「失敗しただと!! 相手は死にぞこないだろうが!」
『申し訳ありません。あのグレートサーベルが、予想外に強敵でして。その上連中の生き残りもかなりのやり手です』
テラガイストの幹部――ガルドの報告にプロイツェンは激昂する。当然だった。もはや虫の息であった
「そのグレートサーベルは無人機だったのだろう! お前たちは機械に負けたというのか!」
『申し訳ありません。例の、
「
私兵たちの撃破報告がことごとく覆され、さしものプロイツェンも感情をあらわにするほかなかった。そこで、怒り心頭なプロイツェンにガルドはある報告を加えた。
『閣下、今回のことで一つ気になったことがあるのですが』
「なんだ!」
『
「……やはりただのガキではないと?」
『奴らの通信を傍受した限りでは、あの少女はゾイドと意思疎通が出来ているような気がいたします。それに、ゾイドとのリンク数値も非常に高いと思われます』
その少女は若干10歳でありながら、シュトルヒを見事に操縦して見せた。さすがにリバイアスには敵わなかったが、僅かな時間ながらもシュトルヒと心を通わし巧みな空中戦を見せた。それは、
『それに、彼女の容姿はあの女の面影があります。私は写真で見ただけですが、あの女とつながりがあるとしたら……』
プロイツェンは通信を聞きながら、自らの私室の資料を漁る。目的のそれはかなり昔のものだが、プロイツェンも可能性を捨てきれず温め続けてきた計画である。
“古代ゾイド人の遺伝子によるゾイドの制御”についての研究資料。
古代ゾイド人の遺伝子はゾイドとの適合率が高く、ゾイドの制御を容易とする。この遺伝子を活用すれば、現在復活中にある“破滅の魔獣”の制御問題も解決するのでは、というのだ。
そして、この計画が生まれたのはプロイツェンも若かった頃、彼が自らの“祖国”に居た時の事だった。
プロイツェンは以前
「……なるほど。これは、良いことを聞いたな」
薄く、プロイツェンは笑った。そして、ガルドに向けて新たな指示を発する。
「バイパーに伝えろ。いかなる手を使っても構わん。その少女を、戴冠式までに連れてこいと」
『御意』
通信が切れてなお、プロイツェンは込み上がる笑いを押さえられなかった。
「くっくっく……なるほどな。まさかこんなところで見つかるとは。とうに死んで、諦めていたのだが、私への置き土産を残してくれるとはな、ユーノ」
***
「キィイ!」
「もうダメかと思ったが、どうにか復活だな、ニュート」
「キッキィ!」
ニュートは首をグルグル回し、久しぶりに自由に動かせる己の身体に歓喜する。テラガイストから逃げ切ったザルカがゾイマグナイトを持っており、ニュートはそのおかげで回復したのだ。
「……ありがとよ。お前のおかげで、命拾ったよ」
「キッキッキ、キィア」
「はっはっは、気にするな」とでも言っているのだろうか、得意げなニュートの顔を見て、ローレンジも安堵する。
ニュートはローレンジを助けた後、ずっと意識が戻らなかった。戻った後も、何かのはずみで再び機能が停止してもいけないと、ザルカが情報を渡さなかったのだ。ぬか喜びさせたくないという、ザルカの不器用な心遣いがあった。
ようやく再会できた相棒オーガノイドに、ローレンジは礼を告げる。
「よかったね、ニュート!」
「キィイ!」
ニュートはフェイトのお腹に頭を擦り付ける。まるで猫のような仕草だが、完全に壊れてもおかしくなかったニュートの復活が良く分かる一幕だ。ローレンジもその様子に一安心し、自分の脚を軽く撫でた。骨折まではいかずとも、骨にひびが入っているのは確実だった。治るには安静にしておくほかない。だが、現状そうしても居られなかった。
プロイツェンは皇帝の指輪を手にし、ついに帝国の支配を完全なものとした。もはや、彼の戴冠式までにルドルフ殿下を帝都ガイガロスに連れ戻すしかプロイツェンの野望を阻止する方策はない。だが、
