奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い 作:オーダー・カオス
「終わったわね……」
一隻のヲ級に私の砲撃が直撃し、その後加賀たちの第二波がトドメを刺したことで私はこの戦闘が終わったことを確信した。
そして、ル級の方はと言えば
「鳥海、大丈夫?」
『少し、痛みますが大丈夫です』
鳥海によって倒されていた。
鳥海は少し、身体の痛みを報告しながらも大丈夫だと言った。
『今から、「瞬時加速」という技術を見せます。
これなら水雷戦力の方々にとっての切り札になります。
ただ、物凄い速度による負荷がかかりますので曲がる際には気を付けてください』
雪風は鳥海を含めた重巡、軽巡、駆逐艦、そして、もう一人に「瞬時加速」という加速する「IS」の技術を教えた。
しかし、どうやら瞬間的に急加速するという単純な利点もあるが、同時に曲がることが難しくなると言う分かりやすい欠点もあるらしい。
鳥海を見てみると、身体にかなりの負荷がかかることが理解出来る。
山田さんに見せてもらったけど……
そんな技を使って宙返りしたり、舞を踊っていて無事なのは何とも……
山田さんに見せてもらった「IS」の戦闘記録で雪風と神通の「瞬時加速」を見せてもらったが、今の鳥海の状態が少しル級との衝突を避けるだけなのにこれなのに、それを大分逸脱したことをしているのにケロッとしている二人がとんでもないことが理解出来る。
山城がドン引きするのもわかるし、同じ二水戦の朝潮が出来そうなのも恐ろしい。
と言っても……他の娘たちもそうなりそうなんだけど……
しかし、何だかんだで艦娘、特に水雷屋の娘たちは頑張り屋であることから何れは二人と同じになっていく気がした。
……とりあえず、敵本隊は叩いた……!
色々と「IS」と「艦娘」の戦い方の融合に思うところはあるが、それでもこの戦いは勝利した。
それはつまり
「みんな、よくやったわね!
私達の勝ち!作戦の成功よ!」
『やりました』
『はい!』
『えぇ!』
『やったぁ!』
『良かったです!』
この作戦が成功したということだ。
既に敵の本隊は叩いた。
これにより、この海域における「深海棲艦」の影響は一時的に消えた。
「山田さんに出電。
これより、敵の一掃及び生存者の捜索に入ります」
二度とこの海域が深海棲艦の手に戻らない様に私達は掃討する段階に移った。
◇
「扶桑さんから入電!
敵主力艦隊の撃破に成功!
これから掃討と生存者の救出に入るとのことです!」
「!?」
「やった……!」
扶桑さんたちが敵主力を打ち破った。
その一報に阿武隈さんは喜びを込めて告げ、山田さんは衝撃を受け、私は思わず拳を握り締めた、
これで……
妖精さんたちを助けに行けます……!
海域を解放した時にすること。
それは残っている深海棲艦を一掃すること。
そして、救助出来る味方を捜索すること。
つまりは撃墜された妖精さんたちを助けに行けるということだ。
「……山田さん。
お疲れ様で―――?」
とりあえず、作戦のひと段落付いたことに今まで緊張していた山田さんに声を掛けようとしたが
「………………」
彼女は固まっていた。
「―――山田さん?」
「ふぇ!?
