Re:ゼロからはじめる俺のハンター生活は間違っているのだろうか   作:名無し@777

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クリスマス記念ss 俺のクリスマスパーティはやはり間違っている。

 突然ではあるが「苦離栖魔栖」という行事をご存じだろうか。

 恋人がいない者は街を歩くなと言わんばかりにカップルイベントが乱立し、それに対抗できる強靭な独り身には侮蔑の目線を送ってくるという人類史上最悪の行事である。加えて、ボッチには友人と共に「友達とクリスマス(笑)」なんて言えることもなく、真冬に心身ともに冷え切ってくるのだ。よってこんなイベントは即座に廃止するべきであり、金輪際こんなクソ行事を造り出すべきではない。だが、今回ばかりはこのクソイベントに救われたから強くは言えないのが悔しい。

 ワックスで固めた髪がゴアゴアして気持ち悪い上に、礼装は肩がこるからストレスが溜まってく。さっさと解放されたいものだ。

 

「――ぱい、せんぱい、ちゃんと聞いてます?」

 

「ああ聞いてる聞いてる、リア充どもを滅するんだろう」

 

「違いますよ……。クエストの件です」

 

 心底呆れながら俺にため息を吐いてくる彼女―― 一色 いろはは肩を落とした。

 

「あのですねぇ、私は休日を返上してせんぱいのお手伝いをしてあげているんですよ」

 

 今日はクリスマス。突如の高額報酬依頼を受けるために一色は俺によって召還された。コミュ力の化身である一色は当たり前の様に休みであったが、他の受付嬢に依頼をだすわけにはいかない。何故ならば、俺が受けるクエストは俺史歴最高難易度のものであるからだ。このクエストは俺一人ではどうにもならない、なんならクエスト受けることすらできない。だが、小町と雪ノ下へのプレゼントを買うためにはこのクエストをクリアし、大金を手に入れるしかないのだ。

 ぶっちゃけ、一色の休みがどうのこうのは少しばかり心が痛むがそれだけでしかない。

 

「おう、そうだな」

 

「だからクエスト終了後、私と遊ぶ場所はどこにするのか、はやく教えてください」

 

「いや、そもそもその事実を初めて知ったんだけど。クエストの後とかクソ疲れてるから帰らせろ」

 

「じゃあ手続きしませんし、手伝いません」

 

「おま、仕事放棄とかやっていいと思ってんの?」

 

「それがものを頼む人の態度ですかねぇ」

 

「うぐっ」

 

 可愛く首をかしげる仕草は男の心を射止めるには十分な破壊力だが、俺には邪悪な笑みを浮かべる劣化雪ノ下さんにしかみえない。怖い、怖すぎる。

 

「……わかった。また空いている日に一色が行きたい場所にいけばいい。それで手を打ってくれ」

 

「やたっ! じゃあ早く行きましょう!」

 

 一色は俺の廃れた返答を聞いて裏方へと姿を消した。ドタバタとした音が静まるとともにドレス姿で俺の前に現れる。

 

「ほら、はやく行きましょう!パーティに!」

 

 

 

 俺が平塚師匠からのクエストを受けたのは一昨日の事だった。師匠からの珍しい依頼内容はなんと「パーティの参加」だった。

 ロズワール・L・メイザース卿主催のクリスマスパーティが今宵開かれるらしく、平塚師匠はこれに参加しろとのお達しだ。何故俺がとも思ったが師の願いを無下にできるわけもない。なによりも報酬額がいい、とてもいい。

 

「せんぱーい、馬車に乗り込んで今更ですけど、何処で開かれるんですか?」

 

 所定時間に来た巨大な馬車に乗り込み、豪華な内装の中で俺達はくつろいでいた。外装から金銀の鱗で装飾されていたことから、内装も容易に想像できた。その想像は外れる事なく、天然素材のウールを使用したソファに小さなシャンデリア。これでは小さな屋敷と錯覚してしまう。

 

「ロズワール卿の屋敷で開かれる。これが問題でな、辺境の地に建てられているらしい。そのせいで参加者が少なくて開催者の興が乗らないんだと」

 

「それで呼ばれたわけですか。でも、平塚さんはそんなにパーティを開いてほしかったんですかね」

 

「そりゃあお前、格式の高いパーティにはそれ相応の奴等が来るからな……」

 

「あっ、なるほど……」

 

 平塚師匠が目をギラつかせて男漁りをする姿が目に浮かぶ。悲しきかな、その必死さ故に男は逃げてくのだろう。

 

