奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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仮に雪風が陽炎と不知火と同じタイプの艤装だった場合……
割と異能生存艦ネタがMMDで再現できた気がします(笑)
艤装のデザインがスコー〇ドッグの武装と割と似たようなことが出来るので


第11話「可能性」

「ただ白兵戦だけをしたりするのなら、雪風ちゃんには既に槍があるしね。

 でも、君の場合はその槍のことは専ら一時的な防御手段にしか思っていないよね?」

 

「……はい。そもそも私の機体で白兵戦を継続するのは自殺行為に等しいので」

 

「そうそう。確かにあの槍は雪風さんの白兵経験のなさをリーチの差で補う面や奇策を使う際には便利だけど、雪風さんの戦法と相性がいいとは思えないんだよね。

 刀なら「逆落とし」とか「砲撃」の際に持っていてもいざとなれば追撃とか、不意打ちに応用できると思ったんだよね」

 

 「初霜」で白兵戦に対応できるのは機銃による接射射撃ぐらいだ。

 しかし、それはあくまでも相手のシールドエネルギーが少なくなってからか、トドメに違う一撃をお見舞いすることでしかできない限定的なものだ。

 だから、「槍」についても一時的な盾や、距離を取っての振りかざし、急激な反転や停止と言った使い方しか出来ていない。

 そもそも白兵戦に持ち込むこと自体がおかしいのだ。

 確かにあの錨には何度も助けられた。

 「槍」の形状だと長さが原因になって扱いが難しくなったり、両手が塞がったり、砲撃戦を行えなくなる問題点があるのも事実だ。

 

「だから、これからは槍は弾薬が尽きた後の保険として取っておくか、今までと同じ様に盾とかに使うといいと思ったんだよね」

 

「え……」

 

「……?どうしたの?」

 

 しかし、篝火さんのその発言に私は驚いてしまったが直ぐにそれを受けて装備を確認すると、確りと「初霜」の錨が装備されている槍が残っていた。

 

「……いえ、意外でしたので。

 てっきり槍を失くして、刀だけにすると私は思っていました……」

 

 槍が残っている事に嬉しさを感じるが私は彼女の思惑が分からなかった。

 ここまで合理性を重んじていながら、弾薬を撃ち尽くすという本来ならば敗けが確定した状態の保険として使えというのは理に適っていない筈だ。

 それなのに彼女はあえて槍を残していてくれたのだ。

 

「そうだね。

 合理性を考えるならば、確かに槍を外して他の装備を追加した方がいいのは当たり前だよ。

 でも、更識さんから教えてもらったこの「初霜」と君との関係を聞かされたら外せなくなったんだよ。

 それにさ、搭乗者のメンタル面も考慮するのが「専用機」持ちに対する正しい在り方だし、本物の一流だよ」

 

「………………」

 

 篝火さんのその言葉に私は自分の見識の狭さを痛感させられた。

 軍人、それも艦娘の中では駆逐艦という最も数の多かった私は効率を重んじざるを得ず、個人用の装備という概念に視野を広げることが出来なかった。

 

「「IS」がね、既存の兵器群と異なる所は強さとかじゃなくて()()()()()()()()だと感じているんだよね」

 

()()()……?」

 

 篝火さんの口から出て来た持論に私は自然と耳を傾けてしまった。

 

「そうだよ。

 「IS」は兵器としての強さばかり目を付けられているけど、私としては「IS」と搭乗者との関係性こそが最も注目されるべき点だと考えているんだよね。

 そうじゃないと、何時か「IS」の存在価値も失われちゃうよ。

 その証拠にどの国も「IS適正」の高い子を欲しがるでしょ?まあ、国家からすればただそういった人材が欲しいだけなのかもしれないけどね」

 

「……!

 「IS」を超える技術が生まれれば、「IS」の存在価値も失われると言うことですか……?」

 

「こういうことに関しては本当に君は川神さんの教え子だと感じさせられるよ」

 

「神通さんもですか……」

 

 篝火さんが神通さんと私が同じ考えを持つことに違和感がないという点に関しては私も自然と納得がいく。

 それは私と神通さんが軍人という視点を持っているからだ。

 そして、篝火さんの言っていることは正しい。

 「IS」は本来の目的が宇宙開発用の装備であったはずだが、「白騎士事件」の影響で現在では半ば兵器扱いされている。

 今、「IS」が持て囃されているのは既存の兵器と一線を画す高い技術力が理由だ。

 技術力の違いは戦力の違いにも表れる。

 その為、「()()()()()()()()()」という欠陥が今の「女尊男卑」の風潮を生む土壌にもなってしまっている。

 ただ、それを篝火さんは「IS」にとっての致命傷になると直感しているのだろう。

 

「……私はね。「女尊男卑」とかの風潮は馬鹿馬鹿しいと思っているし、あんな考え方、「IS」の()()()()()()()()()としか思えないよ」

 

「……()()()?」

 

「うん。研究者だからこそ理解できるけれど、「IS」は本当にすごい発明だと思うよ。

 搭乗者と一緒に成長する機体なんて信じられないよ。

 これを造った篠ノ之博士の天才ぶりと異常さを感じさせられるよ」

 

 そう言えば……山田さんも同じことを言ってましたね……

 

 以前、山田さんが言っていたことを私は思い出した。

 彼女は「IS」のことを「パートナー」として扱うことの大切さを授業で訴えていた。

 その為、私は「初霜」の存在によって、初霜ちゃんが今も力を貸していてくれると感じて幾らか孤独感が和らいでもいた。

 

