奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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第8話「戦乱の武器と平和の武器」

「ここは士官学校なのでしょうか?」

 

「……え?」

 

 彼女を千冬さんとこの学園の真の経営者と彼女もこれから色々とお世話になることになるであろうこの学園の生徒会長の少女が待っている理事長室へと案内していると彼女は唐突にそう訊ねてきた。

 

「見た所、ここは教育機関であり、

 あのような兵装(・・)を多く保有していると言うことはここは軍に所属している施設であるとお見受けします。

 やはり、士官学校なのでしょうか?」

 

「え……あ、その……」

 

 私は彼女のその指摘に驚くとともに敬服せざるをえなかった。

 彼女はここがどういう場所かを説明もされてもいないのにも関わらず、自分が泊まった部屋の内装や私と千冬さんとのやり取り、そして、私たちが昨日出会った「IS」の格納庫からこの学園を「士官学校」と考察したのだ。

 彼女は出来る限りのことをやろうと自分なりに頑張っているのだ。

 彼女の問いに私は言葉が詰まってしまった。

 それは私がこの世界的に見て機密情報に溢れている「IS学園」の教員としての守秘義務から来るものではない。

 なぜならば、彼女は「IS」のことを迷うことなく「兵装」、つまりは「兵器」と断じたのだ。

 「IS」は「アラスカ条約」によって軍事利用が規制されていて「スポーツ用品」のように思われているが「兵器」なのだ。

 彼女がここを「士官学校」と考えるのも無理はなかった。

 私はここでまた一つ、「IS」に携わる者として自らの迂闊さとこの学園に入学してくる生徒たちの軽率さに気づかされた。

 この学園に入学する生徒の殆どは「IS」のことをスポーツ感覚でしか見ておらず、「兵器」としての側面を忘れている。

 そんな現状を自称とは言え軍属の人間に私は伝える勇気はなかった。

 

「す、すいません……そ、その……

 その話も部屋に着いてからで……!」

 

 私はそれを言い出す勇気もなく、ただ先延ばしにしてしまった。

 いや、本当は自分ではなく他の誰かが説明してくれると思ってただ誰かに押しつけてしまったのだ。

 すると、

 

「あ、すいません……そうですよね。

 仮にここが士官学校ならば部外者である私に話すのは軽はずみな出来事でしたね。

 こちらの配慮が足らず申し訳ございません」

 

「い、いえ……!そう言う訳ではなく……!」

 

 雪風さんは真面目にこちらのことを配慮しながら思いやりを込めてそう言ってきたが

 

 ち、違うんです~!この学園は確かにあらゆる国家から独立した不可侵領域ですけれど……

 そ、その何と言うか……あなたが考えるほどそういったことに厳しくないんです……

 だから、申し訳ないような顔をしないでくださ~い!!

 

 彼女の優しさに私は逆に居た堪れなくなり辛かった。

 優しさとはこんなにも人を傷つけるものとは思いもしなかった。

 

「あ、ようやく着きました……!

 少し、お待ちを……!」

 

 そんな時に天の助けか、上手い具合に理事長室に辿り着き私は逃げる様に彼女にそう言った。

 

「……?あ、はい」

 

 彼女は私の慌てぶりに戸惑いがちになりながらも素直に待っていてくれるようだ。

 本当にこんないい子が戦場に出ていたのかと思えてくるほどいい子に思える。

 

―コンコン―

 

「山田です。

 彼女を連れてきました」

 

 私は理事長室の扉をノックして中にいる3人に彼女を連れてきた旨を伝えると

 

「おや、山田先生ありがとうございます。

 どうぞ、雪風さん。お入りなさい。」

 

 と女尊男卑の風潮なんかじゃ決して消えることのないとても穏やかな好々爺を思わせる労いの言葉を私にかけ雪風さんを部屋へと招いた。

 

「はい!失礼します!」

 

