【更新停止】紅次元ゲイムネプテューヌ 深紅の呪血   作:APOCRYPHA

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第四十話

ルウィーの教会に備えられている、女神用の執務室。

そこでは今、ものすごく重苦しい空気が漂い、私達の胃を荒らしていました。

 

(えー、ネプギアですが……執務室の中の空気が最悪です)

 

「それは……あの子達を危険な旅に差し出せと、そう言うことですか?」

 

「他にどう聞こえる?言っておくが、これは要請でしかない。嫌なら嫌でも一更に構わんが……その結果は言うまでもあるまい?」

 

「……それは、どう言った意味でしょうか?まさか、私達(ルウィー)の女神を見捨てると?」

 

「はっ……そう聞こえなかったのか?少なくとも、俺から言わせればプラネテューヌの女神(契約相手であるネプテューヌ)さえ救出出来ればそれで問題はない。他の連中はついでに過ぎん」

 

ルウィーの教祖さん――西沢ミナさんが眉間にシワを寄せてアナザーさんを睨み、とっても不愉快そうに、この国の女神(ブランさん)を見捨てるのかと問い詰め、アナザーさんはそれに対してあっさりと肯定を返してしまいました。

けど……

 

「アナザーさん!?私達は他の女神を見捨てたりなんて「お前は黙っていろ。今は俺が話している」あぅ」

 

私は、それを認めないと言おうとしたのですが、問答無用でギロッと睨まれて黙れと返されてしまいました。

 

「ご生憎さま、アタシは黙らないわよ!アンタ、お姉ちゃんも見捨てるつもり!?」

 

「………………」

 

アナザーさんを睨むユニちゃんと、相変わらず笑顔なハクさん(候補生同士仲良くしようと言われたけど、どうしてかついついさん付けしてしまいます)はアナザーさんの言い分で自分のお姉ちゃんが心配になってアナザーさんを問い詰めますけど、それに対してアナザーさんは訳が分からない物を視るような、とても冷め切った眼差しをユニちゃん達に向けながら、口を開きました。

 

「……何を訳の分からん事を言っている?お前達がプラネテューヌへ協力する限りは俺とて労力の提供程度は行うが?」

 

「ハァ?なにが言いたいのよ!」

 

「ふん……お前達(女神候補生)がゲイムキャラを持ち、プラネテューヌへ協力する。代償にプラネテューヌはその国の女神も救出する……これは各国の教祖が取り決めた条約である筈だが?」

 

…………唐突な新事実が明らかになっていました。

それだけ言い切ると、アナザーさんは西沢ミナさんへ再度向き直り、再三に渡って要求を突き付けました。

 

「…………それで、お前はどうする?協力を頑なに拒み、何もかも(女神もゲイムキャラも)失うか、素直に協力して共に女神を救出するか…………言っておくが、これは最終通知だ。これ以降俺がこの問いを受け付ける事はせんし、この提案を蹴った所で俺がゲイムキャラ確保を止める訳ではない」

 

――――さあ、どうする?

 

「……………………」

 

そして、ミナさんはその問いに対して、数瞬の間を於いて絞り出すように声を上げました。

 

「……どちらも、認められません。少なくとも、私は……幼いあの子達を危険な戦場へ赴かせたくはありませんし、なによりもゲイムキャラをこの国から持ち出す事を認める事はけして出来ません」

 

「……そうか」

 

その答えは、完全な拒絶でした。

ただ、この国の女神候補生の話しとゲイムキャラさんのお話しではちょっとニュアンスが違ったような……?

