奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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第65話「理想的な戦い」

『金剛さん。

 敵の詳細は?』

 

「ヲ級一隻。ハ級二隻。

 恐らく、急ごしらえの主力艦隊デース」

 

『成程……』

 

 最後の警戒区域に辿り着いた私達が遭遇したのは今まで姿を表してこなかった空母とそれを護衛する駆逐艦二隻であった。

 昨日の作戦で叩かれた主力を応急処置で回復するために作られた空母を擁する艦隊だろう。

 その結果、護衛しているのは駆逐艦二隻という状況だ。

 

『ただの空母同士の戦闘なら兎も角として、艦隊戦としては本当にギリギリの状態ね』

 

 蒼龍は敵の戦力をそう評した。

 確かに単純に空母同士の戦いならば、護衛は駆逐艦二隻でも十分だろう。

 しかし、それが艦隊戦となるのならば、圧倒的に足りなさすぎる。

 そのことから確実に間に合せの戦力だろう。

 

『では、「複縦陣」でお願いします』

 

「OK!皆さーん!

 「複縦陣」デース!」

 

『わかりました!』

 

『気合を入れるわ!』

 

『行きます!』

 

『夕立、やるわよ!』

 

『うん!!』

 

 今日、最後となるかもしれない戦闘。

 加えて、規模が小さいとはいえ、空母を所持する敵艦隊。

 それらだけで全員の気合が一層引き締まる。

 

「蒼龍!千歳!

 お願いシマース!」

 

 私は今日、初めてとなる航空戦力の使用を彼女らに求めた。

 

『ええ!』

 

『待ってました!』

 

 二人はそれを受けて、一人は矢を構え、一人はからくり箱を展開した。

 今から、航空戦力を解放する。

 相手に空母。それも正規空母がいるとなれば、二人に待機してもらう余裕はない。

 そして、これは最後の戦闘となる。

 つまりは妖精さんたちの生存率も高くなる。

 

「夕立!古鷹!」

 

『わかりました!』

 

『ぽい!』

 

 次にこの中で対空戦闘よりも艦隊戦に秀でている古鷹と夕立に前に出るように指示した。

 

「叢雲!」

 

『はい!』

 

 最後に私は共に蒼龍と千歳を守る役目を担う叢雲に声をかけた。

 この艦隊は一人一人が己の役割と出来ることを理解していることから声をかけるだけで己の役目を全うしようとしてくれる。

 だから相手よりも先に陣形を組み、ただでさえ高い勝利の可能性をさらに手繰り寄せることが出来るのだ。

 

『行きます!』

 

『発艦!』

 

 蒼龍と千歳は陣形を組み終えると一斉に攻撃隊を発進させた。

 今、私達は将棋やチェスで言えば、相手よりも十手先に布陣を完成させそのまま攻めているような状況だ。

 

『夕立ちゃん、行くよ!』

 

『はい!』

 

 艦載機の発進を確認するとそれに続くようにと古鷹と夕立が前進した。

 全ての準備は整った。

 余程の事態さえ起きなければ、こちらの勝ちはほぼ揺るがないだろう。

 

『さあ、素敵なパーティを始めましょう!』

 

 夕立のその言葉が聞こえてきたことでどうやら、相手の護衛も前に進んできたことも理解できる。

 古鷹と夕立を前に進ませた理由。

 それは敵の護衛を前に誘き寄せるためだ。

 護衛がいるのといないのとでは空母や戦艦と言った主力艦の生存率は大きく変わる。

 加えて、周囲に他の敵艦がいなければ、こちらの攻撃隊も空母を集中して狙うことが出来る。

 勿論、それは水上戦力の二人に大きな負担を与え、尚且つ敵の航空戦力に狙われるということになるリスクもある。

 

 But……

 ソロモンで戦ったあの二人ならば!

 

 けれども、水上戦力に関しては二人は問題ない。

 何故ならば、あの二人はソロモンで勇名を馳せた兵だからだ。

 

 航空戦力はDon’t Worry!

 

 同時に航空戦力は私と叢雲、そして、空母の二人が不得手な二人を助ける。

 伊達に私は航空戦力が主力となったあの戦いの後期で戦っていた訳ではない。

 それに叢雲も対空戦闘には自信がある。

 そして、空母には二航戦であった蒼龍と私と同じで後期を戦った千歳もいる。

 それに千歳には奥の手もある。

 だから、これが最も理想的な戦いだ。


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