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それでは、どうぞ。
『なぜだ、なぜこの私がああああああッッ!!!!』
プロイツェンは絶叫した。すでに爆発は収まり、辺りは深淵の闇に包まれている。だが、プロイツェンはそういった周囲の変化に目もくれず叫び続けた。
分からない。最強のゾイドを手にしたはずの自分が、なぜ敗れるのか。なぜ深淵の闇に沈まねばならないのか。プロイツェンの目的は……
『私が……なぜこんな……っ!!』
それも長い時間が経ち、叫び疲れたような感覚を覚えたプロイツェンはようやく喉を宥め、意識を周囲に向ける。そして気づいた。先ほどまで炎上する帝都に居たはずが、今はまったく知らない場所に放置されている。さらに己の身体を見下ろすと、驚愕に包まれた。
『これは……?』
自らの身体にドロドロの何かが張り付いていた。体のあちこちにこびりついたそれは、プロイツェンの肉体を異形の存在へと変えている。さらに、己の者ではない感情が心の奥底から湧き上がってくる。
――ハカイ、メツボウ、フクシュウ……
ぼんやりとひたすら同じ破滅の言葉をつぶやき続ける己が心。それは、プロイツェンが僅かばかりに感じた物でもあった。そう、デスザウラーの肩に乗り、数百のゾイドを相手に立ちはだかった時。ついさっき、帝都で戦った時にも感じたそれだった。
『これは、デスザウラーの……私はまだ、デスザウラーと繋がっているのか……?』
「お気づきになられましたか」
その声は、深淵の闇の中から響いて来た。プロイツェンが声の方向に視線を向けると、ゆっくりと視界に光が戻ってくる。全くの闇と思っていたそこは、大地には湧き立つ水をたたえ、怪しく蠢く巨大なカプセルのようなものがいくつも設置されていた。そして、天井は重々しい質感の岩盤。
ここがどこかの地下であると、プロイツェンは把握する。
『何者だ?』
「お初にお目にかかります。ガイロス帝国摂政、ギュンター・プロイツェン様」
『何者だと聞いている!』
「失礼。私はヒルツと申します。古代ゾイド人の生き残りです」
『古代ゾイド人だと!?』
プロイツェンは双眸を鋭く光らせた。赤い髪の青年と、それに着き従う赤いオーガノイドの姿がはっきりと捉えられた。
もっと現状について聞くべきだ。プロイツェンはそう感じさらに言葉を紡ごうとする。
『お前は――なにッ!?』
「まだ目覚めて間もない。しばしお休みを。ですがお忘れ無きよう。あなたはデスザウラーに選ばれたのです。破壊の使者として――ダークカイザー」
ヒルツと名乗った男の口から紡がれた名、ダークカイザー。それを耳にし、プロイツェンは不思議と心地よく感じた。もはや人間のギュンター・プロイツェンではない。破壊の使者「ダークカイザー」として生まれ変わった。下賤な人間とはかけ離れた存在だ。この星の支配者となるに、相応しい。心地い感情のまま、プロイツェンは眠りに就く。仮初の平和の中、眠りに……。
「眠ったか。さて、我々も行くとしようか」
「そうだね。しばらくは身を隠した方がいいのかな?」
ヒルツの後ろから小柄な少年が現れた。長い黒髪を後ろで縛り流した一見清潔感のある少年。その髪型から、少女と見間違いそうな見た目だ。
「ああ、まだ雌伏の時だ。だが、この時間で青い悪魔を目覚めさせておこう」
ヒルツはプロイツェンに背を向け、歩き出す。その横に少年がついて歩く。
「青い悪魔……リーゼ、だっけ? どんだけ歪んだかなぁ……へへ、ちょっと楽しみかな」
「そうか、だがお前は暗黒大陸に行け。あれのデータが欲しい」
「ちぇ、まぁいいや。あっちに帰るのも久しぶりだし」
そう言うと少年は両手を広げて駆け出し、そこに止まっていたゾイドのコックピットに乗り込む。
その機体は、姿形は共和国の名機――シールドライガーを始めとするライガー系統に近い。だがシールドライガーと比べてその牙は短く、突き立てるよりも噛み砕くことに適した長さになっている。目立った武装はほぼなく、射撃兵装は尻尾のビームガンと腹部のショックカノンのみに収まっている。全く無駄の無い身体付きは、金属生命体であるゾイド本来の動きを最大限に活かしたもので、荒涼とした大地が広がる惑星Ziに映える白いカラーは、砂で多少汚れようと、機体の荒々しさを際立たせる。
