奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い 作:オーダー・カオス
なんか、手抜きみたいですいません。
今回、if歴史としての帝国軍人の方々が出てきます。
「イギリスだって大したお国自慢ないだろ。
世界一まずい料理で何年覇者だよ」
「な……!?」
………………は?
私がオルコットさんを糾弾しようとした瞬間に彼女に誹謗中傷された織斑さんの弟さんが言い返した。
それを聞いた瞬間に私はオルコットさんに対する怒りが逆流した気がした。
て、相手の国を侮辱してどうするんですか!?
彼も若いから我慢できなくなるのは理解できるがだからと言って、相手の国を侮辱していいことにはならない。
恐らく、金剛さんがここにいたら両方に対して怒りを露わにしているだろう。
と言うよりも私も若干どころではなく、彼に対しても怒りを感じている。
金剛さんは佐世保鎮守府で私と磯風の艤装が完成するまでの間、よく英国の文化を教えてくれたり食事を振る舞ったりしてくれた。
ある意味、金剛さんは私や磯風にとっては所謂、憧れの存在でもあった。
その金剛さんの出身地を侮辱されているのだ。
怒りを感じないわけがない。
「あ、あ、あなたねえ!わたくしの祖国を侮辱しますの!?」
いや、先に侮辱したのはあなたでしょ?
そんな織斑さんの弟さんの発言に対して、自分のことは棚上げしてオルコットさんは激高した。
別に彼を擁護するつもりはないが、なんとも厚顔な人だ。
こんなのが……国家代表の候補とは……安い肩書きですね……
あまりのオルコットさんの恥知らずな態度に私は「国家代表候補生」そのものに対して疑念を抱いてしまった。
多分、周囲の人間もそう思っているだろう。
しかし、そんな周りのことが見えないらしくオルコットさんは
―ドンっ!ー
「決闘ですわ!」
器の小ささを露呈していることに気づかないまま彼女は決闘と言う名前の私闘を持ち込んだ。
そして、もう一方の当事者はと言えば
「おう、いいぜ。四の五の言うよりもわかりやすい」
と身の程を弁えず乗ってしまった。
この人は自分が初心者なのを忘れているんでしょうか?
度胸と勇気、冷静さが求められる水雷畑で育った私は今度は彼の「匹夫の勇」に呆れてしまった。
そもそも、彼はクラス代表になることを避けていたはずなのだが。
言っておくが、水雷屋の覚悟は「匹夫の勇」などではない。
それは私にとっての悲しみの始まりであったソロモンで戦死した多くの駆逐艦たちが証明している。
英国の兵士たちを義務でもないのに危険を承知で助け出した特Ⅲ型の三女と四女。
特Ⅲ型の長女は味方の突撃を援護するために自分が標的になるのを覚悟で探照灯を照らし続けた彼女が自負している言葉を借りるのなら彼女は「正真正銘のレディ」だった。
ソロモンで敵陣に何度も突撃したあの白露型四番艦だって、味方を活かすために突撃したのだ。
朝潮型のネームシップはあの地獄のダンピールで自らと行動した艦の艦長の「約束」を果たさせるために護衛していた船と瀕死の妹のためにわざわざ司令部からの指示に逆らって全員の救助が終わるまで対空戦闘を続けた。
そして、何よりもコロンバンガラで私の師であった「二水戦旗艦」の神通さんはまるで後のことを解っていたかのように私に「逆探」を理由に駆逐隊の指揮権を預けた。
私たち、水雷屋が無謀とも言える勇気を発揮するのは仲間を守る時だけだ。
「言っておきますけど、わざと負けたりしたらわたくしの小間使い―――いえ、奴隷にしますわよ」
彼がその挑発に乗ると彼女は上から目線で全力勝負を望んできた。
既に決闘の約束が成立してしまったのでこの点については後腐れなしでいたいと言う思うだろうし仕方ないだろう。
「侮るなよ。真剣勝負で手を抜くほど腐っちゃいない」
いや、手を抜く余裕すらないでしょ、あなた
啖呵を切る彼に対して私は心の中で毒を吐いた。
「そう?何にせよちょうどいいですわ。
イギリス代表候補生のこのわたくし、セシリア・オルコットの実力を示すまたとない機会ですわね!」
とオルコットさんは完全に自分の勝利を確信して勝ち誇っていた。
……このまま、彼女をすんなりと勝たせるのは癪ですね
彼女のその態度に私は腹の虫が収まる気がしない。
だが、彼女の予想は間違いじゃないだろう。
彼女と彼とでは経験も技術も圧倒的に彼女の方が上だ。
勝てるとすれば、奇襲等の奇策を弄するしかないだろう。
仕方ありませんね……
私はこのままオルコットさんにただで勝たせるのは気に食わないので接触はなるべくなら控えたかったが織斑さんの弟さんにこの一週間で「二水戦式訓練」を施そうと思った。
付け焼刃とは言えそれで少しはマシになるだろう。
しかし
「
………………は?
そんな考えは彼のその言葉によってどこか彼方まで吹っ飛んで行ってしまった。
何を言っているんだ、この少年は。
経験者どころか、ほとんど学年最強クラスの人間相手に初心者が「ハンデ」を申し出てどうするのだ。
どこまで、楽天家なんだ。
「あら?早速お願いかしら?」
………………え?