 私は理事室の扉を開けた。

 

 

 

「雪風さん、どうぞ」

 

 山田さんは部屋の扉を開けると一応は客人である私に部屋に入るように促した。

 部屋を見回すと提督などの責任者が勤務するであろう来客を真正面から迎える机と革張りのソファとソファの座高とちょうど噛み合うテーブルがあり、他にも多くの勲章などが存在する棚や格式高さを感じさせる本棚が点在していてここがどうやらかなりの名門の教育機関であることが垣間見られた。

 そして、私は目の前で待っていたであろう織斑さんを含めた3人の人影を確認すると

 

「中華民国訓練艦ならびに元大日本帝国海軍所属、陽炎型駆逐艦八番艦の雪風です!

 この度の貴方方の協力と保護に感謝申し上げます!」

 

 意気揚々と私の現所属とかつての私を表す私の級名を名乗り、この施設の責任者らしき人々に昨日のことを感謝するが

 

「……むむむ」

 

「あらら……」

 

「………………」

 

「………………?」

 

 返ってきたのは困惑に包まれた雰囲気だった。

 私が招かれたこの指令室に類似した部屋で待ち受けていたのは織斑さんを含めて3人だった。

 その中で私が山田さんと同じくこの世界で最初に出会った織斑さんは気まずそうな表情をしており、この部屋で唯一の男性であるどうやらこの施設における最高責任者であるらしい先程の声のご老体の男性はどこか私の名乗りに衝撃を受けており、最後にこの部屋において最も私と見た目の年が近い少女である「驚愕」と書かれた扇子を持つ少女は私のことを見ながらニヤニヤしていた。

 私はなぜ彼女らがここまで困惑しているのか理解できなかった。

 

 ……いくら、侵略が原因で帝国が滅びたからと言って妙ですね?

 

 異世界だからと言って、我が帝国が他国を侵略したということは悲しい事実であるが、それは私のいた帝国とは違うはずだ。

 何よりも昨日、「こちら側の世界」の織斑さんは「世界が違う」と言われたばかりだ。

 私が多少なりと不快感を感じていると

 

「理事長……」

 

 そんな私のことを気遣ってか織斑さんがここの最高責任者らしき男性に声をかけてくれた。

 

「ああ、すまないね。

 君が雪風さんか、話は織斑先生から聞いている。

 私はこの学園の経営者の轡木と言う。

 そして、そこにいるのは」

 

 男性は織斑さんに声をかけられたことで我に返り、自己紹介し、その後にもう一人ここにいる、その見た目からは考えられないが、私たち「艦娘」という存在も外見年齢ではその実力が見分けられない存在であることから、この施設の責任者の一人であると考えられる扇子を持った少女を見て紹介しようとすると

 

「この学園の生徒会長をしている更識楯無よ。

 よろしくね、雪風ちゃん♪」

 

 と朗らかに快活に『生徒会長』と書かれた扇子を広げて自己紹介してきた。

 どうやら、彼女は人懐っこい人なのかもしれない。

 だけど、私はここであることが気になってしまった。

 

「……「学園」?」

 

 それは「学園」という言葉だった。

 私は確かにここを教育機関だとは思っていたが、その中で私はここは軍の養成学校ないしは士官学校だと考えていたのだ。

 なぜならば、「IS」と呼ばれる兵装があれだけあるのにも関わらず、ここが軍の所属でないのはあまりにも信じられないことだ。

 しかし、私は「学園」という妙に平和的な名称に違和感を感じていた。

 

「ここは「士官学校」ではないのですか?」

 

 私は山田さんに訊ねたことを改めて彼らに訊ねた。

 私の世界の帝国にも私たち、艦娘は通っている暇はなかったが「学園」は多くあったし、教育機関も充実していた。

 だが、ここで言う「学園」とはあまりにも平和的なものであったはずだ。

 

 まさか……ここの世界にも人類の脅威が……!