「で、女性を同伴させることがクエストを受ける条件だったと。それで私が選ばれた訳ですよね」

 

「そうだな」

 

「な、ん、で、私なんですかぁ?」

 

 ニマニマ笑みを浮かべて俺に問いただしてくる。

 

「あー、なんだ。あれだよあれ。雪ノ下と小町にこんな事頼める訳ないし、それ以外にこんな頼みができるのはお前くらいしかいなかったからな」

 

「はぁ。他に理由はないんですか? 例えば可愛い後輩がいたからこの機に落としに行こうと思っているからとか。はっ、もしかして私にそれを気づかせようとわざと遠まわしに適当なことを言ったんですか。落とされそうですけど女々しいやり方はすきじゃないのでごめんなさい」

 

 一字一句噛まずに長文をいえるとは雪ノ下かよ。だが甘い、雪ノ下はその倍の長さと早さで罵ってくるぞ。

 

「いや、だからなんで俺告ってもないのに振られてんの? クリスマスにふられるとか泣くしかないんだけど」

 

「ふん、こんな可愛い後輩をふった罰ですよ」

 

 そっぽを向いて頬を膨らます一色を改めてみると確かにいつもの数段可愛い。淡いエメラルド色のドレスに大きなリボンお腹付近についている。それ以外に装飾はなく、そのおかで素材の良さを際立てているのだ。化粧も薄く、白色のリボンで髪をまとめているからか、一色のイメージは俺達ボッチが想像する清楚系女子へと変貌していた。

 

「あー、その、ドレス、似合ってんじゃないの?」

 

 一色の方をみてこんな恥ずかしい事など言えるわけもなく、顔を逸らしてしまう。

 

「そ、そうですか……」

 

「せんんぱいもその、かっこいいです……」

 

 きっとこの時に、一色の方を見ていたら俺は告白して振られてしまったのだろう。

 

 気まずい雰囲気のなか、俺達を乗せる馬車は三十分ほど揺れて目的地についた。

 乗車した場所から景色は一変し、自然豊かなものへと変わってる。そして、心落ち着かせる景色をバックに俺達の目的地――ロズワール・L・メイザースの屋敷が建っていた。広がる庭園には数々の花々が咲き誇り、整えられた造園は日々手入れをされているのだとわかる。それに加えて屋敷からは独特なクラシックがここにまで聞こえてきた。だが、楽しそうな声が聞こえてこないのが残念である。

 

「せんぱいっ、はやく行きましょうよ!」

 

「わかったからひっぱるなって」

 

 一色先導のもと、俺達は惨状と化した屋敷の中へと足を踏み入れた。

 

 

 

「ロズワールなんで私は結婚できないんだ……」

 

「あはーぁ。それぇーはワタシにはわからないこだぁーねぇ」

 

「ロズワール何故私には彼氏ができないんだ……」

 

「それーはぁ、屋敷にきた男性に襲いかかったからじゃないかぁーねぇ」

 

「ロズワール、歯を食いしばれ」

 

「……それーはぁ、理不尽じゃあないかぁーな」

 

 屋敷に入った瞬間、クリスマスに合わせた怪奇的な恰好をした男性が吹っ飛ばされた。殴り飛ばした女性は頬を紅潮させ、ゆらりと体を起こし、眼に涙を浮かべている。それが誰なのかはもはや言うまでもない。

 まさかきて早々、想像していた事態が繰り広げられていたのは予想外ではあった。クリスマス用に設置された飾りは所々壊れており、並べられたテーブルには手の付けられた様子のない豪華な料理が並べられている。

 

「いらっしゃいませ比企谷様。と、奥様」

「いらっしゃいませ比谷谷様。と、貴婦人様」

 

「うおっ」

「きゃ」

 

 俺達がこの惨状に目を奪われいてる間に、眼前には二人の少女が並び立っていた。瓜二つの顔をした、双子の少女はメイド服、否、メイドSシリーズを着込み頭を下げている。身長は百五センチぐらい、大きな瞳に桃色の唇、彫りの浅い顔立ちから幼さと愛らしさを兼ね備えたハイブリットな少女。髪形までも共にショーボムでそろえられており、髪の分け目を違えて、左眼と右眼をそれぞれ隠している。

 その髪の分け方と、髪の色が桃色と青色で違っているのが見分け方の特徴だ。

 双子の特徴を無粋にも、ざっと観察した俺は喉を震わしながらぼそり呟いてしまった。

 

「妹にしたい……」

 