しかし、オルコットさんはそれに対して舐められていると言うことに気づいていないのか怒りを見せていない。
そんな彼女の反応に私は不自然さを感じてしまった。
普通、こういった場合は下に見られていることに屈辱を感じるはずだ。
少なくとも、「二水戦」にそんなこと言ったら即殴り合いになるレベルだ。
「二水戦」、いや、駆逐艦の沸点が低すぎるのかもしれないが。
なぜそんな考えに至るのか私には理解できない。
いや、もしかすると「初心者」が「経験者」の自分にハンデを求めること自体がおかしいと思っているのかもしれない。
先ほどの幼稚な言動から考えられないが意外に彼女にもそこら辺を考えることぐらいはできるのかもしれない。
「いや、俺がどのくらいハンデをつけたらいいのかな~……と」
そんな彼女の反応にせめてもの親切なのだろうか、彼はわざわざ説明した。
そんな悠長なことを言っている場合じゃないでしょうに……
もう何と言ってしまえばいいのか分からずに溜息を吐いていると
―アッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!ー
「!?」
突如として、クラス中の生徒たちが一斉に笑い出した。
な、なんですか!?
私はオルコットさんなら未だしも彼を推薦した人間も含まれる彼女たちがどうして大笑いしているのか理解できなかった。
私が困惑していると
「お、織斑くん、それ本気で言っているの?」
「男が女より強かったのって、大昔の話だよ?」
「織斑くんは確かに「IS」を使えるかもしれないけど、それは言い過ぎよ」
彼女たちは何の躊躇いもなく平然とそう言った。
な、何を言っているんですか……?この人たちは……?
彼女たちのあまりにふざけた言葉に私は理解ができなかった。
「……!」
『この世界じゃね……制度とか法律で女性が何かと優遇されてるのよ。
そして、制度とか法律の外では女性は男性を何かと見下している……
「IS」を使える女性は偉いと言う考えが蔓延しているの……』
更識さんが言っていたのは……こういうことだったんですか……!
私は更識さんの口に出したあまりに荒唐無稽な事実を思い出してしまった。
そして、それは実際に私の前に現れた。
彼女たちは恐らく、本気でそう思っているのだ。
私は彼女たちに不快感を感じると共に
先に彼を推薦したのはあなた方でしょうが……!
彼女たちの身勝手すぎる掌返しに憤りを感じた。
そもそも彼が初心者にも係わらずクラス代表に推薦したのはこの場を支配する彼女たちの「色眼鏡」であったはずだ。
元々、「女尊男卑」についてはある程度の覚悟を決めてはいた。
だが、これほどまで薄気味の悪いものとは思いもしなかった。
仮に彼女たちが笑った理由が織斑さんの弟さんが初心者でありながら代表候補生のオルコットさん相手に身の程を弁えずに「ハンデ」を申し込んだと言う蛮勇を笑うのならば私は納得していただろう。
だが、彼女らただ織斑さんの弟が
それはつまり、彼女たちにとって彼は「見世物」にしか過ぎないのだ。
―ギリー
私が彼女たちの傲慢に歯ぎしりしていると
「……じゃあ、ハンデはいい」
「………………」
そんな言葉が聞こえてきた。
私はその言葉に失望感を禁じえなかった。
「ええ。そうでしょうそうでしょう。
むしろ、わたくしがハンデを付けなくていいのか迷うくらいですわ」
その言葉を聞くとオルコットさん勝ち誇ったかのように言った。
そして、そのまま口を動かしながら
「ふふっ、男が女より強いだなんて、
―ドゴッ!!ー
その瞬間、教室中に机の叩き鳴る音が響き渡りその戯言は続かず、私の握りしめた右手の側面部には強い衝撃が走った。
「いい加減にしてくれませんか……?
お二人とも」
どうしても私には違う世界とは言え、私たちと共に海を駆け抜けた人々に対する侮辱にも繋がるであろう言葉を看過することなどできなかった。
どれだけ時が経っても色褪せないものがある。
蒼龍さんや飛龍さんを実の娘のように大切にして家族ぐるみの付き合いをしていて奥さんとの相談で戦後に彼女たちを引き取ろうとしていた「二航戦」全ての父親とも言える猛将。
あの無謀なダンピールでお互いが交わした約束を果たすためだけに朝潮ちゃんと共に地獄に戻って行った艦長。
「奇跡の作戦」を成功させるために自らが汚名を被せられてもギリギリまで粘りに粘って成功させた指揮官。
私が
そして、私たちと共に戦い続けた無数の乗組員たちや輸送船の船員、航空機の操縦者、確保した陸上の拠点を死守し続けた陸軍の兵士たち。
彼らの胸に在ったのは時代が、国が、性別が異なろうとも変わらないものだ。
それを持っていた彼らを侮辱されることに繋がりかねないことだけはこれ以上許せなかった。
個人的に日本に生まれてよかったと思うことは
「無常」と言う概念を日本ほど深く追究する文化はないと言うことです。
「無常」だからこそ、一瞬の「きらめき」が美しく、そして、それを忘れずに生きていく。
「永遠」などないからこそ、その「きらめき」を胸に刻む。
もしかすると、それこそが「永遠」なのかもしれませんが。