大惨事スーパーロボット大戦 Z After 天獄戦争 Muv-Luv 作:溶けない氷
『この交渉で考えられる展開は17通り、だが目の前のこの女の言動から4パターンに絞られた!』
『なるほど、交渉に必要なのはお互いを信頼することですな。』
『世界の歪みを破壊する!なぜなら俺が、俺たちがガンダムだからだ!!』
『はぁ!?』
リ・ブラスタTの前に姿を現した暴君級。
進撃の邪魔だとばかりに小型・中型を問わず進路上の他のBETAを文字どおり蹴散らし踏みつぶして進んでくる。
足を消し飛ばされた要撃級が前方でもがいていると、その爪で体を戦術機の方に跳ね飛ばしてきた。
JIVESでもまさかBETAが他のBETAを投げて攻撃するなどというシチュエーションは想定していなかったため
予想もしなかった仲間を投げるという攻撃にタケル機は思わず横に避けてしまうがその際によろけて他の要撃級の真ん前に出てしまう。
「ぬわぁおぁ!?」
目の前に迫る要撃級の爪、だがそれを紙一重でクロウのRAPTORショットが爪ごと貫通しタケルの不知火機を救う。
『シロガネぇ!何ぼさっとしてんのよ!』
速瀬機の叱咤が飛ぶが、正直速瀬にとっても暴君級と相手をするのは自殺行為以外に他ならないという思いがある。
(今の銀色の戦術機の一撃が無かったら・・・正直、やばかったわ・・)
「あ、ありがとうございます!自分は横浜基地の・・」
タケルとしても助けられた銀色の戦術機に礼を言うが、名前も階級もわからない・・・が、凄まじい高性能機体を預けられている以上(試作機?)自分たちより階級が上だと思うので丁寧に答えておく。
『いいってことよ。貸し一つだからな、ひと段落したら飯でも奢って貰おうか。』
こんな時でも軽口を飛ばしてくるとは・・・余程離れした衛士なのか。
『さて、坊ちゃん嬢ちゃんは下がってな。あいつは俺の獲物だ。』
銀色の機体に新種のBETA,暴君級が向かってくる。
ブリーフィングでもあったが、佐渡島に現れた新種の
『俺が援護します、一機だけでは・・・』
『坊主、下がってなと言ったんだ。どのみちその機体の火力じゃこいつの装甲は抜けねぇ。』
それはそうだ・・・悔しいが目の前の新型機の電磁投射砲でなくてはあの大和級の主砲でも破壊不可能な暴君級の装甲と力場には歯が立たないだろう。
『行くぜ、ぱちもん。バスターに挑んだことを後悔させてやるよ。』
腕の速射砲を連射しながら突撃してきた暴君級の砲撃を凄まじい3次元機動で避けながら応射する銀色の機体。
『すげぇ・・・』
白銀機の感歎も頷ける・・あれだけの機動はシミュレーションの白銀でも見せなかったし、そもそも不知火にあれだけの機動性は無い。
『チッ、ちまちま撃ってても埒があかねぇ。Show Downと行こうぜ。
頼むぜ、相棒。ジ・アンブレイカブル・フルクラム!!』
そう言うなり空中に展開させた丸い輪っかを・・・・
なぜ輪っかが浮いてるのか・・・気にしないことにしよう。
そう言うなり、銀色の機体の持つ突撃砲からビームが発射され暴君級に突き刺さり・・・
凄まじい爆発が遠方で怒った。
「白銀ぇ!対ショック体勢!」
次の瞬間、暴君級に突き刺さった粒子が起こした凄まじい爆風に煽られ不知火が転倒しそうになる。
『いやぁ〜我ながらすげぇ〜もんだぜ。』
(ちょ、ちょっと〜お願いだからこういうことになるなら予め言っといてよ!)
