Re:ゼロからはじめる俺のハンター生活は間違っているのだろうか   作:名無し@777

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三十九話

「貴様、今なんと言った」

 

「耳悪いんですか。この村を捨てるって言ったてんですよ」

 

ベースキャンプでの一幕。

剣呑とした雰囲気の中、俺とギルドナイツ総括 クルシュ・カルステンは睨みあっていた。

 

「この村の防衛こそが目的である! これではあの炎龍をしり除けたとしても意味がない!」

 

「違う。目的を履き違えている。この村の防衛は副次的なもので、本質は村人全員の生存だ。このままいけば、明らかに消耗戦。仮に逃走ルートを辿っていても村人の中には年寄りもガキもいる。炎龍が無差別に爆発して余波でもくらえばわかってるだろ」

 

「それをどうにかするのが我々の目的であろう!」

 

「じゃあどうする」

 

「それは……」

 

まだ場数も少ししか踏んでいない少女に迫る。回りからすれば士気高揚を図っていた者を責める悪者だろう。

 

「はっきり言おう。貴女の策では必ず被害がでる。それは村人なのかもしれないし、俺達なのかもしれない。村を捨てるという選択こそが最善なんですよ」

 

「……。」

 

黙るしかない。そうだろう。頭ではわかっているのだ。馬鹿な女ではない。常に最高の結果を求めるその精神は好ましいが、現実はそれを行えるだけの知恵も実力もない。

 

それは俺自身にも云える。

 

「この村を捨てて、俺達は村人を護衛しながらドンドルマに移動。あとは、ラインハルトさんと師匠に任せたい」

 

俺は今も戦場にいるラインハルトに目線を向ける。

あの炎龍との数戦から既に結論は出ていた。

 

俺を含め、師匠とラインハルト以外では戦闘にならない。むしろ、二人の重荷にしかならないのだと。

 

「うむ。私も同意件だ。私とて足を引っ張るとまではないが、彼の援護程度しか役に立たん」

 

いやアンタは嬉々として向かっていってるだろ。

 

二人ともやればできないことはないはずだ。だが、それは確実にできる訳ではない。俺の意見を通すためにわざと過小評価をしてくれているのだ。

 

この場にいる最高戦力の意見は何よりもの後押しとなる。加えて、もう一人。

 

「私も賛成です。この村は私達全員の故郷です。無くなるのは悲しい。でも、それよりも村人の誰かが死んでしまう方が嫌なのです。村はまたつくればいい、でも人は生き返らせることはできない」

若い女性の村長の同意が最後の決め手となったのか、クルシュは重い首をふった。

 

「……。わかった。村は放棄して二人に後を託す。残りのメンバーは村人を護衛しつつ退避する」

 

その決断以降は迅速な行動だった。的確な指示を出し、最速で事は運ぶ。

 

村を出る最後の時、残る師匠に声をかける。

 

「すみません、押し付けてしまって」

 

「なに、弟子ながらよく言ったと誉めてやりたいくらいだ。後の事は任せろ」

 

「誉められる事なんてしてませんよ。この村を捨てさせる覚悟をさせるなんて、昔の俺と同じ境遇をさせるだけだ」

 

「その思いがありながらも決断したこと、そこに意味がある。なに、村に近づかせる前に倒してしまっても構わんのだろう?」

 

師匠、それは死亡フラグ一歩手前です。

 

全てを二人に託し、ドンドルマに向かう最中、クルシュに話しかけられた。

 

「貴様の言い分は正しい。現に最善の策であるが故に私は代案が思いつかなった」

 

震える声で、一度区切り、意思のと思った眼で俺を見据える。

 

「だが! それは私に力が、知恵が足りなかったからに過ぎない。今は無理でも近い未来、私は強くなる。私は貴様のやり方を否定する。最高の結果を求めることこそが私が目指すべき処なのだ」

 

「…それで、いいんじゃないんすか」

 

それでいい。今回は無理だった。でも、次回はそうとは限らない。俺みたいに卑屈な考え方をする奴が指揮を執るよりもクルシュの様に最高の結果を求める指揮者の方がいい。

 

一言返答をすれば、クルシュは驚いた顔をしながら先頭に去っていった。

 

「ハチマン殿。貴方の英断、心から賞賛させて頂く」

 

クルシュの付き人である白髪の老人はそういってクルシュの後をおっていった。

 

後日談となるが、村は少しばかりの被害を受けたものの生存。あの炎龍をあの場を墓地として朽ちた。

 

師匠曰く、彼こそがこの時代における最強のハンターだそうだ。

あの師匠にそう言わしめる彼、ラインハルト・ヴァン・アストレアの二つ名『古龍殺し』がつけられたのはこの日だった。

 

 

 

暴風と雷雨と剣劇。

 

このフィールドではもう、一体と一人の劇場と化していた。

 

「流石は古龍殺し、後はたのんます」

 

俺はその場を後にして、この惨状を生み出した黒幕のもとへ向かう。

 


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