フェイトのシュトルヒを始め、ブラックライモスにツインホーンの損害は大きい。シンカーに至ってはブラックレドラーに真っ二つにされて再起不能。ウィンザーのレッドホーンも傷が酷く、現状動かせるゾイドはヴォルフのアイアンコングmk-2、ローレンジのグレートサーベル、ザルカのサイカーチスのみだ。
しかもザルカは各ゾイドの修復作業に付きっきりになるため、サイカーチスは動かせない。
「心配いらん。このザルカに不可能はない!」
その心配を断ち切る声を上げたのはザルカだった。
ザルカはいざという時のために基地のほど近く、エルガイル海岸にもう一機のドラグーンネストを建造していた。それは嘗て帝国に居た時に、自らの知的好奇心に直属の部下を巻き込んで作ったという代物だった。
「ドラグーンネストなら、海底を進み連中の追跡を逃れられる。今後の
ザルカの言葉通り、エルガイル海岸にドラグーンネストの巨体が巧妙に隠されており、さらにザルカの嘗ての部下たちは今でもそこで活動していた。その活動資金は、ザルカが
旧基地から物資やゾイドを運びだし、それらを全て新たなドラグーンネストに運び込む。その作業の合間、主要メンバーで今後の動きについての相談も行われた。その場では、ヴォルフの提案にズィグナーが驚愕し猛反対したが、協議の末にそれが実行されることとなった。
そして、全ての作業が終了したその日。ドラグーンネストが海底に帰って行くその日。
「殿下――ヴォルフ様。やはり危険すぎます。ヴォルフ様は我々と共に」
「もう決めた事なのだ。ズィグナー。一刻の猶予もない」
「それは、重々承知です。ですが、ヴォルフ様自ら戦線に立つなど……」
「これまでもそうだったろう。何も変わらん。それに、ギュンター・プロイツェンは私の親だ。親の過ちは、その血を引く私が止めるのが道理であろう」
「しかし……」
「心配いらん。ローレンジが一緒だ。きっと、プロイツェンの野望を阻止してみせる」
ヴォルフの提案。それは
プロイツェンの野望を阻止するための切り札とも言うべきルドルフ殿下。その無事の確認はとれておらず、今も本当に生きているかどうかは謎だった。
「今動けるのは私たちだけだ。今動かなくて、いつ動くというのだ」
「は、おっしゃる通りです。しかしヴォルフ様、もう一つ……彼女のことが、気にかかっているのでしょう」
ズィグナーの言葉に、ヴォルフは思わず顔を顰めた。整った顔を歪め、ギリと奥歯を鳴らす。
「……ローレンジの証言を信じていない訳ではない。だが、本当にアンナがプロイツェンの手先となったかどうか、私の目で確かめねば気が済まん」
「ヴォルフ様……」
「この目で確かめんとな。そして、望まぬ形であるなら何としても助け出す。敵対していたとしても、必ず分かり合えるさ。……なに、ローレンジも以前より頼れる存在になった。お前が心配する必要はない。……私の、“親友”だからな」
「ヴォルフ様」
二人の視線が、少し離れた所に居る者たちに向く。ちょうど、ウィンザーが怪我を感じさせない動きで駆けてきたところだ。
「フェイトちゃん。この俺様が居なくて寂しいだろうけど心配いらないよ。このくらいの怪我、すぐに治して駆けつけるさ」
「ううん。ロージがいるから平気」
「強がらなくていいんだぜ?」
「ウィンザーさん。そのくらいにしたらどうです。怪我に触りますよ」
「ぬおお!? サファイアが俺をやさしく労わってくれると!? ついにサファイアにデレ期到来か!?」
「……ドラグーンネストから叩き落しますよ?」
「サファイアと共に大海原を泳げるなら俺は本望だ!」
「もう勝手にして下さい」
「サファイア、今度テラガイストが来たら、こいつ一人を囮にしろ。そんで逃げちまえ」
「ローレンジ! 素晴らしい案じゃないか! 殿としてただ一人立ち塞がる漢! 最高に燃える展開だな!」
「その上で
「俺の命は最ッッッ高に燃え上がるッ!!!!」
「あー、付き合いきれねぇ」
どこまでもぶれないウィンザーの態度にローレンジ達のみならず、他の
「エリウスのおじさん。大丈夫かなぁ……」