あ、すみません……
ぼーっとしちゃいました……」
改めて、声をかけると山田さんは反応を示した。
「どうしましたか?」
もしかすると、気が緩んだことで疲労が出てしまったのかもしれないと考え念のために私は彼女に訊ねた。
「あ……いえ……その……
実感が湧かなくて……」
「え?」
山田さんは私の問いに『実感が湧かない』と返した。
「あ、その……
実際に戦っているのは艦娘の皆さんで……
それに戦っているという事はこれは戦争で……
それで、妖精さんたちというのは私には見えないんですけど……
それでも命を落としているかもしれないと考えると……
こう思ってしまうのはダメだと思うんですけど……
少し、何となくですけど胸の奥が熱くなるような……」
「!?」
山田さんの発言に私は驚かされた。
彼女は艦娘は命懸けで戦い、加えて、妖精さんたちの安否が分からないのに胸が熱くなっていくのはおかしいと考えたが胸が熱くなっていると語りだした。
勝利の鼓動が響いていると言うのだ。
意外ですね……
あまりのことに私は信じられなかった。
ただそれは失望という意味ではない。
気を病んでしまうのではないかと思っていましたが……
それで勝利の意味がわかってましたか……
山田さんは勝利の喜びを無意識に感じている。
それは一見すると、戦死者への冒涜になってしまうことにもなる。
しかし、それでもそれを感じるのと感じないのでは、今後の戦いにおいて関わってくる。
真面目過ぎる人はそうではない人と比べると押し潰されがちだ。
そのことを危惧していたが、今のを見て私は山田さんが最悪な方向に向かわないことに安堵した。
また、同時に最低な方向にも堕ちていかないのも直感出来た。
「……初めての指揮で勝てたんです。
そう感じるのも無理はありません」
彼女に私はそれがそこまで悪いことではないことを伝えた。
確かに戦いの後に勝利を喜ぶことは間違っているかもしれない。
戦いには犠牲が付き纏ってしまうものだ。
そのことを考えれば素直に喜ぶことなど出来るはずがない。
しかし、勝利に胸の高鳴りを感じることとそれは別のことだ。
何よりも今回が彼女にとっての初陣なのだ。
そう思うのも無理はないし、気持ちに整理が追い付かないのも当たり前だ。
「……それに山田さんは大丈夫です」
「え?」
私は山田さんは大丈夫だと感じている。
彼女は戦争という数々の生命が失われることへの怯えも持っている。
胸の高鳴りを感じてしまうとしても彼女ならば増長することはない。
今の彼女は昔の私と同じです……
思えば私も彼女と同じだった。
不安で不安でしょうがなくて、つい眠れず廊下を廻っていたら神通さんに励まされたあの初陣前夜の夜。
その翌日、初めて戦いを制した後、私も何とも言えない気持ちになった。
喜んでいいのか分からないけれども勝てた時の胸に押し寄せた不快感とは異なる高まり。
あれは実際に感じないと分からない。
そして、それが過ちになるかもわからない。
「山田さん。
恐らく、明後日にもこの海域の解放は完了します」
「!
本当ですか!?」
「はい」
同時に私はこの状況ならば海域の解放。
つまりはこの辺りの住民の皆さんの生活を取り戻せるということだ。
既に一週間前に大打撃を与えたのに加えて、今回の作戦による追い討ち。
これにより、この海域における「深海棲艦」の影響は0に近くなっている。
彼女等に増殖する力は殆どなくなっている。
後は今日と明日で……!!
二日もあればこの海域における「深海棲艦」は一掃できるだろう。
とりあえず、今回は理想的ですが……
これからは
今の作戦は想像以上に上手くいった。
しかし、それはまだ戦略の規模が小さいのもあるだろう。
これが大きな戦場となれば戦術の勝利もそれに比例して大きくなっていく。
加えて、戦術の範囲でどうにかなるのかも難しくなっていく。
戦略となればただ勝つだけでいい訳ではなくなりますよね……
これが戦略まで大きくなっていくと非常に難しくなっていく。
戦術はただ勝てばいいが、戦略はそれ以外のことを考えなくてはならない。
例えば、そもそも作戦をすべきかどうか、同時に作戦をした後のこともだ。
作戦を行うのには多大な負担がかかってくる。
何よりも絶対に成功する作戦はないうえに、時に博打とも言える作戦もしなくてはならない時もある。
その手回しを行っていくことも戦略の範囲でもある。
それに世論も気にしないといけないでしょうね……
同時に世論も重要になってくる。
軍事関連は機密であるが、ある程度の情報公開も必要になってきてしまう。
もし強引に事を運んだりすれば反発は必至だろう。
しかし、消極的になり過ぎることだけが問題ではない。
問題は……
すぐにでも「深海棲艦」の脅威から逃れたいと考えて狂信的に積極策を行ってしまうことですね……
逆に積極的になり過ぎれば性急な決着を狙い過ぎて危うい戦いをし続ける可能性もある。
私達だけでは勝てない……
人の心までも考えなくてはならないが、それを考えなくては「深海棲艦」との戦いには勝てない。
そうしなければ、こちらの装備や各国の軍との協力も出来なくなる。
刀奈さんと轡木さんに任せるしかないですね……
私はこの世界で出来た親友とこの世界で私を保護してくれた人物が何処まで立ち回れるか賭けるしかなかった。
いずれにしてもこれからは戦場だけが戦場ではなくなるだろう。
山田さんの心も守らないといけませんね
私が懸念することは山田さんが提督役をすることで少しでも失敗すれば彼女が心無い言葉を向けられて傷付くことだ。
山田さんは判断を誤らないがそれでも繊細だ。
そこだけが不安だ。
お願いします。
刀奈さん。轡木さん……
私達も心を守ります
私達はただ勝利するのではなく、山田さんやこの世界に生きる人々の「心」を守っていく必要がある。
そうしなければ、戦場で勝つことは出来たとしても、決して勝つことは出来ないからだ。