Re:ゼロからはじめる俺のハンター生活は間違っているのだろうか   作:名無し@777

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四話

 暇だ……。

 暇すぎる。

 受付嬢として笑顔を絶やさないのは義務だが、こんな真夜中にクエストの発注を行う者などおらず、現在の私の仕事はカウンターに座って笑顔を振り撒くだけだった。

 とはいえ、ドンドルマの集会所ではクエストの発注が無いだけで、今夜も集会所は大いに賑わっている。

 自身の武勇伝を語る者もいれば狩りの成功を祝して宴会を催している者もいる。

 無論、愉快そうにしている人達だけではない。狩りが失敗したのか、はたまた別の問題があったのか。沈み混みなから食事をしている者だっている。

 

 そして、『死神 』と呼称されているハンターの話に華を咲かせてる者も。

 

「聞いたか? あの『死神』が一人であのリオレウスを狩ったらしいぜ」

 

「まさか! 森丘に現れたリオレウスは葉山率いる『アベクター』が退却したほどの大物だぞ? あり得んだろ」

 

「じゃあデマなのかなぁ。あ、そういえばさ───」

 

 本当、なんですけどね。その話。

 彼等の話に聞き耳を立てていたが、話の内容が変わったことを確認して、また笑顔を振り撒く作業に戻る。

『死神』。

 数多の飛竜を一人で討伐してきたハンター。その人物は匿名化されており、誰なのかは今だ公の場では解っていない。

 解っている事は太刀使いであり、黒色の防具を使っていること。そして目が濁っている事だ。

 その情報からある人は「まるで死神だ」と例え、それが広まっていった。

そう、今も死神のような絶望的なオーラを放っている人物が角集会所の一角に───って。

 

「せんぱい!?」

 

 比企谷八幡。話題の『死神』本人であり、私の恩人でもある。

いつの間にか集会所の一角で負のオーラを放っていたのには驚いたが、これはとても良いタイミングで見つけることが出来た。

逃げられないようにゆっくりと、確実に近付く。

 彼の眼前に立つとものの数秒で気づかれてしまった事に若干の悔しさを覚えつつも、せんぱいとの仲を進展させるため、負のオーラの発生原因を聞く事にしましょう!

 

 

 

 

***

 

 

 

 曰く、ハンターであることが雪ノ下さん達にばれそうだとか。

 

 解決策の中にまさか、ハンターを辞めるという選択肢があったなんて驚愕だ。

せんぱいほど勇敢で優しくてヘタレなハンターが居なくなってしまったら、救われない子達が必ず出てくる。

 先輩は狩りの最中に襲われている一般人がいれば、確実に助けにはいるようなお人好しだ。例えば、飛竜と対峙してる最中、ランポスに襲われている私を助けるために飛竜に背を向け、助けに来てくれたように。

 

 紆余曲折あって、せんぱいと今後の手筈を話終え、彼のが集会所を後にする背中を見つめる。

 やはり私は彼に恋い焦がれているのだと再確認するために。

きっと、せんぱいにとって私は数多く助けてきた人々の一人という程度の認識なのだろう。

 解っている。

 私だから助けたわけではない。たまたま、その場に居たのが私であっただけ。

でも、それでも、あんな風に助けられてしまったら───惚れてもおかしくないのではないか。

 

「せんぱい、きっと振り向かせてみせますから……」

 

 最後にぽそりと、私にしか解らないような声で決意を言葉に乗せ、言い切った。

名残惜しく彼が消えた方向を見詰めてしまうが、これでは拉致があかないため、切り替える。

 

「さて、作業に戻らないとね! せんぱいのお部屋も探さなければならないし」

 

 本来の業務である受付を行うため、カウンターに戻れば頭部以外、武装をした四人組が待っていた。

 

ヤバイ!怒られる!

 

 一体どのくらい待たせてしまったのか解らないがきっと短くは無いだろう。

私の十八番である「とてもひ弱そうな顔」+「泣きそうな瞳」を作り、席に戻る。

 

 

が、この行動は徒労に終わった。

 

 

「あっ、いろはちゃんやっと来たー!」

 

 ピンク色の髪をお団子でまとめ上げている女性が言う。

 

「まじで何してんだし。ウチラを待たせるとかあり得ないんだけど」

 

 金髪にゆるふあウェーブをかけている女性が苛立ち気味に言う。

 

「っべー!まぁまぁ来てくれたんだから良くね?な、隼人くん!」

 

 いかにもチャラ男感がある男が金髪の女性を宥め、彼等の中心にいる人物に同意を得ようとする。

 そして。

 

「うん。きっと何か仕事があったんだよ。仕方がないさ。こちらもこんな夜中に来てるわけだし。さて、依頼の受付、いいかな?」

 

 四人の中心に立っていた男───葉山隼人は髪の毛を靡かせながら私に問いかけてきた。

 

 私がどんな顔をしていても何時でもにこやか返答してくるこの人に、演技は通じない。いや、この『チーム』にいる人物達にとっては私の作った笑顔などどうでも良いのだのだ。

 見繕った笑顔の仮面を掃き捨て、正直に苦笑いを浮かべながら謝罪を行った。

 

 

 

「え、ええ。すみません。『アベクター』の皆さん」


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