奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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思ったのですが……箒て「IS」使っていないのにどうやって今まで一夏を指導していたのでしょうか……
まさか、全部口頭で?


第13話「訓練艦」

「はあ~……

 なんでああなっちゃったんでしょうね……」

 

 放課後、いつもの様に一夏さんの訓練をするためにアリーナで待っている中、昼食の時の出来事を思い出して私は思わず、ため息をついた。

 

『しょ、勝負ですか?』

 

『そうよ』

 

 凰さんに私は挑戦状を叩きつけられた。

 

『アンタの「噂」を聞いてみて気になったけれど、実際に会ってみてもっと興味が湧いたのよ……

 それが理由じゃダメ?』

 

 それが彼女の理由らしい。

 一体、どんな「噂」が流れているのだろうか。

 彼女の申し出に私は答えが詰まった。

 だけど、私をさらに悩ませたのは

 

『それと、もし私が勝ったら一夏のコーチ……

 私に譲ってもらうわよ』

 

『なっ!?』

 

 彼女の持ちかけて来た取引であった。

 余りのことに抗議しようとするが

 

『どう転がっても一組には私の専用機の情報が入るし、アンタが勝てば何の問題もないから悪くない取引だと思うけど?』

 

 彼女の出して来た利点に対して、こちら側の難点があまりにも少ないこともあって彼女の申し出には利があった。

 同時に他のクラスメイトたちも興味と「スイーツ半年分」への執着、さらにはそこにこの前の私の戦い方に見たことによる「楽観」も加わり、なし崩しに一週間後に戦うことになってしまったのだ。

 総旗艦時代に何だかんだで謀略の中で生きてきた私を丸め込むとは中々のやり手だ。

 恐らく、素でやっているのだろうが、だからこそ厄介だ。

 

「雪風……」

 

 私が一夏さんの異性関係と一夏さんの恋人からの挑戦状に悩んでいるとそれらの全ての中心人物とも言える彼が到着した。

 同時にいつもの様にセシリアさんも来ているようだが、今回は篠ノ之さんの姿が見当たらない。

 どうしたのだろうか。

 

「一夏さん」

 

「えっと……

 なんか、ごめん」

 

 自分の恋人がとんでもない提案をしてきたことに申し訳なさを感じたのか、彼は謝罪してきた。

 こういう所は本当に律儀だ。

 

「いえ、別にあなたのせいではありませんし……」

 

 私は彼が気に掛けないように言った。

 確かにここ最近の私の気苦労の大半は必ずと言ってもいいほどに一夏さんが中心にいるが、だからと言って私は彼が悪いとは思わないし、彼を責める気にはならない。

 ただ、私に話題を振ったりするのは辞めて頂きたいが。

 

「雪風さん、あの無礼な人を叩きのめしましょう!」

 

 私と一夏さんが凰さんの一件でお互いに頭を抱えているとセシリアさんが意気揚々と言ってきた。

 彼女からしてみれば、散々コケにされたこともあってか雪辱を晴らしたいのだろうが、戦うのは私なのだけれど。

 余計に一夏さんと凰さんの関係を説明するのが難しくなってきた気がする。

 一方、一夏さんの方を見てるとなぜか物凄い憐みの込められた目で見られている。

 今回、セシリアさんが多少見苦しい一面を見せているのは明確な競争相手である篠ノ之さんがこの場にいないことも影響しているのだろう。

 

「一夏」

 

 私が色々と頭を悩ませていると篠ノ之さんが遅れてやって来た。

 普段ならば、『またか……』と頭を抱えそうになりそうだが、今回ばかりは彼女に感謝したい。

 恐らく、彼女は色々と口出ししてきそうではあるが、彼女がいることでセシリアさんが警戒することで気を引き締めるだろう。

 ある意味、力の均衡が取れているとも言える。

 ただ、「IS」を纏っていない人間がいても意味を見出せないので結果的にいつもと同じだが。

 

「……え」

 

 そんな時だった。

 篠ノ之さんの方を振り向いた一夏さんが妙な声を出した。

 気になった私もそちらを見てみると

 

「……あ」

 

 今日の彼女はいつもと違い、「IS」を纏っていた。

 正確には「打鉄」であるが。

 

「な、なんだその顔は……おかしいか?」

 

 意中の異性に妙な反応をされた事に篠ノ之さんは戸惑っていた。

 こういう時は恋する乙女だと思えてくる。

 

「いや、その、おかしいっていうか―――」

 

「篠ノ之さん!?