「もし、私たち研究者がその可能性を追究する前に「IS」そのものの存在価値がなくなってしまったら、その可能性は永遠に失われたも同然だよ。

 研究っていうのは予算とスポンサーありきだからね」

 

 栄枯盛衰は世の常だ。

 今はその技術力の高さで重要な存在であることを決められている「IS」だが、仮に「IS」を凌駕する存在が世に出れば一気に廃れることになるだろう。

 それは「IS」の欠点とされる「()()()()()()()()()」という点が直結する。

 今はそれが、「IS」以上の存在がないから「女尊男卑」などに繋がっているが、仮に「IS」と同等かそれ以上の誰でも扱える存在が生まれれば、それが致命傷になり、「女性にしか扱えない()()()欠陥兵器」という没落ぶりを見せるだろう。

 加えて、「IS」のコアの少なさもそれに輪をかける。

 数が少なければどの様なものでも意味がないのを私は「深海棲艦」との戦いで嫌という程に味わってきた。

 それにどんな技術にしても何時かは時代遅れになる。

 各国が「IS」に予算を投じるのも今はその価値が高いだからだ。

 しかし、それを失った時には「IS」は誰にも見向きされなくなるだろう。

 恐らく、その時間は限られている。

 篝火さんはふざけているように見えて真摯に研究に向き合っている。

 それと同時に私は彼女に指摘されるまで「IS」の可能性に気付けなかったことから、彼女の様な視点を得られないと感じた。

 

「だから、私は君と「初霜」に可能性を感じているんだよね」

 

「え……?

 私と「初霜」にですか……?」

 

 不意に投げかけられたその言葉に私は何とも言えない気持ちになった。

 

「だって、元々展開不可能だった「IS」なのに君だけに「初霜」はそれを許したんだよ?

 それに、君の大切な友達とも関係しているかもしれないし、もしかすると君と「初霜」のことを調べていけば「IS適正」の秘密に繋がる鍵にもなるとも思うしね」

 

「だから……

 私の考えを尊重してくれているんですか?」

 

 当初、私は自分の拘りのようなものが理由で「初霜」の錨が残ったことに後ろめたさを感じていた。

 しかし、そこには確かな理由が存在していて私は安堵した。

 

「うん。だから、それは拘りとかじゃないんだ。

 しっかりとした理由があるんだよ。

 それに実戦データの方も君なら取って来てくれるからね。

 上の方も納得してくれているよ」

 

「……つまり、「初霜」の面影を少しでも残していきたいなら、実績を残せということですか?」

 

 篝火さんの言葉は裏を返せば、「初霜」の存在を重要視すると共に科学的な価値を探る為には私が「初霜」を活かしきることを問われていることを意味している。

 そして、それは同時に私だけではなく、「初霜」のことを守ることにも繋がっていくことだろう。

 どうやら、私が出している実戦の影響はこんな形で「初霜」を守っていたらしい。

 もしかすると、更識さんが私に早期から「初霜」を隠さず使う様に促したのはこのことを見据えた上なのだろう。

 

「そういうこと。

 まあ、「第二世代」に改良を施した機体で「第三世代」四機に勝利しているなんて川神さんレベルの偉業を成し遂げられるのは君ぐらいだと思うよ?」

 

「……一応、更識さんにはハンデに等しいものを貰って負けていますし、それに他の人たちも生きて来た世界が違いますし、ただそれだけですよ……」

 

 彼女は私の実力を買っているようだが、私は更識さんに最初に地上から始めるという実質のハンデを貰って負けているうえに、他のセシリアさん、一夏さん、鈴さん、ラウラさんとの戦いに関しても、実戦経験のなかった一夏さんに割と苦戦した上に、それを除外したとしても私が他の三人に勝てたのは偏に私が育った環境と彼女たちの育った環境の違いにある。

 経験の違いがあるのだから仕方ないことだ。

 そう考えると、やはり更識さんに負けたのは少し悔しい。

 尊敬している友人ではあるが、僅差の戦いだっただけに悔しい。

 それどころか模擬戦の件にとどまらず、ここ最近私は色々と彼女には悔しい思いをさせられている。

 まあ、私は更識さんのそんなところにも親しみを感じているけれども。

 

「そう言う所も含めて、私は君のことを重宝しているんだよ。

 そもそもその肉体年齢で30年近く戦い続けた歴戦の軍人のデータなんて、他の研究者からすれば喉から手が出る程に欲しい人材だよ。

 君のくれるデータさえあれば、日本の次世代機にも応用できるはずなんだから」

 

「……?私のデータがですか?」

 

 その言葉に私は思わず、反応してしまった。

 

「うん。はっきり言えば、君の戦い方は割と個性的な所があるのも否めないけど、それでも基本に忠実でそれを極め切った一種の芸術だよ。

 それに機体性能を君は出し切っているからどこまでが機体の限界なのかを私達も知ることが出来て、どこを改良したりすればいいのか試行錯誤もできる。

 それに「初霜」がある意味、専用装備が多い「第三世代」寄りじゃなく「第二世代」寄りな所も運動性の参考に出来るのは本当に助かっているよ」

 

「そうですか……

 そうでしたら良かったです」

 

 本音を言えば、「IS学園」に実質的な裏口入学したことや「専用機」を持っていることに私は罪悪感があった。

 しかし、私の実戦データが少しでも他の人間に役に立つのならば少しはそれも薄れる気がした。

 

「じゃあ、試験を始めるよ」

 

「はい」

 

 そして、改修された「初霜」の最終調整とも言える試験運用は始まる。


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