奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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雪風の私服来たあああああああああああああああああ!!
何だ……今年は雪風の当たり年なんですか!?
これをどれだけ我々は待っていたんでしょうか!!


第75話「燃える」

 私はシャルロットさんだけでも砲撃と次に来るであろう爆撃から守ろうと彼女を身体の下に隠すように身を伏せていた。

 

 あれ……?

 

 迫り来る死を少しでも覚悟していたところ、少し妙な感じがしてきた。

 

 この音は……

 

 それは先ほど発射された今もなおこの場に空気を裂いて迫って来る砲弾の音だった。

 私はその音が艦娘に対して向けられるものよりも軽く聞こえたのだ。

 

 いや……これは……

 

 それよりも私はこの音に聞き覚えがあった。

 それも何年も、いや、何十年も前に。

 私はその何処か懐かしさすらも感じるその音の正体を確かめようと顔を上げた。

 

「え……」

 

 そこで私が目にしたものは予想外の光景だった。

 何と砲撃は私たちがいる地点よりも上方、いや、遠方へと向かおうとしていた。

 私たちを狙うのならばもう少し弾丸の角度は低くなってならなければならないはずだ。

 この砲撃が私たちを狙っているというのならば明らかにおかしい。

 一体、何が起こっているのかわからず混乱した直後だった。

 

「!?」

 

「え!?」

 

 今までまるで一つの矢が突き進む様に空気を切っていた音が突然、打ち上げ花火の様な炸裂音に変わった。

 そして、その理由は目で見れば簡単に理解できたことだった。

 

「弾丸が……破裂した……?」

 

 シャルロットさんはその光景を分かりやすく呟いた。

 彼女には弾丸が破裂した様に見えたのだ。

 いや、正確には違う。あれは弾丸の中に存在する弾子などが拡散したのだ。

 それを見て私は

 

「シャルロットさん!!

 伏せてください!!」

 

「え!?」

 

 この後に訪れることを理解しシャルロットさんに再び身を屈むように促した。

 

「ぐっ!」

 

「っ!?」

 

 私たちの背後から熱風が押し寄せてきた。

 そして、私は確かに見た。

 その熱気を生んだ炎と無数に展開された砲弾の中の弾子が敵の艦載機を飲み込んでいく様を。

 

()……()()……」

 

 それを見て私は重巡や戦艦が使用する対空・対基地用の砲弾の名前を口に出した。

 対艦用の兵装としては効果は薄かったが、それでも対空戦闘や基地攻撃用の兵器としては効果を発揮したあの砲弾を。

 

「……雪風?」

 

 私はその砲弾をこの世界で目にしたことに衝撃を受けたがそれ以上に私に衝撃を与えたことがあった。

 

 「深海棲艦」を攻撃した……?

 

 今の砲撃は誰の目から見ても「深海棲艦」を狙ったものだ。

 それも私のいた世界では使われていた三式弾で。

 

 しかも、こんなことが出来るのは……

 

 何よりも三式弾を使っているのに私たちを巻き添えにしないで敵の艦載機だけを撃ち落とした精密な砲撃。

 あんなに距離が離れているのにこれが出来る人間を私は二人しか知らない。

 

 まさか……

 

 私はあの一つの人影しか存在しない水平線へと顔を向けた。

 今度は絶望ではなく希望を抱いて。

 そして、次の瞬間だった。

 

「Burning Love!!」

 

「!?」

 

 そのどんな時でも明るく振る舞い、私たちにとって太陽の様な存在だった熱い恋心の持ち主であり海の女王ともいえるあの声が砲撃と共に聞こえきた。

 

「!!

 シャルロットさん!!立ってください!!」

 

「えっ!?」

 

「彼女は味方です!!間違いなく!!」

 

 私はその声を聞いた瞬間、信じられなかった。

 けれどももう前には恐れるものはないと理解し、同時にあの人の邪魔にならないようにこの場から離れながら恐らく彼女がしてくれている退避の援護射撃に乗じるようにシャルロットさんの手を引いた。

 

 いるはずがない……

 でも……でも……間違いなく彼女は……!!

 

 その声の主がここにいるとは思えなかった。

 神通さんの時と違って全く整合性が取れないのだ。

 それでも、私はそこに彼女がいるのかだけでも確かめたかった。

 佐世保で生まれて間もなかった私と磯風に艦娘の誇りを教え、私が呉に旅立つまで面倒を見てくれて、私にとっては最も尊敬し目標にしていた艦娘の一人。

 そして、司令が愛したもう一人の女性。

 

「……!」

 

「す、すごい……」

 

 私の背後から今度は爆裂音が響いてきた。

 シャルロットさんの反応からどうやら敵を一隻沈めたのがうかがえる。

 制空権が存在しないのにもかかわらず彼女はこの距離で当てたのだ。

 だけど、こんな距離程度ならば彼女ならばどうとでもないはずだ。

 

 あの人ならば……!

 

 あの海の古強者である彼女ならばこれぐらいは出来るその確信が私にはあったのだ。

 

「HEY!

