Re:ゼロからはじめる俺のハンター生活は間違っているのだろうか   作:名無し@777

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六話

 平塚師匠の家の風貌は付近の建物と比べて異質なものである。

まずは素材。木造作りが主流であるが、粘土や頁岩を圧縮し固めたものを使用しているそうだ。赤レンガという異国の地で使われている素材らしい。

次に色。黒や赤、茶色といった色合いを重視しているが、外装、内装共に白色にに塗り直している。

また、内部に置かれている家具も一味違う物を取り扱っているが仕様に関しては一般の物と特に変化はない。

 

 この様な奇妙な家に住むことから周囲からは「奇人」として知られていたりもするが、実際に平塚師匠を指す言葉もう一つある。

 

「孤高の戦乙女」。

 

 齢十四才にして一流のハンターである証、「上位クエスト」を一人で突破した最年少記録保持者という偉人であった。悲しきかな、今でもソロライフを歩んでいるが故に、つけられた『二つ名』は平塚師匠の未来を見据えていたものだったのかもしれない。

 

 俺が師匠と出会ったのは五年前、当時駆け出しだった俺を危なく思ったのか、声を掛けてくれた事により俺は師匠という人物を認知したのが始まりである。

その後、弟子にしてもらい、数多の試練を乗り越えたのだが今更思いだしても苦い思いでしかない。

 

 そんなものには蓋をします。臭い物には蓋をしろ。なんなら俺の思い出の半分は蓋に閉められるまである。

 

 久々にこの奇怪な家に入ったことで何故か当時のことを思い出していると、向かい合って座っている師匠から疑問の声が上がった。

 

「で、なんでまた私の家に? そんな大荷物で。まさか、また修行を積みにきたのか?」

 

 確かにまず来た理由が気になるだろう。俺は事の顛末を話せば長くなることを察し、結果のみを伝える。

 

「修行はまた別の機会に。家を出るんですが、物件が決まるまでの間、またこの家に住まわせてもらえませんか?」

 

「……お前が家を出ると言うのは本当か? 弟子に来たときにはホームシックになっていたお前が……」

 

「止めてください。あれはあれですよ。家の自家用枕が恋しかったんですよ」

 

「いや、お前。毎日『小町……小町……雪ノ下』って言ってたじゃないか」

 

 知らんぞ。俺はそんな事実は知らん。

 違う。違うんだ。あの頃は不安で仕方がなかった上に対人恐怖症である俺には他人の家で寝泊まりするの地獄といって過言ではなかったのだ。だ

から仕方がないだろう。うん。仕方がない。

 八幡、もう、気にしない。

 

「……それで、一時の間いいですか? 部屋をお借りして」

 

「話をそらした事には追求しないどいてやろう。ああ、特に問題はない。しかし、家賃替わりに少なからず、働いてもらう」

 

「はい。『働かざる者食うべからず』ですよね、解っています」

 

「うむ。覚えてくれていて何よりだ。こんな朝っぱらから動けとも言うのも気が引けてしまう。よって、本日の昼から仕事を命ずることにする。まぁ、少しの間休んでおけ。昔お前が使っていた部屋はそのままにしてある、好きに使うと良い」

 

「はい。ありがとうございます」

 

 俺は席を立ち、軽く会釈し、昔使っていた自室に荷物を運んでいく。

師匠の言っていた通り、俺が平塚流武士道術を会得して出ていった時のままだった。

 机にベットと道具箱しかない質素な部屋ではあるがハンターにとって必要な者は全てこの部屋に詰められている。

 時刻は既に八時を回っていた頃、きっと雪ノ下も起きているだろう。

 

「ま、怒り狂っていなければ良いんだがなぁ……」

 

 希望的な観測を述べながら現実は厳しいことは幾重も経験済みだ。だからといって希望は捨てないが。むしろ、すがり付くまである。

 

 小町が宥めてくれるだろうと思ってはいるので、大事には至らないと高を括っていた。

 

 


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