大惨事スーパーロボット大戦  Z After 天獄戦争 Muv-Luv   作:溶けない氷

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上位存在「刹那さん倒せんかったから月ごと自爆するわ。」
刹那「一理ある。」
クロウ「ねぇよ!」


第6話 武力介入

中枢フロアの床に横たわり、動かなくなった上位存在を見ながら

刹那は自分のやってしまった事に、後悔を感じていた。

そう、BETAは所詮はプログラム通りに行動するだけのロボット。

産業ロボットに作業を中止しろと口で言ったところで止まるはずはない。

モビルドールと分かり合えないように。

サイデリアルの無人機と分かり合えないように。

そもそも相互理解などできるはずはなかったのだ・・・・

『刹那・・・あれはやむを得なかった行為だ。

君が気に病む必要はない。』

状況を見守っていたティエリアが声をかける。

ELSとの対話を成し遂げた刹那であっても分かり合えない異種は存在する。

その意味ではBETAは完全にバアルになり果てた。

「だが・・・他に方法はあったかもしれない、

これは・・俺の・・俺のミスだぁぁぁ!」

なぜか親友の台詞を拝借する刹那であった。

俺は御使いの同類・・・そう、言われてもしかたないかもしれない。

分かり合うとは相手の本質に入り込むこと・・相手の事情を考えずわかりあうとは

分かり合うという概念を押し付けること。

それはエゴでしかない。

そう、驕っていたのかもしれない・・・ハイブリッド・イノベイターになった

自分ならどんな存在とも分かり合うことが出来る。

自分は変わっちゃいない・・・自分をガンダムだと己惚れていた未熟なあの頃から・・・

『刹那・・・やっちまったことは仕方ないぜ・・・

それよりこんな辛気臭いとこはとっととおさらばして今後の展望について話し合わなねぇか?」

クロウの提案。

あくまで建設的にあろう、過去を振り返っても仕方ないという借金持ちにしては前向きな意見。

「・・・そうだな・・いつまでもここにいても仕方ない・・・っ!」

だが、次の瞬間刹那の背中に悪寒が走る。

 

『敵性存在の排除に失敗。

緊急指令、ミツカイへの情報流出の危惧あり。

速やかに全存在・全情報を破棄せよ。

本惑星における資源回収を断念。

最優先事項・機密保持。』

 

BETA緊急行動規律が刹那の行為を御使いによる創造主への侵攻作戦の一部だと判断。

いかなる犠牲を払ってでも情報流出を防ぐ事を最優先に月面上の全てのBETAに最適な行動を取らせる。

『月面上の全てのBETAが最寄りのハイブ目がけて突進していきます!』

フェルトからの報告が入る。

不可解な行動、だがすぐにその意味が分かる。

刹那は目の前の上位存在のエネルギー源、反応炉の出力が桁違いにあがっていくことがセンサーに表示されたのを見た。

「こいつ・・・まさか・・・」

答えは一つ。

出力をオーバーロードさせての自爆、それがBETAの下した判断。

「トレミーも退避しろ!月面上のハイブが全て自爆体制に入った!」

『っ!トレミーは機体回収!直ちにトランザムで可能な限り退避します!』

スメラギの速やかな指示が飛ぶ。

躊躇っていては全滅しかねない状況。

刹那も一瞬で決断する、地下16kmから月面上空への量子テレポーテーションで脱出・・

だが分厚い地表を通して可能なのか?

本来なら綿密な計算が必要とされる筈の大質量を通過してのテレポーテーション・・

うまくいくかどうか・・・

『刹那!こっちでサポートする!早くテレポーテーションを!』

ティエリアの叫びが響き、刹那も意を決する。

そしてGNソードビットで開けたゲートを通って、刹那は緊急テレポーテーションを断行した。

そして、刹那がテレポーテーションした数秒後・・・

月面上のハイブ20基が一斉に黒い光を放って消滅した・・・

この地球の人間、特に日本人なら忘れえないだろうG弾の光によく似たそれは月の表面を削りとり、平らにしたBETAの努力を一瞬で無へと帰し

巨大なクレーターを20基形成した。

この爆発の結果月の地軸が2度ずれ、自転速度も5%遅くなったがそれは又別の問題だろう。

 