 そこの二人、大丈夫ですか?」

 

「え?」

 

「……っう!」

 

 ようやく彼女と会話が出来る距離まで辿り着くと戦闘中なのに彼女は何時もの様な振る舞いで変わりなく私たち訊ねてきた。

 シャルロットさんは初めて見た彼女の振る舞いに面食らってしまっていた。

 

 ええ……わかります……

 わかります……

 

 そのシャルロットさんの反応を目にして私は心の底から納得し懐かしさすらも感じた。

 私も最初に会った時はそんな感じだった。

 でも、あの頃の私は直ぐに彼女に懐いた。

 そんなあたたかさが彼女にはあったのだ。

 私はその顔を見たくて真っ直ぐに彼女へと向き合った。

 

「あ……」

 

「雪風……?」

 

「What?アナタは……」

 

 私の姿を目にした彼女は自らの知っている私とは少し違う私の印象を見て少し違和感を抱いた。

 しかし、そんな私とは対照的に彼女は私の記憶の中にいる彼女とは変わらない姿そのものだった。

 既に声と振る舞い、戦場での戦いの技量から彼女の存在は感じていた。

 それでもありえないことに、いや、目の前にいるのが本当に彼女なのかを今実感して私は声が震えた。

 

「金ご―――」

 

 私はようやく泣きそうになりながらもそれでも彼女の名前を呼ぼうとした時だった。

 

「―――え」

 

「えっ!?」

 

 突然、私は何かに包まれて言葉が続かなかった。

 その理由は簡単だった。

 

「アナタ……!!

 まさか、()()()()ですか!!」

 

「こ、()()さん!?」

 

 目の前の彼女。金剛さんに抱き着かれたからだった。

 どうやら、彼女は一瞬成長した私のことが、誰かわからなかったらしい。

 確かに少し髪が伸びていたりあまり笑わなくなって暗い印象が付き纏う様になった私を見て、彼女が気付かなかったのも仕方がなかったのかもしれない。

 

「………………」

 

「あ、あの……金剛さん?」

 

 金剛さんは少し私の身体を離しながらマジマジと見詰めてきた。

 どうやら、私が本当に「ユッキー(金剛さんが付けたハイカラな愛称)」か確かめようとしているらしい。

 

「わ、―――」

 

「わ?」

 

「Wow!!」

 

「むぎゅ!?」

 

「ちょ、雪風!?」

 

 突然彼女に強く抱きしめられてしまった。

 

「ユッキーがさらにPretty Girlに成長してるネ!!

 会った時からCute Girlでしたガ、Prettyになっているネ!!

 Amazing!!!」

 

「ちょ、金剛さん!?

 は、恥ずかしいです……!?」

 

「………………」

 

 戦闘中にもかかわらず金剛さんは私の頬に自分の頬を寄せてそのまま何度も何度も自分の頬で私の頬を撫で続けてきた。

 そのまるで変わらない彼女の接し方に私は恥ずかしさを感じると共に一つだけ確実にわかったことがある。

 

 ま、間違いなく……

 金剛さんです……

 

 この親しい人間相手に行われる過剰ともいえる愛情表現はまごうことなく私の知っている金剛さんだ。

 

「あ、あの……雪風?

 この人は?」

 

「えっと……シャルロットさん……この人は……」

 

「ん?Oh……失礼しました。

 英国で産まれた帰国子女の金剛デース!

 ヨロシクオネガイシマース!

 アナタは初めて見る顔ですが、New Faceの艦娘ですか?」

 

「え……艦娘って……」

 

「What?

 だってアナタ水上にいますし艤装をつけているじゃないですカ?

 何処からどう見ても艦娘デスよね?」

 

 金剛さんはどうやら殆ど生身にも見える人間が海上にいることでシャルロットさんを艦娘と勘違いしてしまったらしい。

 よく考えてみれば私もこの世界に来て「初霜」を見て「IS」を「艤装」だと思ってしまったので金剛さんがそう考えるのも無理はないと思う。

 

「て、金剛さん!

 今は再会を喜んでいる場合じゃありません!!」

 

 お姉ちゃんや姉妹と同じくらい好きな方と再会できて神通さんと同じくらい嬉しいが、今の状況が状況なので喜びに浸っている場合ではない。

 金剛さんの人徳ともいえる魅力で戦いの中にの緊張感や焦燥感は消え去っておりしんみり感もないが、とりあえずこの状況を何とかするのが先決だ。

 

「SHIT!!

 ユッキーの成長とPrettyさに気を取られていましたが……ソウデシタ!!

 OK!お二人ともどうやら怪我をしているらしいのでここで待っていてくださーい!!」

 

「え!?あ……いっちゃった……」

 

 金剛さんは戦闘中なのを思い出して、いや、そもそもそれすら分かっていながらもあの態度であったかもしれないが、ボロボロの私は当然ながら僅かながらのふらつきと顔色からシャルロットさんも満足に戦えないことを即座に判断して一人で向かっていった。

 

「……大丈夫です」

 

「え……」

 

 けれども、私はそんな一対多数という状況を見ながらも確かな安心感を抱いていた。

 

「あの人なら……金剛さんなら……あれぐらいへっちゃらです!!」

 

 あの人の強さを知るからこそ私はあの人に不意打ちを食らうようなあの程度の敵ならばあの人の敵ではないことを理解していた。


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