奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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第20話「覆り続ける常識」

「ちょっと待ちなさいよ!?

 雪風にとって初めてできたこの世界の友達!?」

 

「そもそもどういった経緯で会長が雪風さんのことを保護していますの!?」

 

「雪風を保護するのは兎も角として、どうして妹のことを妨害するの!?」

 

「本当に布仏が会長と……

 いや、それどころかお義姉様のことを知ってたのか!?」

 

 会長が雪風のことを知っていたことから始まった二人の関係に対して、四人は混乱し次々と質問を投げかけた。

 いや、俺だって本当は信じられない事実の数々でパニックを起こしそうになっている。

 この三ヶ月間、まさか雪風とのほほんさんにこれだけの秘密事をされていたのだ。

 俺の知らない所で何が起きていたのか。

 理解出来ていなくても実際にそれがとんでもないことであることは事実なのだ。

 

「と、とりあえず落ち着いてくれ。

 なるべく、今、皆がしてきた質問に答えていくから」

 

 俺は自信はないが、それでも今回知った事実の整理をしながら疑問に答えていこうと決めた。

 

「あ、うん。

 そうよね」

 

「そうですわね。

 話を聞かなければ、分かることも分からないままですわ」

 

「うう……でも、気になる」

 

「織斑、なるべく早めに話してくれ」

 

「あ、ああ」

 

 俺がちゃんと説明することを伝えると何とか全員落ち着いてくれた。

 とりあえず、情報は一刻も早く欲しくても、それが手に入らないのは嫌だと判断してくれた。

 

「じゃあ、先ずどうして雪風が会長の友達になって会長が雪風のことを保護している……

 いや、保護できているのかと言うと……

 その前に約束して欲しいことがあるんだ」

 

「何よ?

 勿体ぶらずに早く言いなさいよ?」

 

「鈴さん。

 きっと機密事項なのですわ。

 よく考えてみなさいな。

 雪風さんの事情を知っていて、尚且つ保護している方なのですわ。

 それ相応の秘密を抱えているのですわ」

 

「う……

 分かったわよ!

 で、大方このことは口外するなってことでしょ?

 それぐらいは察したわ」

 

「ああ……

 そういうことだ。

 三人も約束してくれるか?」

 

「勿論ですわ。

 オルコット家の名に誓いますわ」

 

「うん。僕も友人として誓うよ」

 

「ああ。軍人としては間違ってはいると思うが、お義姉様と教官に誓って破らない」

 

「……いや。セシリアとシャルロットは兎も角としてラウラ……

 誓う対象が重くない?」

 

 俺は会長の事情を話す前に四人にこのことを漏らさない様に念の為に言っておいた。

 この中で鈴やセシリア、シャルは兎も角としてラウラは軍人だから、会長の実家のことを話すのは色々と注意しないといけないと感じたからだ。

 ただそのラウラは軍人としての自分ではなく、千冬姉の教え子、そして、雪風の妹として口外しないことを約束してくれた。

 多少、重く感じるがこれ以上に心から信頼出来る宣誓はないだろう。

 

「……ありがとう。

 で、なんで会長が雪風をそれだけ保護出来るかと言うと……

 会長の実家と会長の立場が関係してくるんだ」

 

「会長の実家……?」

 

「それに立場?

 どういうこと?」

 

 会長が雪風を保護している理由に会長の実家が関係していることに当然ながら、鈴とシャルは疑問を抱いた。

 

「……そういうことですの」

 

「まさか……」

 

 しかし、そんな二人に対してセシリアとラウラは何か納得している様子だった。

 

 そっか、二人はそういうことに詳しいのか……

 

 セシリアはイギリスの貴族の当主で、ラウラは軍人だ。

 だから、立場や家が担う役割を察したのだろう。

 

「……分かった。

 織斑。このことは絶対に漏らさない」

 

「ええ。

 それと同時に会長の立場も分かりましたわ」

 

「な、何よ二人で納得しちゃって」

 

「どういうことなの?」

 

 会長が背負うものを理解した二人は改めて口外しないことを約束してくれた。

 それを見て、俺は話すことへの躊躇いを多少和らげることが出来た。

 

「それは……

 会長がこの国の対スパイ組織を代々担ってきた家の当主だからだ」

 

「はあ!?」

 

「何それ!?」

 

「やはりか……」

 

「ですよね」

 

 会長がこの国の対暗部組織の長であるという事実に鈴とシャルは度肝を抜かされ、セシリアとラウラはある程度予想していたので余裕を持って受け止められた。

 どちらかというと鈴は俺と同じ一般家庭の出身で、シャルは今は兎も角として母親が死ぬまでは俺たちと同じだったのだ。

 恐らく、俺が二人と同じ状況なら同じ反応をしていただろう。

 

「……つまりはその手の情報操作はお手の物ということですのね」

 

「ああ。で、最初に雪風を見付けた千冬姉と山田先生の二人が会長に頼んで、それを了承してくれた会長が色々と手配してくれたんだ。

 信じられないことだけど」

 

「いや、当たり前でしょ!?」

 

「そうだよ!

 だって会長って僕らと―――

 ―――あ」

 

「……シャルロット?」

 

 鈴と同じ様に今までは抗議にも等しい言葉を向けていたシャルはその言葉を止めた。

 会長が俺たちとほぼ変わらない年齢であるのに国家の要職に就いているからこそ、今までは彼女は信じられなかったのだろう。

 普通は信じられないだろう。

 だが、途中であることに気付き口を閉ざした。

 

「……鈴。

 確かに信じられないことだと思うけど、俺たちだってそうだろ?

 まだ高校一年生なのに戦争やるんだぞ?

 もう常識が通用しない世界に足を踏み入れてるんだ。

 一々、気にしてたら気が持たないぞ」

 

 説明としては雑だが、会長の年齢で疑問を持つのなら俺たちだってそうだ。

 そもそも未成年なのに戦争に身を投じていく。

 そこに年齢は余程の年少者じゃない限りは俺たちが疑問を抱くことは無理だろう。

 それに年齢のことだけじゃない。

 既に「艦娘」、「深海棲艦」、「パラレルワールド」といった最早、フィクションの世界なんじゃないかと思う出来事の羅列。

 加えて、この場にいるのは貴族の当主、大企業の隠し子、少女軍人。

 常識に反していることばかりなんだから、一々気にしてたら疲れるだけだ。

 ただ、元々、俺と同じ本当の意味で一般家庭出身の鈴が受け止めるのは難しいだろう。

 

「うぅ……分かったわよ」

 

 それでも、鈴は渋々納得してくれた。

 セシリアやラウラだけではなく、今まで自分と同じ意見だったシャルまで納得したのが決定打だろう。

 

「……しかし、織斑。

 そんな立場にいる人間がどうして素性を明かしたのだ?

 まったく、メリットがないと思うのだが」

 

「そうですわね……

 実際、そういった立場なら情報や正体は隠しておいた方が……」

 

 鈴が事実だと受け止めてくれた後、ラウラとセシリアが会長がそんな重大な情報をなぜ打ち明けたのかという疑問を投げかけた。

 当然、そうだ。

 対スパイ組織の長。

 そんな人物が正体を明かすのは下手をすれば命取りになるのは俺だって理解できる。

 

「……ああ、それについてはこれからのことも含めてみんなに教えてほしいって会長と龍驤さんが言ってきたんだ」

 

 俺がみんなにその事実を明かした理由。

 それは会長だけではなく、龍驤さんにも頼まれたからだ。


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