「カムイさん?」
「やあ、なのはちゃん。さっきぶりだね」
青年、カムイは翠屋で会った時と同じように、極々自然に声をかけてきた。
「来てくれて感謝するよ。ああ、お土産は気に入ってもらえたかな?」
「あっ、はい。ちょうど欲しかったやつだったから・・・・・・ってそうじゃないの!なんでカムイさんがここにいるの!?」
「何で、と言われてもね。君を呼び出したのが俺だからとしか言いようがないな。」
「では、あなたがあの手紙の差出人ということですね?」
「いかにも。それで、君は?」
「ユーノ・スクライアです。あなたは何者ですか。」
ユーノが警戒心をむき出しにし、問い詰める。
「まあまあ、そうツンケンしないでくれよ。別に君たちをどうこうしようなんて思ってないから。それと、俺はカムイ。なのはちゃんから聞いてない?」
「そんなことを聞いているじゃない!真面目に答えてください!」
「あわわ、ユーノ君落ち着いて。」
カムイの答えを聞いたユーノは激高し、ますます語尾を強くする。なのははそんなユーノを落ち着かせようとあたふたしていた。
『ふふ、からかいがいのある子たちね。もう少しこうしていたいところだけれど、話を進めましょう』
腕輪型の神器「グラキエス」からフレティアが愉快そうに声を上げる。
「「デバイス!」」
フレティアの声を聴いたなのはとユーノが一斉に声を上げる。
「あの、それはデバイスですよね。カムイさんは魔導士なんですか?」
なのはが恐る恐る問いかける。
「いいや、俺は魔導士とやらではないよ。こいつも君たちの言うデバイスじゃあない」
『機械と一緒にされるなんて心外ね。』
「魔導士じゃないなら、あなたは何者なんですか?」
ユーノが未だ警戒心を緩めることなく問いかける。
「それを話す前に、君たちのことを教えてくれないか?君たちには絶対危害を加えないから。」
「・・・・・・」
ユーノは返事をすることなく、思案する。張り詰めたような静寂が空間を支配した。それを破ったのはなのはだった。
「ユーノ君、私はカムイさんとお話ししたいの」
「だけどなのは、彼らが何者なのか見当もつかないんだ。はっきり言って、信用できない」
「お話してみないと分からないの。それに、カムイさんはお父さんの知り合いみたいだから、きっと悪い人じゃないの」
「・・・・・・わかったよ、なのはがそういうのなら。カムイさんでしたね、もう一度約束してください、僕たちに危害を加えないことを」
「ああ、約束しよう。話してくれるかい?」
「はい、えっと、どこから話せばいいのかな・・・・・・」
なのはは少しずつ、しかしはっきりとこれまでの経緯を説明しだした。
「・・・・・・それで、私がお手伝いすることになったんです」
「なるほどね、事情は分かったよ。」
「こちらのことは話しました。次はあなた方の番です」
「もちろん、と言いたいところなんだけど、もう一ついいかい?」
「何ですか?」
「君たちの事情は分かった、だけど俺はそれ以上に君たちの扱う力について知りたいんだ」
「力って、魔法のことですか?」
「そうだよ。むしろ俺にとってはそっちが本題だね。なに、一方的に力を見せろなんて言わないさ。君たちが見せてくれるのなら、俺のほうも力をお見せしよう」
「どうしよう、ユーノ君」
なのはは判断がつかず、ユーノに助けを求める。
「・・・・・・いいでしょう、ただし、力を見せるのはあなた方が先です」
ユーノは少し考え、結論を出した。
「わかった。それでいいのならそうしよう。ところでなのはちゃん、手紙は持ってる?」
「ゲームの中に入ってたのですよね、一応持ってきました」
「結構、ならそいつを肌身離さず持ってな・・・・・・封絶」
カムイの足元から自在式が広がり、白菫色の炎が後を追うように追従する。やがて、炎は壁を取り囲み、ドームが形成される。
「にゃ!結界魔法!?」
「違う・・・・・・。少なくとも僕らが扱う魔法じゃない!」
「これが俺たちが扱う力の一つ、封絶さ。これでこの空間は隔離された、外の人間に感知されることもない。思う存分力をつかうといい」
「魔力を全く感じなかった。あなたたちは一体・・・・・・」
「それを知りたかったら君たちのことを教えてくれ」
「・・・・・・なのは」
「うん、わかってるの、ユーノ君。行くよ!レイジングハートセットアップ!」
『set up』
眩い光がなのはを包み込み、バリアジャケットを生成する。光が収まると、小学校の制服をアレンジしたような純白のバリアジャケットをまとったなのはが姿を現した。
『あら、可愛らしい格好になったわね』
「それが、戦闘隊形か、可愛い衣服にしか見えないが・・・・・・」
「にゃはは。改めて言われると、ちょっと恥ずかしいな」
「バリアジャケットの能力と形状はあまり関係ないんです。バリアジャケットの強度は使用者本人の魔力量次第ですから」
「ふーん。ちなみになのはちゃんはどうなんだ?そこそこ強い力を感じるけど」
「魔力量だけならトップクラスです。魔法を扱う才能もかなりのものだと思います」
『こんな小さな子がねぇ。わからないものね』
「まったくだ。さて、準備も済んだみたいだし、さっそく実演してくれないか?」
「はいなの!じゃあ、まずは・・・・・・」
その後、なのはは自身が今現在扱うことのできる魔法をいくつか実演した。そのほとんどがフレイムヘイズであるカムイからすれば大したことの無い物だった。ただ一つ、砲撃魔法を除いては・・・・・・
「ディバインバスター!!」
桜色の光線が空に向かって放たれる。
『あらあら、思ってたより物騒ね』
「ああ、まともに受ければ無傷ってわけにはいかないだろうな」
「あの、どうでしたか?」
なのはが心配そうに尋ねる。
「ああ、ありがとう。参考になったよ、これで仕事に励めそうだ」
「にゃははは。それならよかったです」
「・・・・・・僕たちのことは話しました。次こそあなた方の番です」
『カムイ、本当に話しちゃうわけ?』
「まさか、騙すような真似をして心苦しいけど、話はこれでおしまいだよ」
「そんな!!」
「あなたを信用してたなのはを裏切るなんて、許せない!」
『嫌われちゃったわね』
「仕方ないさ、それだけのことをしたんだから。ごめんね、なのはちゃん。だけど、世の中には知らないほうがいいこともあるんだ」
カムイはそれだけ言うと封絶を解除し、公園を立ち去ろうとした。
「ま、待ってください!知らないほうがいいことって何なんですか!?」
「・・・・・・そのままの意味だよ。ああ、お詫びといっては何だけど、これをあげるよ」
カムイは懐から小さな袋を取り出し、なのはに手渡す。
「これって・・・・・・ジュエルシード!!カムイさん、これをどこでってあれ?」
袋の中身、ジュエルシードに気を取られていた一瞬のうちに、カムイは姿を消していた。
「彼が何者かはわからなかったけど、ジュエルシードを持っていた以上、この一件に何らかのかかわりがあるのは間違いないね。なのは、せかすわけじゃないけど、ジュエルシードの回収を急いだほうがいいかもしれない」
「・・・・・・うん」
なのははうつむき加減になりながらも答えた。
第四話でした。サクサク進めたいのですが、難しいですね。頑張ります。
ちなみに白菫色は薄い紫色みたいな感じの色です。興味がある方は調べてみてください。
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