 

 私はただの教育機関にもこれだけの戦力があることにこの世界にも「深海棲艦」に匹敵する人類の脅威が存在するのではと危惧してしまった。

 ならば、この世界における「艤装」よりも最新型とも言える「IS」が存在する理由にも頷ける。

 どうやら、この世界にもこの世界の事情があるらしく、私は人類同士が争い合うことに悲愴感を抱いていたことを詫びなくてならない気がすると同時に己の浅はかさを恥じた。

 

「君は……どこまで、この世界のことを知っているのかね?」

 

 轡木さんは私の質問に対して、戸惑いながらもそう訊ね返してきた。

 どうやら、昨日の会話のことに関しては織斑さんと山田さんが前もって彼らに説明してくれていたらしく、彼は私に不足している知識を教えてくれる配慮を示してくれた。

 

「この世界に「深海棲艦」や「艦娘」が存在せず、私のいた世界とは異なる歴史を辿ってきたことまでです。

 そして、「IS」という私たちにとっての「艤装」に類似した「兵装」があることぐらいです」

 

 と私は包み隠さずに彼らに私がどこまで知っているのかを伝えた。

 情報開示は相手に弱みを握らせると同時に相手を信用していると言う意思表示にもなり得る。

 

「「………………」」

 

 そんな私の言葉に織斑さんと山田さんを除く二人は黙ってしまった。

 あと、更識さんの持つ扇子の文字が「常在戦場」と書いているものにいつの間にか入れ替わっている。大道芸の一種なのだろうか。

 私は彼らの沈黙の理由が解からずにいた。

 もしや、織斑さんは私のことを思ってあえて、「IS」という兵装の情報を教えてくれたのだろうか。

 だとすれば、彼女の立場的に危うい気がしてままならない。

 

「あの~……どうしたんですか?」

 

 私はなにかおかしなことを言ったのか、それとも、「IS」という存在が軍の機密事項なのかが気になってしまい、沈黙を続ける彼らに問いかけると

 

「い、いや……すまないね……

 君の話は聞いていたが、どうしても信じられなくて……」

 

「流石の私でも……これは……あはは……」

 

 と二人揃って苦笑してきた。

 ちなみに更識さんは再び新たな「奇想天外」と書かれた扇子を用意していたらしく、再び広げていた。

 この短時間で誰にも悟られずに新しい扇子を持ち変えるとはこの少女は油断ならない気がする。

 話は戻るがどうやら、彼らは先程まで私のことを疑っていたのだろう。

 無理もない。私自身、信じられないことであるから仕方ないと思えて来るし、ただ一つ気になることが再びできてしまったのだが。

 

 なんで……この人たちはいきなり私が違う世界から来たことを信じ始めたのでしょうか……?

 

 それは彼らが私の話に信用性を抱き始めたことだった。

 私は先程まで、こちらの世界に人間にとっては法螺話にしか聞こえないが特段特別ではないことしか口走ってないはずだ。

 そんな、疑問を抱いていると

 

「では、雪風さん。

 まずは「IS」について説明していこうと思う。

 いいかね?」

 

 と轡木さんはそう言ってきた。

 私はそれに対して

 

「はい、ありがとうございます!」

 

 と待ち望んだ情報の提供と対話が一歩前進したことへの嬉しさを込めてそう応えた。

 すると、轡木さんは

 

「……では、織斑先生。

 頼みます」

 

 とどこか孫を見るかのような目で私の反応を嬉しそうに織斑さんに説明を任せた。

 

「解かりました。

 理事長」

 

 その時だった。

 

 あれ……?

 

 私は織斑さんの表情にどこか違和感を感じた。

 

 気のせいでしょうか?

 

 私は彼女のその違和感の正体に気づかないまま説明を受けようとして耳を傾けた。




とりあえず、「IS」と言う存在の歪みの一つが垣間見られるような内容にしてみました。

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