「大変ですわよ。今、お客様の頭の中で卑猥な辱めを受けています。姉さまが」

「大変だわ。今、お客様の頭の中で恥辱の限りを受けているわ。レムが」

 

「いや、俺の一言でそこまで言われるのは逆に凄いんだが」

 

「まさかロリコンだったんですかせんぱい。一つ年下くらいに我慢した方がいいですよ」

 

「いやそもそもロリコンじゃねぇし……。ただ、ここまで可愛い双子がいたら妹にしたいと思うわけで」

 

「小町ちゃんはどうするんですか? はっ、まさか捨てる気ですか!」

 

「ばっかお前、俺のおにぃちゃんスキルをもってすれば小町とこの双子を限りなく愛すなど造作もない」

 

「シスコンとかキモすぎてひきます」

 

 俺のキモさを体現するが如く、一色は上半身を大袈裟に引いている。

 

「わぁーるいけど、レムとラムは私の大切ーなぁ大切ーなぁ従者だからねーぇ、妹にはだせなぁーいよ。比企谷くぅーん」

 

 後方からレムとラム、この双子の名なのだろう。この雇い主が俺の願望を阻害してきた。

 長身の人物だった。俺よりも頭半分高く、濃紺の髪を背にまで届くぐらいにまで伸ばしている。その体つきは細身というより華奢だ、肌の色も病的なまでに白い。整った面貌と合わせてどこか影のある美少年といった印象を強く受ける。左眼と右眼は色違いの、青と黄色の瞳が印象を強く受ける――はずだったのだが。奇抜すぎる服装とピエロもかくやとったメイクがなによりも目を引く。

 平塚師匠の一発を腹に入れられたからか、青白い肌をさらに青くしている。

 

「あ、いえ、その冗談だったので別に大丈夫です。あの、もしかして貴方は」

 

「どーうもぉ、初めまして。この屋敷の当主、ロズワール・L・メイザースだぁよ――平塚師匠のお弟子さん」

 

 まさかのまさか、昔聞いた貴族の男の名、ロズワール・L・メイザースはこの素っ頓狂な男であった。

 

 

 

 暴れる平塚師匠をどうにかして押さえこみ、改めてクリスマスパーティは幕を上げた。

 だが、この広い屋敷に十人も満たない人数では寂しさを禁じ得ない。もともとは多くの人を呼んでいたのだろう、それを我が師がくる男を次々に食い散らかした結果がこれだ。平塚師匠から逃げた男性はまさに飛竜に追いかけられる新米ハンターの気分を存分に味わったに違いない。

 

「なんかすいません、私の師がご迷惑を」

 

「例え屋敷を壊されたとしてもそんな些細なことではロズワール様はお怒りになりません。ね、姉さま」

「ロズワール様は心が広いお方、折角開いたパーティが台無しにされても怒らないわ。ね、レム」

 

 屋敷の当主が答えるよりもはやく、あの双子が答えた。それに頷きながらロズワールは口を開く。

 

「そうだぁね。来てほしくない客人は平塚殿に追い払ってえたぁし、私としては満足だぁよ」

 

「それって、来てほしくない方々いたってことですか?」

 

 一色は遠慮がちに質問する。

 確かに、自分で招待しておて来てほしくないとはおかしなことだ。だが、平塚師匠の返答によって俺も一色も納得した。

 

「ロズワール卿は立場が立場だからな、主催者ともなれば嫌でも招待状を出せねばならん輩もいる。私はその蚊取り線香となった訳だ、一匹も落とせなかったがな……」

 

「まぁあ、そう気を落とさずに。また紹介するからぁーね」

 

「ほんとか。ロズワール。ほんとか」

 

 師匠、必死すぎです。

 

「ほ、ほんとだぁーよ。それに本命の客人は今から――きたようだぁね」

 

 ロズワールが扉を見たとき、ゆっくりとそれは開かれた。

 

 ごく普通の少年と活発そうな少女。少年は気弱そうな見立てとは対照的に釣り目の少女はお似合いなのかもしれない。しかし、えも言えぬ違和感が拭えない。

 ロズワール卿主催のパーティに何故この少年少女は呼ばれたのか。それは呼ばれるほどに価値がある者だからだ。だが、小町とそう歳が変わらないのにも関わらず、ロズワールの眼にとまる二人。自ずと警戒心が湧き出てきてしまう。

 

「どうも、ロズワール郷。招待して頂きありがとうございます」

 

 少年は穏やかに微笑み、ロズワールに礼を言う。その笑顔はどこぞの姉が毎度浮かべているそれに似ている。

 

