ZOIDS ~Inside Story~   作:砂鴉

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八月です。暑いです。だけどスマホを片手に歩き回る私。はい、ポケモンGOの魔力はすごいっス。ま、田舎なんでポケモン見つかりやしませんが。

どうも、砂鴉です。
今回もおまけ――という名ですが、次章へ繋がるお話、という側面が強いです。本編に近い感じになりました。

今回のメインはバンともう一人、バトストでヴォルフを語るなら外せない彼。
では、どうぞ。


幕間その5:閃光と英雄

 休暇!

 やっと、やっとだ!

 ガイガロスのゴタゴタに戦争終結の後始末。全く、忙しい毎日だったけど、やっとこの日だ! ああ、ようやく故郷に帰れる。帰ったら、やっぱりあれだな。腹いっぱい飯食って、昼まで寝過ごして、故郷の空気を満喫して……。師匠(せんせい)には感謝だな。軍に入ってもう何年か、やっとこの日が来たんだ。

 

 でも、なんだろうな、この感じ。この休暇は、何かある。俺のゾイド乗りとしての生き方を揺さぶってくれる、何かがある。始まりじゃなくて、始まりよりもっと前、“切っ掛け”みたいな何かが……。

 

 って、何書いてるんだ俺は。

 さ、帰ろうぜライガー。俺たちの故郷へ。

 

 へリック共和国高速戦闘隊所属、とある兵士の日記より

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

 南エウロペ大陸北西。そこには、ジオレイ山脈と呼ばれる山脈地帯があった。切り立った山脈と台地地形。山脈の西側にはジオレイ平野が張り出しているが、山脈内部は入り組み、素人が立ち入るには危険が多い。

 エウロペのあちらこちらには古代遺跡が点在し、それはこのジオレイ山脈周辺にも存在している。だが、未だその全てを網羅できた者はいない。

 その理由は、入り組んだ山脈地形と、付近に村が少なく、拠点となる場所もない事が挙げられた。

 曲者は村が少ないということだ。厳密には一つだけ村が存在するのだが、その村も外部からの受け入れを予定している訳ではなく、そう言った設備は皆無に等しい。遺跡探索に出向くには遺跡と野宿の往復がオチなのである。

 そして、村が少ないその場所は、如何わしい者たちが隠れるには絶好のポイントでもあった。

 

「……どうしようか」

「どうするの?」

「いや、俺達二人に関わる事なんだけど」

「頑張ってね」

「他人事じゃねーよ、フィーネ」

 

 カクンと頭を落すのは刃の獅子を従えた、破滅の魔獣を仕留めた英雄――もとい少年、バンだ。「元気出して」と背中を頭で撫でるのは相棒のジーク。そして、当事者であるにもかかわらずのんきな言葉を投げかけたのは金髪の美少女、フィーネである。

 

 バンは手の上にへたりと力なく横たわる巾着袋を持ち、何の重みもないそれをプラプラさせながら、諦観の想いで呟いた。

 

「金がねぇ…………」

 

 

 

 事は、バンたちが遺跡探索に出向いたところに遡る。

 

 ガイガロスにて行われた新たなガイロス帝国皇帝の戴冠式。それに参加せず、バンとジーク、フィーネは再び旅に出た。目的は、ゾイドイヴを見つけ出すこと。

 ゾイドイヴは古代ゾイド人の文明を解き明かすとても重要なカギだ。各国の考古学者も必死でそのありかを追っており、この先何年――何十年経っても見つからないかもしれない。だが、ゾイドイヴは古代ゾイド人であるフィーネにとって『完全に戻ることがなかった』記憶の穴を埋める唯一の手がかりである。

 さて、そのゾイドイヴの手がかりを探すにはどうすればよいか。真っ先に思いつくのは、古代遺跡を探索することである。そこに手掛かりがあればよし、前進や足踏みはあれど、後退することはない。

 そこでバンとフィーネは事前にドクターディやザルカといったその道に明るい知り合いに現在判明している遺跡の場所を聞き、その遺跡へと出向いたのである。

 

 それが一ヶ月ほど前の事。

 ガイガロス周辺に点在する遺跡を漁り倒した二人は、そのまま北上し、ジオレイ山脈周辺の遺跡へと向かったのである。

 

 そして、見つけた遺跡でゾイドイヴの手がかりがないか探っていたのだが、山脈周辺は山賊や盗賊が潜む場所だ。不用心にもブレードライガーだけ放置して遺跡の探索を開始した二人(+一機)は、まんまと残してきた物資と資金のほとんどを奪い去られたのである。

 

 地図やその他携行品、そして持ちきれなかったであろう物資とブレードライガーが無事だったのが不幸中の幸いである。ちなみに、遺跡内でも侵入者除けのトラップが息をしており、二人は息も絶え絶えながら脱出してきた矢先の出来事だ。

 

「確か……こういうのを“一難去ってまた一難”って言うのよね」

「他人事みたいに言うなよフィーネ……」

 

