Re:ゼロからはじめる俺のハンター生活は間違っているのだろうか   作:名無し@777

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五話

 震える手つきでドアノブをひく。

 

 一色と別れ、玄関までたどり着いたものの、昼頃に繰り広げられた惨劇が脳裏に焼き付いて離れず、戸を開ける事が出来なかった。

しかし、何時までも玄関の前で立っているわけにはいかない。だって、夜間警備の治安維持局の方が此方を凝視してるから。まって、違うから。泥棒とかじゃないから。

 

 意を決してゆっくりとドアノブを回し、戸を開け、スルリと部屋の中に侵入する。

入ってみればどこも灯りはついておらず、暗闇の中に彼女達の寝息のみが聞こえてくる。

現状を把握し、物音を立てないように静かに自室へと向かう。

 

部屋の荷物を全て持ち出すために。

 

 きっと、雪ノ下は俺が家を出ると言えば確実に理由を聞いてくるだろう。そして、正面から論破し、止めてくる。口論で雪ノ下に勝つなど年に一度の出来事であり、彼女に家をでないでくれと言われてしまったら決心が鈍ってしまう。

 

 殺られる前に殺れ。

 

 我が師の教えの通り、捕まる前に逃げる。

 

 ……これじゃあ本当に夜逃げ泥棒の様だが仕方がないな。

 

 少しの負い目を感じながらも着実に狩猟道具を袋に詰め、武具、防具ともに大きな布に巻き付ける。

そうして黙々と作業を続け、全ての準備が終わる頃には日が射し込んでくる時間帯になってしまっていた。

全ての荷物を外に置いてある滑車二号機の上に乗せ、もう一度家の中に入る。昨日は遅くまで俺を待っていたからなのか、彼女達からは起きる気配が無く、安心して寝室にたどり着けた。

 まるで兄弟のように一つのベットで寝ているのを最後に拝み、枕元に紙を置く。

 今生の別れという訳ではない。しかし、今までなんの断りもなく、離れ離れで暮らすことが無かったため、やはり、何処か寂しさが沸き上がってきてしまう。

 

「じゃあな、雪ノ下、小町」

 

 そっと、一言残して、俺は狩りの道具を一時の間、置くための場所、つまりは我が師の家へと向かう。

師匠の家はドンドルマの集会所に隣接しており、ハンター生活を送るのには適している。が、師匠がその家を選んだ理由は全くもって検討違いなものだった。

 

『旨い酒と旨いラーメンがある店が近いから』。

 

俺が欲している無類の強さを持っている人物が、まさかこんな適当な人だとは思わず、弟子入りしたときは呆気にとられたものだ。

酒癖の悪い師匠の相手をすることになるのかと悶々と悩んでいる間に師匠の家に辿り着いた。

 

 玄関の前に立ち、ノックを八回。

 すると、十秒も待たずして扉は勢いよく開かれた。

姿を現したのは、綺麗な顔立ちをした、艶やかな黒髪を背中まで伸ばしているスタイルの良い美しい女性。

 

「久しぶりだな。比企谷。ノックの回数はまだ覚えていたか」

 

「耳に穴が空くほど言われましたからね覚えていますよ」

 

 小言を良い終えた後、一歩後退り、相変わらず酒臭い師匠に頭を下げながら言う。

 

 

 

 

「お久しぶりです。平塚師匠」

 

 

 

 




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