 ど、どうしてここにいますの!?」

 

 一夏さんが色々と戸惑っているとセシリアさんが声を荒げ出した。

 どうやらセシリアさんは今まで篠ノ之さんが「IS」を使わないでいたことにある程度の優位性に感じていたのだろう。

 しかし、その優位性も崩されそうになっているのだ。

 二人とも恋の競争をするのはいいけれど、既にその競争の意味がないのは見ていて心苦しくて仕方ない。

 胸が痛くなってきた。

 また、今まで篠ノ之さんは口だけを挟んでいたが本格的には参加してこなかった。

 だが、実際に「IS」を使ってくるとなるとそれは別だろう。

 これからは彼女も本格的に介入するだろう。

 私は多少の不安を感じた。

 今までは多少の時間の浪費で済んだが物理的に介入されたら事故に繋がりかねない。

 

「一夏がどうしてもと言うからだ」

 

 ……そう言えば、彼女はいつもそう言ってましたね……

 

 彼女は私とセシリアさんが彼と訓練をするようになった瞬間に私たちにそう反論してきた。

 そこに一夏さんの『ありがたい』と言う言葉で一緒に訓練を出来る様になったが。

 どうやら、私たちが彼と和解する前に一夏さんは篠ノ之さんにそう頼んだらしい。

 

 待てよ、これはチャンスでは?

 

 よく考えてみれば、私とセシリアさんは互いに砲撃と銃撃が主な攻撃手段で白兵戦の訓練はそこまでできていない。

 ここで彼女が「IS」の操作を学べばその穴も埋められるのではないだろうか。

 いずれにせよ、篠ノ之さんがこのまま大人しく引き下がるとは到底思えない。

 ならば、敢えて二人とも鍛えた方がいいのかもしれない。

 それに私の護衛対象は篠ノ之さんも入っている。

 ある意味、好都合かもしれない。

 

 吉と出るか……凶と出るか……

 

 私は期待と不安が入り混じった感情を抱いた。

 

「くっ……まさかこんなにあっさりと訓練機の許可が下りるだなんて……」

 

 セシリアさんは悔しがった。

 彼女には悪いが、私は篠ノ之さんの本格的参加を肯定的に受け止めている。

 少なくとも、知識も経験もないのに口だけを挟まれるよりは時間的にも効率的にも精神的にもマシだ。

 

「では、一夏始めるとしよう。

 刀を抜け」

 

「お、おうっ」

 

 いきなりですか?

 

 篠ノ之さんはようやく自分も本格的に訓練に参加できることに意気が高まっているのか早速、一夏さんと訓練を始めようとした。

 ただ、なるべくならば後でめんどくさいことにならないうちに私たちに一言ぐらい入れて欲しいのだが。

 この世界に「ほうれんそう」と言う金言があるように報告・連絡・相談は揉め事を回避するための方法としては最適だ。

 

 ……お手並み拝見です

 

 と言っても、私としても篠ノ之さんの能力に関しては興味深い。

 実際、私が初めて「IS」を運用した時、私は「艤装」の感覚で運用したところ更識さんに評価されているので初心者だからと言って無下にする気はない。

 むしろ、篠ノ之さんは中学生時代に剣道で全国一位に輝いているらしいので割とやるかもしれない。

 

「では……参るっ!!」

 

 篠ノ之さんがかかろうとした時だった

 

「お待ちなさい!!

 一夏さんのお相手をするのはこのわたくし、セシリア・オルコットでしてよ!?」

 

「え?」

 

 なんとセシリアさんが一夏さんと篠ノ之さんの間に割って入ってしまった。

 

「ちょっと、セシリアさん!?

