奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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第19話「事実」

「で、アンタはどうしてあんな暗い顔---

 いや、今日なんかあったの?」

 

「え!?」

 

 部屋に入った途端、鈴は俺に悩んでいた理由、正確にはその原因である今日の出来事について訊ねてきた。

 

「いや、何で?」

 

「いや、そりゃあ……」

 

「普通にわかりますわ」

 

「うん」

 

「ああ」

 

「……そりゃ、そうだよな……」

 

 どうして、俺が暗かったのかを訊ねると全員が呆れ混じりにどうして逆にわからないのかといった風な反応を示してきた。

 それを見て、俺は今の質問が愚問であったことを自分で理解させられた。

 

 どう話そうか?

 

 恐らく、今さら隠し通すことなんてできないだろう。

 しかし、だからといって会長やその妹のことを大っぴらに話していいものだろうか。

 

 いや、もう言わなきゃいけないことだよな……

 

 その躊躇いはもう間違っている。

 俺が今日、会長の話を聞かされて感じたものはこれから俺たちが知っていかなきゃならない感情であるはずだ。

 それを話さないのは不公平な話だろう。

 

「……実は今日、この学園の生徒会長に呼び出しを食らった」

 

「え!?」

 

「生徒会長に!?」

 

「本当!?」

 

「何故だ?」

 

「ん?」

 

 先ず初めに俺は今回、起きた事実だけを打ち明けるために、会長に呼び出されたことを話した。

 だが鈴たちは俺が想像する以上に驚愕している。

 

「そんなに驚くことか?」

 

「いや、だって……アンタ……」

 

「この学園の生徒会長……

 ということはつまり……」

 

「一番強い生徒ってことだよ?」

 

「え!?

 あ、そっか……」

 

 鈴とセシリア、シャルの三人は俺の予想していたものとは異なる理由で衝撃を受けていた様子だった。

 よく考えてみたら「IS学園」という「IS」の訓練を主とする教育機関の生徒会長という立場にはそういった資質も求められるかもしれない。

 しかし、まさか生徒会長とは思わなかった。

 

「ん?

 更識……?」

 

 恐らく、生徒会長の名前を思い浮かべたらしいラウラはその名字に対してあることに気付いたらしい。

 いや、ある意味、俺は知らなかったが当然のことかもしれないが。

 

「……織斑、まさかと思うが」

 

「ラウラ?」

 

「どうしましたの?」

 

「………………」

 

 ラウラは昨日、俺が泣かせてしまった更識と会長の名字が同じであること、つまりは血縁者であることを察したらしい。

 

「ああ。その前に三人に言っておかなきゃいけないことがあるんだ」

 

「……分かった」

 

「何よ、言っておくことって?」

 

「そうですわ、一体何ですの?」

 

「………………」

 

 ラウラの質問に答える前に俺は鈴たちに更識のことを話すことでその質問に答えようと決めた。

 

「実はな、俺が会長に呼び出されたのは会長の妹のことで会長に謝罪されたからなんだ」

 

「!」

 

「は?謝罪?」

 

「会長がですか?」

 

「会長の妹?どうして一夏が?」

 

 俺は単刀直入に俺が会長に呼び出されたのは会長の妹のことで謝罪を受けたからだと伝えた。

 予想外な答えに鈴たちは困惑した。

 

「正直に言う……

 一昨日のことだけど、会長の妹にぶたれそうになったんだ。

 ラウラが止めてくれたけど」

 

「はあ!?」

 

「なんですって!?」

 

「え!?」

 

 俺は包み隠さずに更識にぶたれそうになったことを打ち明けた。

 案の定、事情を知らない三人には驚かれたようだった。

 後は更識が三人に悪く思われないように説明しようとした時だった。

 

「「「………………」」」

 

「ん?」

 

 驚いていた三人はすぐに俺に対して呆れと軽蔑を込めた目を向けてきた。

 

「アンタ……まさか……」

 

「あんまりですわね」

 

「一夏……それはちょっと……」

 

「え?」

 

 鈴とセシリアは不機嫌になり、シャルは憐れみを込めた視線を向けてきた。

 

「え?どうしたんだ、三人とも!?」

 

「どうしたんだ?じゃないわよ!!」

 

「またですの!?貴方は!?」

 

「え!?え!?

 ちょっと待て、何でこのタイミングで怒るんだよ!?

 いや、確かにある程度は覚悟してたけどさ!?」

 

 鈴とセシリアは突然、俺に対して怒ってきた。

 今の話の何処に彼女たちを怒らせる要素があったのかわからず今度は俺のほうが困惑してしまった。

 

「ちょっと二人とも!

 先ずは落ち着いて!」

 

「う……そうよね」

 

「ごめんなさい」

 

 しかし、シャルが慌てて止めに入ったことで何とか冷静になってもらい、意味も分からないうちに制裁を食らわずに済んだ。

 

「で、どういうことなの一夏?」

 

「あ、ああ……

 そのだな、俺の「白式」は原因で会長の妹の専用機の開発が遅れてて、それが原因なんだ……」

 

「え!?」

 

「それは……その……」

 

「確かに恨まれても……いや、でも一概に一夏が悪いという訳じゃ……」

 

 鈴たちは更識が俺のことを嫌っている理由を聞いて納得し出した。

 「代表候補生」である鈴たちからしてみれば「専用機」の重要性は俺の考えているものよりも明らかに大きいものだろう。

 加えて、シャルに至っては実家が次世代機の開発の遅れでこの学園に来ざるを得なかったのだ。

 俺が一方的に悪いとは思わなくても、更識が俺に対して一発や二発ぐらい殴ろうとするのは仕方のない感情だとは思えてしまうのだろう。

 

「それで会長に呼び出されたのは更識の専用機の開発が遅れているのは会長も関わってるかららしいんだ」

 

「?

 どうしてそこに生徒会長が関係してくるのよ?」

 

 会長が謝罪してきたのは単に妹の暴力未遂の件だけではなく、そもそもの原因の一つに会長自身が関わっていることを打ち明けると当然ながら鈴は疑問を覚えたらしい。

 

「会長の妹の専用機の開発が遅れているのは俺の「白式」だけじゃなくて、会長が雪風の「初霜」の偽の研究予算を作成してわざと妹の専用機の開発を遅らせているのも原因なんだ」

 

「はあ!?」

 

「どうして自分の妹に対してそんなことを!?」

 

「いや、それよりも「初霜」って……!?

 どうして会長が!?」

 

「ま、まさか……!?」

 

 俺が会長が実の妹に対して妨害していることや雪風の「初霜」の研究予算を作成したことを話すと今度はラウラすらも困惑した。

 

「それはな、会長は雪風のことも……

 いや、「艦娘」や「深海棲艦」、あっちの世界のことも知っているからなんだ。

 会長だけじゃない、のほほんさんも知っている」

 

「噓でしょ!?」

 

「どうしてそのことを!?」

 

「生徒会長が!?」

 

「布仏もか!?」

 

 会長が雪風のことどころか、「艦娘」に関係する全てのことを知っていることに全員が驚愕した。

 

「雪風のことを保護してこの世界での身分を偽造していたのが会長で、のほほんさんは会長の従者みたいな立場なんだ」

 

「「「「ええええええええええええええええ!!?」」」」

 

 色々と衝撃的過ぎる事実に理解が追い付かない様子だった。

 いや、無理もないことだとは思うけれど。


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