【更新停止】紅次元ゲイムネプテューヌ 深紅の呪血   作:APOCRYPHA

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第五十話

見上げた空は赤く、大地も荒れ果てたギョウカイ墓場

あの化け物の魔の手を掻い潜ってどうにか帰還したわたしくは、犯罪組織マジェコンヌの幹部クラスに支給されている部屋の中で、ベットに寝転び、枕に顔を埋めながら喜びの笑みを浮かべるのでした。

 

「…………ふふっ」

 

(あぁ、本当に嬉しいです)

 

わたしくは、今回の一件で犯罪神から勇者様を切り離す計画が大詰めになった事を、木彫り勇者様(色付き)を抱き締め、本物に限界まで近付けたその匂いを嗅ぎながら、喜び、狂喜し、悦びました。

あの後の事は知りません。ですが、あの化け物がどうなるかなど、聴くまでもありません。

あの時、確かに感じた悪寒からするとあの化け物は、勇者様に出会って直ぐ、まだ眼も鼻も耳も、肌以外の全てが揃わず、あのクズ共に捕らわれる以前の記憶まで無くしていて心も身体ものっぺらぼうのようだったわたくしに接触してきたナニかの一部――そうでなくても、限りなく近いナニかでしょう。

 

「そう言う意味合いでは、今は亡きイヴェルト(チンピラ)さんからも似たような感じがありましたが……まあ、気にするような事ではないわ」

 

そう、そんな事はどうでも良いの。

わたくしが真に気にするべきなのは勇者様の事だけで、それ以外は全てが無価値!

勇者様が()()()()()()()()()()を求めるならばそのように振る舞いましょう。

勇者様が()()()()()()()()()()()()を求めるなら、何処までも溺れて爛れたいと思えるだけの快楽を、わたくしの生命を削ってでも捧げましょう。

勇者様が()()()()()()()()()()と願うなら、それこそ、全ての計画を捨てて、この終わりが近い命の全てを捧げて果てましょう。

 

それこそが、わたくしの愛であり、全てを与えられたわたしの願いなのだから…………

 

「はぁ……勇者様ぁ……」

 

けれど、そんな想いを懐くわたくしも――いいえ、なまじ何も無かったわたしだからこそ、勇者様人形を抱き締めるこの両腕も、肌も、胸も、眼も、鼻と耳の一部器官もわたしく生来のものではない事に一抹の悲しみを覚えるのでした。

 

「……ふふっ……けど、良いわ。わたしくの身体は、全て、総て、なにもかも、勇者様へと捧げて、わたしく達は1つになるのですから……」

 

しかし、最早、この身体が生来のものである必要など、何処にもありはしません。

この身体は、勇者様に貰った二番目の贈り物(救済)であり、()()()使()()として、永遠に付き従う為の手段を示した唯一無二の手段なのですから…………

 

「あの化け物は、恐らく、今度こそ女神の手で討たれるでしょう。アレはそう言うモノであり、同じ力の恩恵を獲てしまった物の在り方なのですから…………」

 

そう、あちらの主な戦力が未熟な女神達とは言えど、過去の女神の遺産と、如何に本質から歪んでいても、アレを滅ぼす側の使徒に加えて、アレの大本の中でも最大の端末まで居るのだから、あの化け物は勝てません。

 

だから―――

 

【オチロ、オチロ、オチロ、オチロ―――メイドノセカイヘオチテコイ。エイエンノネガイハ、オチタハテニカナウダロウ】

 

「……わたしくは、お前に付き従うつもりなどありません――そう、絶対に」

 

―――わたしくがどうなっても、どれ程嫌われても、完全に磨り潰されても、お前に取り込まれて堪るものですか…………そう、わたしくの()()()()()()()()()()()()()()()()()―――

 

「――だって、後は勇者様を生き残らせるだけなのですから――――」

 

【ハハハハハハハハハハハッハハハハッハハアハハハッハハハッハアハハハハッハハッハハッハ――――――――】

 

わたしくは、脳に直接響く片言の声を全力で無視しながら、ベットの上で勇者様人形を抱き締めるのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

トリック(趣味が合わない上司)から受けた仕事を終えた私は、私的な研究(ホムンクルス製造設備の簡略化)をする為に、ギョウカイ墓場の拠点に用意された私室で只管に、無数の機械を弄っていた。

因みに、材料費はタダだ。ジャンク限定なのは不満だが、その辺に掃いて捨てる程転がっている廃棄されたゲーム機やカセットの中身から部品を頂戴している。

 

「おーい、アレイスtって臭せえ?!」

 

「黙れ下っ端が……ここは貴様のようなガサツな単細胞が入って良い場所ではない」

 

「おい、マジでオメエいい加減にしろよ?アタイは下っ端でもネエし単細胞でもネエ」

 

「知らん。兎に角出て行け」

 

そんな中、何故か入って来た下っ端が開口一番に暴言を放って来たが……まあ、知った事ではない。

 

「だーかーらー、アタイはマジk『操魔のグリモアに命ず。飛ばせ』ってふおおおおおおおぉぉぉぉ?!?!」

 

ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!

