奇跡を呼びし艦娘のIS世界における戦い   作:オーダー・カオス

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実は雪風の水着がまだ決まっていない件。
マジで何にしよう……


第4話「理想を求める理由は現実を視るから」

「いや~、雪風ちゃんをからかうと楽しいわね?」

 

「お嬢様……

 おふざけが過ぎませんか?」

 

「いいの、いいの。役得よ、役得」

 

 雪風ちゃんが完全に落ち込むと同時に焦燥感に駆られながら帰った後、虚ちゃんは私を嗜めるが私はあまりに気に留めなかった。

 雪風ちゃんは真面目なのでからかい甲斐があるのでどうしてもからかってしまうのだ。

 

「それに今回の件はちゃんと目的があったから別にいいじゃない?」

 

「それはまあ……川神先生から直々に雪風さんに年頃の女の子のように買い物をさせて欲しいとは言われはしましたが……」

 

 そう。今回の件で雪風ちゃんに意地でも買い物をさせようとさせたのは川神先輩からの要望があったからだ。

 川神先輩はああ見えて、教え子に遊ばせる時は遊ばせようとする。

 特に今回、雪風ちゃんを遊ばせようとさせているのは真面目な彼女にこの世界での日常を楽しんで欲しいのだろう。

 あの子は真面目過ぎるために遊ぶことをどこか忘れている。

 だから、川神先輩は彼女に本音ちゃんやボーデヴィッヒちゃんとの交流を通して普通の学生として過ごして欲しいのだろう。

 

「ボーデヴィッヒさんの件もそう言った考えですか?」

 

「……流石ね。

 そうよ、その通り……」

 

 続けて出て来た指摘に私は肯いた。

 私はボーデヴィッヒちゃんが雪風ちゃんをまるで姉の様に慕い始めたのを知った時、二つの意味でチャンスだと感じた。

 一つは雪風ちゃんを守る自発的な護衛を手にしたと言う意味だ。

 残念ながら本音ちゃんは雪風ちゃんの心の支えになれても実際の戦力としては力不足だ。

 その為、どうしても戦える人間を雪風ちゃんの護衛として欲しかったのだ。

 そんな時にボーデヴィッヒちゃんと言う戦力、それも雪風ちゃんを心の底から慕い始めた存在が現れたのだ。

 これを逃す手はないと考えた。

 

 他人に非難されることなんて、もうあの子で慣れちゃったしね……

 

 ボーデヴィッヒちゃんを手駒にすると言うことがどれだけ非道なのかは理解している。

 けれど、私は既に世界で一番嫌われたくない人間に嫌われているのだ。

 これぐらいはどうってことはない。

 

「それにボーデヴィッヒちゃんが案外、雪風ちゃんを救ってくれる(・・・・・・)かもしれないしね……」

 

「……雪風さんを……救う(・・)……?」

 

 そして、もう一つ今回のことで私が期待していることはボーデヴィッヒちゃんが雪風ちゃんにとってかけがえのない存在になることだった。

 私の本当の狙い、それは

 

「……本当の意味で家族(・・)になって欲しいのよ」

 

「……家族(・・)ですか?」

 

 雪風ちゃんがこの世界で彼女の家族を得ることだった。

 

「雪風ちゃんはきっとあちら側で姉妹を失ったのよ……

 いいえ、それだけじゃないわ。

 他にももっと愛する人たちを失ってきたはずだわ……

 きっとその人たちを守れなかったことがあの娘を強くしつつも危うくさせてるのよ」

 

「お嬢様……」

 

 私は雪風ちゃんの過去を全て知っている訳じゃない。

 けれどこちら側の「陽炎型八番艦雪風」の戦歴や、時折彼女が見せているとされる覚悟なんて言葉が生温いどこか虚ろさと決意が込められた目。そして、何時か彼女の口に出した『妹』と共に見せた優しい目から、私は彼女がたどって来た路をある程度察してしまった。

 

