奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い 作:オーダー・カオス
「皆さーん!調子はどうデスカ?」
『それ、出撃した後に訊きますか?』
『ですよね』
『はい』
『そうね』
『ぽい!』
「うぅ……」
全員に調子を訊ねた所、満場一致で出撃した後にそれを訊ねたことへの疑問を呈されてしまった。
確かにその通りだ。
こういうことは作戦を始める前に言うものだ。
そもそも戦いとは始まる前から殆どが結果が決まっているものなのだ。
『で、金剛さんはどうなんですか?』
そんな風に少しばかりショックを受けていると叢雲が私自身はどうなのかを訊ね返してきた。
それに対して、私は
「ユッキ―の成長が楽しみデース!」
ユッキ―がどれ程の成長を遂げているのかが気になってしまっていた。
あの娘が十分過ぎる程に成長しているのは先ほどの明言だけではなく、ここ数日のことで理解しているつもりだ。
あの娘の性格上、何かを得意と明確に言えるのは他のものよりもそれが圧倒的に優れている。
それも神業にも等しいもののはずだ。
それが彼女の戦いの果ての力なのデショウガ……
きっと、それは私たちがいなくなった後もあの世界を守り続けたことで得た力なのだろう。
攻めることが守ることに繋がらなくなった世界の戦い。
守ることだけを考えることが出来る世界で培った強さ。
『そうね……』
『あの娘の鍛えた力……』
『気になりますね……』
『私達が持っていたかもしれない力……ね』
『雪風ちゃん……』
全員が私と同じ様にユッキ―の得た力と成長に対して興味を抱いていた。
過程とその原因は兎も角として、結局、私達も艦娘であり、誰かを守りたい、守ると言う本質は変わらないのだ。
親バカ極まれりネ……
生まれてからあの娘が呉に旅に出るまでの間まで世話をしていたことから私は何処かユッキーの成長を楽しみに感じているところがある。
そのことに私は自分が親馬鹿に近い感情を抱いていることも自覚している。
幸せも願うのは……Greedy(欲張り)デスカ?
けれども、同時に私はユッキーの幸福と平穏も願ってもいる。
これだけはゆずれない想いなのだ。
神通……Sorry……
恐らく、私と同じかそれ以上にユッキーの平穏と幸せを願っている神通に私は心から謝罪した。
それはユッキーのことだけじゃない。
この世界において、戦うことを義務付けられていない民間人にも下手をすれば戦いを強要することへの謝罪だった。
平和を守り続けた神通にとってはこれだけは越えてはならない一線だったはずだ。
しかし、その信念が通用しなくなる刻が迫ってきている。
私と違いマース……
私も平和を求める気持ちを有している。
神通も私と同じ様に人間同士の争いが当たり前の時代が記憶がある艦娘があることから、ある程度は経験はなくても知識としては理解出来ているはずだ。
しかし、彼女はその当たり前が当たり前にならない様に努力し続けた。
そんな彼女の信念を私達は穢そうとしているのだ。
二人とも立派デース……
神通もユッキーも間違いなく平和に尽くしてきた艦娘だった。
片や生まれ変わっても戦い続け、片や生き残りながらも戦い続けた。
二人の背中にはかつて連合艦隊旗艦を務めた艦娘と同じかそれ以上の大きなものが存在していたのは事実だ。
デスガ……今は力を貸してくだサーイ!
彼女たちの誇りや人生を穢すことになろうとも、それでも今は二人の力が必要なのだ。