Re:ゼロからはじめる俺のハンター生活は間違っているのだろうか   作:名無し@777

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十三話

俺が由比ヶ浜を捕まえ、集会所に辿り着いた頃には平塚師匠の判決は既に下されていた。先に来ていた材木座から俺達の情報を聞き、答えをだしていたそうだ。余談ではあるが、材木座は燃え尽きたボクサーのように項垂れ、一色に哀れみの目で見られていた。

 

「遅かったな。比企谷」

 

「すんません。色々と予定が狂ってしまったんですよ。で、由比ヶ浜はいいんですか?」

 

「うむ。幸いにも材木座君を入れて三人だったからな。規定人数を越えないとあれば私は構わん」

 

 ハンターにはいくつかのタブーがある。それは一パーティ四人以上での狩りを行うことだ。ある村の伝説からきた暗黙のルールだが、俺達は常に生きるか死ぬかの道を辿っている。少しでも生存確率をあげるためならばおかしなジンクスでも守ろうとするのだ。如何せん、度を越してパーティを組めば死ぬと伝承された村があるのは少しばかり気の毒、基、俺にとって住みやすい土地ではあるが、狩りから帰ってくる者は少ないだろう。

 平塚師匠の判決を聞くまでは静まり返ってた由比ヶ浜は判決を聞いた瞬間、奇声をあげて喜んだ。やかましい事この上ないなこのビッチは。一時的な興奮が多少弱まったのか、平塚師匠に向き直り、頭を下げる。

 

「平塚さん、有難うございますっ! この狩りで色々学ばさせて頂きます!」

 

「うむ。学べるものがあるのならば勝手に学ぶがいい。私の事は静でいいよ。解ったな、由比ヶ浜?」

 

「はいっ、静さん!」

 

 女性二人が楽しげに微笑みあっていると場も和むよね。どちらともスタイル良いし……。百合ゆるりな展開が起きているが見ないことにこしたことはない、変な方向に趣向がずれたら終わりだ。どこぞの腐女子のようにもとには戻れないに決まってる。

 平塚師匠が俺に向き直り、またもや予想通りの言葉を告げてくる。

 

「しかし、比企谷、解っていると思うが」

 

「俺が誘ったのと同義なのだから由比ヶ浜もお前が面倒を見ろ、ですよね」

 

「ああ」

 

「つっても、ルーキーの俺に『アベクター』の由比ヶ浜様の面倒を見る事なんかないと思いますけどね」

 

「ちょ、そんなことないし!ヨロシクね!ヒッキー!」

 

「へいへい」

 

「返事超てきとーだし……」

 

 

 こうして今日一日限りではあるが四人組のメンバーで狩りに行くことになった。

 太刀使いが三人でガンナーが一人というなれば立ち回りは困難になる。しかし、別に飛竜を狩りに行くわけではなく、今回はドスランポスやドスゲネポスといった中型モンスターを狩りに行くことが好ましいだろう。正直、その固体ならば俺一人で狩りに行くことが好ましいが、材木座と由比ヶ浜への指導という目的で狩りに行くのだ。

 目的を履き違えてはならない。

 残念ではあるが、平塚師匠とのコンビはまた別の機会で組まさせて貰おう。遺恨のこる形ではあるが今後の方針を決め、彼女らに伝えようとしたが、その方針は一色の一言で真逆の斜め上に行く結果となる。

 

「狩りに行くならクエストを発注して貰いたいんですけど……実は緊急のお願いがありまして」

 

 その言葉に逸早く対応したのは平塚師匠だった。

 

「ふむ。なんだ? 」

 

「昨晩、あるハンターに古代林に現れたイャンクックを討伐しに行って貰ったですが、イャンクックは姿を何処にもなかったという文句……ではなく、情報を入もらったんですよ」

 

「あっ、それ私も知ってるよ! 集会所で愚痴ってもん。全ての場所を調べたのに見つからなかったって」

 

「まぁ、そんな感じでして。此方側として本当にイャンクックは姿を消したのか、確認したいんですよね」

 