そのゾイドの名は、白き獣王――ライガーゼロ。
「じゃあね、ヒ~ル~ツ♪」
雄々しく雄叫びを上げ、暗闇に閉ざされた地底から光降り注ぐ外へと駆け出していく少年とライガーゼロ。その後姿を見届け、ヒルツは不敵に笑った。
「ふっふっふ……今は、仮初の平和を甘受するのだな。愚か者どもめ……」
***
ガイガロスは歓声に包まれていた。
あの日から早くも三ヶ月の月日が経過していた。デスザウラーとの死闘によって栄華を極めたガイロス帝国首都ガイガロスは見る影もなく荒れ果てた。それから休むことなく日夜復興を続け、この日、ついに念願の日を迎えたのである。
そう、新たなガイロス帝国皇帝――ルドルフ・ゲアハルト・ツェッペリン三世の戴冠式だ。
大歓声が沸き起こる中、ルドルフはゆっくりと歩いた。これから国民の前に立ち、祖父が築いたガイロス帝国の栄華がこれからも続くことを宣言するのだ。まだ幼い身だが、帝国の民を安心させるために、ルドルフは歩みを止めない。この場でも、そして、これからの政務からも。
だが、そこである人物がいないことに気づいて足を止める。
「バン? バンはどこです?」
壇上に向かう道には帝国共和国の要人、軍部の代表、彼をこの場に導いた功労者が立ち並んでいた。だが、そこにルドルフが最も信頼する少年の姿がない。
「フィーネもいないわよ」
「あいつら、またゾイドイヴ探しの旅に出て行っちまったな」
呆れた様子でムンベイとアーバインが答える。それを聞き、ルドルフは少し寂しく、だが同時に予想してた気もして前を向いた。
決意を新たに、だが、ふともう一人の存在を思い出し、再びあたりを見回す。
――いえ、彼がこの場に居るはずがありませんね。
それは、バンがこの場にいないことよりもあっさり確信を持てた。なにせ、彼は事前に言ったのだ。「ルドルフが即位したら、自分は去る」と。
「陛下……?」
「いえ、なんでもありません」
語りかけるホマレフにそう言い、ルドルフは壇上に立つ。歓声が、より一層高まった。
***
ガイガロスの街並みにひっそりと看板を構えるとある喫茶店。運よく帝都決戦の煽りを受けることのなかったそこは、普段は物静かで小さな店舗だが、今日は大勢の客が集まっていた。店内には収まりきらず、周囲の店に頼み込んで敷地を利用させてもらってようやく収まった。その客とはヴォルフにズィグナー、アンナ、ウィンザー、サファイア……その他たくさんの、共に戦った仲間であり戦友。要するに
「さて、あれから随分と経ったが、ようやくこの日を迎えたな」
集まったメンバーを見回し、ヴォルフは一人一人との思い出を思い返しながら言葉を紡ぐ。
「ついにギュンター・プロイツェンの野望を打破することができた。この場にいない功労者もたくさんいるが、今日は我々
「「「「「かんぱーい!!!!」」」」」
カチンッ
グラスが打ち鳴らされ、思い思いに談笑が始まった。誰もが柔らかな笑顔で今日までの思い出を語ったりこれからの希望を語ったりと、その表情は誰もが晴れやかだった。
「ウィンザーさんはこれからどうするのですか?」
「うん? あー俺様は帝国から勝手に抜けてここに来ちまったからなぁ……軍には戻れないし……どうだいサファイア、俺様と一緒に、空くなき冒険の旅に」
「お断りします」
「え、えぇえ!!!? や、約束しましたよね?」
「デートを考えるとは言いましたけど、一緒に旅をするとは言ってませんよ?」
「そ、そんなぁ……」
打ちひしがれるウィンザー。だが、サファイアがそれをおかしげに笑っているのを見て、自然とウィンザーの顔にも笑みがこぼれる。そして顔を上げた時、ふと店のオーナーの女性(若い)が目に入り、神速で近づき口説きに入る。ウィンザーは相変わらずだ。
「やぁ。俺様の名はカール・ウィンザー。どうだい、この後一緒にお茶でも……」
呆れ顔でそれを止めに入ろうとするサファイア。だが、それより早くウィンザーに近づく影があった。葉巻を咥えたゴツイ顔。鍛え抜かれた剛腕。その拳を振りかぶり、ウィンザーの頭に叩きつける。
ガツンッ!!!!
