奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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明けましておめでとうございます。
最近、短い内容ばかりで申し訳ございません。
それでも頑張っていきたいと思います。
今年もよろしくお願いします。


第16話「正しき間違い」

「会長のせい?

 いや、その……そんなに責任を感じなくても……」

 

 会長は更識が俺と雪風に敵意を抱いているのは自分のせいだと責めているが、それはいくら何でも背負い過ぎだろう。

 確かに姉だからある程度責任を感じてしまうのも無理はないと思うが、それでもここまで負い目を感じる必要はないと俺は思う。

 

「違うの。

 あの子が少なくても、本音ちゃんにまで敵意を向けているのは私のせいなのよ……」

 

「え?」

 

 しかし、彼女は自らの主張を撤回するどころか、具体的にのほほんさんのことを妹が拒絶していることに関しては自分が原因だと告げてきた。

 

「私はあの子が強くなることを望まなかった。

 むしろ、ずっと何も知らないままでいて欲しくて……あの子を支えるどころか、最低の言葉をぶつけてあの子が強さを手に入れられない口実の為にあなた達を利用したの」

 

「は?」

 

 自らの願望と俺たちを利用したと言う事実。

 それらの罪を彼女は告白した。

 何を言っているのかは理解出来なかったが、彼女が歪んだ行動をしていたのは把握できてしまった。

 

「俺たちを利用って……

 一体?」

 

 利用された。

 その言葉に一瞬、反発と不穏さを覚えたが、今までの経験上相手の言い分や立場を受け止めないで話を進めるとそれが相手を傷付けることになると考えて先ずは話を聞いてから感情的になろうと決めた。

 勿論、雪風の時の様に相手の過去に土足で踏み入って傷付ける事だってあるだろう。

 それでも、今回はあっちの方から話しかけてきたのだ。

 

 少なくても……あっちが話したいってことだよな?

 

 個人的に話したいのか、話さないといけないから話したいかの違いは分からない。

 それでも、ここであちらから話そうとしているのだから話は聞くべきだろう。

 

「……ありがとう。

 私はあなた達、二人が「専用機」を実質、形式上問わずに保有することになった際に……

 雪風ちゃんの「初霜」に偽物の予算案を作成してわざと簪ちゃんの「専用機」の開発が一年以上、遅れる様にしたわ」

 

「はあ!?」

 

 余りの酷い事実に、いや、妹に対する妨害に俺はドン引きした。

 俺たちが「専用機」を得たことで更識の機体の開発が遅れているのは知っていた。

 しかし、まさかその発端に彼女の姉が関わっているなど思いもしなかったのだ。

 

「どうしてそんなことを!?」

 

 いくら何でも酷過ぎる妹への仕打ちに怒りを覚えたが、それでもその理由を訊ねるべきだと俺は判断した。

 

 那々姉さんだって箒に憎まれることがあってもそれでも、守ろうとしたんだ……

 だから、先ずは話を……!!

 

 俺が踏みとどまることが出来たのは那々姉さんのお陰だ。

 那々姉さんは妹の様に愛している箒に憎まれてもそれでも案じていた。

 なら、目の前の会長だってそれなりの理由があるだろう。

 

「……あの子を危険に晒したくなかったから」

 

「……?」

 

 またしても、会長は妹を危険に晒したくないと言う理由を繰り返した。

 

「……他の「代表候補生」と違って、更識の家で育って強くなると言うことは暗殺の標的になるということでもあるの」

 

「!?」

 

 会長が頑なに妹に「妹に強くなって欲しくない」という自己中心的な願望を押し付けている本当の理由に俺は今まで以上に大きな衝撃を受けた。

 

「更識は「暗部」から国を守る「暗部」。

 当然ながら、たったそれだけで相手にとっては目の上のたん瘤で、怨みも買っているわ。

 そんな家の人間が強くなれば相手にとっては脅威に見える。

 だから、強くなって欲しくないの……」 

 

「………………」

 

 会長が語った妹に強くなって欲しくない理由。

 その内容に俺は憤りを感じたが、それでも彼女を責めることは出来なかった。

 

 ああ……そうか……

 この人は本当に守りたいだけなんだ……

 

 この人は間違っている。

 断定することは思い上がりだと思うが、それでもやり方は間違っている。

 大切な妹を傷付けて、そのことに俺たちを利用している。

 どう言い繕っても間違っている。

 けれども、この人はこの人なりに大切な人間を守りたかっただけだ。

 その想い自体は決して間違ってなんかはいない。

 だけど

 

「……会長。

 俺はあんたのその押し付けは間違っていると思います」

 

「っ!?」

 

「おりむー!?」

 

 俺は自分を曲げたくなくて、彼女に間違っていると言った。

 


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