【更新停止】紅次元ゲイムネプテューヌ 深紅の呪血 作:APOCRYPHA
「それは―――」
『それは?』
エルマさんは数秒程沈黙した後に、こう言いました。
「…………それは、とある『怪物』を封印する為よ」
そんなエルマさんは『怪物』の部分にだけ、まるで親の敵を語るような、或いは、どうしようもない程に不運な人を憐れむような……とにかく、絞り出すような声からは凄まじく複雑な想いが滲んでいました。
「かいぶつさんですか……?モンスターさんなら、お外にいっぱい居るですよ?」
それに対してコンパさんは
「………………アレは、モンスターなんて
「アレは、今から約1000年前に現れたマジェコンヌが、この世界に解き放った死と絶望の権化」
「アレは数え切れない程の人間を溶かし」
「アレは、当時の女神の半数以上を手に掛けた」
「それだけの犠牲を払って、どうにかこの地へと封印出来たの」
コンパさんの問いに対して、エルマさんは表情を殆ど変えずに淡々とした口調で話しています……ですが、先程の『怪物』と言う言葉の所為か私にはその無機質さは何処か無理をしているようだとしか感じられないのでした。
「…………」
『…………(すぅ…すぅ……)』
そうして暫くの間、気不味い沈黙が続いた時でした……
「……あ、火が消えて……………………」
先程まで燃え盛ってた焔が消え去り、その中身が露になったのです。
「…………えーっと、これも説明して貰っていいかしら?」
「……元々、そのつもり」
なんと、燃えていたのは(半ば予想はしていましたが)先程まで凄まじい勢いで大暴れしていたアナザーさんなのでした。
確かに、彼ならあれだけ燃えててもしぶとく生き残りそうだとは思いましたけど……こう言ってはなんですが、殆ど火傷さえしていないのには一周回ってその頑丈さにドン引き……とでも言うべきでしょうか?
(……あれ?でも、アナザーさんってそんなに頑丈じゃなかったような……?)
「……とは言っても、わたしも全部把握している訳じゃないし、全部言える訳じゃないわ」
「別に、それで良いわ。言える範囲がよっぽど少なくない限りはね」
「……ん、言えないことはあんまりない……でも、その前に」
言えないことはあまりないと言ったエルマさんは、そのまま私の方を向くと……
「……これ、よろしく」
「え?……あぁ、はい」
そのまま、エルマさんの鎖に縛られていたアナザーさんを投げ渡してきたのでした。
(……取り敢えず、鎖を外してと……)
「……話せば長くなるけど……何処から説明する?……ん、そう、その辺」
「じゃあ、早速、キリキリ吐いて貰うわよ?」
「……ん、まず第一に、アレが燃えていたのは、この結界の効果の一部」
そう言うと、エルマさんは先程物質化した黒板へデカデカと結界の二文字を書き、その下へ番号を振っていきました。
「…………言うまでもなく、この結界の効果の1つは、あの怪物の封印にある」
そして、一番目には【怪物の封印】と書き込みます。
まあ、そもそも封印するのに封印の対象を出られるようにしては意味がありませんし、当たり前ですよね。
「…………まあ、当たり前の話しだから、ここで一旦終わらせる。次に、この結界の内部では、様々な恩恵がある。1つはこれ」
【女神に属する存在の強化】
「すごいじゃない!?」
「これなら、犯罪組織を倒してねぷねぷ達を助けるのなんてわけないです!」
コンパさんやアイエフさんは喜んでいますけど……でも
「……言っておくけど、この結界は維持するより張る方が難しいわ。専用の触媒が要るし、術者にも相当な負担を強いる禁術も使われてるから、術者も居なくなって失伝してるだろうし」
「まあ、そんな事が出来るんならお姉ちゃんやグロウ辺りがとっくにやってるでしょうしね」
案の定、この結界を張るのはまず不可能と言う事が明言されただけでした。
仮に必要な触媒及びに複雑怪奇な結界の式を調整可能な術者の確保が出来ても、これだけの大結界です。一体どのような代償がある事か……考えたくもありません。
「…………尤も、これだけやってもわたしに出来たのは足留めだけなのだけれど……っと、それは良いわ。問題はこの効果よ」
【特定の存在の弱体化】
「…………まあ、あの怪物にしかこの結界はこの力を発揮しないのだけれど」
「……あの、これでどうしてアナザーさんは燃えたんですか?」
「それは……」
エルマさんは、ネプギアさんからの質問にどう答えるのかを考えあぐねているようですが、私は大体の予想が付きました。
「それは…「その怪物の力か血でも吸収して内包していたから……ですか?」……そうよ」
案の定、ですね。
あの戦いを見た限りでは、明らかにアナザーさんはアナザーさん自身の限界を大幅に超えた力を振るっていました。
これまで説法してきた限りだと、アナザーさん自身にも限界を超える力を発揮する方法は持ち合わせているようですが……もしも、あれだけの力を振るえるなら私に対して何の躊躇もなく使っている筈ですしね。
「あなたが言うように、これは何故かあの怪物の力を吸い上げて自分のものにしていた……まあ、完全に馴染む前にこの結界に入ったから、殆どは消滅している筈だけれど」
「それは良かった。流石に、あのままの状態でゲイムギョウ界に放す訳にはいきませんでしたから」
『え』
ええ、誰にも止められなくなったアナザーさんを野放しにする事は、流石に私だって出来ませんからね。最悪、このまま殺してしまう事も止む無しと考えていましたが……そんな事がなくて良かった。
そんな時でした。
「……ぎ"、あ"あ"…………」
「あ、目を覚ましましたか!?」
気絶していたアナザーさんが目を覚ましたのは……
「あ"、あ"あ"ぁ"あ"ぁ"??」
なにやら、声が擦れていますが……まあ、そのぐらいなら大丈夫ですよね。
「皆さん!アナザーさんが目を覚まs「が"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"!?!?」って危ない!?」
「ガフッ!?!?」
目を覚ますと同時に、先程処か普段よりも遅い拳を振るってきたアナザーさんに対して、ついうっかり、普段のノリで頭を掴み、膝の上に戻してしまいました。
「………………あ」
(…………ヤっちゃった☆)
ま、まあ……ダメージは相当大きいようですし、もう一度眠って貰いましょう。
「と、とにかく!まだまだダメージは消えていないのですから安静にしていてください!」
「ガァ!?!?!?!?」
取り敢えず、私はアナザーさんの頚を軽く〆てその意識を強制的に落とすのでした。
『……………………』
「さ、さあ!他にもまだまだ聞きたい事はありますからね!説明を続けてください!!」
―――この時、この光景を見ていた全員は、心を1つにしてこう思ったそうな……
(((((あ、誤魔化した)))))
と、言う訳で、次回からは〆落とされたアナザーも目を覚ましてますよ。
……ハクはマジで容赦ありませんけど、まあ…急に襲われてテンパってたってことで1つ。アナザー抹殺案も、流石に個人の為に全体を危険に晒すのは良くない的な考えですし…………
…………え?残りの説明……?
…………めんどくさいです!(ォィ)