【更新停止】紅次元ゲイムネプテューヌ 深紅の呪血   作:APOCRYPHA

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今回は、なにやら不穏と言うか、混沌の足音が聞こえて来そうな感じです。


第三十二話

深々と

極寒の冬にして豪豪と吹き荒ぶ雪の中、ルウィーの公園へと歩む1人(?)の巨大な人物(??)があった。

 

「……………………」

 

その人物は――――まあ、人物と言って良いのかは判らないが、そこは一旦置いておこう――――その人物の姿は、到底人間と呼べるようなものではなかった。

その姿は、出来の悪い蜥蜴の人形のような風貌であり、異形としか言いようのない特徴的な容姿であった。

 

「ゼエ、ゼエ…………」

 

特に、大きく裂けた口とそこから零れる長い舌は、この出来の悪い蜥蜴人形の出来の悪さを更に強調しているようであった。

 

「ガフッ……おの、れ……ゼエ、ゼエ、ハア、ハア………よう、じょを……この舌で…舐め回す、ま…で……消えて……か!!」

 

しかし、妙に様子がおかしい。

その異形は一歩踏み締める毎に息を切らし、長い舌を力なく垂れ下げて頭を振るう。

極寒の寒さ故かと思われるが、そもそもまともな防護服も無く、その極寒に身を差し出している時点で、異形の姿もあり、到底防護服が必要とは思えない…………まあ、口走っている事は何処をどう捉えても頭が可笑しいとしか思えないが

 

「キサッ?!……アクッ!?アックククククククククククククククク?!?!?!?!」

 

『…………………………………………………………』

 

この異形―――トリックは、ルウィーの公園に足を踏み入れた瞬間に、その執念の限界を迎えて、数瞬ほど狂ったような……或いは、死を前にした断末魔の様な狂笑(怨嗟)を挙げ、そのまま完全に沈黙した。

 

そして、そんなトリック(?)に対して、近寄る小さな影が一つ…………

 

「…………ん、久しい」

 

その小さな影は、幼い少女―――いや、童女と言っても差し支えないような、幼い少女だった。

しかし、こんな猛吹雪が吹き荒れる中の悪天候としか言いようのない天候で、ピンクのジャージ姿でいながら凍えるような素振りも無く、長く艶やかな黒髪を振り乱される事も無く、満月の様な金色の瞳を瞬かせる事もないこの童女が単なる童女である筈もなかった。

…………まあ、そもそも普通の童女であれば、猛吹雪とかの前に先程のトリックの姿を見た時点で腰を抜かして怯えているか、全速力で逃げ出しているだろうが、そこは置いておく。

 

『……ああ、そうだな―――エルマ』

 

「ん……トー……トリックは息災?」

 

そうして、無表情で小柄ながらも美しい、エルマと呼ばれた童女の姿をしたナニかと、雰囲気処か口調や表情まで、容姿以外の一切合切が先程とは別物同然にまで変化してしまったトリックは、まるで旧友と再会したかのような親しみが籠った笑みで笑い合っていた。

 

『くくっ…吾輩を誰だと思っているのかね?当然、息災であるとも』

 

「そう、それは僥倖」

 

そう、トリック(仮)が述べると、エルマと呼ばれた童女は嬉しそうに―――しかし、少々複雑そうに、何とも言い難いと言わんばかりの表情を浮かべ、こう、トリック(仮)へと問い掛けた。

 

「……わたしが頼んでおいて難だけど、あの性格はなんとかならなかったの?」

 

『…………………………言うな。吾輩もはっきり言えば恥じている』

 

その問いは、トリック(仮)が先程までの狂乱し、今のトリック(仮)に変化(回帰)するまでの、『犯罪組織の幹部:トリック・ザ・ハード』としての意識の事を指していた。

 

『そも、あの意識は犯罪神が吾輩の■をベースに無数の■を混ぜ合わせ、その果てに生まれたものだ。断じて吾輩の意志でも趣向でもないのだよ』

 

しかし、どうにもこのトリック(仮)も先程までの人格の事はよく思っていないらしく、その意とああなった原因を示す事でエルマからの誤解を解こうとしたようだが…………

 

「…………2000年前の、まだ見た目通りだったわたしに求婚をしてきたのは誰?」

 

『ガフッ?!?!』

 

…………しかし、それでもなお、エルマにとってはトリック(仮)の言葉は信じるに足りなかったらしい。過去の前科を持ち出され、トリック(仮)は精神的ダメージから血を吐いて倒れた。

 

『い、いや、アレはだな?吾輩すっかり大人の女(クソババア)の心無い悪辣で最悪で卑劣極まりない手口で色々と傷心だったと言うかなんと言うか……?!?!』

 

「……フフッ、冗談だよ」

 

そして、全力で弁明を始めたトリック(仮)だったが、そんな慌てた姿を見て満足したのか、無表情な表情を少しだけ緩め、軽く微笑みながらエルマは冗談だった事を告げ…………

 

『……ホッ、なんだ、冗談なのか』

 

「うん、半分だけ」

 

『カハッ!?』

 

更なる言葉を叩き込み、再度トリック(仮)に精神的なダメージを与える事で、満足したのか、悪戯っ子のような笑みを元の無表情に戻し、こう切り出した。

 

「……そっちはどう?わたしは、多分もう限界が近い」

 

『……うむ、吾輩の方は大凡、十分に用意も完遂した。後は、キーが揃うのを待つばかりだ』

 

「…………そう」

 

その言葉を聞くと、エルマは月を見上げ、幼い見た目に見合わない慈母のような表情を浮かべ、こう呟いた。

 

「…………そう――――安心した。ありがとう」

 

それだけ言うと、月を見上げたまま、エルマは何の前触れも無しに、まるで幻かなにかだったかのように何処へともなく消えて行ってしまった。

 

『…………さて、吾輩もコレの記憶を弄ったら早々に帰るとするかな』

 

そして、トリック(仮)も、猛吹雪の中、何処へともなく去って行った。




因みに今回の章ですが、マジで混沌です。普通にオチは決まっていますが、その過程が原作を完全破壊してます。(まあ、もう既にぶっ壊れてるけど)

…………所でどうしても聞きたいんですけど、もしも紅次元が救世の悲愴ルートに突入したらどうなるかって見たいですか?大体の構想は決まってるので、要望があれば書こうと思ってるんですけど
活動報告でアンケートを採ってます。ご協力願います。

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