【更新停止】紅次元ゲイムネプテューヌ 深紅の呪血   作:APOCRYPHA

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第三十九話

ルウィーの教会で色々とアレな惨状が繰り広げられている中、その教会を擁している首都では平穏(?)な光景が広がっていた。

雪が積もった公園では子供が雪遊びに夢中になり、各家庭では炬燵と蜜柑を完備してある居間で休日の学生や大人達が、炬燵で暖まりながらゲームをしたり、迷い込んで来て炬燵の上で丸くなる猫を眺めて寛いでいる。

 

それらの光景は紛れもなく平穏そのものであり、平和な街並みの象徴とも言えた。

民衆達は、何処までも平穏な暮らしを甘受しており、その幸福は何時か天寿を全うするその日まで続くと、欠片も疑ってはいなかった。

 

 

【……ある一点の機械が、その平穏を完膚なきまでに崩す兵器(地雷)とは知らずに、ねぇ?】

 

 

…………その街の一角で白昼堂々とある違法機械の販売営業が行われている現状は、その平穏の全てを崩壊に追い遣るとも知らずに――――――――――

 

 

【アッハハハハッ―――――――!!!!】

 

 

 

 

 

 

 

 

「はーい。みんな寄っといでー!楽しい楽しい犯罪組織マジェコンヌだよー!」

 

アタイは、慣れない愛想笑いを浮かべながら、周囲のルウィー国民にビラを配る。

 

「マジェコンヌに入信すれば、どんなゲームもタダで遊べちゃう!好きなだけゲームし放題だよー!」

 

勿論、このセリフは定型文だ。アタイにはこのセリフを繰り返しながらビラを配る方が向いていると、何ヶ月か前までビラ配りをやってた時に学習済みだからだ。

 

「…………はぁ。なんでアタイはビラ配りなんてみじめな真似しなきゃなんネエんだろうな」

 

「……………………そんなにお嫌いでしたら、今すぐにでもアレイストやイヴェルトの元へ帰して差し上げましょうか?」

 

「うおっ!?リリス大隊長?!い、イヤー、キョウモガンバッテビラクバリダー!タノシイナー(棒)」

 

「そうですか……では、わたくしはもう少し各所を回って来ます。貴女はその箱に入っている物を空にしなさいな」

 

言いたい事だけを言って、リリス大隊長はルウィーの街の人混みの中に紛れて何処かへ行っちまった。

現状のみじめさからついつい本音を漏らしちまってたが、アブねえアブねえ……後ちょっと誤魔化すのが遅かったら、またあの地獄へ送り返される(大隊長2人にボコられる)所だったぜ。

 

「寄っといでー!楽しい楽しい犯罪組織マジェコンヌだよー!」

 

けど正直、あの人の事は今一よくわかんネエんだよな。

大隊長なんて御大層な身分をやってる割りに、頻繁にこんなビラ配りなんかを頻繁にやってるらしいし?そもそも、ブレイブ・ザ・ハード様は他に直属の部下ってモンをこの人しか抱えてネエし?……まあ、そこはアタイが尊敬してるマジック様も同じだけどよ。何でか知らねえけど、マジック様はアタイ以外の部下を直属にしてはいネエ。

 

なんでも、2年前まではサイって言う女の大隊長を抱えてたそうだけど、そいつがプラネテューヌであのバケモンにぶっ殺されて以来、アタイを拾って来るまで1人も新しい直属の部下を持たなかったとか、なんとか

 

「マジェコンヌに入信すれば、どんなゲームもタダで遊べちゃう!好きなだけゲームし放題だよー!」

 

……まあ、んな事は後だ。

今はとにかく、この意外と物が詰まってる箱の中に入ってるチラシだのフィギュアだのブレイブ・ザ・ハード様の木彫りだのを…………ん?