「……エリウスはベテランのゾイド乗りだ。無事だと思うが」
「連絡が取れないと、心配です……」
「あの拳骨おっさんだ。きっと無事さ。――不安なら、俺の胸で泣いていいんだぜ。レディーたち――がふぅ!!」
鋼鉄の頭がウィンザーの腹に突き刺さり、ウィンザーは転がり回って悶絶する。
「ニュート、ナーイス」
「キッキッキ!」
ローレンジは親指を立てニュートをねぎらう。未だ怪我が酷いウィンザーを心配する者は、いなかった。
「それでは皆の者。私は一旦皆の元を離れる。だが、我らの心は一つだ。共にプロイツェンの野望を打倒する! 皆の想い、
「「「「お気をつけて! ヴォルフ様!」」」」
ヴォルフの挨拶に、
「そんじゃ行こうぜ。ヴォルフ」
「ああ」
「また宜しくお願いします。ヴォルフさん」
「フェイトも、一緒に行くのか?」
「もっちろん! ロージとわたしはいつも一緒だよ!」
ヴォルフがローレンジに視線を向けると、ローレンジは肩をすくめてグレートサーベルに乗り込んだ。グレートサーベルの首にニュートがよじ登り丸くなる。ヴォルフとフェイトもそれぞれゾイドに乗り込む。
そして、二機のゾイドが帝都ガイガロスに向けて出発した。
「……ただ、ルドルフ殿下……か……」
ローレンジは、一人憂鬱気に言葉を溢した。
***
へリック共和国レッドリバー前線基地。
『準備はよろしいですか?』
「ああ、各部異常なし。始めてくれ」
緑のコマンドウルフに乗り込んだトミー・パリスが答え、演習が始まった。もっとも、今回の演習はテストだ。新兵器の射撃テスト。
「新兵器、試作型のレールガンか。こいつなら、大型ゾイドの装甲だろうと貫けるはずだが……」
背負ったレールガンを展開し、キャノピーに取り付けられたヘッドスコープを覗き込み、じっくり射線を調整する。実戦ではここまでじっくりする余裕はないが、今回はレールガンの試し撃ちだ。パリスはのびのびとした気分で狙いを定める。
標的はレッドホーンの残骸を組み合わせた今回の専用のもの。
「……なーに、もう何度も練習してんだ。必ず当ててやる…………今だ!」
トリガーを引いた瞬間、コマンドウルフの機体に衝撃が走りレールガンが射出される。それは瞬きする間も無くレッドホーンの残骸に迫り――微妙に逸れて近くの岩を大きく抉った。
「…………ありゃ? 外した?」
パリスの呟きは、基地郊外の荒野に空しく消える。
『――バカモン! これで何度目だ!』
途端、通信機から怒鳴り声が届く。
「す、すんませんロブの兄貴――失礼しました、ロブ・ハーマン大尉。ですが、こいつの射出時の衝撃は強くアンカーだけじゃ抑えきれず、狙いがブレて……」
『言い訳はもういい! いったい何発外したと思ってるんだ!? レールガンの弾は無限にある訳じゃないんだ! しかも、そいつには都合上一発しか装填できんのだぞ。全く……』
「すんません!」
酷いため息が通信機越しに届き、パリスはひたすら謝った。
『もういい、帰投しろ。やはりそいつは、別の者に……』
「いえ! こいつはオレにやらせてください! お願いします!」
『だが……』
「ロブの兄貴ッ! 頼むッ!!!!」
妙に熱の籠った訴えに、レッドリバー基地の担当であるロブ・ハーマン大尉はしばし黙考した。
『とにかく戻ってこい』
「兄貴ッ!」
『今日のテストは終了だ。もう遅い。明日も早くから始めるんだ。早めに寝て、疲れを取っておけ』
「兄貴……ありがとうございます!」
***
威勢のいい返事でトミー・パリス中尉が帰還するのを確認し、ロブ・ハーマンは満足げに笑った。
「どうしたんです? ハーマン大尉?」
その様子に、ハーマンの副官であるオコーネル中尉が尋ねた。
「いや、あいつがあそこまで熱を入れるのは珍しくてな。特務から戻ってそうそう、あいつが言ってきた事には驚いたよ」
『新型レールガンをオレに使わせてください! お願いします!』
同僚を失い、風変わりな男女を連れ帰ったパリスは開口早々、任務報告もなしにまず訴えた。
