奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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第70話「微かに見える」

「金剛さん。

 改めてですが、お疲れ様です」

 

「You are welcomeデース!」

 

 作戦が無事完了し、完全にあの旅館の海域の安全性を確保出来たことで私は金剛さんに対して、再び労いの言葉を贈らせていただいた。

 はっきり言えば、ここまで早くに危うげもなくこの事態を解決できたのは金剛さんが現場で指揮を執ってくれたことが大きい。

 だからこそ、何度も言葉を贈りたくなる。

 

「これで旅館の人たちの日々の営みを守れました」

 

「そうデスネ……」

 

 山田さんや扶桑さん、金剛さんたちのお陰で少なくともあの一帯で観光業や水産業を生業としている人々の日々の営みを守ることが出来ただろう。

 そのことで私たちは十分、報われるし救われる。

 

「そうね……

 それで、一ヶ月はどうする?」

 

「まだこの世界の人たちは「深海棲艦」の存在を知らない。

 どうしてもこちらは後手に回らざるを得ないわね……」

 

 自分たちが人々の営みを守れたことの喜びを胸に感じると共に感じると共にこの場にいる加賀さんと扶桑さんはそれぞれの今後の対応を口に出した。

 加賀さんはあの海域の一ヶ月における具体的な管轄を。

 扶桑さんは漠然とした未来への危惧を。

 

「そうですね。

 しばらくの間は私達駆逐艦と軽巡の人たちが一日ごとに交替するのが理想的ですね。

 近海の哨戒任務は私達にとっては慣れているものですし」

 

「そうね。お願いするわ」

 

「はい!」

 

 加賀さんの指摘に関しては既に考え着いているので具体的な案は直ぐに言えた。

 既にあのあの海域から「深海棲艦」は駆逐済みではあるが、万が一にも討ち漏らしがいれば再び増殖してしまう可能性はある。

 だから、一日交替で駆逐艦と軽巡の娘たちが一人ずつ哨戒していく必要がある。

 この手の任務は私達は慣れっこだ。

 

「……問題は扶桑さんが言った通りに私達が次の襲撃に対して後手に回らざるを得ないことですね……」

 

「Oh……」

 

「……そうね」

 

 扶桑さんの突き付けた課題に対して私達は一様に顔を曇らせるしかなかった。

 何故ならば、これに関しては私達は何も出来ないのだ。

 私達のいた世界では既に「深海棲艦」がいたことでそれに対する援軍として私達の存在は受け入れられた。

 しかし、この世界では深海棲艦の存在が認知されていないことで私達の存在は未知の武装勢力としか見られないだろう。

 しかも、この世界で最強戦力とされる「IS」を全員が所持しているという状態だ。

 明らかに混乱と不安を招く。

 そのことから私達は好き勝手に動くことは出来ない。

 

「本当に「深海棲艦」は何処から来るのかしら……?」

 

 扶桑さんは誰もが抱いていた感想を漏らした。

 

「……それが分かっていたら、私達は直ぐに戦いを終えることが出来たわ」

 

 その問いに加賀さんは根本的な解決を求める感情を漏らした。

 加賀さんの発言は誰もが望んでいるものだ。

 原因が何か分かれば、誰だってあんな消耗戦に近いいたちごっこなんてしなくて済んだ。

 しかし、無限に湧くあの存在を止める糸口どころが糸すらなかったのだ。

 

「……いえ、Negativeにならなくてもいいと思いマース」

 

「え?」

 

「?」

 

「どういう事かしら?」

 

 しかし、私達が当たり前に感じている悲観的な感情に浸りそうになった時、金剛さんは異を唱えた。

 私達はあの現実を知っているから彼女がどうしてそんな発言が出来るのか不思議だった。

 

「……今まで、私達は「深海棲艦」とのBattleに明け暮れるしかアリマセンデシタ。

 But、今は始まったばかりデース!

 So、あれらが何処から出て、どの様にして生まれてくるのか調べることが可能デース!」

 

「「!?」」

 

「金剛……!まさか、あなた……」

 

 金剛さんの指摘に私達は衝撃を受けた。

 何故なら、それは私達なら考えることが出来なかったことだからだ。

 

「この世界ならば、この状況ならば「深海棲艦」との戦いを終わらせる方法が見付けることが可能なはずデース!!」

 

「!」

 

 それは考えもしなかったことだった。

 いや、考えられなかったことだった。

 何故なら、既にあの日々が当たり前になって受け容れることしか術がなかった私達の故郷でそんなことを考える余裕などなかったのだ。

 

 そうか……

 この世界のこの状況なら……

 その可能性もあるんですか……

 

 悲観的になり過ぎていて私達は忘れてしまっていた。

 そんなことがあり得るなど考えもせず、可能性を捨ててしまっていた。

 けれども、そこに僅かとはいえ確かな希望を感じた。

 今なら、それが可能であるという。


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