「いったぁ!? 誰だ! 俺様を殴った奴は――ってエリウスのおっさん!?」
「よぉウィンザー。相変わらずの様で何よりだぜ。どうやらテメェにはきつーくお灸を喫えにゃならんようだな」
「あ、いや……なんで死んでねぇんだよこのおっさん」
「ああ!!!?」
「あ! いや、なんでもないです! はい!」
「ちょっとこっちこい! ワシの復帰祝いをテメェにくれてやる!」
ウィンザーの頭を掴み、引き摺って行くエリウス。
エリウスはあの決戦の際、ローレンジを助けてすぐに倒れたのだった。テラガイストの熾烈な追撃から逃げ切り、偶然にも共和国軍に助けられた彼は重傷を押して決戦の地に駆けつけたのだ。
仲間たちのために、何より己のゾイド乗りとしてのプライドが決戦の場に向かうことを決断させた。だが、治りきっていない傷が下ですぐに倒れ、その後再び共和国に回収され治療を受けた。
生死の狭間を彷徨ったそうだが、やはり平常運転のエリウスにヴォルフは苦笑しながら話しかける。
「相変わらずで何よりだ。ところでエリウス。あの二人はどうした?」
「バンって小僧たちと飯食ってましたよ。ザルカも一緒でしたなぁ」
「そうか。あいつは、やはりそっちに行ったのだな。では、我々もこれからについての話もするとしようか」
ヴォルフはグラスに注がれたワインを少し飲んだ。まだまだ慣れてない苦味だが、偶にはこういうのも悪くないと思う。
すると、アンナがグラスを手に持ち隣に居た。柔らかい表情は、今日までの硬いそれとは大違いだ。
「ヴォルフ。あなたがこれからどんな道を進もうと、あたしは一緒よ。だから」
「そうだな。アンナ、共に行こう。ゼネバス帝国の再建へ……」
カチン
グラスをぶつけ合う音が、響き渡った。
***
「今日はルドルフ殿下の戴冠式だ! こんなめでたい日は……半額だ! たー……んと食ってくれ!」
「「「いっただっきまーす!」」」
気のいい店主の言葉に、三人(ローレンジ・フェイト・バン)はがっつくようにしてそれを口にした。三人よりは穏やかに料理を口にするのはフィーネ。表面上優雅にグラスのワインを味わうのはザルカだ。
腕によりをかけて作った店主の料理はどれも絶品だ。旅から旅への生活を続けてきた彼らにとって、我慢できるようなものではない。
ひとしきり食べ尽くしたところで、箸を置いたローレンジは食事に誘った相手――バンに話しかける。
「で、結局戴冠式に出なかったってか? まぁ理由は分からんでもないが、ルドルフ皇帝になんて言われるかねぇ」
「俺、ああいう固っ苦しいとこは好きじゃないし、それに勲章とか柄じゃないよ。そう言うローレンジは出なくてよかったのか?」
「あのなぁ……俺は犯罪者だぞ。あんなとこに出られるか」
小声になりながらローレンジは答えた。ルドルフの父を偶然とはいえ手にかけ、それ以外にも多数の人を手にかけてきたことは許されざる事実だ。
バンは犯罪者という言葉に心底驚いたような表情を浮かべる。
そういえば、あの場でもルドルフ以外には自分が元殺し屋であったと伝えていなかったな、とローレンジは気づく。
「前にミレトス城に盗みに入ったことがあるんだよ。けっこうな額の物を奪っちまったし、そん時にしくじって何人かの重鎮に顔が知れてるんだ」
とっさにそう言い訳する。真実を話しても構わなかったが、こんな日に血まみれの話をするのは場違いだ。バンたちには、またいつか話せる時が来るだろうと思う。
