奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い 作:オーダー・カオス
と言ってもどうすりゃいいんだ?
先日ののほほんさんの幼馴染である日本の代表候補生、更識簪のことを解決するまでは訓練に集中できないだろうから参加しないでいいと言われているが、その解決方法が全くと言っていいほど思いつかず俺は途方に暮れていた。
そもそも、これって俺が解決していいことなのか?
もう一つ、俺を悩ませているのはこの問題に対して、果たして俺がこれ以上首を突っ込んでいいのかということだった。
そもそもあっちからすれば加害者である俺が関わってくるなど彼女を余計に傷つけないだろうか。
更識からすれば、俺は顔も見たくない相手だろう。
最低限の雪風の誤解だけは解きたいし……
ただ、雪風のことについての誤解だけは解きたい。
少なくても、雪風の専用機「初霜」は雪風の戦友であった艦娘の少女の名前から来ているらしく、それを「ズル」とは言う言葉で片付けて欲しくない。
それに……
いや、今のうちだからこそ、俺たちが戦わなきゃいけない相手のことを知っておいてもらわないと
加えて、今まで「専用機」はただのステータス的な感じなものでしかなかったが、もうそんなことを言っていられない状況になりつつあることも伝えたい。
その事実を少しでも教えないと彼女も知らないうちに戦いに巻き込まれることになる。
「専用機」が一種の特権的なものになっている現状なら、俺や雪風が何かしらの形で彼女に協力できるのならしてあげたい。
しかし、今は状況が違い過ぎる。
「専用機」を持っていることは今は戦場に出る可能性が必然的に上がってしまう。
そのことを知らない人間がほぼ強制的に戦場に出るなんてことはあって欲しくない。
それでも余計な口出しだし、どう教えればいいのかわからないけど……
更識からすれば、俺のやろうとしていることは大きなお世話だ。
危ないから、今から今までの努力を捨てろなんて俺だって殴りたくなる思い上がりだ。
入学した当初は分からないことだったが、「専用機」を受理する、つまりは「代表候補生」になるということはそれだけの努力をしてきたということだ。
そうでなかったら、那々姉さんや天龍さん、龍驤さんの訓練に鈴やセシリアたちは付いて来れなかっただろう。
きっと、更識も同じくらい精神的に強いだろう。
だが、同時に何も知らない更識に逃げ道を与えないままなし崩し的に戦いに参加させるのは間違っていると俺ははっきりと思える。
ただ問題なのはどうやってこの事実を更識に打ち明けるかだ。
雪風の気持ちが今になってわかるとは……
恐らく、入学当初から雪風も俺と同じ心境だっただろう。
そもそも、まるでSFのエイリアンみたいな人類を滅ぼそうとしてくる敵がいて、その戦いが始まろうとしているなどと普通は信じられない荒唐無稽な話だ。
……あれだけの過去があったのにそれを話すことが出来なかったんだから……
どれだけ頑張ったんだよ
あの時、俺は気安くあいつが背負っているこの過去に触れようとしてしまい、泣かせてしまった。
しかし、もし「深海棲艦」を目にしないで雪風の話を聞かされたら俺は信じただろうか。
そんな信じてもらえないかもしれないという恐怖の中でアイツは俺たちを友だちだと思ってくれていた。
守秘義務もあるけどさ……
あ~、どうすりゃいいんだよ!?
話そうにも信じてもらえない。
話したとしても更識の努力を無駄にしてしまう。
話したら何処かで情報が漏れるかもしれない。
話さなかったら、更識は何も知らないまま戦いに巻き込まれる。
まさに八方塞がりだ。
「あ、おりむー」
「あ」
そんな風に俺が悩んでいるとのほほさんが声を掛けてきた。
「えっと……どうしたの?
……ごめん。そうだよね」
「え?い、いや……」
俺が何を悩んでいるのかと彼女は訊ねてきたが、そもそもの理由が彼女の幼馴染であり、既に昨日の件がある為に今の質問を野暮だと察して彼女は申し訳なさそうにしてきた。
俺としてはのほほんさんは悪くないし、そもそも友達を支えたいとしているだけなのだからそんなに気に病まないで欲しい。
加えて、彼女はあの時、雪風や俺の為に怒ってくれた。
それに原因が俺にあるのだし、今回の件に勝手に首を突っ込んだのは俺なのだ。
彼女が謝る必要などない。
「……おりむー。
今、時間空いてる?」
「え?あ、ああ」
しばらくして、のほほんさんは何かを決意したかのような表情を浮かべた。
「会って欲しい人がいるんだ」
「?」