大惨事スーパーロボット大戦  Z After 天獄戦争 Muv-Luv   作:溶けない氷

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第22話 思惑

その後、刹那がBETAに関する情報を月面での接触の経験から伝え、

会談で言うべきことは全て伝えたと判断し早々に全員、艦に戻ることにした。

やはり未だこの星の人間と大規模に接触することに慎重でいるべきだというのが

この部隊の中核を成すスメラギさんとゼロの判断であった。

刹那がBETAは『創造主』の作った炭素系作業オートマトンでしかないこと

宇宙には(彼らのいた宇宙であって、この世界ではないが・・・)

10の37乗のBETAの上位存在がいること・・・などを伝えると見るからにガクッと

疲れたような顔をしていたが・・・・何か思うところがあるのだろう。

「ええと、それは本当でしょうか?」

信じられないでしょうが、イノベイターとはそういう存在なのです。

と説明するとますます疲れたような顔をしていたが・・・

 

天才科学者というのは常識が通じないところがあるからな、というのがゼロの意見だったが

確かにZ-BLUEに関わった科学者は稀なごく少数の例外を除いてキテレツな人間ばかりだったことを考えると、あの香月博士という女性も天才という以上は平行世界の自分を召喚したり、

因果律を操ったり自分に自分を同期させ姿形・性別まで変えることができたり

自作のスーパーロボットで戦ったり、むしろ自分自身を巨大化させたり

・・・それくらいの事ができると仮定せざるをえないだろう。

うむ、それくらいしてくる奴ならこの銀河には普通にいた、つまり彼女もきっとそうだ。

本人がいたら茫然自失するような過大評価のされ方だが、

 

 

相手の出方がわからない以上迂闊な事はできないのはソレスタルビーイングも香月博士も変わらないのだから・・・・

会談から艦に戻り、プトレマイオスのブリーフィングルームでこの星の一つに過ぎないとはいえ国連基地、そして国連軍(スメラギもゼロもこの星の『国連軍』は別物とはいえあまりこの言葉にいい思い出がない)

それにしても今回の交渉ではこちらは事前のアポ無しとはいえ

基地を救った上に疑似とはいえ太陽炉まで渡してしまっている。

ゼロがその点を疑問にするが

「しかしいいのかミス・スメラギ。

疑似とはいえGNドライブの現物をああもあっさりと渡してしまって。

いや、彼らの戦力の向上は我々の数が足りない以上不可欠だとしても

再世戦役のようにある程度このBETA戦争がひと段落したら我々の方に彼らがその銃口を向けるという可能性も考えているのだが」

邪魔者になったZEXISの公開処刑そして新兵器を使用しての人間同士の戦争、

それこそゼロが危惧する自体の一つでもある。

 

「判ってる、でもデータを見ればBETAに対抗する力は必要。

それに幾らなんでも、いきなりGNドライブを渡されても本格的にモノにするには

最低でも二年はかかる筈よ。」

スメラギの予想では解析がうまくいったとしてもそれを応用した戦術機の量産には

総力体制を持ってしても蒼の星同様に最低でも二年はかかるというものだった。

この星の技術者やメーカーが聞いたら卒倒しそうなペースだが、

人間の底力を甘くみてはならない。

破界戦役ではガンダムすら量産されたGN-Xの前には圧倒されたのだから。

「・・・それに私も信じたいのよ。この星の人はそこまで愚かじゃないって。」

 

「俺が伝えられることは簡潔だが伝えた。だが、いいのか?