バンは釈然としないながらも、いちようはそれで納得した。彼自身もある人物の導きで共和国の国立考古学研究所に不法侵入した前科があるからか、似たような行動を思いだし話題を変える。
「あ……なるほど。そういや、ヴォルフさんたちだって出なかったんだろ? そっちも気になるんだけど」
「ヴォルフはこの惨状を作った男の息子だ。プロイツェンに恨みを持つ者が、参加を許すはずもない。世間体という奴だな。まったく、くだらんことだ」
バンの疑問に、優雅にワインの入ったグラスを傾けるザルカが答える。ちなみに、この場で酒類を飲んでいるのはザルカだけである。
「ワタシも犯罪者らしいからな。戴冠式には出れん。むろん、出るつもりもないがな。……まったく世間の判断とはくだらんな。犯罪者という逸脱した存在こそが新たな進化の可能性を秘めているというに」
「えっと……どーゆーことだ?」
「ブレードライガーが例に挙げられるな。死んだゾイドが生き返るなんてありえない話、常識から逸脱してるんだ。だけどそういう奴が現実にありえない成果を叩き出す。……それを世間で言う犯罪者と同格にするザルカの考え方は、俺は納得いかねぇが」
「あー……よく分かんねぇ」
しばらく天井を見上げ、やがて照れ笑いしながらバンは頭を掻いた。そんなバンを、ローレンジはぼんやりと見つめながら口を開く。
「分かんなくていいんだ。バンはそのままで。こんな説明で納得するな。……薄汚れた世間を知らず――いや、知った上で今までのままでいろ。それが、ゾイド乗りとしての理想の姿だ」
「??? なんだよ、いきなり」
頭に疑問符を大量に浮かべるバンの顔を覗き込み、ローレンジは愉快気に笑った。
「ゾイド乗りってのは結局戦いに終始する。世間の暗いとこを見て、それで薄汚れていくんだ。誰かを傷つけ、時には……胸糞悪い結果を生むこともある。それに……いや、よそうか。まぁ一言で言うなら……バン。お前みたいに楽しくゾイドに乗れる奴が、最高のゾイド乗りなのかもな……って話」
「悟っているな、ローレンジ。フハハハハ!!!!」
「なぁ、ほんっとに分かんねぇんだけど」
バン一人ほったらかしにして、男三人で奇妙な会話が深まる。その外側では、フィーネとフェイトも話に華を咲かせていた。
「だけど、バンも無茶するよね。もしシールドを破られたら死んでたんだよ。フィーネも」
「私は、バンのこと信じてるから。それに、それを言うならローレンジさんもよ。ブレードアタックに巻き込まれたかもしれないんだから」
「ホントホント! わたしも『もうダメだぁ!』って思ったんだから。エリウスさんに感謝だね」
デスザウラー撃破の決め手となったのはバンとローレンジの活躍だ。だが、どちらも特攻に近い無謀な行動。それに付き合ったフィーネとフェイトもさすがというべきだが。
ちなみに四人は病室で横になるエリウスからたっぷり二時間説教を喰らった。が、その後でゾイド乗りとして恥じない男気と活躍だと大いに褒められた。これも二時間くらい。正直疲れたという印象しか四人には残っていない。
「フィーネは、古代ゾイド人なんだよね」
フェイトの声のトーンが落ちる。フィーネも、少し重く感じた。
「そうよ。古代ゾイド人、フィーネ・エレシーヌ・リネ。それが、私の名前。フェイトも確か……」
「お母さんが人工の古代ゾイド人なんだって。わたしは、その力を継いでるんみたい。よく分かんないけどね」
「もう、私の仲間はあなたしかいないのかな」