 

「…………そうか……なら、お前を斬り捨て必要な情報を持つ職員なり、女神候補生なりを探し出して、拷問でも加えながら聞き出すとしよう……」

 

『ちょっま』

 

そして、そんなミナさんの主張に対して思うところでもあったのか、アナザーさんが不穏な空気を纏いました。

私達もそれを止めようと動いたんですけど……

 

「はいは~い。ダメですよ~?」

 

「ガフッ!?」

 

『…………え』

 

けれど、私達が止めるまでもなく、アナザーさんが腕をミナさんへ向けたと同時にハクさんはのんびりした喋り方をしながら、何時も通りの微笑みを浮かべ、まるで世間話でもするかのような自然さでアナザーさんの脳天へと、急に具現化させた大きな剣の腹を降り下ろして鎮圧してしまいました。脳天直撃です。

 

「まったく、いきなり『交渉は俺がやるからお前は黙ってろ』……なんて言い出したかと思えば、なんで貴方は必要もないのに誰かを殺すなんて言うのですか?命は誰のものであれ1つしか無いのですよ?それに、以前約束しましたよね?不用意に人を殺めないと……お忘れですか?」

 

「………………」

 

「西沢ミナ教祖……すみませんが、懺悔室をお借りしても?」

 

「え?……え、ええ…勿論構いませんが……?」

 

「では、わたしはこれで……ネプギアさん、申し訳ないのですが、後でギルドで落ち合いましょう?…………わたしは、貴女の決定には従いますから、ね?」

 

そう言って、気絶しているアナザーさんを背負いながら、ハクさんはこの教会の執務室から出て行ってしまいました。

 

「…………ふぅ」

 

「……えっと……アナザーさんが無茶苦茶言ってごめんなさい」

 

「あ、いえ……気にしないでください。わたしも、無茶を言ってる事は自覚していますから……」

 

ミナさんも、緊張の糸が切れたかのように安堵の溜息を漏らしています。

 

そして、そんな感じに和やかな雰囲気になっていたその時でした。

 

「西沢教祖!一大事です!!」

 

バン!!と、大きな音を立てて扉が開かれ、ルウィー教会の職員の服を着た人が飛び込んで来て……

 

「何事ですか?」

 

「ロム様とラム様が犯罪組織マジェコンヌに浚われました!我等の兵士も必死に抵抗したのですが、敵に転移魔法の使い手が居た為に、何処とも知れない場所へ逃げられてしまい、只今一生懸命捜索している最中であります!!」

 

……とんでもない爆弾を落としました。

 

「「………………………え?」」

 

「た、大変ですぅ!?」

 

「そ、そうね。急いで助けに行きましょう!?(……でも、何で女神がそんなに頻繁に捕らわれるのかしら?)」

 

「嫁を攫うなんて……許せない!!RED.ちゃんが成敗しちゃうんだから!!(嫁が攫われるのってすっごく王道だよね!)」

 

「………………………………」

 

って、あれ?

 

「あ、あの、ミナさん?どうs『バタッ』……エエエエエェェェエエエエ!?」

 

何の反応もないミナさんの肩に触ると、ミナさんはそのまま床へ倒れてしまいました。

 

「あ~……ネプギア、そっとしておいてあげなさい……コンパ、西沢教祖を医務室まで運んであげて?」

 

「任せてくださいです。えっと、医務室はどっちですか?」

 

「……あ、はい。こちらです」

 

「キュ~…………」

 

そうして、倒れたミナさんはコンパさんが職員の人の案内で医務室にまで運んで行ってしまいました。

 

「…………さ、これからどうするか、話し合いをしましょう?」

 

「そうね……ま、言うまでもないかもしれないけどね!」

 

そして、倒れたミナさんを医務室に運びに行くコンパさんと、懺悔室に行ってしまったアナザーさんとハクさんを除いた面々で、この後の事を話すのでした。

 

(…………私が気絶したミナさんに親近感をを憶えたのは秘密です)

 

話すのでした。




…………因みに、アナザーのネプ子さえ救出できればそれで良いって言うのは本音です。他の女神はついでですね。
元々、女神救出に対してやる気なんてないに等しいアナザーですが、一応当人なりの理屈でそれなりに頑張ろうかと動いています……が、その結果はこのザマです。
一応、交わした約束こそそれなりに守りますが、目的の達成に必要ないし邪魔だと認識したら何の躊躇もなく他者を害するタイプです。(……まあ、流石にいきなり相手から一方的な裏切りや事前に交わしていた契約の破棄なんてしなければ敵でもない物を殺したりはしませんけど)

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