奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

295 / 332
第61話「将二人」

「皆さーん!

 「単縦陣」デース!」

 

『『『『『はい!』』』』』

 

 敵影を発見しその規模と詳細を報告するとユッキ―は即座に最も火力を活かせる「単縦陣」を選択してきた。

 

  Very quickly……

 

 私から情報を受け取ってから五分も経たないうちにユッキ―は指示してきた。

 

 私のことを信頼してくれていることもありマスガ……

 

 ユッキーがここまで早くに指揮を出してきたのは私の出してきた情報に間違いがないと信じてのこともあるだろうが、それでもかなり早い。

 恐らく、敵が準備する前に叩き味方に被害を生じさせないようにすると言う兵法の鉄則に則ってのことであろうが、それを実際に行える人間は少ない。

 『兵は拙速を貴ぶ』という言葉ある様に戦いが少しマズくても早めに動くことが求められるが、実際にそれを行おうとすると、敵の反撃に遭い思わぬ危機を招くこともある。

 だから、ある程度の緻密な計算も求められるのだ。

 

 ユッキーは自分の兵士としての才能を sublimating(昇華していマス)……

 

 ユッキーはそれを自分の才能を活かして補っている。

 元々、戦場で咄嗟の機転を働かせることの出来る娘だった。

 それは彼女が瞬時に実際に自分が視た情報とそれ以外の情報を信じられない程の速度で判断できる彼女の判断力の高さが理由だ。

 彼女が生き残り続けたのもそれが理由だろう。

 『雪風に神宿る』。

 昔、そんなユッキーの神憑りにも等しい戦いぶりにその様に例える人々が言っていた。

 まさに戦場のユッキーの動きが判断力、集中力はそれに相応しいものだった。

 彼女はそれを兵士としてだけではなく将としての能力にまで活かしているのだ。

 

 今ので解かりマシタ……

 ユッキーは「名将」ではありマセン……

 

 「名将」は長年の経験で培われた采配ぶりでそう言われるが、ユッキーにはその言葉すら過小評価になる。

 常に少ない情報と生まれ持った判断力、そして、「名将」にとっての必須の経験。

 それら全てをユッキーは兼ね備えている。

 

 「神将」デース!

 

 「神将」。

 その言葉が最も彼女に近い。

 

『金剛さん!準備、整いました!』

 

「OK!

 Enemyの様子は?」

 

『まだ到着してません!』

 

「It’s good!」

 

 蒼龍からの伝達でまだ敵の態勢が整っていないことが把握できた。

 どうやらユッキーの即決が功を奏したらしい。

 

 ここは山田先生の為にも砲撃だけで片付けマース!

 

 ここはさらに手堅く航空戦力による攻撃で仕留めるべきだろう。

 しかし、ユッキーの近くにいる山田先生の精神状態や妖精さんたちの生命、戦力の低下というリスクを考えれば砲撃の方が優先される。

 

「古鷹!叢雲!夕立!

 砲雷撃戦の用意!」

 

『『わかりました!』』

 

『ぽい!』

 

 空母以外の四人が肯いた。

 空母の二人も異を唱えていないことから信頼してくれているのを肌に感じられた。

 

 嬉しいことデス!

 

 ユッキーだけではなく他の仲間にも信頼されている。

 その事実に大きな喜びを感じることが出来た。

 信頼とはしている方も大きな安心感を得るが、同時にされている方も大きな勇気を持つことが出来ることなのだ。

 

「古鷹、私と一緒に!

 叢雲と夕立は討ち漏らしを!」

 

『『『はい!』』』

 

 敵に接近しながら相手が交戦しなくてはならない距離に入ると同時に私はこの中で砲撃能力に秀でている重巡である古鷹には私と一緒に砲撃をすることを、叢雲と夕立には私達が討ち漏らした後の敵の撃退を指示した。

 

 ただのplaying tag(鬼ごっこ)じゃいけマセン!

 

 ただ相手を追いかけるのでもなく、待つのでもなく重要なのは相手が戦わなければならない地点にまで赴くことで相手に逃げると言う選択を奪い取り、そして、先に布陣することで相手に戦いの準備をさせない。

 これが拠点奪取の為ではない、戦場における主導権争いの一つだ。

 

 向かって来マスネ

 

 大方の予想通り、敵は向かってくる。

 既に逃げられないのならば、そうするだろう。

 

 Be on your guard(油断は禁物ネ)!

 

 

 最早、破れかぶれの突撃。

 しかし、危険な要素も十分ある。

 

 Because……

 私たちも同じことをしてキマシタ!

 

 何故なら、窮地に陥った時にそれを打破しようとする時の勢いは尋常ではないからだ。

 特にこの場にいる一人がそれを証明している。

 

「古鷹!」

 

『大丈夫です!』

 

 火力も戦力も状況も全てこちらが上。

 しかし、それに胡坐をかいて討ち漏らしをすれば、敵に反撃の隙を与え、味方を、仲間を危険に晒す。

 そんなことはあってはならない。

 

「Fire!」

 

 そのことを意識し私は古鷹の射程に敵が入ると同時に一斉に砲撃した。

 その結果は

 

「Yes!!」

 

『やった!』

 

 二隻とも一撃で仕留めることが出来た。

 

『……すごい』

 

『ぽい……』

 

 私たちの背後で叢雲と夕立の二人が私達が初撃で倒し切ったことに呆気に取られていた。

 

 単純なPowerでは扶桑たちに負けマスガ……Technicでは負けマセン!

 

 はっきり言えば、単純な戦闘力という点では扶桑達後進に劣るだろう。

 しかし、伊達に長年戦ってきた経験から培われた技術は誰にも負けない自信がある。

 

 何よりも今は全盛期デース!

 

 加えて、今ので確信したが老朽化によるハンデもないことから全力を出すことも出来る。

 

「ユッキー!

 敵は倒しマシタ!全員、無傷デース!」

 

 完全に敵を倒し切ったことで即座にユッキーに私は連絡を入れた。

 

『わかりました。

 進撃を』

 

「OK!皆さーん、付いて来てクダサーイ!

 Follow me!!」

 

『『『『『はい!』』』』』

 

 私の連絡を受けると共にユッキーは戦闘前と同じ様に即断した。

 恐らく、深海棲艦にとっては何も出来ずに負けるしかもう道はなかった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。