 食料を積めていたはずの空っぽの箱と、ほとんどの物資が消え失せたブレードライガーの格納庫を前に、バンは大きくため息を吐いた。僅かに持ち上げた視線の先で、ブレードライガーは虚空を見つめていた。

 ブレードライガー自体が奪われなかったのは幸いだが、その理由は大方ブレードライガーを動かせなかったからだろう。今現在、所有者のバンですら満足に動かせず、他の人間が動かす際はジークの協力が必要な、実質専用機の趣が強いブレードライガー。一介の盗賊風情に従えられるわけがない。

 

「――と、とにかく! 今後のことを考えないとな。食料は……まだ二日くらい保つし、それまでにどっかで金稼がないと……って」

 

 バンたちのここまでの旅費は、ガイロス皇帝ルドルフをガイガロスまで送り届けた時の余りだ。手持ちだった金額はお小遣い程度のもので、とてもではないがこの先の旅を満足に続けられるものでもない。

 ガイガロスまでの旅路では、賞金稼ぎのアーバインや運び屋のムンベイといった仲間たちが稼ぎ、持っていたお金でやりくりできた。だが、二人からも離れた今、バンは完全な文無し稼ぎ無しである。

 

「金については……アーバインやムンベイに頼んで……いやダメだ! 貸してくれる気がしない。前みたいにどっかの村で用心棒やって報酬を。……うーん、でも平和な世の中で雇ってくれるような村があんのか? そもそも」

 

 ポケットから周辺の地図を取りだし、フィーネと二人で覗き込む。村を示すマークは、ここからかなり離れた所に一つだけ。それも、村というよりは町といった規模である。ブレードライガーの脚でも、ここから三日四日かかるだろう。残りの手持ち食料では到底保たない。

 

 それに、バンはあまりその町に近づきたいと思わなかった。

 町の名は『アレスタ』。バンがこの旅に出る直前、ガイガロスで最後に昼食を御馳走になった相手から事前に訊いていたのだ。プロイツェン派の人物が市長を務める街で、治安はあまり良くないと。

 バン自身がそれを目の当たりにしたわけではない。ただ、その時の青年の表情と、横で聞いていただろう少女の顔に影が射したことから、良い印象は得られなかった。

 

 今のバンはフィーネと二人だ。ゾイド乗りとしての実力は十分で、それなりに修羅場を潜り抜けてはいるが、だからと言って好んで危険な場所に飛び込もうとは思わない。

 

 

 

「――となると、一旦帝国領の方に戻って体勢を立て直すかぁ……なぁ、フィーネ……フィーネ?」

 

 問いかけたはずの相手から返答が無く、バンは地図から顔を持ち上げてもう一度問いかけた。振り返ると、さっきまでどこにいたはずの少女の姿はない。加えて、相棒であるオーガノイドの姿もない。

 慌てて辺りを見渡すと、丘の上にオーガノイド――ジークの姿があった。バンを呼ぶように尻尾をプラプラさせている。

 

「おい、ジーク。勝手にどっか行くなよ……ライガーから離れて、また盗まれでもしたらどうすんだ」

 

 念のためブレードライガーの中からホバーボートを持ち出し、丘の上に向かいながらバンは愚痴った。それがジークに聞き届けられるとは考え辛いが、一言二言言わないと気が済まなかったのだ。

 それに、ジークの傍にはフィーネもいた。なにか、戸惑うように、バンと丘の向こう側で視線を行ったり来たりさせている。

 

「フィーネ? 何かあったのか?」

「あれ」

 

 フィーネが指で示した先には、人影があった。崖の下に倒れ込み、ピクリとも動かない。

 

「あいつ……フィーネはジークと一緒にライガーを向こう側に」

「バンは?」

「先に行く!」

 

 言うなり、バンは崖を駆け下り始める。バンが生まれた村の近くは砂漠だが、砂漠には今のような丘や崖はなかったが、昔から村の近くの遺跡を荒らして回っていたバンにとって、この程度の丘はどうということはない。走りながらホバーボートを起動させ、捜査のための小さなリモコンを片手にボートに乗る。後は、一気に駆け下るだけだ。

 駆け下りたバンは勢いを殺しながらボートから跳び下り、倒れていた男に駆け寄る。

 

「おい! しっかりしろ!」

「あ……ああ…………」

 

 男が呻くように呟くのに合わせて、バンは顔を近づける。少し、嫌な予感も覚えて。

 

 男が来ている服装には見覚えがあった。バン自身、数ヶ月前に何度も目にした、畏まった格好だ。実用性にも優れ、()()()の兵士はいつもこれを身に着けている。へリック共和国の軍服だ。

 

 今バンがいるジオレイ平野はへリック共和国よりも遠く離れた、実は数ヶ月前の敵対国、ガイロス帝国の領土に近い場所だ。共和国の兵士がなぜ自国より離れた場所で倒れているのか、気になって仕方ない。もしかしたら……今なお漂う戦火の残滓を彷彿とさせた。