 何してんですか!?」

 

「えぇい、邪魔な!ならば斬る!」

 

 そんなセシリアさんの乱入に対して篠ノ之さんが容赦なく袈裟斬りをしかけた。

 

「初心者相手に後れを取るほど、優しくなくってよ!」

 

 セシリアさんはその斬撃を「インターセプター」で受け流して、その勢いで距離を活かして距離を取り反撃しだした。

 すると、今度は篠ノ之さんがその銃撃を最小限の動きで回避し再び最接近して斬りかかったが、それもセシリアさんはまたも防御した。

 両者とも無駄にいい戦いを繰り広げている。

 篠ノ之さんはもしかすると、極限状態における白兵戦ならば私にも勝てるかもしれない。

 ただし、私ならばそれ以前に接近を許さず、そんな状況に持っていかせないが。

 伊達に「二水戦」で遠距離からの雷撃も私たちは訓練していない。

 実際、セシリアさんが今やっていることはそれが目的なのだろう。

 篠ノ之さんは直情的だから、そこまで考えていないが考えていないでこれは素直にすごいと思える。

 また、セシリアさんもこう言った冷静な戦い方もできるのは流石だと思わざるをえない。

 

 ……ところで、一夏さんの訓練はどうするのでしょうか?

 

 中々、いい戦闘を見せてもらっているところ悪いのだけれど、私たちは一夏さんの訓練をしてに来ているはずだ。

 その一夏さんをほったらかしでいいのだろうか。

 その一夏さんはと言えば、目の前で繰り広げられている妙な迫力に包まれた二人の私闘に関わると危険だと感じてか傍観している。

 その直感は正しいと私は評価したい。

 

「一夏!」

 

「何を黙ってらっしゃるの!?」

 

「うえっ!?」

 

 だが、彼女たちはそれさえも許してくれないらしい。

 

「何を黙ってて……

 どっちかに味方したらお前ら怒るだろ?」

 

 一夏さんは自分が考えたことをありのままに伝えた。

 恐らくだが、彼の判断は正しい。

 

「当然だ!」

 

「当然ですわ!」

 

「………………」

 

 それは正しかったらしく二人とも理不尽なことを言ってきた。

 なんだか、一夏さんが可哀想に思えてきた。

 それを聞いて一夏さんは沈黙してしまった。

 そして、

 

「て、うわああああああああああああああああああああああ!?」

 

 一夏さんのそんな煮え切らない態度に苛立ったのか、先ほどまで争っていた二人がまるで以心伝心の仲なのかとも言えるほどに一夏さんに同時に襲い掛かった。

 それを見た瞬間に私は

 

―ドゴーン!!―

 

 無言で両腕の主砲から弾丸を放った。

 

 

 

「うわぁ!?」

 

「きゃあ!?」

 

 箒とセシリアが襲い掛かってきた直後にあの轟音が鳴り響くとまるでその常かと思うようにあの弾丸が二人に直撃した。

 俺は砲撃をしたであろう人物の方を見た。

 するとそこには

 

「………………」

 

 とてもにこやかな笑顔をしている雪風がいた。

 ただ彼女の表情とは裏腹に両腕の砲口からは硝煙が燻ぶっており決して穏やかじゃないが。

 

「貴様、何をする!?」

 

「雪風さん、いきなりなんですの!?」

 

 砲撃を喰らった二人は雪風に抗議するが

 

「二人とも正座しなさい」

 

「「……え?」」

 

 雪風は笑顔を全く崩すことなく二人にそう命令(・・)した。

 

「な、貴様!?