新型のレールガンは共和国の偏屈科学者の作った設計図を基につい最近完成したものだった。長く特殊任務で空けていたパリスが知るはずの無いこと。おそらくどこかで偶然知ったのだろうとハーマンは予測している。
「報告もなく一番にそれですからね。あのトミー・パリス中尉に、何かあったのでしょうか」
「さぁな。だが、あいつも男として一皮むけたのかもしれん。一つの信念に邁進するあいつの姿は、何か切っ掛けを感じさせる」
帰還したレールガン装備のコマンドウルフの状態の報告を受けながら、ハーマンはその時を思い出すように言った。
「切っ掛け……あの二人組の事ですか?」
「いや、違うな。だが、あいつ――トミーの目は……まるで二年前と同じだ」
「二年前……と言いますと、ハルフォード中佐――いえ、准将との特殊任務ですか……ハーマン大尉が気に掛けるようになったのも、あの後でしたね」
「ああ、あの時は准将の死を切っ掛けにしたのだと思ったが、今のトミーの目はあの時と同じだ。あいつに火を点ける奴は、他にも居たという事だろう」
「この話はここまでとしよう」とハーマンは話を切る。そして、指令室のモニターに格納庫の様子を映し出した。モニターには寝る間も惜しんで作業する作業員の姿と、彼らによって形を整えていく二体のゾイドがあった。
「もうすぐ完成だな」
「は、作業は順調です。あと三日で完成だそうです」
「搭乗者は?」
「そちらも問題ないかと」
「そうか。両方とも、トミーたちが命を賭して持ち帰って来たんだ。無駄にするなよ」
「もちろんであります」
ハーマンは席を立ち、残りの作業を片付けに向かった。
***
コマンドウルフを降りたパリスは整備士から同じように格納庫に鎮座する二体の飛行ゾイドの状況を聞く。そして新着情報を聞き出したパリスは自室に戻る前にと、基地内の医療施設に向かっていた。スタッフに一声かけ、目的の病室に入る。
「よう、二人とも調子は?」
パリスの声に、ベッドに横になっていた赤い髪の大柄な男――ロッソと、その傍らの椅子に座っていたヴィオーラが顔を向ける。
「問題ない。いつでも出れる」
「アタシも大丈夫さ」
元気そうな二人の姿を見て、パリスは壁にもたれかかる。
「朗報だ。例のゾイドはあと三日で完成らしい。まずはテスト飛行といく。その時が、あんたらの再出発だ。……で、注文はその仮面で問題ないか?」
パリスは机の上に置かれた仮面を指差す。ロッソたちに頼まれた、彼らの顔を隠すのにちょうどいい大きさのものだ。
「ああ、これでいい。もう会わす顔がないからな」
「そうね。この仮面が、今のアタシたちに相応しいわ」
二人は仮面を持ち上げ、自嘲気味に言いながら被った。具合を確かめているのだろうとパリスは思ったが、ふと、仮面の下に隠されていた一枚の紙が目についた。
「これは?」
すっと手を伸ばし、紙を取る。そこには何度も書いては消してを繰り返したのだろう。消し後が残っており、その上にある文章があった。
一拍遅れ、パリスがそれを読んでいるのに気付き、ロッソが慌てる。がすでに遅く、パリスはその文章を訝しげに読み上げ始めた。
「あ!? それは――」
「えーなになに……『天定まって、
いやに熱い。どこぞのヒーローのような文章に、パリスの脳内は混乱の極みに達する。それに、ヴィオーラが口を隠しながら笑った。
「それね、ロッソとアタシで考えたんだ。なかなかの出来でしょ」
「あ、ああ……」
「仮面をつけて行くんだ。どうせなら、決め台詞の一つでも欲しいじゃないか」
「……いや、だからって大の大人がこんな…………ああいや、やっぱいい」
ノリノリで語るロッソとヴィオーラに、パリスは手で目を押さえ頭を振る。ロッソとヴィオーラはそんなパリスの様子に意味が分かってないようだが、そんな二人のことがパリスには分からなかった。
――なんだ、なんだこの文面! オレにも意味は良く分からんが……なんか、言ってて恥ずかしくなりそうな事が書いてある。つか『天定まって、