 

「あ……は…………」

「なんだ、一体なにがあったんだよ!」

 

 切羽詰まって問い詰めるバンに、若い共和国兵の男は震える声で答えた。

 

 

 

「…………ハラ、へった……………………」

「……はぁ…………?」

 

 フィーネとジークを乗せたブレードライガーが下り立ったのは、バンの呆れの声が響くのと同時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 男の食欲は、はっきり言って異常だった。

 残っていたレトルト品のカップ麺を一息に平らげ、缶詰めを掻っ込み、α米を袋ごと腹に収めてしまうのではと予感してしまうほどだ。結果、バンたちの残りの食料はほとんど消え失せた。バンが「俺達のメシが……」とぼやいたが、よほど空腹だったのか男は一切耳に入れない。やせ気味な身体のどこにこれほどの食欲が、と感じざるを得ない。

 

「いやー、ありがとう。助かったよ。まさに九死に一生だ」

「きゅ……そんなに死んだのか? でも生きてんじゃん」

「?」

「あ……そ、それよりさ! なんで倒れてたんだ? 普通に行き倒れ?」

 

 バンの回答に首をかしげる若い男。その態度に、バンも自分の受け答えが的外れだったことに気づく。バツが悪く、明後日の方を見ながら話題を逸らす。フィーネが粗末なコップに注いでくれたレモンエキス入りの水のほのかな甘さが、空気を和ませてくれる。

 

「ああ……俺は、見ての通り共和国の兵士だ。って言っても、まだまだ准尉なんだけどな」

 

 男は、軍に所属して以来、初めてのまとまった休暇を貰えたところだった。本来なら戦争の後始末でどこも忙しいのだが、彼を目にかけているある左官の「メリハリができてなきゃぁ、働けるときに働けねぇ」という言葉で、交代制で月単位の休暇が与えられた。無論、この休暇が終われば月単位の連続任務が待っている訳だが。

 この休暇を利用し、男は久しぶりに故郷へと帰ることにした。ジオレイ山脈の中ほどに存在する、世界に知られていない小さな村だ。嘗てはとある国の所属だったが、その国が滅んで以来、隠れ里のようにひっそりとしたものとなっていった。

 その村に帰還した男を待っていたのは、想像だにしない事件だった。

 

 村は、とある部隊に占領されていたのだ。当然、帰還した男も戦ったのだが、多勢に無勢、加えて男のゾイドもエネルギーがほとんど切れかけだったため、泣く泣く相棒(ゾイド)を乗り捨てて逃げて来たのだ。

 そして、「故郷でたらふく食べよう!」などと考えていた男を空腹が容赦なく襲い、ついに力尽きたのである。

 

「村を占領した奴らはただの山賊じゃない。ちらっとだけど、見たんだ。奴らのゾイドには蜂のマークが入ってた。P(プロイツェン)K(ナイツ)だ」

「プロイツェン!?」

 

 ガイロス帝国摂政、ギュンター・プロイツェン。四ヶ月前、帝都ガイガロスをデスザウラーで破壊し尽くした、帝国と共和国の戦争の裏で暗躍していた男だ。そして、バンの父の仇であった。

 

「奴らを知っているのか?」

「プロイツェンの手下なんだろ。あいつら、こんなとこで悪さしてやがったのか……」

 

 バンは手を強く握り込む。PKに所属している者との面識はないが、プロイツェンに組していたのは明確で、敵であることに間違いはない。

 

「俺はこれから村を取り戻しに行く。村に忍び込んで、奴等から俺のゾイドを取り戻せば楽勝だ」

 

 そう言って見せる男の顔には自信があった。慢心ではなく、覚悟をもった自信が。ただ、ここまでの男の話に、バンは少し引っかかることを覚える。

 

「って、ちょっと待てよ。お前、准尉なんだろ。自分のゾイドを持ってるのか?」

「バン、准尉って?」

「え? えっと、普通の兵士をまとめる、一部隊の隊長? みたいな奴」

 

 共和国軍に所属する者たちは、軍からゾイドを貸し与えられている。それゆえ作戦によっては別のゾイドに乗ることもある。軍内部でのゾイドの扱いは、バンの思う“相棒”ではなく一“兵器”なのだ。そして、全ての軍に所属するゾイドは軍が所有権を持ち、勝手な使用は規則で禁じられている。

 

「ああ、そうなんだけどな。俺が与えられたゾイドは、俺ぐらいしか扱えない。だから、今回も使っていいって許可を貰って来たんだ」

 

 笑いながら言った男の顔は、先ほどのように自信に満ちていた。自信に満ちたゾイド乗りの目だ。

 

「あいつが奴らに使える訳がない。だから、俺が行ってやらないとな。メシ、ありがとな。助かったよ」

 

 片手をあげ、男は笑顔で礼を言い、去ろうとする。僅かな振る舞いだったが、そこに微塵の隙もない。ただ、相手はPKだ。プロイツェンに仕えた本物の兵士であり、一兵士である男一人で対処できる相手ではない。それは、バンにも分かっていた。そして、バンが加わっても対処が難しいだろうことは。だが、