30分後・・・

月軌道上で刹那機を回収したソレスタルビーイングビーイングの面々はブリッジで今後の方針について話し合っていた。

「すまない・・・俺が対話に失敗したばかりに・・」

刹那の謝罪から始まったが

「気にすんなよ、お前さん一人で世界が救えるんなら誰も苦労しねぇって。」

ロックオンはあくまで連中はバアル同然だと言い張る。

「そうだね・・それにこの星の人たちの感情もある・・・

BETAは・・・この異種はあまりにも多くの人々を殺しすぎたんだ・・・」

アレルヤの言うことも正しい。

現在の黒の地球の人口はわずかに10億人程度。

地球の平均データでは73年の人口は40億人程であるから実に30億人もの

人間がBETAに蹂躙された計算になる。

そしてこの数は今後、減ることはあっても増えることはないだろう。

一方でBETAは増え続ける。

BETAが増えれば、人間は減る。

その分、科学技術でも防衛力でも人口の減少・資源不足によって滞りますますBETAの侵攻を許す。

スメラギさんの予報ではこの地球の科学技術水準では着陸される前に撃退するか、

着陸後に速やかに撃破するという蒼の地球での鉄則とでも言える宇宙生物への対応が

この星では取られなかった時点で敗北は決まっていたようなものだと分析している。

連邦ではインベーダー・宇宙怪獣に対してはメガトン級核融合弾を近海で叩き込んでいた。

だが、地上でそんなものを頻繁に使っていたら地球が住めなくなってしまうのはカナダの例を見ればすぐわかる。

 

「どうしたものかしらね・・・この星のネットワークは同じ21世紀初頭に比べてもかなり立ち遅れてるわ・・・その分、検索しやすいのは確かだけど・・」

民間向けのインターネット回線が存在しないこの星では逆に言えばネットワーク上には重要な政治・軍事用のデータが流れている。

それは選別の手間が省けるということでもあるが、情報そのものが偏り、一般常識を知るにはあまり役に立たないということでもある。

こんな状況で迂闊に

『私たちは太陽の向こう側にある星から来ました。』

などといってコンタクトを取ってみたら・・・

第2のBETAと疑われかねず、最悪敵対という予測もある。

「ミス・スメラギ。やはり我々だけでは外交交渉を行うには無理がある。

ここは無理をせず連邦からの派遣部隊と合流してから降下するという手段を取ることを提案する。」

「そうね・・・では、本体に合流するまでは各員は休憩をとって・・・・」

 

とその時、オペレーターのフェルトからの緊急報告が入る。

「スメラギさん!地球上のBETAに活発な動きがあり!現在、日本地区において大規模な光線が確認されます。

米軍は日本からの全面撤退を決定。

日本放棄プランが採用されたようです!」

「なんですって!?そんなことをしたら・・・」

日本放棄。

それは米軍にしても悪手の最たるもの。

極東における拠点の日本を失えば最早アジア諸国の抵抗がドミノ倒し的に崩れるのは必然。

そうなればユーラシア大陸のBETA席巻という事態が予測よりも5年は早まる。

「ミス・スメラギ・・俺は・・俺たちは・・Z-Blue・・未来を切り開くもの・・

対話が失敗した以上・・俺はガンダムと共に戦う!」

「刹那・・・わかったわ!本隊に先行してZ-Blue・ソレスタルビーイング分遣隊は

日本に降下!

BETAと日本軍との紛争に武力介入します!」

「へへ、そうこなくっちゃな。スメラギさんよ。それでこそソレスタルビーイングだ。」

クロウこの提案には大賛成のようだ。

「いいの?特別ボーナスはでないわよ。」

「冗談、この程度のピンチでボーナスが出てたら俺は今頃大富豪だぜ。」

「「「それはない」」」

トレミーのブリッジの面々から鋭い突っ込みを入れられてしまった・・・

かくしてアニューが舵を取り、トレミーは日本への降下軌道へと入った。

この決定が吉と出るか凶と出るか・・・

 


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