

 

…………が、何故か急に顔を紅く染め上げたハクによって顔面に強烈なアイアンクローを掛けられ、軽く持ち上げられたらそのまま問答無用で畳に目掛けて後頭部を叩き付けられてしまっていた。

 

「な……が、Aるい…………ガクッ」

 

「~~~~~~~~ッ!?!?」

 

そして、俺の意識は深くに沈んで逝った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な……が、Aるい………ガクッ」

 

「~~~~~~~~ッ!?!?」

 

(な、なななななにを言うんですかこの人は?!)

 

いきなり人の胸を見たと思えば、吸わせろって……アレですか?絶妙にズレてるのに直球な告白かなにかですか!?

 

(そう言うのはちゃんと時間を掛けて一緒に過ごして絆を育んで……って、いえ、えっとえっとえっとえっと…………?!?!)

 

ああ、どうしましょう?こ、この場合私は一体どうしたら……?!?!

 

 

そんな時でした。

後から振り返ってみると、非常にあり得ない話ではあるのですが、どうしようもなく混乱していた当時の私が上を見て天井の染みを数えていると――――

 

『ハク?』

 

「え?姉さん?!」

 

――――なんと、あまりの混乱っぷりから犯罪組織に捕まっている筈の姉さんの声が聞こえてきたのでした。

 

『事情は分かっていますわ……なので、貴女へ唯一の答えをあげましょう』

 

「答え……」

 

『こう言う時は、いっそのことアナザーの顔を胸に押し付けて、一緒のお布団で寝てしまいなさいな』

 

ええ、ええ……後から振り返ると、絶対に姉さんの声が聞こえる筈がないと断言できますが、当時の私は非常に混乱していた訳で……

 

「え……そうすれば、良いのですか?」

 

『ええ、きっと上手くいく筈ですわ』

 

…………幻聴で聞こえた姉さんの声に従って、アナザーさんの顔を胸に押し付けながら、同じ布団で眠るのでした。

 

 

 

――――アイエフさんが迎えに来るまでずっと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルウィーからプラネテューヌへ帰る為、教会の玄関先でコンパやネプギアと別れてアナザー達と合流をしようと、血塗れな黒い服の人を背負ったシスター風の女性の目撃情報を訪ね回って西側の隅に在る宿屋に着いた私だったけど…………

 

「「……………………」」

 

…………その宿屋の一室に居たのは、布団の中で女の胸に顔を埋めて白眼を剥きながら痙攣する男(アナザー)と、そんな男を胸に抱きながら同じ布団で添い寝してる女(ハク)と言う、状況を分かってんのかこいつら(リア充爆発しろ)と言いたくなるような、独り身には限りなく辛い雰囲気を形成しているバカ二人だった。

 

「……ねえ、アンタ達、バカなの?バカップルか何かなの?」

 

「「違う!!/違います!!」」

 

顔を紅くしてるの(ハク)蒼くしてるの(アナザー)に対して投げ遣りに関係を問えば、返ってきたのは同時に即答での否定…………ハァ

 

「あーはいはい。仲が良いのは分かったから、そう言うのは時間がある時にでもゆっくりヤってちょうだい」

 

(全く……この大事な時にナニやってんのよコイツ等)

 

顔色は違うのに二人揃って違う~だのそんな関係ではない~だのと言う抗議を無視しながら、私はネプギア達を先に向かわせたプラネテューヌ行きの列車が出る駅にまで向かって行くのだった。




因みに、アナザーが要求したのはハクの血です。

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