軽く頭痛まで感じ始めたパリスは、もう見てられないと紙面から目を逸らし――戻した。文面に刻まれた見慣れない名をもう一度よく見る。
「ストーム……ソーダー?」
「あの機体、まだ形式名が決まっていなかったんだろ? だから、俺たちで決めさせてもらった」
あの機体、というのは建造中の新型飛行ゾイドだ。パリスたちが帝国から盗み出した開発中のゾイドのパーツと設計図。それを、この基地に居る偏屈科学者が手を加え形にしたゾイド。
その名を「ストームソーダー」にしようというのだろう。
「……それに、あいつのあだ名を使うのか。お前らも知ってたんだな」
「ヴィオーラの伝手で知ったのさ。俺達は、あいつに救われたようなものだからな。やつの想いを、少しでも形に残しておきたい」
ロッソは真剣な表情でそう言った。
ロッソたちもローレンジ・コーヴの死を受け、変わろうとしているのだ。彼の想いを受け継ぎ、なんとしてもプロイツェンの野望を阻止する。ストームソーダーは、言ってみればその決意の表れでもあるのだ。そして、一見ふざけて見えた先ほどの文章も、彼らの意志を言葉に表したのだろう。
陰ながらルドルフを守る。そして、プロイツェンの野望を打ち砕くのだ。
――オレも、負けてられないな!
「それじゃ、オレもそろそろ休むよ。またな」
「ああ」
「おやすみなさい」
決意を新たに、パリスは今日を終える。明日こそは、自分の決意を形として表すのだ。
パリスのコマンドウルフが、レールガンのテストで初めて命中させるのは、翌日の正午の事だった。
***
三日後
爆音とともにレッドホーンの残骸で作った的が粉々に砕け散った。その周囲には、同じように砕けた残骸が散らばっている。
指令室からの通信を聞き、それを確認したハーマンは、そのままパリスに通信を繋いだ。
「ノルマ達成だな。よくやったぞ、トミー」
『当然っすよ、ロブの兄貴! これで、こいつはオレが使わせてもらえますね?』
「ああ、上には何とか言っておく。その代わり、ジェノリッターとかいうのは確実に倒せ、いいな?」
『了解っす!』
ハーマンは通信を切る。
パリスはこの後ジェノリッターの破壊任務を帯びることになる。パリスの持ち帰った情報による危険性もあるが、なによりパリス自身の熱意が、彼をジェノリッター撃破に向かわせた。
「ハーマン大尉、来ました」
オコーネルの言葉に、ハーマンは意識を現実に戻した。一台の車に乗り、やってくる男女二人組。仮面を深く被り、その表情は窺い知れない。
車がハーマンたちの前に到着すると、二人は軽い動作で車から跳び下りた。
「頼んだぞ。お前たちの働き如何で、今後の世界の行く末が決まる」
「任せてもらおう。我ら翼の男爵、アーラバローネに」
互いに敬礼を交わし、二人はストームソーダーに乗り込むためエレベーターに乗った。そこで、二人の内の一人、女性が振り返り、
「Catch you later. 後でね」
投げキッスの動作でそう告げ、ストームソーダーに乗り込んだ。
「……ハーマン大尉、大丈夫でしょうか? あの二人にストームソーダーを任せて」
「心配するな。あいつらは誇りある戦士だ」
「今はあの二人に時代を委ねる。それでこそ、助けてやった甲斐があるというもんじゃ」
オコーネルの疑念を、ハーマンとその場にいた老人が断言で否定する。
ストームソーダーの機体が持ち上がり、同時に二体の滑走路が地面からせり出す。ある程度の位置まで上がったところで停止した。
「――GO!!!!」
老人の合図に、ストームソーダーの機体が一気に加速。滑走路を駆け抜け、機体は中空に投げ出される。ストームソーダ-は翼を展開し、背中のブースターが火を噴き始める。
そして、
ストームソーダーの開発状況と名前の由来、それにあの口上の完成経緯なんかも盛り込んでみました。
ロッソたちの再登場は嬉しかったですね。といっても、当時の私は5歳くらいだったので、深く覚えてる訳ではないんですが。
さて、次回は原作アニメファンお待たせしました! ついに彼が本格登場です。