 

「バン……」

 

 男の背を見送りながら、フィーネは不安げに声を洩らした。それが意味することは、無論バンが考えていることと同じだ。バンは頷き、男の背に声をかける。

 

「待てよ! 俺も手伝うぜ!」

「ダメだ。相手の数も、目的もはっきりしていない。危険度の方が高い。そんなことに、見ず知らずの子供を巻き込む気はない。それに、これは俺の村の問題だ」

「誰が子どもだって?」

 

 バンが合図をすると、それまで隠れていたジークが顔を覗かせた。

 

「オーガノイド!? それも、銀色の……。それじゃ、君が……!」

「助けちまったからな。見て見ぬフリはできねぇよ。それに、俺達の食糧ぜーんぶ食べられちまったし。きちんとお返ししてもらわないとな!」

 

 にやりと表情を作り、バンは凄んで見せた。男の表情も、ジーク、そしてブレードライガーを見て少しずつ変わっていく。それは、子どもだからと遠ざけようとしていた男ではなく。一人の兵士、戦士の顔。

 

「……協力、してくれるのか?」

「当然!」

 

 言いつつバンは拳を突き出す。少し迷いながらも、男もそれに倣った。二人の拳が突き合わされ、目標が決まる。

 

「俺、バン。よろしくな。こっちはフィーネで、相棒のジーク」

「銀色のオーガノイド。やっぱり、デスザウラーを倒した英雄だったか」

「それはいいだろ。それより、あんたの名前は?」

 

 『英雄』呼ばわりされることは、帝都での戦い以来の常だった。バンはそのたびにむず痒さを覚えるが、もう慣れてきてもいる。

 バンの問いに、男は笑いながら答えた。共和国の軍服を着ていながら、親しみやすい笑顔。頬に入った黄色い三角形のマークと、ハリネズミのように尖った髪が、男の素の姿、快活な性格を窺わせた。

 

「へリック共和国陸軍、高速戦闘隊所属、レイ・グレックだ。頼むぜ、バン!」

 

 

 

 それは、後に『閃光』の異名を持つことになる男と、銀竜を従えた『英雄』。二人が初めて出会った瞬間であった。

 

 

 

***

 

 

 

「ここか……」

 

 ジオレイ山脈に踏み込み、中腹まで差し掛かったところには台地が存在した。自然が作り出した奇妙な地形だが、この台地は切り立った山脈にあって唯一人が住める場所でもあった。そして、山脈と台地の境目辺りに、その村は存在した。

 

「あれだな」

 

 背後を山脈に包まれ、守りに徹すべきは正面の台地のみだ。守りやすく、攻めにくい。小さな村にしては、しっかりした防衛設備である。いや、設備というよりも地形か。

 

「バン、気を付けて」

「なーに、相手は逃げてるだけの奴らだ。大したことないさ」

 

 バンは強がりを見せるが、内心では少し警戒もしていた。事前にレイから訊いた情報では、占拠したPKの主力は小型ゾイド、レブラプターらしい。格闘戦主体のゾイドであるレブラプターは、同じ格闘戦主体のブレードライガーに敵う術がない。外付けで射撃兵装を施していたとしても、機体バランスを崩して性能を満足に発揮できないはずだ。そのことは、ガイガロスへの旅路で何度も戦った経験が導いてくれた。

 だが、相手は敗戦で落ちぶれていると言ってもPKだ。ギュンター・プロイツェンが独自に揃えた私兵であり、歴戦の将も多く所属している。ここを占拠している者がはぐれ者であろうと、油断はできない。

 

 ちなみに、この情報を与えてくれたレイはいない。レイは村の背後の山中に潜んでおり、バンが戦闘を始めるのを待っている。突如襲撃をかけるバンにPKの意識が向いている隙に潜入し、己のゾイドを取り戻す魂胆だ。レイは、バンと二人でならPKの部隊を退けることも可能だと言っていた。バンは、その言葉を信じるしかない。

 

「……よし、行くぞ! ジーク! ライガー!」

 

 バンの掛け声に合体したジークとブレードライガーが応えた。山中に響き渡る雄叫びを上げ、ロケットブースター全開で崖を駆け上り、台地に躍り出る。警戒していたレブラプターが擦れるような威嚇音を上げ、背中の刃と爪をむき出しにいきり立つ。そのレブラプターを一撃のもとに叩き伏せ、ブレードライガーはさらに吠えた。「かかってこい!」と、敵の戦意をかき立てる。

 

「反応を確認……バン! 来るわ!」

 

 バンの背中からフィーネが警戒を呼び掛けた。そして、応えるように慌ただしくレブラプターたちが村の周囲から集結する。ただ、その中に一体だけ、レブラプターとは違うゾイドの姿があった。