「そんなことないよ! きっと眠ってるだけの古代ゾイド人がいるって! きっと友達になれる! だから、これからも謎を追い求めるんでしょ? ゾイドイヴの」
「ええ。私の中に残る最大の謎だもの。絶対に解き明かす」
「わたしも、お父さんとお母さんが残した謎だからね。これだけは譲れないよ。競争だね? どっちが先にゾイドイヴを見つけるか」
「ええ」
フィーネは優しく微笑んだ。フェイトも、めいっぱいの笑顔で微笑む。それだけで、満足だ。こうしてゆっくり話す機会が生まれた。満足だ。
店の外ではニュートとジークがのんびりと空を眺めていた。時折言葉を交わすように唸りあう。彼らも彼らで、友情(?)を育んでいるのだろう。
三ヶ月前の炎と煙に染まった帝都の空は、蒼く澄み渡っていた。
その後も互いの経験から来る話に華を咲かせ、ちらりと時計を確認したローレンジが立ち上がる。
「さて、そろそろ行くか。バン、見つかったら戴冠式に連れ込まれるぞ。今日のは俺の奢りだから、さっさと行けよ」
「マジ! サンキュー! 行こうぜフィーネ、ジーク!」
「うん」
「グゥォオオ」
「じゃな、ローレンジ!」
「おう、またな」
「フェイト、また今度成果を聞かせてね」
「フィーネもね!」
慌ただしく席を辞していくバンとフィーネ。彼らが去って行った後、ローレンジ達も会計を済ませて店を辞する。
「それじゃあ俺たちも行きますか」
「うん。最近は
「キィ!」
二人は再び旅に出かけることにしていた。すでにヴォルフには伝えてある。ヴォルフ達も新たな目的を掲げ
その目的というのはゾイドイヴの謎を解き明かすことだ。そもそもフェイトが旅に出た目的は、両親が残した古代遺跡の記録から謎を解き明かすことだ。すっかり放置されていたそれに、目的を戻すのだ。
同行者はザルカだ。これまでゾイドの開発にしか興味を持たなかった男だが、ガイガロス決戦の後に旧知であった共和国の科学者と再会し、古代遺跡研究の熱が上がったとか。
――もう因縁がどうとかもない、これからは、未来へ向けて生きていく、か。ああ、悪くない。
プロイツェンの打倒。これまでずっと心に残り続けた復讐の炎はもう消え去っていた。晴れやかな青空が覗く心で、ローレンジはようやく胸を張って言える。
これからが、本当の人生の始まりだと。
「あ、ロージ、あそこに誰か倒れてるよ!」
帝都ガイガロスを出て数刻、とある木々の隙間を指してフェイトが声を上げた。古代ゾイド人とのつながりが発覚して以来、フェイトの視力や聴力は普通の人間を遥かに超えたものとなった。聞けばフィーネも同様らしく、古代ゾイド人特有のものだろうとローレンジは予測する。なぜそれが今更発現したかは置いておく。
ひとまずグレートサーベルを止め、ローレンジはその木々の隙間に駆け寄った。
『グルガァア!』
「うわっ!?」
だが、覗き込もうとした瞬間に黒い何かが現れた。警戒心を逆立てて威嚇するそれは、一見数刻前に別れたバンのオーガノイド、ジークに似ている。だが、ジークの白銀の機体色とは正反対に、
『ギィアアア!』
ニュートが二人の前に躍り出て
「ロージ? この人って……」
「黒いオーガノイドを連れた……黒髪の少年――まさか……レイヴン?」
新たな物語は、新たな出会いと共に始まる。
第二章まで読んでいただきありがとうございます!
今回も後書きを用意しましたので、私の戯言にお付き合い頂ける方は是非、あと少しだけ、お付き合いお願いします。