 

「…………さて、研究を再開するとしよう」

 

一応、この部屋には様々な精密機器に加え、重要なデータを保存したコンピューターが有る。

それを破壊されては敵わない。懐に何時も仕舞ってある操魔のグリモアを触媒に、事前に保存していた風の中位魔法を下っ端に叩き込んだ私は、改めて目の前に放置してある組み掛けの機械を完成に近付けるべく、スパナやドライバーを振るうのだった。

 

「…………しかし、これだけは本当に予想外だった」

 

この世界へ転生して一番に驚いたのは、一定以上の魔法の研究には機械が必須であり、ホムンクルスの製造には非常に高価な機材が必須であった事だった。

転生前に見たこの世界の概要では、ルウィーは魔法大国で機械文化は疎いとあったが……まさか、禁術クラスの魔法を研究するのに機械技術が求められるとは思わなかった。

 

勿論、ホムンクルスの製造にはある程度覚悟していた。

一応、元の世界で言うクローン技術のようなものだ。それを母体無しで行う以上は、一定規模の施設なり機材なりが必須だろうとは思っていたが……かなりの額の金が必要だった。具体的には、一般人十人の生涯年収分

 

挙句の果てに、禁術クラスの魔法は危険過ぎて使う前にはシュミレーターが必須であり、シュミレーターの内部で感覚をデータ上の義体に移さなければ代償で死ぬ可能性さえある始末だ。

 

「……まあ、幸いにも、代償は魔力で代用出来たが……匙加減を間違えると死ぬな。アレは」

 

実際、アレは酷い。

確かに威力は申し分なかった(一撃で山を消し飛ばすレベルの威力だった)が、必要とされている魔力しか籠めなかったら代償に心臓を持って行かれた。シュミレーターで形成されていた義体でなければそのままあの世逝きは確定だろう。

 

「しかも、あの後代償を魔力で代替したらあの禁術の1発(心臓を必要とした禁術)で総魔力の半分は持って行かれたぞ……軽く見ても上級魔法30発分だな」

 

全く、何なのだろうな?この禁術と言われる魔法は

明らかに人間が使用する事は考慮されていない。

それ故に術者に求められ、消費される莫大な魔力を補おうとして山を消し飛ばす程度と言う最低ラインの水準でしかない禁術一発で心臓を持って行かれてしまう。

それ以上の威力(時間や空間を破壊する威力)を求めるなら、半身や魂を喰い潰される。

 

確かに、その効力は補助や回復の系統であっても凄まじいものだが、ランクが上がって威力を上げる程にその分だけ代償も大きくなっていく。

私が知る限りでは、禁術を連発出来るような存在など、それこそゲイムギョウ界の旧き神話に語られるような――――

 

「……ふん、くだらんな。私とした事が、耄碌したか?」

 

考え過ぎであるな。

そんな事など、ある筈もあるまい。

 

「それこそ、禁術が連発出来る一番現実的な存在は、先日復活させた、犯罪組織四天王の先代位のものだろうよ」

 

そうだ。

あんな化け物を超える神の存在など、ある筈もない。

あの歴史好きな老人に聴いたゲイムギョウ界創成期を記した神話にある始まりの双神とやらは、存在しない単なる創作だろう。

 

「さて、私はさっさとホムンクルスを造り出して、禁術の威力を削がずに代償を削る研究でも続けるとしよう」

 

まあ、そんな事はどうでもいい。

今私が願うのは、一刻も早くホムンクルス(人形)ハーレムを形成し、それらを助手にして趣味の禁術研究を完成させる事だけなのだからな。

 

「……む」

 

そんな時だったが、懐かしき故郷の風景を観た影響からか、私は普段なら気にもしないような事を思い出していた。

私の肉親は犯罪組織に入る前に殆ど始末したが、思えば1人だけ、何年も前から教会の職員として働いていた関係上、殺せずに放置しておいた物が居たのだ。

 

「…………そう言えば、姉貴はどうしているのだろうか?もしも生きているなら―――」

 

―――その美貌の如何に依っては、最高のホムンクルスの為の素材として活用してやるのも一興だ。


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