見ればBETA最大の脅威、暴君級は跡形も残さず木っ端微塵に吹っ飛んだのか影も形も見えない。
「信じられない・・・・G弾でも倒せなかったのに・・・」
「ちゅ!中尉ぃ!やった!やりましたよ!へへ、BETAが一掃された!すげぇ!やっぱ新兵器マジすげぇ!」
白銀はアホみたいにはしゃいでるが、正直言うと私もはしゃぎたい気分だ。
「すっげぇですね、その武器。 G弾でもあいつ倒せなかったって聞いたんすけど。」
『おう、Dフォルトを装備した相手には、広範囲にエネルギーが散る爆発タイプより貫通武器の方が効果が高いのさ。
と、周囲に敵影は・・・無しか。どうやらガンダムチームの方も終わったらしいな。それと、飯あとで奢れよ。』
『はい!ありがとうございます。』
この日、A-01は一機の被害も出さずに戦闘を終えられた。
撃破BETA総数は概算でおよそ、10万。
にも関わらず、横浜基地自体の被害は戦術機が13機、死者は基地内に侵入した極わずかの小型種での戦闘で歩兵に150名の死者が出たのみだった。
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(ホント、とんでもない連中ね・・・・)
映像で撮られた機体の構成から見てヒューマノイドタイプの異星人だとは予想していた。
赤い強化装備らしきものを着ていた、緑色の機械化歩兵が拳銃で暴君級を撃破したのを見たときは正直、科学者としての自信がなくなりかけた。
オペレータールームの全員も同じ感想を抱いたらしい。
大和級や紀伊級の46cmや51cmすら力場で(おそらくはラザフォード場)
で防ぎきる暴君級を、といか小型種ならいざ知らずBETAと拳銃で戦おうなんて考えるなんて人間は考えない。
拳銃で倒せるような相手なら人類はここまで追い詰められてない。
米軍が撃破不可能と判断し、日本からの全面撤退を決定したのは新種のBETAの前には米軍のG弾、戦術核すら無効化されてしまった点が大きい。
その新種BETAの暴君級が複数進撃してきたというだけで帝国中が大パニックに陥ったのだが
あの謎の部隊の前にはあっさりと撃破されてしまった。
「副司令、彼らは一体・・・私も聞いていない米軍の新兵器なのかね?」
ラビノダット准将が問いかけてくるが、まぁ常識的な人間ならそう思うだろう。
癪にさわるが地球で最も先進的な兵器を開発、保有できるのが米国であり第2位のソ連との差はソ連の本土喪失の影響もあって開く一方だ。
もっともアメリカ以外の国は発展著しい
だが、それにしてもあの超戦術機(謎の拳銃男はひとまず忘れるとして)とか
白兜の空中歩兵や小型戦術機、超大型戦術機などを見ても同じ機体が小型戦術機3機のみというのがわからない。
部隊として運用するなら同一の機体で構成されているだろうから試作兵器の試験運用とも考えられるが・・・
通信を傍受した限りでも彼らがBETAを単に異種と呼んでいたことから戦闘経験があるとは考えられないので、他の星から来た軍隊が将来の母星へのBETA侵攻に備えて試作兵器の対BETA試験、あるいは地球を拠点にされての侵攻を防ぐための前進防衛とも取れる。
後者に関しては人類の軍隊がハイブのBETAが溢れ出して新たなハイブを建設しないようにする『間引き』という行動もあることからこれが一番、納得できる。(だとしたら・・最悪なのは・・・)
問題があるのは彼らは所詮『余所者』という点にある。
彼らにしてみれば地球上のBETAをちまちま潰すより、大量破壊兵器のつるべ打ちで地球への被害を無視してハイブを全滅させてしまえば最も手っ取り早い。
実際、アメリカは核兵器をカナダで大量使用してハイブの建設を阻止したという前例があるだけに宇宙人にそれをするなと言っても説得力はないだろう。
それにも関わらず、彼らが地上軍を派遣してきたのはなぜか?
考えられるのは
1:彼らが善意溢れる宇宙人であり、地球人を助けたいと思っているお人好しである。
却下。宇宙人に善意を期待するのは地球人に善意を期待するのと同様に難しい。
何しろ、地球人同士ですらアメリカ・そして第5計画の連中のように自分たちの威信のためなら他国がどうなっても構わないという連中が五万といるのだから。
2:彼らは地球のBETAを殲滅しようとしているが、地球人の軍事力がどの程度のものか測りかねているため迂闊に大量破壊兵器を使用して地球人に攻撃されることを恐れている。
これが現状では最も説得力のある説明だろう。
だとしたらこちらが示すべきは、地球人の軍事力は侮りがたいものだということ(ひどい虚勢ね。)
地球上での大量破壊兵器の無断使用が地球と彼らとの間に外交問題を生み出しかねないということ。
最も彼らの母星がどこにあるかまでは知らないし、地球の近海に駆逐艦を上げるだけが限界の人類には、大量破壊兵器を使用されても泣き寝入りするしかないというのが現状だが・・・
「司令、未確認の艦から通信です。」
と思考しているところにピアティフから連絡が入ったという報告を受ける。
BETAが殲滅されたという知らせに彼女も軽い興奮を抑えきれずオペレータ室の同僚と軽くはしゃいでいる・・・・
こっちの気も知らないでいい気なもんね・・・
『私は地球連邦軍特殊部隊Z-Blue協力部隊ソレスタルビーイングの戦術予報士スメラギ・李・ノリエガです。
同じく協力者のゼロ、交渉人ロジャー・スミス、およびBETAとあなた方が呼称する異種に関して説明があると刹那・F・セイエイがそちらの代表と話し合いを持ちたいとのことです。』
(ふぅん、地球ね・・・異星人も自分たちの母星を地球って呼ぶのかしら。)
earth、gaia,terra,いろいろな呼び方があるが地球であることには変わりない。
ならば異星人が自分たちの母星を呼ぶ呼称も違えど、翻訳すれば『地球』になることには違いあるまい。
(連邦ってことは惑星単位の統一政府があるってことね・・この星とはえらい違いね。)
実際には幾つかの多元世界を統一する政府なので惑星を2つ程統一する政府だが。
(協力ってのがわからないけど傭兵みたいなものかしらね?
ま、おいおいわかることか・・・)
「ええ、司令。ちょっとお話が・・・・」
こういう思考を始めてから会談のパターンを8通ほど考えたところで
社霞に会談する部屋の近くで待機し、彼らの思考についてリーディングを行うよう指示し、セッティング場所を整えるよう副官のピアティフに指示した。
しかし彼女は知らない、ハイブリッド・イノベイター 刹那・F・セイエイを始めとする非常識たちによって彼女の常識とついでに物理法則が書き換えられていくことを。