「いやぁ、君とはぜひこれからも仲良くしたいからねぇえ」

 

「こちらもですよ、良い関係を築いていければと思います」

 

 少女はただ少年の横を歩き、面倒そうにしていた。少年が話掛けてもしらん顔でそっぽを向いているのを見ると、主導権はやはり少女の方にあるらしい。ばんやりと二人の動向を見ていると、少年と目が合った。

 

「そちらの方は」

 

「こいつは私の弟子だ。宜しく頼むよ十河くん」

 

 平塚師匠は少年――十河くんと知り合いだったのか、俺をタイミングよく紹介した。

 

「そうですか、貴方が平塚さんのお弟子さんの。はじめまして、十河正臣といいます」

 

「どうも、比企谷八幡です。下位クラスのハンターでまだまだ未熟者ですが、お手柔らかに。隣にいるのは一色いろは、ドンドルマの集会所で受付嬢をしています」

 

 一色は軽く頭を下げて、一歩下がる。ここまで対応力のある彼女だからこそパーティに同伴してもらいたかったのだ。腹黒い女は配慮ができる女だと相場できまっているからな。

 

「謙遜はよしてください、噂はよく聞きます。『死神』の名を」

 

「あー、いえ、尾びれがつきまくった噂ですから真に受けないでください」

 

「ははっ、だそうだだよ、篠原さん」

 

「尾びれがあったとしてもそれ以下の者もいるんだ。覚えてほしいね、デットアイ」

 

 少女はそういって手を出してきた。釣りあがった目が見直せば愛らしくみえてくる。しかし、俺の眼をデットアイなんて言う小童は気に食わん。差し出された手を握れば、その細く小さな手からとは思えないほどの力強さを感じた。どうも、この少女は平塚師匠と通ずるもの感じる。十河の苦労がなぜか犇々と感じ取れるのは同じ苦労をしているからか。

 

「篠原 禊、よろしく」

 

 その見た目と反して、穏やかな笑みを浮かべる姿はやはり平塚師匠と似ていた。

 

「ちょっとせんぱい、なにデレデレしてるんですかっ! やっぱりロリコン……」

 

「レムレム、あの死んだ目のお客様はロリコンだそうよ」

「姉様姉様、あの腐った目のお方は幼女趣味の変態だそうです」

 

「だからそこの双子、俺を罵るのを止めんか」

 

 後輩から引かれ、双子には罵られるというトリプルパンチは俺には重い。ただステルスヒッキーをしていれば全てが丸く収まると思っていたがそうは問屋は下ろさないらしい。高額報酬というだけあってそれに見合うほどにこのクエストは厳しいのは当たり前だったわけだ。くそ、これならドスガレオスを相手にしている方がましである。

 俺が一人苦悩している間に、皆は楽しそうに騒ぎ始めた。レムとラムは給仕をし、ロズワールと平塚師匠は何故かまたもや戦闘を繰り広げている。それを和やかに伺う少年少女と共に一色はあのコミュ力駆使して親睦を深めている。ゆったりと流れるクラッシックのもと、こうしてクリスマスパーティは少しずつ始まった。

 

 あれ、俺今ステルスしてね? 存在してなくね?

 

 外に出てパーティが終わるまでひっそりと過ごすべく、出口に向かい、ドアを開けようとした時だ。俺が開くよりもはやく、自動ドアよろしく、勝手にドアは開いた。

 そして―――

 

「あのっ、ろ、ロズワール卿の屋敷はここであっていますか!」

 

「べル君ベル君、そんな焦らなくても大丈夫だよっ」

 

「このアクア様を呼んだロズワール卿の屋敷はここかしら!」

 

「おいアクア、もうちょっと言い方をだな」

 

 

              ――更なる来客者を迎えることとなった。

 

 俺のクリスマスパーティはまだまだ終わりそうにないらしい。





 皆さんはクリスマスはいかようにお過ごしだったのでしょうか。私は無論、ボッチマスでしたよはい。悲しい。涙がでできます。慰めてください。寂しくて死んでしまいます。うさぎなのです。あ、ごちうさ見ました。萌豚になれてよかったです。
クリスマスイブの楽しさとは一転、辛すぎましたが結局は楽しめたので良かったと思います。
 では、遅れて遅れましたが、メリークリスマス。
 余談ですが、このクリスマス記念ss、続きを足すまいかどうか悩んでいるため、もしかしたら勝手に続きを出すかもしれません。すみません。

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