奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い 作:オーダー・カオス
「こほん。では、自己紹介を」
「うぅ……はい。
阿賀野 香(かおり)です。
よろしくね」
こっぴどく千冬姉に絞られたのか、ほぼ半泣き状態で阿賀野さんが挨拶をした。
その姿に全員が同情を禁じえなかった。
「な、なんか……艦娘の割にはその……」
「ああ……」
「そうですわね」
阿賀野さんの今の状態を目にして俺たちは昨日から感じていたことだが、艦娘のイメージがぶっ壊れてしまった。
俺たちが今までに会った艦娘というのが前世が神通という名前だったらしい那々姉さん。学年最強どころではない元いた世界では伝説の戦士にも等しかった雪風。教官役の龍驤さんや天龍さん。艦娘全員から信頼され慕われている金剛さんと言った面々だっただけに阿賀野さんの現状とどうしても比べてしまう。
「いや、でも……
武蔵さんとかも艦娘としては新人らしいんだよね?」
「そ、そう言えば雪風も駆逐艦という艦娘の中じゃ新顔なんだっけ?」
「いや、お姉様は長年戦っておられたらしいぞ?」
「……実年齢3じゅ―――」
「「だから、デリカシー!!」」
「―――はい」
阿賀野さんが今まで会ってきた艦娘と異なり、妙に哀愁を漂わせているのは昨日、龍驤さんが言っていた様に彼女が艦娘として新顔なのが理由ではないかと考えてみたが、よく考えてみたら同じ新顔であったらしい武蔵さんや雪風がいるのでやはり、不思議だった。
その際に雪風の実年齢を言いそうになったら、セシリアとシャルロットに物凄く怒られた。
確かに今のはデリカシーがなかったと思う。
「……そこの四人。
今の私語は天田先生に報告しておく」
「「「「え~!!?」」」」
俺たちが私語をしていると千冬姉が今のことは天龍さんたちに報告すると言ってきた。
恐らく、今ので俺たちの今日の訓練は特訓になってしまっただろう。
「……すまん。
阿賀野。お前の席はあのやかましいあの四人の端の左だ」
「は、はい!」
先ほどの廊下でのやり取りで完全に力関係を叩きつけられたのか阿賀野さんはびくつきながら従った。
「え、えっと……よろしくね?」
「よ、よろしくお願いします」
阿賀野さんは俺たちの近くまで来ると俺たちに初対面であることを装う様に挨拶をしてきた。
「はぁ……では、一時限目の開始までの空き時間に各自で交流を深める様に」
千冬姉は少し疲れ気味に交流を深める様に言ってきた。
そりゃ、阿賀野さんって普通の生徒じゃないからな……
疲れるよな
本来なら転校生の一人や二人ぐらいならば千冬姉は動じないと思うが、今回来ているのは国家機密なんてレベルじゃない秘密を抱えた艦娘の転校生だ。
どっと疲れるのも無理はない。
だから、先ほどのは俺たちにも遠回しに『よろしく頼む』という意味もあるだろう。
て、なると……
照月さんは二組か
阿賀野さんは俺たちと同じ一組となると照月さんは鈴の二組ということだろう。
まあ、鈴と照月さんなら大丈夫だよな?
少なくても今みたいなことにはならないだろうし……
それに二組の先生も千冬姉と同じ様なことはしないだろうし
「ねえ、阿賀野さんだっけ?」
「うぅ……はい」
「ダメだよ~。
落ち込んでたら」
「私達なんてもう何回も雷を落とされたことか」
「慣れないと」
「え!?慣れる!?」
阿賀野さんが落ち込んでいると交流を深めようとしているクラスの生徒たちが集まってきて、千冬姉に怒られたことで落ち込んでいる彼女を慰めた。
最早、このクラスで千冬姉に怒鳴られることなど風物詩であり、通過儀礼なのだ。
確かに千冬姉はしょっちゅう、このクラス、いや、全ての生徒に雷を落とす。
そう考えると阿賀野さんが落ち込む必要などないのかもしれない。
……あれ?
今の所、雷を落とされていない雪風とシャルてすごくないか?
ふと、考えてみると雪風とシャルだけは千冬姉に雷を落とされてないことに俺は気付いた。
雪風はまあ、長年の貫録と何だかんだで真面目なのでそうなのが伺えるが、シャルに関しては意外だった。
「シャル……」
「何?」
「お前だけはある意味、希望かもしれない」
「……?」
どうすれば、千冬姉に雷を落とされないかと考えてみるとシャルに学べば大丈夫だと思い、そこにふと俺は希望を感じてそう言った。
でも、案外大丈夫かもしれないな
阿賀野さんに対して、受け入れてくれているクラスの生徒たちを見ているともし彼女たちの正体を知られた時のことを考えてみると案外大丈夫な気がしてきたことを俺は感じてしまった。
阿賀野の下の名前は酒匂の「匂」から「香」と連想させて決めました。
本当は能代や矢矧も何処か加えたかったのですが、それだと難しかったので末妹の彼女の名前にしました。
物語上の命名の理由については後に明かします。