「きっと、今のままじゃあの娘は何処までも自分を犠牲にするわ。

 だから、私は彼女が『生きていてよかった』と思えるようになって欲しいのよ」

 

「……その鍵がボーデヴィッヒさんという家族(・・)ですか?」

 

「そうよ。

 雪風ちゃんは今は義務感からボーデヴィッヒちゃんを守ろうとしている。

 きっと、彼女が言う総旗艦時代や訓練艦時代の教え子たちの様に。

 でも、私が望むのはそうじゃない。

 私が望むのは本当の意味で雪風ちゃんがボーデヴィッヒちゃんを()のように大切にすることよ」

 

 そんな中で私は、ボーデヴィッヒちゃんが雪風ちゃんを姉の様に慕い始めた事と、雪風ちゃんがまるで母や姉のように彼女を見守ろうとしていることに注目した。

 きっと、彼女の晩年もあんな感じだっただろうし、今はボーデヴィッヒちゃんの一方通行かもしれない。

 だけど、今は雪風ちゃんにはそういった立場は存在しないことからボーデヴィッヒちゃんを妹と思える時が来るだろう。

 そうすればきっと

 

「……妹の幸せを見るまでは死ねない(・・・・・・・・・・・・・・)……

 ですか?」

 

「そうよ」

 

『死にたくない』と思える時が来るはずだ。

 

「お嬢様。自分がそう思っているからといって雪風さんまでがそうなるとは―――」

 

「あはは……

 バレちゃったかしら?」

 

 虚ちゃんにはバレバレだった。

 そう、それは他ならない私自身が抱いている願いだ。

 私は誰よりも妹の幸せを望んでいる。

 妹を守れるならば私は何処までも修羅の道を進むつもりだ。

 そして、雪風ちゃんに同じように、いや、私とは違う道を望んでもいる。

 

「私はね……

 雪風ちゃんに生き汚くなって欲しいのよ」

 

 それでも私は雪風ちゃんが自分自身の意思で生きて欲しいと願っている。

 それがどんなに情けない姿でも雪風ちゃんには生きようとして欲しいのだ。

 あの誇り高い少女に私は本心から生きることへの執着を抱いて欲しいのだ。

 

「だから、雪風ちゃんにはこの世界が……ううん

 彼女の人生が色々と楽しいことがあるってことを思い出して欲しいのよ」

 

 私は別に雪風ちゃんに「この世界」に愛着を持って欲しいとは思っていない。

 彼女の故郷はここではない。

 むしろ、彼女が見せた「女尊男卑」への嫌悪、違う歴史とは言え母国が敗戦し所属していた軍が壊滅したなどを考えれば逆にこの世界に悲しみを抱くのが普通だ。

 けれども、雪風ちゃんは忘れてしまっているのだ。

 彼女自身の人生とその思い出は決して変わらないということを。

 あんな優しい娘だ。

 きっと彼女があんな風に正しさと強さだけになる前は多くの人たちに愛されていたのだ。

 それは川神先輩が証明してくれている。

 

「……強さと正しさだけの世界なんてロマン(・・・)がないじゃない?」

 

ロマン(・・・)……ですか?」

 

「……長い間、人類を守り続けた海の戦乙女が異世界に来て、一人の少女として生きていきました……

 それぐらいのロマン(・・・)に溢れた話が現実にあってもいいんじゃないかしら?」

 

 ロマンなんて言葉は人によっては様々な意味を持つ。

 なら私は私なりのロマンを望む。

 それはきっとハッピーエンドやバッドエンドなんてちゃちな言葉で言い表せないもののはずだ。

 

「一人の少女ですか……

 お嬢様らしいですね」

 

「アハハ……

 普通(・・)なら、『理想の王子様に出会って結ばれたい』とかかしら?」

 

 そう。

 雪風ちゃんも私も普通(・・)じゃない。

 でもだからこそ、ありふれた日常にも私はロマンを感じてしまうのだ。

 