 

「……ブレイブ・ザ・ハード様の木彫りなんざウチの商品に在ったか?」

 

しかも、やけに精巧に造られてる上に色付けまで完璧にされてるのが幾つも…………心成しか、犯罪神様の姿を模したとか言う触れ込みがあるフィギュアより出来が良いし

 

(まあ、箱に入ってるって事は商品なんだろ……えーっと、なになに?一体辺り単価2000クレジット…………高いのか?これ)

 

なんとも微妙な値段設定だった。正直な話し、犯罪神様のフィギュアの方が値段的にも需要的にも高く付「ああ!この間の悪い人だ!!」「……悪いこと、めっ」…………あァ?

 

「もー、またこの下っ端だねロムちゃん!」

 

「……こんな事しちゃ、めっ(ぷんぷん)」

 

「へっ、んな事アタイが知るかってんだ!そして、誰が下っ端だ誰が!!アタイにはリンダって言うちゃんとした名前がなァ!!」

 

誰かと思ったら、2、3日前にアタイをぶっ飛ばして商品(マジェコン)をぶっ壊して行きやがったこの国の女神候補生だった。

 

「えー?でも、こうせいいんってえらい訳じゃないんでしょー?だったら下っ端じゃない!ねーロムちゃん?」

 

「うん……それに、この間戦ったら、とっても弱かった(しょんぼり)」

 

「一応これでも最近上級構成員に昇格したんだよ!バーカバーカ!」

 

しかも、アタイの事を下っ端だなんだと見下してきやがるオマケ付き……しかし、こんなちっこいなりでも実力は女神相応と言えば相応だ。

途中でとんずらしたとは言え、あの地獄のような鍛錬(アレイストとイヴェルトによる扱き)を潜り抜け、心身共に大幅なパワーアップを遂げたアタイを歯牙にも掛けず、ムカツク事に無駄に有り余ってますと言わんばかりの才能で炎と氷の魔法攻撃をぶっ放なって来たのは記憶に新しい。

 

「じょーきゅうこーせいいん??ロムちゃん、それってすごいのかな?」

 

「……わかんない(ふるふる)」

 

(スゲエんだよバッキャロウが!)

 

見た目相応のおつむしかネエのは不幸中の幸いかもしれねえが、正直、これはこれでマジムカツク……!!

ただ、今回ばかりは何もせずに逃げ出す訳にはいかネエ。今度んな事をしたら、リリス大隊長にあの地獄の特訓場へ送り返されるのが目に見えてるからだ。

 

そして、事態はアタイにとって最悪の方向へと向かって行った。

 

「ま、ぶっ飛ばしちゃえば良いよね!」

 

「うん、お姉ちゃんを攫ってこの国を荒らすマジェコンヌ……嫌い(ぷんぷん)」

 

「じゃあ、やっちゃおう!」

 

「うん、やっちゃおう?」

 

そして、目の前のガキの姿をした怪物はアタイの敗北を決定的なものにする一言を告げる。

 

プロセッサユニット、セット(いっくよー!)

 

「チイッ!?負けるかってんだ!どっからでもかかって来い!!」

 

「…………ていっ」

 

しかし、妙に気が抜ける声が聞こえ、光に覆われた視界が開けると――――

 

「……は?」

 

『きゅ~』

 

「とまあ、こうすれば非力なわたくしにも簡単に鎮圧可能な訳ですけど……この程度の仕事も熟せないのですか?だから貴女は万年下っ端なのですよ?」

 

そこには、あっさりと倒されて目を回してやがるクソガキ共と、その背後でぱんぱんと手を払っているリリス大隊長の姿があった。

 

「さ、この子達を連れてこの町から出ますよ?貴女はその箱の中身をきっちりと回収してからわたくし達の拠点に来なさいな」

 

「え?あ、ああ……はい。了解しやした」

 

そして、リリス大隊長は目を回してやがるクソガキ共に妙に手慣れた手付きで縄を回してきっちりと縛り上げ、そのまま魔法でも使ったのか、クソガキ共をふよふよと浮遊させて、本人曰くこの国にある犯罪組織マジェコンヌの拠点へと向かって行っちまった。

 

「…………えー」

 

しかし、アタイの心中には微妙な気分と消化不良感が残った。


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