 太い腕に小さな脚。小型だが、それは帝国軍の主力をそのまま縮めたような迫力を持っている。帝国の主力、アイアンコングの小型版、ハンマーロックだ。

 

『よもや、英雄がこのような村に現れるとは……』

 

 冷静に、しかし隠しきれない驚愕を口にしたのは女性の声だ。現れたハンマーロックのパイロットだろう。一人だけ違うゾイドである事実から、バンは判断する。

 

「お前がこいつらの大将か! 村から出て行け!」

『なぜ? あなたがこの村に関わる理由はないはずです。私たちも、あなたと戦火を交える理由がありません。私たちは、来る時までの隠れ場所を求めていただけ。なぜ、邪魔をするのです?』

 

 悲しげな女性の言葉に、しかしだからといって頷けるわけがない。久しぶりに里帰りをしたレイを追い払い、村を占領すると言う悪事を、バンは見過ごせない。

 ハンマーロックの前に三体のレブラプターが立った。そして、ブレードライガーを包囲するようにもう三体のレブラプターが展開する。

 

「お前たちの目的なんて関係ない! 村に迷惑をかけるなら、俺が追っ払ってやる」

『そうですか。ですが、私も退く訳にはいかないのです!』

 

 女性の指揮の下、レブラプターの一団が飛び掛かる。瞬時に跳び離れようとするが、距離をとっていた別のレブラプター三体が腕のビーム砲を撃ち放つ。ビームはEシールドで防ぐことが出来るが、その隙に三体のレブラプターの接近を許した。二体はEシールドで弾いたが、背後から襲いかかった最後の一体の爪は防げない。衝撃が、ブレードライガーを揺さぶった。

 

「くそっ……こいつら!」

 

 ブレードを前方に展開し、基部のパルスレーザーガンを放つ。しかし、レブラプターは機体を宙に躍らせてそれを躱す。そして、砲撃の隙に別のレブラプターが死角から再び爪を叩きつけた。

 バンは機体を反転させて前足でそれを掃った。だが、一機に気を盗られると、別のレブラプターが死角に入り込み一撃を叩き込む。

 

『英雄と言えど、所詮は子どもですね。対処が甘い!』

 

 ハンマーロックの右肩のビームがブレードライガーの脇腹に突き刺さる。シールドの範囲外で、さらに不意を突いた一撃は痛烈だった。装甲が薄い高速ゾイドであることも災いした。

 

「バン、今のでライガーの出力が二○パーセントダウン。大丈夫?」

「なーに、このくらい屁でもないぜ、なぁライガー!」

 

 気丈に振舞いつつ。しかしバンは内心で舌打ちする。完全に包囲され、不用意な突破も敵わない現状。厳しい戦況なのは明白だった。

 

 ――包囲殲滅。軍隊の戦い方って奴か……くそ! 一対一なら負けないのに!

 

 周りを包囲するレブラプターの動きに注意しつつ、バンは台地の中心で立ち回る。死角にいるレブラプターが攻撃を仕掛けてくる。その行動はもう読めているが、その攻撃の回転の速さが、バンの対処を少しずつ遅らせた。

 だが、包囲された時の対処はバンも承知だ。そのタイミングを計り、ほんの一瞬、攻撃の雨が止んだ隙を逃さない。

 

 ――よし、今だ!

 

 ロケットブースターを起動させ、一気に接近戦に移ろうとしたレブラプターに突撃を駆ける。ブレードは展開せず、Eシールドを張ってレブラプターを弾き飛ばし一直線に崖の手前まで走り込み、反転した。包囲を抜け出し、体勢を整える。

 レブラプターの華奢な機体では、ブレードライガーの突進を止めるのは不可能に近い。結果、ブレードライガーは包囲を抜け出すことが出来た。そして、腹部のショックカノンで追撃を仕掛けていたレブラプターを打ちのめした。

 

「よっしゃ! これで――」

 

 包囲を抜けた。反撃の兆しにバンは打ち震え、対するPKのレブラプターは戦慄を覚える。だが、そこに新たな巨体が姿を現した。ブレードライガーをその影が包む。

 警戒アラームの音に振り返ったバンとフィーネが見たのは、赤い巨体だった。血の様な紅の機体色に、大型のビームランチャーを肩に負ったゴリラ型ゾイド、アイアンコング、それもPK専用の機体、アイアンコングPKだ。

 

『ドルフ隊長……』

 

 ハンマーロックの女性が驚きと、僅かな落胆を声に含ませて呟く。

 

『煙が見えたから何かと思えば、これはどういうことだね? オファーランド』

『申し訳ありません。少し、想定外の侵入者があり……』

 

 オファーランドと呼ばれた女性の言葉に、アイアンコングPKの視線が僅かに下に向けられる。見下ろされる感覚に、若干の苛立ちを覚えつつバンはアイアンコングPKを見上げた。

 

『閣下を倒した英雄か。ふっ、ここで倒しておけば、少しは溜飲も下がるというものだな』

「できるんならやってみろよ!」

『強がりか。貴様に勝てるか? この数を、貴様一人で倒せると言うならやってみるがいい』

 