 どういうつもり―――!!」

 

 箒はただでさえ反発している雪風に高圧的に言われたことに我慢ならず食って掛かろうとするが

 

「もう一度言います……

 とっとと正座しなさい」

 

「……っ!?」

 

 雪風のその一言で黙らされた。

 今の雪風は表情は笑顔であるが言葉は戦闘時のような威圧感を醸し出している。

 試合中もこんな感じだったと思うけど、我ながらよく戦えたと自分で自分を褒めたくなってくる。

 あの箒もその迫力に圧されて黙ってしまい、セシリアも経験者であることから素直に従ってしまった。

 ただ箒には『それは仕方ない』という言葉を贈りたかった。

 

 え、笑顔が怖い……

 

 まさかここまで笑顔が獰猛さとか関係なしに怖い人間がいるとは思いもしなかった。

 

「さて、セシリアさん……」

 

「は、はいぃ!?」

 

 この前の試合で嫌と言うほどに雪風の恐ろしさを身をもって味わったセシリアは雪風に名前を呼ばれると声を裏返しながら背筋をびくっと直した。

 

「いきなり篠ノ之さんと一夏さんの組み手に割って入るのはどうかと思いますよ?」

 

「え!?」

 

「……!?」

 

 雪風の投げかけた指摘にセシリアだけではなく、箒も驚いていた。

 

「ど、どうしてですの!?」

 

 その言葉にセシリアはなぜそんな言葉を言えるのか理解できないがそう言ったが

 

「確かに篠ノ之さんが私たちに相談なくいきなり訓練を開始したのはマズいですよ?

 ですけど、既に一夏さんはそれを受けようとしていました。

 そこに割って入るのは列に並ばないで電車に乗るようなものですよ?

 オルコット家「当主」のセシリア・オルコットさん?」

 

「ぐっ!?」

 

 雪風のマナーやエチケットを強調する言葉と少し嫌味を込めたセシリアの自負することに揺さぶりをかける一言で黙らされた。

 

「ゆ、雪風さん……あ、あなたはわたくしの友人ですよね?」

 

 セシリアは雪風に情状酌量を求めるが

 

「私は友人(・・)だからこそ、間違いを正しているだけですよ?」

 

「うぅ……」

 

 容赦のない雪風の優しさと思いやりと厳しさに満ちた正論を返されるだけであった。

 

「それと篠ノ之さん」

 

「な、なんだ……!?」

 

 先程のセシリアに対する雪風の発言を見て今度は自分の番だと思ってか箒は戦々恐々と警戒した。

 

「見た所、中々いい動きでしたのでこれからは許可が下りた時は事前に相談してくださいね?」

 

「「「……え?」」」

 

 しかし、雪風の口から出て来たのは 叱責の言葉ではなく、ただの口頭注意であった。

 しかも驚くべきなのはあの雪風が箒の実力を多少認めているかのようだった。

 あまりのことに言われた本人である箒も呆然としていた。

 

「解りましたか?」

 

 彼女は箒に対してまるで教師が生徒に優しく諭すようにそう言った。

 そこには先ほどから見せていた威圧感はなかった。

 

「あ、ああ……」

 

 箒はただ素直に頷くしかなかった。

 

「そうですか……良かったです……」

 

 その言葉を聞くと雪風はとても嬉しそうに穏やかな笑顔をした。

 だが、次の瞬間

 

「ですが……

 二人とも、自分の意にそぐわないことがあったからと言って他人に当たらないようにしてくださいね?

 もし、そんなことになったら―――」

 

 再び怖い笑顔をし出して

 

「二人まとめて私がお相手しますよ?」

 

 にっこりとそう言った。

 

「「は、はいぃ!!」」

 

 にこやかに締め括る雪風であったが、明らかにそれは脅しに聞こえてくる。

 前から思っていたが本当に雪風は俺たちと同い年なのだろうか。

 とてもそうとは思えない。




ははは、ついにこの季節が来ましたよ!
雪風のクリスマスボイスがまた来たよ!
ハハハハハハハハハハハハハハハハハッハハハハハハハハハハハハッハハハハハ!!!
あと初風もこの時期限定で雪風たちとお揃いですからね!
十六駆マジ可愛い!ただ時津風だけいないですがね(´;ω;`)
何度でも言いましょう!陽炎型は天使!

後、青葉と秋雲ぇ……そりゃ、二次創作では「~終了のお知らせ」のタグがあるけれど、まさかの爆撃とは……

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