重要な会談だったのだろうに、ああも簡単に切り上げて?」

刹那が交渉人ともあろう者が、ああもあっさりと手の内を晒して早々に会談を

切り上げてしまったことを不思議がっている。

 

「言いたいことはわかる、刹那。だが今我々が心配すべきはシンジ君の身の安全だ。

想定外の事態が立て続けに起こったが、連邦政府の面子を立てつつ新しい太陽系の隣人と友好的な関係を樹立するという目的は順調に達せられるとみていいだろう。」

ロジャーの狙いは香月博士との交渉のその先、この黒の星の代表と交渉し

連邦軍が全面的に武力介入(限られた予算内で)するきっかけを作ることにある。

もっともこれはかなり不可能に近い。

今の状態で連邦の武力介入が行われた場合、戦域はこの星のほぼ全域にわたるだろう。

どこの楽天家が武力介入して、はいさよなら。

で済ましてくれると思うだろうか。

近現代史をざっと見渡してみてもそれは軍事基地の建設、そして実質的な占領に繋がると思われかねない。

イギリス、ソ連、エジプトのようにBETAと対峙している国に連邦が基地を建設し、軍事介入した場合それはそれらの国家の命運を連邦が握るということに他ならずおよそ健全とは言い難い従属関係に陥るであろう。

つまりはBETAの脅威があるので、あなたのお国の首都に完全装備の他国の軍隊を駐留させるカモしれませんが構いませんよね。

と言うような物だ、誰が承諾するというのか。

それこそ今の連邦が避けたい事態だし、この星の人間も歓迎しない事態。

従って、小規模な部隊がオブザーバーとして派遣され尚且つBETAに勝利するが人間同士の紛争への抑止力にはなる・・・・と言った程度の派遣ならよしとされるだろう。

はっきし言って矛盾した要件だが、そこをなんとかするのがロジャー・ザ・ネゴシエイターの能力だろう。

決してビッグ・オーで気に入らない相手をぶん殴ってばかりではない

 

 

 

 

・一方で香月博士の執務室

 

ロジャーから渡された書物と刹那の存在にダブルノックアウトされて白く燃え尽きた博士が見受けられたが、気にしないでおこう。

今は精神的なダメージこそ大きいもののこの次元転移を前向きに捉えていこうという

逞しい精神活動に切り替えているところなのだろうか。

全身全霊をかけても完成に至らなかった00ユニットの天然上位互換の存在。

それこそがハイブリッドイノベイターの刹那なのだから救われない。

 

とは言え、刹那の説明ではハイブは敵(地球人は敵扱いすらされてないってのが癪にさわるわね)から攻撃されたと見做すとG元素を自爆させるらしいことは

観測データからも確認されたのだから祖国奪還を掲げるユーラシア諸国にしてみれば

G弾以上の重力異常汚染を引き起こしかねない自爆を許容できないだろう。

いずれにしろ、今回供与されたGNドライブ。

これこそが彼らとの今後の交渉で重要な役割を果たすだろうことは間違いない、

幸か不幸か日本は戦術機の独自開発技術を保有している。

彼らがアメリカにGNドライブを渡すことは確実にしてもそれを一足先に手に入れられたのは大きい。

今の所は彼らの前線基地建設と合わせて帝国から何を引き出すにしても強力な切り札になるはずだ。

 

前線基地に整備・補給能力を求める以上、彼らとて母艦で無尽蔵に行動できるわけではないということがうかがえる。

なら、補給物資の備蓄は欠かせないし場合によっては戦術機へのGNドライブと並行しての粒子兵器の供与も引き出せるかもしれない。

(00ユニットが役に立たなくなったって訳じゃないしね。)

事実、実際にこれから先異星人と交渉するにわたっては少なくともBETAを自力で地球人が追い出したという事実が必要になってくる。

さもなくばこの先、大きな借りを作ってしまうことになる。

そうなれば帝国どころか地球そのものが向こうの星に従属することになってしまう。

それをさせないための独力でのハイブ攻略、そのための00ユニットの完成が急がれるのだが・・

(00ユニットの完成に必要な物を引き出すために彼らの技術を餌にするってのがねぇ・・)

はっきし言って彼らに対抗するために彼らの力を借りようというのが虫のいい話だ。

今の自分が提供するものは帝国と国連への彼らのアポ作りと英国の国連部隊へ彼らの仲間を保護してもらうよう連絡することだけ。

(・・というかむしろ英国の方が心配ってどんな連中なのかしら)