 ブレードライガーのセンサーが反応した。モニターに表示されているのは、続々と集まりつつあるPKのゾイドたちが、台地の下に展開している。機種までは分からないが、おそらく重砲撃ゾイドだ。近接戦闘に特化したブレードライガーを仕留める雨のような砲撃が予感された。

 

『降伏しろ、英雄』

 

 上から叩きつけるような物言いに、バンは歯噛みした。この数を全て一人で対処するなど不可能に近い。“敗北”の二文字がバンの脳裏を過る。

 

 

 

 答えの無いバンに、ドルフと呼ばれたアイアンコングPKのパイロットの口が動いた。「かかれ!」の指示に、背後から忍びよっていたレブラプターが手足の爪をぎらつかせて飛び掛かる――――

 

 

 

 

 

 

 

 恐れていた衝撃は、来なかった。

 代わりに、高出力のビームキャノンの発射音が響き、聞き苦しい悲鳴と共にレブラプターの華奢な機体が吹き飛んだ。

 

「待たせたな……バン!」

 

 その言葉は、村の方から聞こえた。

 

 村の前には、一体のゾイドが立っていた。シールドライガー。以前、バンがブレードライガーに進化する前に使っていた、ブレードライガーの前進となったゾイド、シールドライガー。

 だが、共和国の蒼き風と謳われたシールドライガーとは、大きく違っていた。大型のビームキャノンを備え、砲撃戦に対応した装備はD(ダブル)C(キャノン)S(スペシャル)と呼ばれる強化型シールドライガーの一つだ。漆黒の機体色に包まれた身体は、蒼き風の面影が薄い。言うなれば、それは滞留する空気を貫く弾丸だ。漆黒の黒玉(ジェット)

 

「あれって……D(ダブル)C(キャノン)S(スペシャル)-J(ジェット)?」

 

 シールドライガーDCS-J。

 それは、シールドライガーの砲撃能力を強化したDCSの、犠牲になった機動力を復活させた更なる強化型だ。だが、重砲撃と機動力の強化は機体バランスを大きく崩し、結果ライガーの中でも相当な扱い辛さを際立たせたゾイドとなった。

 共和国内でも、量産されたのはたった七機。しかし、そんなピーキーな機体を乗りこなす凄腕のゾイド乗りが居た。彼らは、DCS-Jを乗りこなしたその実力を認められ、階級の関係なく、とある別称を授けられたという。

 バンですら知っていた、ライガー乗りなら誰もが求めたくなる称号。

 

 最強のライガー乗り――レオマスター。

 

 

 

「バン! 後ろは任せろ! お前は前衛を頼む!」

 

 驚愕をいつまでも胸に抱いてる余裕はない。バンは、瞬時に手近なレブラプターに切り込み、それを打ちのめすと同時に崖を駆け下りた。その先にはレッドホーンが一機にブラックライモスが三体。その他のゾイドも集まりつつあるが、今は関係ない。

 浴びせられる砲撃をEシールドで受け止め、落下の速度をプラスしたブレードでレッドホーンを一撃で斬り捨てる。背後からアイアンコングPKのビームランチャーが襲うが、直前でビームキャノンの砲撃で逸らされた。台地のPKは全てレイとシールドライガーDCS-Jが引き受け、村をも巻き込む砲撃を予定していた崖下の部隊は、バンが蹴散らす。

 

 PKの敵はたった二体の高速ゾイドだ。だが、たった二体のそれに対処しきれない。砲撃と格闘を両立させたシールドライガーDCS-JはアイアンコングPKでも手を焼き、抑え込まれると崖下を殲滅したブレードライガーとのコンビで仕留められる。

 

『英雄だけならまだしも、レオマスターまで絡むとは、失態だなオファーランド』

 

 返答はない。ドルフは戦況を把握し、指示を出す。

 

『撤退だ。もう、この大陸に用はない……いずれ、必ず』

 

 アイアンコングPKはシールドライガーDCS-Jの攻撃を凌ぎ、崖を下る。ハンマーロックがそれに続き、彼らを守る様に残りの殿を務めながら、残りも撤退した。

 

 

 

「バン。そこまでだ」

「え? 追わなくていいのか?」

「その余裕がない。今回のことは、俺から軍に報告する。これ以上、無駄な戦火を交える必要はないだろ」

「……分かった」

 

 PKを逃がすことは、この先まだ戦火が続くことを暗示していた。それを理解しながら、バンは見送るしかなかった。いずれ、再び戦うだろう敵を。

 

 

 

 

 

 

 撤退するPKの一団。その中心に、ハンマーロックとアイアンコングPKの姿はあった。

 

「失態だな。オファーランド」

『申し訳ありません』

 

 戦場でも口にしたそれを、ドルフは再度突きつけた。

 

「まだ、君たち()()を解放するわけにはいかん。我らのため、これからも戦ってもらうぞ」

『………………はい』

 

