奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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第71話「笑みと涙」

「じゃあ、新しく共に過ごすことになる二人を迎えられることを祝して、乾杯~!!」

 

『乾杯~!』

 

 鈴が乾杯の音頭を取り、それぞれが持参したソフトドリンクの入った紙コップを手に取りそれに続いた。

 本来ならば、こんな夜に大騒ぎをするなんて怒られることになるだろう。

 しかし、二人の事情を知る千冬姉を始めとした教師陣が許可してくれたことや、彼女たちの食事事情を察した生徒たちが集まったことで歓迎会を開くことが出来た。

 因みにこの場にいるのはあの時、食堂にいた面々や一組や二組の生徒だけではなく、話を聞いた一年生も続々と集まってくれた。

 

 多分だけど、臨海学園の中断も影響しているよな……

 

 彼女たちの心は恐らく、大多数が本筋である二人への優しさがあるが、それでも心の何処かで中断になってしまった臨海学園で溜まっているフラストレーションを発散することも目的としているだろう。

 だからといって、それは不純ではないだろう。

 本来ならば、高校生時代の青春の一ページを飾ることになっていたイベントが中途半端に終わってしまったのだ。

 残念に思って他のところで解消したくなるのも理解出来る。

 

「え、えっと……

 ちょっと織斑君?

 これは一体?」

 

「ジュルリ……!」

 

 そんな歓迎ムードとは裏腹に阿賀野さんは生徒たちの熱気と少し他の学校よりもワンランク上の学食が織りなす食事を目の前にして戸惑っていた。

 対照的に照月さんはぱあと目を輝かせていた。

 因みに料理の内容としてはパーティーの定番であるフライドポテトや唐揚げ等のオードブル、この学園のメニューを単品注文したパスタやピラフ、そして、鈴が腕を振るった中華料理が並べられていた。

 

 と言っても、他じゃスナック感覚の唐揚げとかもこの学園じゃそこら辺の店よりもクオリティが上なんだよな……

 

 今更だが、この学園の料理のクオリティに俺は驚かされた。

 カラオケとかでスナック扱いの料理すらここの料理人は全力で作る。

 思えば、ここは国際施設だった。

 そうなるのも無理はないのかもしれない。

 

「ああ……何というか、こっちの食生活に慣れて欲しいのと新人が入ってきて嬉しいんだ。

 だから、気にしないでくれ」

 

「そ、そうなんだ……」

 

「もう食べてもいい?」

 

「う、うん……」

 

「むしろ、そうしてくださいな」

 

「う、うむ……!」

 

 未だに阿賀野さんは何処か浮かない顔をしているが、照月さんは早く目の前の料理を食べたいと言う気持ちを隠さずにいた。

 そんな姿を目にして、俺たちは涙を禁じ得ず彼女に早く料理を食べて欲しくて促した。

 

「う、うん……

 それじゃあ、いただきます!」

 

 こんなにも万感の思いを込めた『いただきます』を俺は聞いたことがなかった。

 照月さんはそのまま唐揚げへと箸を伸ばした。

 そして、それを顔の前へと持ってくるとゴクリと喉を鳴らし、ゆっくりと口を開けて本の一部を口に入れた。

 その少女の食事シーンを俺たちは固唾を呑んで見守っていた。

 少女はそのまま味わいながら唐揚げの衣と肉を咀嚼していき恐る恐る飲み込んだ。

 そして

 

「お、美味しい……」

 

『!!』

 

 少女は心の底から涙を滲ませながらそう呟いた。

 それを見た俺たちは感動と共に切なさを覚えた。

 

 哀しい……

 

 ただの食事の一シーンなのにその涙と笑顔の本当の意味を知っている俺は悲しかった。

 俺たちが何時も当たり前の様に食べられるものが目の前の彼女にとっては食べるだけで涙を誘う者だったのだ。

 そのことが余りにも辛かった。

 

「ほら、もっと食べなさい!」

 

「うん!ほらほら」

 

「ああ、ソーセージはどうだ!」

 

「あ!そうですわ!

 今度、わたくしも何か料理を―――!!」

 

「「「「それだけはやめろ!!!」」」」

 

「え!?何故ですの!?」

 

「「?」」

 

 照月さんの笑顔が余りにも尊くて俺たちは続けて他の料理にも手を付けることを願った。

 その最中にセシリアが自分も料理を作ると言うとんでもない恐怖の提案を言ってきたので俺たちは一斉に止めた。

 

 雪風も恐れおののいたあの料理を食べさせるわけにはいけない!

 

 セシリアが作った料理を目の前にして雪風ですら恐怖したのだ。

 あんなものを食事の喜びを知ったばかりのこの子に味わわせてはいけない。

 そう、俺たちは心の中で理解した。

 

 そう言えば……

 雪風は何か、あの時懐かしそうだったな……

 もしかすると仲が良かった子がそうだったのか……

 

 それでも何処か懐かしそうな表情も雪風はしていた。

 もしかすると、彼女の親しかった誰かがセシリアみたいなことをしていたのかもしれない。


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