彼らの仲間が2機だけだというのに、誤解から戦闘に発展してしまったら英国が壊滅する恐れがあるとあの黒服の男は言っていた。

はっきし言ってこれが他の連中だったら、鼻で笑ってたところだったが

後で聞いたところによるとあの黒服が巨大戦術機の衛士だったという・・・

暴君級を拳で粉砕し、要撃級をダース単位で消し飛ばす連中が言う『非常識』・・・

なんとなく、英国の連中に同情したくなってきた・・・

対して彼らの持ってきたのは基地の防衛の援護と新技術、そして佐渡島ハイブの破壊にBETAに関する事実。

釣り合わないこと甚だしく、彼らがこれから先に何か要求してきたらと思うと胃が痛くなる。

(正確には並行宇宙の地球人だが、歴史も地理もまるで違うこの状況では異星人の方がわかりやすい。)

いや、まずは駐機場に置いてある疑似GNドライブとかいうものを解析しなくては

「帝国の巌谷中佐につないで。ええ、至急の要件で。

横浜に関する事と伝えて、暗号化は最高度で」

この件の通信も傍受される考えるべきだろう、これからは直接口頭で伝える事も多くなりそうだ。

 

 

 

 

一方でアメリカ合衆国 某所 某白い家

「それで、日本はBETAの大群に撃退に成功したというのかね?」

その中枢のオーバル男が長官に念を押す。

「はい、当初の予想では侵攻してきたBETA総数は5万以上。

従来の想定よりも多く、更に佐渡島匂いて確認された新種のBETAが多数確認されたことから

日本陥落は不可避だと判断したわけですが・・・・・」

苦虫を噛み潰したような顔で報告する。

大統領、参謀総長、CIA長官、国務長官・・・

合衆国の中枢の重要人物が緊急の要件で呼び出されたのは日本陥落後のハワイを中心にした

防衛戦の構築を計画するはずだったが・・・

そこで国連軍・横浜基地防衛戦での映像はそれまでの常識を消し飛ばすものだった。

「BETAの大群を物ともしない火力と機動力、

どう見てもF-22を遥かに上回る代物ではないかね」

大統領が参謀総長に責めるような眼を向ける。

合衆国の威信である莫大な予算をかけて開発したF-22を超える戦術機など存在してはならないのだ。

それを短期間にこれほどまでに多種開発するなど、どんな常識をもってしても考えられない。

「横浜の魔女・・・・恐るべし、と言うべきですな

我々はオルタネイティブ4の研究からのスピンオフ技術を過小評価しすぎていたようです。」

「噂にはあったが、やはり横浜基地に隠匿されたロストG応用技術か・・・

だがこれほどまでの成果を残すとは、明らかにG弾以上ではないかね?」

大統領にしてみれば通常の戦術機があれほどの火力を保有できるようになるなら

G弾を軸にした今の米軍の戦略ドクトリンが間違っていたということになる。

参謀総長からすれば今までの考え方が間違っていました

では済まない、第5計画が頓挫しかねない。

「第4計画は対BETA諜報員の作成と言う報告が上がっていましたが

本人が聞いたら全身全霊で否定しそうな過剰評価になっているが

 

国連軍が実質的に合衆国の傘下の組織になっている現状であれ程の超兵器が

合衆国以外の国で開発されるなどあってはならない!が現状での首脳陣の認識であった。

「とにかく、一刻も早く日本の新兵器の情報を収集してくれたまえ。

戦後世界の主導権が合衆国以外の手に渡るなどあってはならんことなのだからな」

敵はBETAだけではない。

今でこそソ連と手を握っているように見せているが

この戦後に来るべきものは合衆国による地球の平和の維持なのだから・・・

 

 

様々な人々の思惑を載せて、地球は今日も回る。

この星が向かう先は

 


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