 長く溜めを作り、吐き出すように、オファーランドは肯定する。屈辱と、悔しさとに、打ち震えながら。

 

 

 

『……ドルフ隊長』

 

 しばしの沈黙を、オファーランドが破る。

 

「なんだ?」

『あなたたちは、何を目指ているのですか?』

 

 含みの無い、攻めるような眼差し。それをモニター越しに見つめ、ドルフはにやりと笑みを浮かべた。

 

「決まっている。プロイツェン様の掲げた未来。我ら()()()()の子が、未来を形作るのだよ。愚かなガイロス・へリックを潰してな」

 

 オファーランドから、返答はなかった。叩き斬る様に通信が切られ、再び沈黙が場を支配する。

 

 

 

「目的、か……これから始まるは、()()なのだよ。明日を担う者たちへの、な」

 

 その言葉は、コックピットを飛び出し空を揺蕩い、溶けていく。

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 その日、PKの部隊を追い払ったバンたちは村で痛く歓迎された。心配だった食料や旅の資金についても、今回の一件で村からの謝礼、という形で恵みを頂けた。バンにとって、それは二の次だったのだが、村からの好意と自分たちの現状を踏まえれば、受け取らない訳にもいかない。

 

 PKは隠れ里のような村で潜伏、並びに“同士”を探していたらしい。同士とは、共に志を共にする仲だ。

 今のPKは、ギュンター・プロイツェンを頂点とする組織とは、少し外れたものへと変容しつつある。プロイツェンが望んだ世界の支配者とは、微妙にずれた位置にある。それが、村長が抱いた見解だと言う。

 また、村を占拠したPKの長の女性が、どこか彼らに同調していないとも感じたという。

 

 ギュンター・プロイツェンが死に、PKは変わりつつある。その向かう先がどこにあるのか、それは、今のバンたちが把握できるものではなかった。

 

 

 

「バン!」

 

 夜空を見上げながら芝の上で寝転んでいたバンに、レイが声をかけながら近づく。フィーネとジークはいない。フィーネはすでに寝てしまい、ジークはその傍で丸くなっていた。今のバンは、一人だ。

 

「どうしたんだ、こんなところで?」

「いやー、腹いっぱい食べてさ、ちょっと休憩してたんだ。レイはよく食うよな」

 

 その言葉通り、レイは久しぶりの故郷の味を腹十五分目くらい噛みしめていた。だと言うのに、然して苦しそうな姿を見せず、平然とこの場に現れるのだから、バンはレイの食欲を軽く疑ってしまう。

 

「そりゃ、久しぶりの故郷だ。腹いっぱい食べたくもなるさ」

「故郷かー。久しぶりにウィンドコロニーに帰ってみよっかなぁ」

 

 バンの故郷はウィンドコロニーという村で、共和国領のエレミア砂漠近くに存在する。然して特徴の無い、小さな村だ。レイの故郷と、似たようなものである。

 

「……なぁ、バン。ちょっと、いいか?」

 

 レイは、少し神妙な顔つきでバンに言った。バンも起き上がり、レイの顔を見上げながらその続きを待つ。

 

「バン……お前さ、共和国に入隊しないか?」

「共和国?」

「ああ。お前の腕は見事なもんさ。いずれ、俺みたいなレオマスターになれるかもしれない。共和国軍に入って、もっと腕を磨かないか? 俺と一緒に。――なんだったら、俺の師匠(せんせい)を紹介する。ちょっといい加減な人だけど、腕は確かだ。レオマスターだからな」

 

 魅力的な誘いだった。

 バンの夢は父親のような最高のゾイド乗りになることだ。父の後を追うなら、共和国で従軍するのも、存外悪い話ではない。

 

「ぶっちゃけるとさ、お前の戦いぶりがすごいって思ったんだ。俺も負けてられないなって。だから、一緒に力を磨いて、切磋琢磨したいって思ったんだ。それに、こいつはもし会ったらって伝言を頼まれてたんだけどな。クルーガー大佐がお前を誘ってる。一流のゾイド乗りにしてやるって。なぁバン。どうだ?」

 

 バンは、ぼんやりと思考に耽る。共和国に従軍する自分を、そして、軍人として最高のゾイド乗りを目指す自分を。それは、己の夢に向かう、着実な前進だ。

 しかし、思うところもあった。軍に所属し、軍学校に通うと言うことは、旅の終わりを意味している。旅を終えれば、フィーネの記憶の謎――ゾイドイヴを追い求めることはできない。

 自分の夢と、フィーネの目的。二つが、天秤の上でゆらゆらと揺れた。

 

 そして、誘いに対する答えを、告げる。

 

「――ああ。レイ、俺は……」

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 へリック共和国、レッドリバー前線基地。そこに、休暇を終えたレイの姿があった。

 

「よぉレイ! どうだった、久しぶりの休暇は」

 

 レイに親しく話しかけてきた相手は、トミー・パリスだ。レイと同じく高速戦闘隊に所属する中尉。レイにとっては、上司の一人であり、一人の友でもあった。

 

