大惨事スーパーロボット大戦  Z After 天獄戦争 Muv-Luv   作:溶けない氷

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第3話 蒼の地球

蒼の地球

スコートラボにてクロウから送られてきたデータに目を通す

お狐博士ことトライア博士

「ってわけで、これが例の黒の地球の異種に関するデータだけど。」

テレビ電話で会話しているのはロイド博士。

旧ユニオンの KMF開発、次元力研究、異種生物の研究でもZ-Blueに縁の深い人物だ。

現在は次元ゲートの向こう、翠の地球で各種機動兵器を

 

「その、ベータだっけ?こっちでもサイデリアルや人類銀河同盟のデータベースにもアクセスしてみたけどヒット無しだよ。」

「こっちとしても銀河各地の螺旋族やロージェノム、各マクロス船団にも問い合わせてみたけどやっぱり該当する生物は無しだったよ。」

ハァとため息をついて例のお狐の仮面をかぶる博士。

頭を抱える二人にさらに成果無しという連絡が光子力研究所の弓博士から入る。

「光子力研究所の調査でも旧早乙女研究所のインベーダー関連資料やヴェーダ内部の黒の叡智にも記載はありませんでした。となるとあの異種は完全に我々の知る多元世界とは別種の生物ということになりのかな?」

 

「そういうことになるでしょうね。そもそも惑星レベルの転移となると相当なエネルギーが必要とされるはず。」

トライア博士のいう惑星レベルの転移とは太陽系に存在するニュープラネット、アストラギウス銀河の転移などを示している。

あの時はキリコの異能生存体としての能力が惑星モナドを崩壊させそのエネルギーを利用してワイズマンが転移させた件を示しているのだろう。だが今回の転移にあたってはそれほどのエネルギーは観測されていない。にもかかわらずこれほどの大規模な時空振動が発生した理由とは?

「時空振動弾のような兵器が使われたのでは?」

弓博士が当然のように疑問に思う。

「それに関しても調査レポートが届いています。これを。」

そう言ってトライア博士が送ったデータにはかつての明星作戦で使用されたG弾のデータが記載されていた。

「なるほどね〜。使用した後には植物も生えない荒野と化す。

ははっ、まるでZONEじゃないか。」

ロイドがデータをちらっと見て感想を漏らす。

「あたしもそう思ったよ、でも計算してみるとこのクラスの時空振動を起こすには全く威力が足りないって計算になったんだ。」

 

「このG弾で時空振動を起こすには実際、どれくらいの量が必要なんですか?」

弓博士が質問すると

 

「概算だけど、おおよそ200万発を同時に炸裂させれば50%の確率で惑星移転ってとこだね。」

「そりゃまた・・・」

「ムゥ、無理ですな・・・」

考え込む二人をよそにトライア博士も不思議に思っていた。

(BM3号クラスなら余裕なんだけどねぇ、

けどあれは銀河の半分が消し飛びかねないし・・・

ゲッター線なら収束させて次元跳躍くらいできるけど

確認されてないし・・・

『あっちの地球』の技術レベルがどの程度かわからない以上

迂闊な干渉したら後で政治でややこしいことになりそうだしねぇ・・・)

 

「それはともかくとしてさ、トライア博士にも連邦政府から来たんじゃない?対ベータ対策。」

「う〜ん、とりあえずオーソドックスに攻性ナノマシンとバイオビーストとフェーザーシールドを提案したらね・・・」

「したら?」

「大変有益なご提案ですので検討いたします、だってさ。」

「そりゃドン引きするよね、ふつ〜は。」

トライア博士の兵器愛は年々、今は亡き敷島博士に近づいているというのが専らの噂だったが・・・・

「で、ロイド。あんたは今何やってんだい?」

ロイド博士が助手のセシルとどこにいるのかは機密になっているはずだが。

「んふふ、ここだけの話。今はアナハイムの新ガンダムの設計・開発に協力してんだよね〜。いやァ流石は超多元次元随一の大企業、最新の研究設備が使い放題ってスバラシィねぇ。」

ランスロットの機動をMSで再現しようというのかこの御仁は、

あんな無茶な機動をする機体なんて・・いや、ガンダムには結構あったが。

「ソレスタルビーイングから送られたデータを光子力研究所で解析したところでは。

あの異種、BETAの一部の装甲表面に位相の変化がみらえたそうです。

これはCEWのPS装甲に一部類似した技術かと推測されています。」

PS装甲、Phase Shiftの名前の通りに装甲の位相を変化させることによって実弾兵器に対し絶大な効果を発揮する。

しかしながら生産性が極めて悪く高コストの為、何よりビーム兵器がMS戦で一般的な現状では使いにくいというのが常識になっている。

だが映像で見た限りのあの膨大な異種はその生産性の悪さを解決しているというのだろうか。

だとしたらまさしく驚異としか言いようがない。

「いやァ宇宙は広いねぇ。毎日が新鮮な発見の毎日だよ」

「のんきなこと言ってんじゃないよロイド。

インベーダーやSTMCみたいな連中なんざ、もう天獄戦役でうんざりするほど相手したってのに。」

「でもおかげでスコートラボにも新しい仕事の依頼が舞い込んでんでしょ、良かったじゃん。万年赤字から脱却できて。次元獣バスターからBETAバスターに華麗な転職。」

「うちをクロウみたいに考えるんじゃないよ。」

—蒼の地球 連邦政府

大統領執務室には今現在、シーリン秘書官と大統領が今回の惑星転移事件ならびに新種の異種対策を検討していた。

「ELSやバジュラとの対話を成し遂げられたと思ったらこれですか。」

大統領は深いため息をつく。

「人間を生物とみなさない異種。

結局、ソレスタルビーイングだのみとは情けない限りね。」

「大統領、既に連邦宇宙軍には警戒態勢をとらせています。

しかし天獄戦役での損害は甚大で現況の惑星防衛と監視で手一杯だそうです。」

大戦後の復興を優先した結果として現在の連邦戦力は時獄戦役の頃と比べても大幅に削減されている。

「軍縮のツケが回ってきたということね・・・」

「仕方ありません、民生の回復を求めたのは議会も同じですから。

それに我々に未来より能力などありませんから、神と同様に。」

神、喜びのアドヴェント。

彼ですら未来を予見することはできなかった以上、この事態を予測しろというのが無理に決まっている。

「異種との対話はソレスタルビーイングに任せるとしても

同じ人間との対話は連邦の手で成し遂げましょう。

ミスターネゴシエイター達は?」

ミスターネゴシエイターことロジャー・スミス

快男児 破嵐 万丈

その護衛としてのSRTと旧黒の騎士団メンバー

彼らが黒の地球と良好な関係を構築することに成功すれば連邦軍の大々的な武力介入を行うことも可能になるだろう。

「現在、彼らは地球を出発し黒の地球までは通常航行で後三日ほどの距離です。」

「敵対的異種の脅威は速やかに排除します。

そのためにもあちらの星の人類とは緊密に連携しなければなりません。」

「できるのでしょうか・・・我々は彼らと・・」

「そうね、私の今までの政治家人生でも政治家というのが度し難い人種だということはよくわかってるわ。

でもELSやバジュラとだって人間は共存共栄できる。

同じ人間どうしが分かり合えないはずはないでしょう。」

最も今の時点では大統領は知らない。

あちら側の星の政治家連中というのが人類の存続や地球の命運よりも

自分達の国の国益だとか面子の方を重視する

シャアが絶望したタイプの人間だらけだということも。

 


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