「なるほど。それを私達に頼みたいと」

 

「さすが平塚さん、その通りです」

 

 彼等の会話を聞きながら今回の起きた事件に頭を働かせる。

 

 イャンクックの討伐クエストを受けたものの、姿が無かった。

 

 考えられる可能性は二つ。

 一つは、そのハンターが見つけられなかっただけ。これはまず疑うべき処だ。しかし、憤慨するほど探したなればこの線は薄いだろう。イャンクックを狩りにいく事が許されたレベルのハンターだ。索敵くらいできなければギルドがそもそも狩猟許可など出すわけもないだろう。

 二つ目はイャンクックが何処かへ行ったか。こればかりは不確定要素が多く、断定するには情報を集める他ない。だが、俺の経験上クエストの発注がある中、対象のモンスターが行方不明になるなんて事はまず無い。

 考えられた二つの答は自身で否定することになり、また振り出しに戻る。

 

 思考を深くまで沈み混ませれば何かが通りすぎる感じがするものの、その答えには辿り着けない。

 

 はたと我に返り回りに目を向ければ、俺が熟考している間に事は勝手に進み、いつの間にかその依頼を受けることになっていた。

 

 俺の意見は無いんですね。解ります。いや、材木座もか。となると女性陣の権力ぱねぇな。うん。まじぱぇ。

 

「取り合えず、皆装備と道具は準備して……いないか」

 

 平塚師匠は俺の方を見て溜め息をつく。

 

「比企谷お前早く……いや、そうだな。今回は『もしも』の事態に陥ったときの保険として、お前には私の装備を貸してやる」

 

「ええええっ!!駄目ですよ静さん!」

 

 唐突に罰則行為を促す言葉を聞いた由比ヶ浜は、驚きの声をあげて尊敬しているはずの平塚師匠に声を荒げた。

 

「ハンター協会の規定に装備品の貸し借りは駄目ってあるじゃないですか! 絶対に貸し借りはダメですよ!」

 

「いやいや。由比ヶ浜。今回は緊急なんだ。もしかしたら危険な事態に陥るかもしれない。その中で一番危険に晒されるのは誰だ? ルーキーである比企谷だろう。なにも、上位の装備を貸してやるわけではない。私が昔使っていた下位の装備を貸すだけだ。この事態に対象する我々に御上も少しは眼をつぶってくれるだろうさ」

 

 俺は師匠の意図を察し、由比ヶ浜に追撃をかける。

 

「悪いな、由比ヶ浜……。俺がルーキーなばかり皆の足手まといになっちまって。今回は俺は行かない方がいいかもな」

 

「えっ、そんなことないよ!元々はヒッキーと静さんの二人だけだったんだし!」

 

「だが、俺がいたらもしもの時がな……」

 

 俺は語尾を沈ませ、顔を落とす。

 そうすれば、この由比ヶ浜 結衣という人間ならば───

 

「……解ったよ!でも、今回限りなんだかんね!!」

 

                          ───了承する。

 

 平塚師匠がこんな事を言い出したのは俺が愛用している装備を今回も使えるようにするためだろう。まったくもって頭が働く人だ。緊急の事態に対しての処置という、本当の理由を混ぜなから嘘を吐くのは、真実性を高める。

 汚い。大人マジ汚い。それに便乗する俺はもっと汚い。

 

「せんぱい方、決まりました?」

 

「ああ、取り合えず俺は着替えてくる。そこから出発だ」

 

「解りました!では、ちゃちゃっと着替えて来てください。ああ、あと」

 

 一色は言葉を切り、カウンターの方へ姿を消すと、両手に大きな袋を抱えて 戻ってきた。

 

「はい。前に頼まれていた物資です」

 

 俺はそれを何食わぬ顔で受けとる。

 

「おう、さんきゅー。じゃ、行ってくるわ」

 

一色から物質、つまりは預けていた装備品を受け取り、皆に一言残してその場を去った。

 

 

 

 

 

 


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