「トミー」

「なんだよ、辛気臭い顔してさぁ。俺なんかのんびり釣りしてたんだけど、こーんな大物釣ってよぉ、村中大騒ぎだったんだ」

 

 誇らしげに語るパリスは、その話がどこまで本当か分からない。誇張が含まれているのは確かだろうが、態々指摘する気もない、曖昧に笑顔を浮かべた。

 そんなレイを見かねてか、パリスは肩を組んでくる。もう片方の手に持っていた缶コーヒーを押し付け、変わらず笑顔で問いかける。

 

「で、そっちは?」

 

 レイはパリスの手から抜け、缶コーヒーを一口飲むと、徐に口を開いた。

 

「なんか、見過ごせない奴を見かけて。一緒に軍に入らないかって誘ったんだけど、断られた」

 

 レイの口ぶりは、少し寂しさを纏っていた。

 

「やりたいことがあるから、まだ軍には入らない。それに、性に合わないってね」

 

 レイは、バンのことを語った。名前は出さないが、気になった男がいると。一緒に切磋琢磨したかったが、叶わなかったこと。少し、胸に穴が開いたような気がしたこと。得られなかった、戦友を想う。

 

「なるほど……フラれたか」

「え?」

「しかし、レイにそんな趣味があるとはなー、オレは意外だぜ」

「ちょ!? そういう意味じゃない! 俺は一緒に愚痴を言えるような友達の話を――」

「分かった分かった。その愚痴は、今度の任務で晴らすとしようぜ」

「分かってないだろっ!!!!」

 

 騒がしく問答を続け、いい加減疲れてきたところでパリスが投げられそうなところで口調を改めた。

 

「すっきりしたか?」

「え?」

 

 レイの腕から抜け出し、パリスは自分の缶コーヒーを一気に飲み干す。

 

「いろいろあったみたいだけどさ。軍人なんて、やりたい奴がやればいいんだよ。無理強いさせるな。それで、失くしちまったら、ショックもデカいんだ」

「それは……」

 

 パリスは、三年前に北エウロペに極秘任務で向かった部隊の唯一の生き残りだ。そして、ストームソーダ―の設計図奪取を行った部隊でも唯一の生き残りとなった男である。その経歴故か、共和国内で彼をよく知らない者からは“死神”と陰口を叩かれている。同行した者は死ぬと言う、最悪なジンクスを持つものとして。

 レイはパリスの友人であるが、そうして彼と関わりを持つものは少ない。彼が、それにどれほどの苦悩を抱いているか、知るものは多くない。

 

「オレたちにできるのは、少しでもこれからの平和を維持すること。志を共にする仲間は欲しいけど、今のメンツでもやっていけるように頑張らないとな」

 

 パリスの言葉をレイは噛みしめた。バンと一緒に戦えないのは残念だが、この道を望む者は、多すぎてはいけないのだ。軍人は必要だが、そればかりではいけない。誰かを亡くし、手を汚さねばならないこともある軍人など、少なくていい。

 だが、できることなら……分かち合える友は欲しいものだった。

 

「さて、そろそろ次の任務だ。よろしく頼むぜ、レオマスター、レイ・グレック准尉」

「ふぅ…………。はっ、こちらこそ、よろしくお願いします。トミー・パリス中尉」

 

 レイは、気をとりなおして敬礼する。友ではあるが、パリスは上司だ。礼節を弁える時は必要である。

 

「硬っ苦しいなーお前」

「必要なことですよ」

「でさぁ、次の任務なんだっけ?」

「暗黒大陸の調査ですよ。PKの残党があちらに向かったとか。――なんで中尉殿が把握してないんですか」

「ははっ、わりぃわりぃ。で、隊長さんは?」

「オーダイン・クラッツ少佐ですよ」

「えー、あのおっさん辛気臭いんだけど」

「はぁ……。そうそう、クラッツ少佐についてですが、ハーマン少佐から伝言が」

「ロブの兄貴から?」

 

 呟きながら、二人は軍人として、この平和を守り抜くために新たな戦場に出向く。

 未知の大陸、暗黒大陸ニクスへ。

 




というわけで、レイ・グレックとバン・フライハイトの初対面を意識してみました。ちなみに、序盤で話だけ出て来た『アレスタ』という町は、『幕間その2』の舞台です。

さて、若干「おや?」と感じた方もいるでしょう。原作準拠の筈なのに、バンの行動が原作から少し外れてしまってます。この答えは、今月中に投稿開始できる――はず(汗)――第三章をお待ちください。

ちなみに、最近出会ったネット小説を書く知り合いに訊いたところ、一話3000~4000字くらいが適当では? という意見を聞きました。
読む分には私もそれくらいが適当かと思います。が、今回のおまけ、13000字超なんですよね。
どうしても長文になってしまうなぁ。第一章とかは理想に収まってたのに。どうしてここまで増えた……。

軽い悩みでした。それでは。

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