「それに……

 私は卒業後にも雪風ちゃんを利用するつもりよ。

 だから、彼女にもそれぐらいの夢を見る権利はあるわ」

 

「……簪様の護衛としてですか……」

 

 何よりも私は友人なのに彼女を利用するつもりだ。

 簪ちゃんの護衛として。

 雪風ちゃんには卒業後に頼る先がない。

 なら、更識で彼女を迎え受けるべきだ。

 あの実力ならば更識本家でも歓迎されるだろう。

 それが雪風ちゃんにとっても一番安全な生き方だろう。

 だから雪風ちゃんは私のする非道な手段に一々胸を痛める必要などないのだ。

 

「お嬢様……

 何時まで悪役を務めなさるのですか?」

 

「……死ぬまでよ」

 

「卒業後に居場所を必要とする雪風さんを更識に招いて匿うおつもりでしょうに……

 確かに雪風さんの実力ならば本家もお認めになられますが……」

 

 また虚ちゃんは私の考えを言い当てた。

 本当にこういう時の彼女の優秀さは厄介だ。

 

「……本当にそういったロマン(・・・)とやらが必要なのはあなたでしょう……」

 

 虚ちゃんは呆れだした。

 私の語ったロマン(・・・)というものは結局の所、私の願望に過ぎない。

 私は自分に出来ないであろう夢を簪ちゃんと雪風ちゃんに託そうとしている。

 普通に生きて欲しい。

 そもそも雪風ちゃんは偶然この世界に来て、しかも「IS学園」のあの決して動かなかった「IS」を動かしただけの少女だ。

 この世界に何の後ろ盾もないということは裏を返せば、彼女は何も背負わなくていいということだ。

 だから、私は彼女に自らの夢を投影させてしまっている。

 けれども、もしあの「IS」を調べられることになれば彼女を匿ってもいつかは「委員会」や例の組織に雪風ちゃんのことも動かした事実までもが知られることになる。

 だから、私に出来るのは彼女にこの世界で生きる力をなるべくつけさせることだった。

 それでも私は彼女に平穏に生きて欲しいとも思っている。

 

 

「……遠い夢だから、ロマン(・・・)て言うのよ虚ちゃん」

 

 既に私は「楯無」だ。

 私の「刀奈」というロマン(・・・)は遠い夢だ。

 普通の女の子としての人生も。

 簪ちゃんの姉としての人生も。

 

「そうですか……

 では、私だけでもその夢追い人の主人の傍に居続けさせてもらいます」

 

「……そう。

 ありがとうね、虚ちゃん」

 

 私は無二の親友に礼を言った。

 でも、本当は彼女にも普通の女の子として生きて欲しい。

 

 ……全く……『類は友を呼ぶ』と言うけれど……

 どうして、私の周囲の人間はこうも現実主義者ばかりなのかしら……

 

 私の周りの人間はみんな現実を見てしまう。

 しかも、能力も優れている。

 そして、みんな誰よりも他人を優先しようとする。

 現実を無視できない現実主義者ばかりだ。

 俗に現実主義者のことを誰もが冷酷な人間として扱うけれど、それは違う。

 現実主義者は誰よりも現実を直視して出来る限りのことをしようとして努力をする。

 虚ちゃんも、本音ちゃんも、川神先輩も、轡木さんも、雪風ちゃんもそういった現実主義者だ。

 そして、簪ちゃんもきっとそうだろう。




おふざけにも理由を書いてしまいシリアスにしてしまう悪癖を治したい。

ロマンて割と好きな言葉です。
ところでコナミさん……パワポケのリメイクはまだかね……?
個人的にジオットは自分の考える人間のラスボスとしては理想的だと感じます。
メロンパン?ハハハ……何のことやら?
大企業のトップの私室にそんなものがある訳ないじゃないですか(現実から目を背けて)?
あと、9主にcv付けるとしたら檜山さんが一番似合ってる気がします。
そして、レッドも檜山さん……似合い過ぎだと思います。

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